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更新日:2021年3月12日

知事会見(令和2年(2020年)12月25日(金曜日)10時31分~11時08分 会場:県庁)

項目

阿部知事・玉村会長からの説明

  1. 「信州ワインバレー構想 グレードアップ版2020」の策定について

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取材者からの質問

  1. 「信州ワインバレー構想 グレードアップ版2020」の策定について

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本文

阿部知事・玉村会長からの説明

 1 「信州ワインバレー構想 グレードアップ版2020」の策定について

長野県知事 阿部守一
 本日、「信州ワインバレー構想 グレードアップ版2020」を策定し、公表するに当たりまして、信州ワインバレー構想推進協議会の玉村豊男会長をお迎えし、皆さまに発表します。
 信州ワインバレー構想は、平成25年の3月に10年後の目指す姿を掲げて策定して、およそ7年経過しました。私の思いとしては県知事として、それぞれの地域資源をしっかり生かした地域振興が大事だという思いでしたし、また地域の活性化、産業の活性化を考える中で、いわゆる6次産業的視点というものをしっかり進めなければいけないと考えていました。そういう中で長野県は古くからワイン用ブドウの生産であったり、ワインの醸造に取り組んできている県ですし、またワイン産業というのは農業、そして製造業、さらには観光業と一体で進める、いわば究極の6次産業だと思っています。そういう意味で信州の強みを生かして地域振興、産業振興を進めるという観点で、ワインバレー構想を玉村会長はじめ、多くのワイナリーの皆さま、あるいは農家の皆さま、観光関係者の皆さま一体となって進めてきました。おかげさまでワインバレー構想策定当時はワイナリーが県内で25でしたが、今年度9月末現在で61まで増加してきています。またワイン用ブドウの生産量は長野県が日本一ということで、7年の間に2倍近くまで生産量が増加してきています。ワインの醸造量も着実に増加する中で、県内のワイン消費量についても酒類全般の消費が伸び悩んでいる中、増加しているという現状です。
 長野県は本当に古くからワイン産業に取り組んできたということだけはなくて、気候的にも非常にブドウの栽培に適しているということで、品質的にも優れたワインを世に送り出してきています。皆さまご存じの通り、昨年軽井沢でG20の環境エネルギー大臣会合(持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合)が開かれましたけれども、その際にも、また平成28年に開催されたG7サミット等でも、本県産のワインが提供され、その品質の高さはまさに折り紙付きだと考えています。官民一体となって取り組みを進めてこられたことに大変感謝しますし、特にその中心でけん引をいただきました玉村会長には改めて敬意を表したいと思います。本当にありがとうございます。
 こうした中、今コロナ禍でワイン産業もさまざまな影響を受けていますけれども、次の時代に向けた飛躍の時期にしていきたいということで、今回グレードアップ版を策定しました。県内各地域でワイナリーの集積が進んできたということを踏まえて、今後ワインを地域の重要な観光資源にしていきたいと考えています。いわゆるワインツーリズムというような形で、多くの方にワインを目的にしながら長野県を訪れていただき、信州の風土に触れていただけるようにしていきたいと考えています。「ワインをコンセプトにした観光地域づくり」ということを大きな柱に据えて取り組みます。また併せて、冒頭申し上げたように、究極の6次産業ですので、ブドウの生産から観光まで一貫して、ワイン産業のさらなる振興を図っていきたいと考えています。引き続き市町村、地域の皆さまとも連携をしながら、地域ごとのワインバレーの形成をさらに進めていきたいと思っています。信州にワインを楽しむ文化がしっかりと根付き、そしてまた、そうした文化にひかれて多くの皆さまが訪れていただけるような長野県になるように、私としてもさらに全力で取り組んでいきたいと思っています。皆さまのご協力、引き続きよろしくお願い申し上げたいと思います。私からは以上です。

