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更新日:2026年6月18日

令和8年6月県議会定例会における知事議案説明要旨(令和8年6月18日)

 ただいま提出いたしました議案の説明に先立ち、当面の県政課題について御説明を申し上げます。

【中東情勢に伴う県内経済への影響対策】
 本年2月以降の中東地域における緊張の高まりは、エネルギー価格の上昇や供給不安を通じて、県民生活や県内産業に様々な影響を及ぼしております。
 こうした状況を踏まえ、県では、関係部局が一体で対策を進めるための「中東情勢に関する対応チーム」を設置するとともに、経済団体等で構成する「国際経済情勢に係る長野県連絡協議会」の開催や、業界団体、事業者へのヒアリングなどを通じて、県内経済への影響把握と関係機関との連携強化に努めています。
 また、全国知事会会長として高市内閣総理大臣に対し、重要物資の安定供給の確保をはじめとする必要な対策を要請するとともに、県としても、経済産業省等に対し、石油関連製品の安定供給と価格高騰対策の強化を緊急に要望いたしました。
 今週、米国とイランの戦闘終結に向けた覚書の合意が報じられるなど、情勢に変化は見られるものの、引き続き不確実性の高い状況が続いております。このため、「暮らしと産業を支える中東情勢対応方針」を取りまとめ、総合的な対策を講じることといたしました。その主な内容について御説明申し上げます。
 まず第一に、「供給安定化への対応」であります。
 国においては、原油やナフサの代替調達による供給量の確保に加え、石油関連製品の流通の停滞や供給の偏りの解消に取り組んでおります。しかし、県内では、なお物資の不足を訴える声があることから、国の相談窓口の活用を促すとともに、業界団体や卸売事業者と連携し、需給状況の把握と必要な対応を進めてまいります。
 第二に、「価格高騰への対応」であります。
 燃料費や原材料費の高騰は幅広い事業者に影響が及んでおり、その長期化も懸念されます。このため、中小企業の資金繰りを支援するとともに、価格転嫁が難しい医療・福祉、農業などについては、資材価格等の高騰に対する支援を行います。また、LPガス料金の負担軽減などを実施し、県民の暮らしを守ります。
 第三に、「構造転換の促進」であります。
 今回の事態を教訓に、国際情勢に左右されにくい産業構造への転換を加速します。省エネルギー設備等の導入支援によりエネルギーコストの削減を図るほか、農業分野においては、海外依存度の高い化学肥料の使用量削減を支援するなど、持続可能な経営基盤の構築を後押しします。

【強い地域産業の構築】 
(地域の特性を活かした強い経済の実現) 
 人手不足の深刻化に加え、国際情勢の不安定化やエネルギー価格の高騰などにより、本県経済を取り巻く環境は厳しさを増しております。こうした中、持続的な成長を実現するためには、本県産業の「稼ぐ力」を高め、高付加価値型の産業構造への転換を進めることが重要です。
 国が「地域未来戦略」の策定を進める中、本県においても、高度なものづくり産業の集積や豊かな地域資源といった強みを活かし、将来の成長が見込まれる分野への重点投資を促してまいります。また、デジタル技術やAIの活用による生産性向上と高付加価値化を進め、県内企業の競争力を強化します。こうした取組を進めるため「長野県成長戦略推進会議」を立ち上げ、本県産業の将来像や地域産業成長プランに関する検討を加速しています。航空・宇宙、発酵・フードテックなど、本県の強みを活かせる成長分野を中心に、民間投資や質の高い雇用の創出につながる戦略を取りまとめてまいります。
 あわせて、公設試験研究機関の機能強化に向け「試験研究機関未来ビジョン(仮称)」の策定に取り組み、技術開発や新たな製品づくりを支える体制を強化します。

(宿泊税導入を契機とした観光立県の実現) 
 今月1日から宿泊税の賦課徴収を開始いたしました。制度導入に当たっては、県内外の皆様への周知に努めてきたところであり、今後は宿泊税を活用した施策を着実に展開します。具体的には、信州観光MaaSの構築や二次交通の充実により、旅行者の利便性向上を図るとともに、観光コンテンツの充実や観光まちづくり、周遊型バスツアーの造成などを支援いたします。これらの事業には既に多くの申請や問い合わせが寄せられており、関係者の期待に応えられるよう取り組んでまいります。
 また、本年7月から9月にかけて、「信州デスティネーションキャンペーン」のプレキャンペーンを実施し、市町村や観光事業者と連携した誘客促進に取り組みます。さらに、御嶽山一帯については、国定公園の指定を契機として、バリアフリー化など自然公園施設の上質化や受入環境の整備を進め、国内外から選ばれる観光地づくりを進めます。
 こうした取組を通じて、観光立県の実現と観光を核とした地域の稼ぐ力の向上を目指してまいります。

【県民の安全・安心な暮らしの確保】 
(安全で持続可能な医療提供体制の構築) 
 人口減少や高齢化の進行に伴い、本県の医療を取り巻く環境は大きく変化しています。限られた医療資源の中で必要な医療を将来にわたり確保していくためには、医療機関の役割分担と連携の強化、そして医療人材の確保が急務です。このため県では、2040年頃を見据えた新たな地域医療構想の策定に着手するとともに、医師の偏在是正や地域医療の充実に取り組んでいます。
 こうした中、今月15日には、県内医療の中核を担う信州大学医学部及び同附属病院と、地域医療の推進に関する覚書を締結いたしました。今後は、医療人材の確保・養成や適正配置、高度・専門医療の充実などについて、信州大学と一層連携して取り組んでまいります。
 引き続き、地域医療構想の実現に向けた取組を進め、県民の皆様が安心して必要な医療を受けられる体制の確保に努めてまいります。