信州ワインバレー構想推進協議会会長 玉村豊男 氏
 きょうはお集りいただいて、ありがとうございます。今、知事からもご紹介ありましたように、信州ワインバレー構想の発表時にワイナリーの数が25、現在61ということになっています。構想を発表した当時の大方の予想よりも数は増えているのかと思いますが、ほぼ世界的に、例えばニュージーランドが一番いい例ですけれど、あるいはアメリカのオレゴンとかニューヨーク州とか、いろいろな各州で、今ワインによるまちおこしというのが行われていますけれど、大体10年で3倍に増えるというのが世界的な現象です。そうすると、今7年目ですけれど、10年後には恐らく75に近づいていると思うので、ほぼ世界の標準的なペースで長野県のワイナリーは増えていると見ています。それだけの急速な増加を支えるものというのは、まずは行政からのメッセージと規制緩和、それから大学などの研究機関によるサポート、それからあとは民間からの投資、この三つがそろうと、大体10年で3倍になるペースが20年、30年と続く。30年で9倍になるわけですが、そういう状態になるポテンシャルを長野県の各地域は備えているだろうというのが見通しでした。その通りに現実、運んでいるという感じになっていますけれども、きょうも知事から力強いお言葉がありましたけれど、各地域でそれぞれ多少、市町村によって温度差はありますけれど、実際ブドウを栽培していないところもあるので、ただ全体にいろいろな形での行政からの規制緩和や支援というのは行われています。それから大学等研究機関からのサポートというのは、残念ながら信州大学、あるいは長野大学辺りにワイン栽培醸造学科をつくってくれとお願いしていますけれど、なかなかまだ実現していません。ただし塩尻のワイン大学とか、東御市の千曲川ワインバレー、それと長野県のワイン生産アカデミーとかという形で教育する機会がだいぶ増えてきまして、それによって育ったワイングロワーの方が非常に数多く、すでに何十もそれによって新しいワイナリーもできています。そういう意味では民間の研究機関、教育機関がサポートできるという状態がだいぶ定着してきました。あとは民間からの投資ですけれども、ワイン産業が有望であるということを頭では理解しても、なかなか実際に農業ベンチャーに投資するマインドが日本の企業に無いので、そのためにも県や市町村、行政からのメッセージ、これだけ行政もサポートするから投資してくださいという呼び掛けがまだまだ足りないというところは確かにありますが、一方で千曲川ワインアカデミーなんかの状態を見ても、企業として参加するのが年々増えています。企業から若い社員を送り込んで勉強させて畑を作り、それでワイナリーを造るとか、オーベルジュ(宿泊施設を備えたレストラン)を造るとかいうのは、実際、実現しつつあります。この2、3年くらいに、そういう企業によるワイナリーの開設というのが、かなり数が増えていくのではないかと思いますけれど、そういう意味では一応バランスを取って進歩してきています。
 2013年に発表したワインバレー構想から7年目。一応10年という期限を切って目標を立てたものですので、実際には今年度を含めてあと3年ですから、あと2年ちょっと実際に残っているわけですが、ここで一度これまでの成果を確認し、さらにはこれからの目標を立てようということで、今回グレードアップ版というものを県にお願いして作っていただいたということです。これの一番重要なところは、先ほど知事からもお言葉がありましたけれど、ワイナリーの増加を観光に結び付けたい。特に長野県のワイナリーは小規模なワイナリーが多いので、なかなか経営的な余力も少ないので卸に回せない。卸屋さんが買うのは大体、外国のワインなら50パーセントぐらいの原価で買えますけれど、われわれの「NAGANO WINE(ナガノワイン/長野県産ワインの呼称)」の場合は一番いいところで75パーセント、小さいところだと90パーセントか、もうほとんどそれ以上、定価のまま売ってくれないと利益が残りません、みたいな所が多いので、できれば直販の比率を増やしたい。そのためには実際に来ていただいて、そこの畑を見てもらい、そこのブドウを作っている人たちと話をしてもらって、そのブドウが育っている、今自分で試飲をしていただいて飲んでもらっているワインが、そこにあるそのブドウからこの人が作ってできたのですよというところを説明すれば理解して買ってくれるだろうというところで、実際に来ていただくことが非常に重要になります。
 現在コロナ禍で、ワインの出荷量は卸を通しての業務用の市場が低迷していますので、それはまだ影響があって売れない部分はありますけれども、一方で家飲みが増えたということで、ワインの通販とかは非常に好調に推移しています。実際に他の種類の中でワインだけが少しずつ増えているという状態ですけれど、その中でも特に家飲みに適したものとして、まだまだ伸びしろがあるのではないかと思います。実際に今、例えばコロナに関しても、外でお酒が入ると大声を出すとか、夜遅くまで騒ぐとか言われますけれど、ワインというのはそういうものではないです。ワインというのは静かに話をしながら静かに飲むというものなので、飲んで酔っ払うものでもないし、飲んで騒ぐものでもないので、そういう本来のワインの味わい方をここで改めて見直していただくことで、ワインに対する理解も増えていくのかと。まず家で飲むことを楽しんでいただき、外に出られる機会があればワイナリーを訪ねていただき、そしてその土地との結び付きを強めていただいて、またそれを通販で買ってもらうみたいな循環にしていくのが一番望ましいと考えています。
 とにかく「NAGANO WINE」というのは日本の、あるいは外国の一部も含めて、日本のワイン産業の中で非常に有望で成長しているというのはワイン関係者の間ではよく知られているのです。海外でもフランス辺りのワイン関係者は、今年は来られなかったですけれど、去年来て、何で日本の企業はワイン産業に投資しないのだと言って、フランスだったらこんなにいいワインができていて、こんなに人もいて、こんなに美しい風景もあって、必ず企業の投資が殺到するはずなのに日本では少ないと言って帰る人が多かったです。そういう意味ではまだまだこれからポテンシャルがあるところで、ワイナリー観光、ワインツーリズムと結び付けたワインの消費増大が重要だし、ワイン関係者以外の人たちにもそれを理解してもらって、「NAGANO WINE」といっても飲んだことがない人が多いはずですよ。外国の高いワインをいっぱい飲んでいる人が、日本のワインというものはまずいものだという従来からのイメージで頭から決めつけている人が多いので、実際に召し上がっていただくと、結構いいじゃないのと、ブルゴーニュ(ワイン)に匹敵するみたいなことを皆さまおっしゃって、それからファンになるというケースが多いです。ですから今までの枠の中から外へ向かって、ワイングラスの中から外へ向かってPRすることがこれから大事だと思うし、皆さまもワインをもっと飲んでもらいたい。この中できのうワインを飲んだ人はいますか、手を挙げてください。1人もいない。1週間以内にワインを飲んだ人は。3人です。まだまだ少ないです、ぱっと手が挙がらないと。まず今晩から飲んでくださいね。
 それで県内のメディア、新聞等はワインに関するニュースというのは、かなり頻繁に載せていただいています。本当に感謝していますけれど、さらにそれを県外とか、一般のメディアも含めて発信していけるようになればいいと思いますし、実際に飲んでいただければ良いことは分かるし、どこで飲むにしても作った所へ行きたいという気持ちになると思います。特にコロナ禍で今年、来年もどうなるか分かりませんけれども、海外への旅行ができないという状態、国内に対する関心が高まっているという状態では、日本ワイン、「NAGANO WINE」に対する期待度も増えていくのではないかと。そういう意味では中長期的にはコロナ禍もうまく利用しながら、次の時代の観光、ワイン産業というものを見据えていきたいなと。実際にワイナリーへ来ていただくと、広い畑を見て気持ちが良くて、今キャンプ場とかはやっているとか、外の状態がはやっていると言いますけれど、そういうのと同じように、ワイナリー観光というのは自然の中で農業の現場に接する観光ですから、狭いところで密になるようなものとは違うし、都会での観光とも違うというところがあります。その意味でもウィズコロナ、ポストコロナを目指しての時代にも適合する新しい観光スタイルかなと思っています。
 実際、今いろいろな取り組みがされていまして、コロナ禍でリモートによるワイナリー紹介とか、飲み会とか、先にワインを送っておいてモニターの前でそれを飲みながら話をするみたいなこともやって、それによってまた新しい顧客層も開拓されるということは確かですけれど、実際にそうやってやった方も、やると、あそこに行きたいという意欲が芽生えてくるわけです。その意味では実際の移動がないと成立しないので、コロナの状況がどうなるか、希望的に期待したいと思いますけれども、実際に動けるようになれば、ワイナリー観光というのは最初に復活してくるものの一つではないかと思います。われわれもいろいろ考えていまして、狭い工場の中を案内するようなことではなくて、広いところを歩きながら、例えば何カ所かにQRコードを示したものを設置して、そこの前でスマホをかざせば、いろいろな情報が動画や音声で流れてくるような、そうやってそういう所をたどっていくと、ワインに対する知識も増え、地域に対する知識も増えていくような、そういうようなシステムをつくりたいと思って、この春くらいから一部で実践を始めようと思っています。いろいろな新しい取り組みができますので、これからワイナリー、ワイン関係というのはぜひ取材の回数を増やしていただいて、実際にワインを召し上がっていただいて、お力を貸していただければと思います。よろしくお願いします。

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取材者からの質問

 1 「信州ワインバレー構想 グレードアップ版2020」の策定について

テレビ信州(TSB) 鈴木恵理香 氏
 「グレードアップ版2020」の中で、さまざまなグレードアップ項目があるのですけれども、この中でも最も力を入れていきたい部分というのはどこになるのでしょうか。

信州ワインバレー構想推進協議会会長 玉村豊男 氏
 まずはワイナリーのプレイヤーを増やすということで、ワイナリーの数を増やすこと。それからそれをつなげて、各地域の連携を持って観光等に結び付けていく。ワインバレー構想では四つのワインバレーに分けて目標を立てていますけれど、それぞれの地域の特性に合った発展をすることが一番重要な柱の一つです。それは実際に千曲川ワインバレーを筆頭に、天竜川ワインバレーとか南の方では、当初はブドウを作る農家があったのですけれど、リンゴの方が適しているということで、今シードルの動きが飯田を中心に南信ではすごく盛んになってきて、シードルの数がすごく増えています。最初は予測をしていなかったことですけれど、恐らく近い将来的にはワインとシードルと二本立てでPRするようなことになっていくと思いますけれど、地域による特性が現れてきたということは一つ大きいと思います。そのためには各地域の市町村が連携してやっていただくことが重要なので、この点で、国は縦割り行政を打破すると言っていますけれども、僕は横割りと言っているのですけれど、隣接する市や町がお互いの縄張りがあるので協力関係がスムーズにいっていないところがまだあります。それは県としてもDMO(ディーエムオー/観光振興を官民一体で進める地域組織)の創設とか、広域観光ということで、これから力を入れていっていただきたい一番大きなところです。地域をつなぐ力です。

テレビ信州(TSB) 鈴木恵理香 氏
 ではこの7年でワイナリーの数というのはかなり増えたのだけれども、それ以上に今後「グレードアップ版」ではワイナリーの数を増やしていくことに重きを置きたいというか、そういった点で。

信州ワインバレー構想推進協議会会長 玉村豊男 氏
 ワイナリーの数はもう黙っていても増えていくと思います。増えていくことは重要ですが、今のところ非常にみんな小さいワイナリーで、直接売るにも苦労しているし、みんなお金が無いのです、すごくね。そこをうまくつなげて、ワインが売れる算段、それからそこへ来ていただいて売るための方法とか、それが今、観光と結び付いているのですけれど。プレイヤーはどんどん増えてきて、いいワインもできてきているのですけれど、それをつないで売っていく、PRしていくという努力がこれからもっと必要だろうと考えています。

信濃毎日新聞 関誠 氏
 頂いた資料の概要版に、「ワインに旅をさせない」というような文言がありますが、これは観光と結び付けたというようなことでしょうか。

信州ワインバレー構想推進協議会会長 玉村豊男 氏
 「ワインに旅をさせない」というのはフランスでは昔からよく言われていた言葉で、もともとは、ワイナリーで造ったワインというのは、そこのワイナリーの酒蔵で最初からずっと寝ているワインが一番いいです。何十年物のワインとかを飲むときに、あちこち動いたものよりも最初からそこにずっと寝ているというのが一番おいしいという意味で、ワインには旅をさせないほうがいいのだよという格言が昔からフランスにはありました。もともとフランスは黙っていてもワインで人が来るようなところなので、昔はあまりワインツーリズムというのには興味がなかったのですけれど、最近10年非常に進んでいまして、フランス政府がそういうシステムをつくって、インセンティブを与えて、十幾つかのワイナリーに幾つかのベッドがあって、幾つかのという条件を満たしたところにいろいろな競争をさせて、そこでアワード(賞)を与えたりとか、いろいろな形でワイナリー観光に積極的に取り組んできています。大先輩のフランスですらそういうことをやっているのに、まだまだ日本は追い付いていないのですけれど、フランス政府観光局のワイン関係のトップが言っているのが、ワインに旅をさせない、人が旅をするのだと、そこへ行ってワインを飲むのだと。ワインを世界中に売るのも大事だけれど、それ以上に実際に来てもらってその場で飲んでもらうのも大事だという意味で、フランス政府もワインに旅をさせない、旅をするのは人間だというキャッチフレーズを使っています。それをお借りしたということです。

信濃毎日新聞 関誠 氏
 「グレードアップ版」の目標年に関しまして確認をさせてください。概要版を拝見しますと、目標が令和4年度となっています。一方できょう頂いた冊子の最後のページの28ページを拝見しますと、「令和5年を目標としています」と書かれていまして、どちらでしょうか。

日本酒・ワイン振興室長 柳沢由里
 それは令和4年度で、令和5年の3月という意味で書いてあります。

中日新聞 我那覇圭 氏
 前提になる知識が少なくて大変申し訳ないのですが、「ワインバレー構想グレードアップ版」ということで、知事が先ほど観光ツーリズム、観光に力を入れていくとおっしゃったのですが、当初の構想ではどこに力を入れて、それがどう観光に変わったのか教えていただいてもよろしいでしょうか。

信州ワインバレー構想推進協議会会長 玉村豊男 氏
 当初から観光も視野に入れているのです。ただし、まずは数を増やすこと。数を増やさないと人も来てくれないし、個性も現れないということで、まず数を増やし、畑を増やし、ワインを造る人を増やし、小規模ワイナリーを集積するのは当初からの目標でもあり、実際でもあったわけです。大きなワイナリーを1個造るのではなくて、例えば50のワイナリーができて、最初こういうことを言うと、そんなにいっぱいワイナリーを造って競争ばかりしてどうなるのだという人がすごく多かったですけれど、ワイナリーというのは数が増えれば増えるほどいいのです。50万本造るワイナリーが1カ所できるよりも、1万本造るワイナリーが50カ所できた方が人は来るし個性も現れますから。だからニュージーランドだって20、30だったのが急に300、500に増えた。カリフォルニアも一挙に300、500と増えていくみたいなことで、数が集まれば集まるほど人がそこに集まってくる。農業の原則と同じですが、そこでいい作物ができるとなれば、そこに農家は集まるわけです。農家がその作物を作るわけですから。ブドウを作って、そこでワインを造るというのは農業の表現なので、そういう意味ではたくさんのワイナリーがある一定の地域に集まって、その代わりワインというのは1本1本味が違うわけです。隣の畑でも土が違う、風が違う、光が違うということで、味が違うので。またそれが造り手によって変わりますから、そういう意味では1本1本個性がある。だからたくさん集まった方がいいということで、最初から小規模ワイナリーの集積による地域イノベーションというのがわれわれの目標だったわけです。ようやくここまで数が増えてきたので、さらにこれを増やすと同時に、それをつなげるような観光の方策をもって、その一つ一つを生かしていこうというのがわれわれの目標なので一貫した目標です。

中日新聞 我那覇圭 氏
 先ほど玉村さんがおっしゃった、ワインを語る上で三つ大事なことがあるのだということの一つに、規制緩和というお話がありましたけれども。これは具体的にどういうことを指していらっしゃるのでしょうか。

信州ワインバレー構想推進協議会会長 玉村豊男 氏
 実際に今、各市町村単位で、例えば苗木を供給するとか、補助するとか、いろいろな形で行われていますけれど、あと一つ観光との関連で重要なのは農地の使い方です。例えばワイナリーを造るときに、ワイナリーは農産物の加工施設なので、農地に造ることはできますけれども、そこで飲食を提供しようと思うと営業許可を取らなければいけないので農地ではできない。だからワイナリーの中にレストランを造るということは、事実上、不可能になっています。農業委員会の問題もありますけれど、行政が認めれば、できる範囲とできない範囲とありますけれども、そういう景色のいい所、畑の見える所にワインの試飲ができて何か食べられる施設を造ろうと思っても、そこは農地だから駄目だよと言われるのが現実です。知事も昔からおっしゃっていたのですけれど、風景のいい所に何でレストランができないのだということで。

長野県知事 阿部守一
 今度、行政改革担当大臣に言わなければいけないですよね。

信州ワインバレー構想推進協議会会長 玉村豊男 氏
 なかなか農業の問題は改革というのは難しいのですけれど、特に今、中山間地の補償とか、多面的うんぬんということで、農地を保全しようという動きがあります。それをまとめて大きな企業に渡して、海外に対して競争力のあるような農業をしようというのが国の政策ですけれども、その過程で荒廃地に多額の補助金が下りていくために、今のところみんな1日2000円とかもらって草刈りしているだけです。本当は観光的に価値のあるところはきちんと評価しながら、また規制もしながら、行政が関わって、ここはこういうものを造っていいよ、みたいなことをリーダーシップを持ってもらえると、もっといい観光施設ができるのではないかと思っています。そこが一番、農業に関わるところは難しいところですけれども、かえって昔よりも今、動きが取れなくなっている状態です。これは何とかしてもらいたいと思っています。

長野県知事 阿部守一
 玉村さんからお話しいただいたので、景色のいい所にレストランを造れないというのは、ワイン振興上も、観光振興上も課題なので、そこはまた私も問題意識を持って取り組みたいと思います。1点だけ補足すると、構造改革特区で今11地区、22の市町村が特区になっていて、小規模でもワイナリーが開設できます。先ほど玉村さんがおっしゃったように、本県の特色は、どかっと大きなワイナリーがあるということではなくて、小さなワイナリーがどんどん増えてきているというのは市町村の皆さまの取り組みもあって、特区がかなり多くのところで活用されているということもあると思っています。

市民タイムス 田子元気 氏
 会長さんにお伺いします。先ほど観光面で広域観光というお言葉がありましたが、各地域にある、県内に四つあるワインバレーをつなぐという形での広域観光を考えていらっしゃるのでよろしいのでしょうか。

信州ワインバレー構想推進協議会会長 玉村豊男 氏
 四つをつなげば全部になってしまうので、なかなかそこまでいかないですけれど、まずその前に、例えば千曲川であれば小諸、東御、上田の連携、しかも本当はその先の軽井沢町に来る年間八百何十万人の人たちの一部でも千曲の方に流れてもらうために、軽井沢から御代田を経て小諸、東御、上田と続くようなラインもまだできていない。そういうツアーはありますけれど、二次交通も含めて、まだ試みをやっている段階です。それと桔梗ヶ原は桔梗ヶ原で独自の、もうすでに歴史もありますのであれですけれど、それと今度は松本区域と北アルプスをつなげる、安曇野からさらにつなげていく、このラインもつくっていく必要があるし、千曲川の方でも北の方で高山村を中心に延びていって、長野市も含めながら行くラインもあります。それぞれのラインは点で見えているのですけれど、それがまだ完全に線でつながっていないというか、観光のルートとしては想定されているけれども、実際に活用されていないというところがあって、今それぞれの地域で二次交通とか、いろいろな取り組みをされているので、あと2、3年のうちに道筋をつけて次の10年につなげたいと思っています。

市民タイムス 田子元気 氏
 小規模なワイナリー、より多くのワイナリーを巡っていただくということが目標だと思いますけれども、その方策です。より多くワイン愛好家の方に多くのワイナリーを巡ってもらうために考えていらっしゃることというのは何かありますか。

信州ワインバレー構想推進協議会会長 玉村豊男 氏
 この問題はお酒を飲むと運転できないというのがあるので、二次交通です。今、しなの鉄道なり何なりの鉄道を利用する、飯田線とか、上田電鉄とか、いろいろありますけれど、電車を利用すると同時に、ある程度の広域のところをバスで回って、それぞれの拠点からは、それこそゴルフカートみたいなやつで完全にこうやるとか、本当はそれが無人化すれば一番いいのですけれど、そこら辺まで見据えて、お酒を飲んでもワイナリーを訪ねられるという状態にまずすることが一つです。そうやって広域を結び付けることで人を動かすという意味では、交通が一番問題だと思っています。それとあとは宿泊施設です、意外にまだ少ないので。特に今僕が関わっている千曲川ワインバレーだけ言っても、非常に宿泊ベッド数は少ないです。小さなペンションとか少しずつでき始めていますけれど、現実的に僕のところに来る人たちも上田の駅前のビジネスホテルに泊まっているわけです。そうでなくて、もっと田園の風景のいいところに小さなホテルなり、宿泊施設がもっと増えてくれば。県の方針としても、この地域にはこのくらいのワイナリーがあって、年間このくらいの観光客が来るようになると、何ベッドくらいが稼働できるかというような、そういうシミュレーションをしてもらって、宿泊業者を誘致するとか、レストランを誘致するとか、そういう飲食と宿泊の施設を集めていくということも非常に重要になっています。今のところまだそれが足りないので。それでおっしゃったようにワイナリーも幾つか巡り歩くので、3泊とか4泊、ミドルステイです。1日で終わらない観光になるので、ワイナリーを巡りながら、長野県は温泉もあり、他に見るところもあり、おいしい物もあるわけですから、そういう意味ではいろいろな分野の観光をつないでいくことができるので、その一つのキーワードにワインがなっていけばいいと思っています。

市民タイムス 田子元気 氏
 あと最後に1点ですが、ワイナリーがこれだけ数が増えてきまして、「新たなワインバレーが形成される可能性があります」とこちらに書いてあるのですけれども、具体的にどの辺りで今増えているのですか。

信州ワインバレー構想推進協議会会長 玉村豊男 氏
 それはどういうふうに組み合わせるかが問題になってくるので。北アルプスの方でも、安曇野から白馬まで行く可能性もありますし、そういうときに松本から全部一本でつなげられるのかという問題もあります。千曲川にしても東地区の方と北地区の方と離れていますので。もちろんそこを一直線に旅行してもらえば一番いいのですけれど、北は北でもう一つ濃密なものができてくる。あるいは途中の池田町とか、そこら辺ももともとブドウを作っているところで、そこら辺からの途中をつなぐような形ができてくるので、そこをどういうふうに分類して、どう名称を付けるかは別として、今、全県的にいろいろなところでワインの取り組みというのは始まっているので、また将来的にはこういう図が変わっていく可能性はあります。
 また必要であれば、お声を掛けていただければできる限りのことはしますし、各ワイナリーも非常に積極的にPRしたいと思っていますので、ぜひ声を掛けるなり、お訪ねいただくなりして、現場を見て知っていただくとありがたいと思います。きょうは本当にありがとうございました。

長野県知事 阿部守一
 ありがとうございました。とにかく成功した第一の要因は玉村会長がけん引していただいていることだと思っていますので、ありがとうございます。

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電話番号:026-235-7054

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