(人権が尊重される社会づくり) 
 人権は、全ての人がかけがえのない個人として尊重され、自分らしく安心して暮らすための基礎となるものです。人権がより尊重される社会を実現するため、「長野県人権尊重の社会づくり条例案」を今定例会に提出いたしました。
 本条例案は、人権が全ての人に等しく保障されるものであるとの基本認識の下、県、県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、人権教育や啓発活動の充実など、人権尊重の社会づくりに向けた基本的な枠組みを定めるものであります。また、多様化・複雑化する人権課題に対応するため、相談体制の充実を図るとともに、人権侵害行為を具体的に定義し、これを禁止します。特に、都道府県初となる「人権オンブズパーソン」を設置し、専門的かつ公正な立場からの調査、勧告により、実効性のある人権救済措置が講じられるよう取り組んでまいります。あわせて、インターネット上の誹謗中傷等についても、関係機関と連携して被害の迅速な救済に取り組みます。
 本条例に基づき、県民一人ひとりの尊厳が守られ、誰もが安心して暮らすことができる長野県の実現を目指してまいります。

(部活動等における安全・安心な移動の確保) 
 先月6日、部活動で遠征中の高校生が乗車したマイクロバスの事故により、未来ある若い命が失われ、多くの生徒が負傷しました。心より哀悼の意を表するとともに、お見舞いを申し上げます。
 学校教育活動において、子どもの命と安全は何よりも優先されるべきものです。このような痛ましい事故が起きることのないよう、部活動や校外学習などにおける移動のあり方を改めて見直し、安全対策を強化してまいります。
 現在、教育委員会、県民文化部及び交通政策局によるワーキングチームを設置し、県内の高等学校等を対象に生徒引率時の移動手段等の実態調査を行っています。今後は、その結果を踏まえ、生徒の安全を最優先に、移動手段や管理体制のあり方、事故発生時の責任と補償の考え方などについて、県として必要な支援策も含めて幅広く検討し、実効性のある対策につなげてまいります。

【新たな省エネ運動の展開】 
 本年3月、長野県ゼロカーボン戦略を改定し、省エネルギーや再生可能エネルギーの活用を一層推進することといたしました。この方針の下、脱炭素社会の実現に向けた「信州くらしの省エネプロジェクト」を始動しました。今月12日からは、「SMART省エネ」をキャッチフレーズに、無理なく賢く省エネルギーに取り組む運動を展開しております。CO2削減に加え、光熱費節減効果なども発信しながら、県民・事業者の皆様に実践を呼びかけてまいります。
 また、暑さが本格化する夏に向け、省エネルギーの推進とともに熱中症による健康被害を防ぐため、「クールシェアスポット」の利用促進を図ってまいります。多くの事業者の御協力により、登録施設は昨年度末の約2倍に拡大しました。あわせて、「クーリングシェルター」や給水スポットの活用を進めてまいります。
 今後も、脱炭素と暮らしやすさの両立を図りながら、2050年ゼロカーボンの実現を目指して取り組んでまいります。
    
【県民との共創による県政の推進】 
 県民の多彩な発想を県政に活かし、県民参加による県政運営を一層進めるため、新たな取組を開始いたしました。
まず、「県民提案・投票制度~信州みらいスイッチ~」です。県民や本県にゆかりのある皆様から提案を募り、LINEを活用した投票で選ばれた提案を事業化するものです。多くの皆様に御参加いただけるよう、周知に努めてまいります。また、企業や団体との共創を一層進めるため、「長野県共創デザインラボ」を設置しました。企業や団体から寄せられた提案については、コーディネーターの支援をいただきながら、事業化や実証事業の実施につなげてまいります。さらに、多様な企業が参画する「協創/共創コンソーシアム  point 0」に地方自治体として初めて参画いたしました。企業等の技術や知見を活かして社会課題の解決に取り組んでまいります。
 複雑化・高度化する課題に対応するためには、県民や企業、団体との共創が不可欠です。こうした取組を通じて、県民参加と共創を更に進め、より開かれた県政の実現を目指してまいります。

【長野県150周年記念事業の推進】 
 本年、本県は誕生150周年という大きな節目を迎えました。この歴史的な機会を県民の皆様とともに祝い、郷土への誇りと未来への希望を共有するため、各種記念事業を推進しています。
 今日の長野県は、豊かな自然と風土の中で、先人たちのたゆまぬ努力により築かれてまいりました。この節目を単なる祝賀にとどめることなく、地域の価値を見つめ直し、次世代へと引き継ぐ契機とするため、「自らを知り 互いを知り 高め合おう『私たちの長野県』」をコンセプトに取り組んでおります。
 県民参加による記念事業も着実に広がっています。「わたしの『信濃の国』投稿キャンペーン」には多くの応募が寄せられ、県内77市町村を巡るデジタルスタンプラリーも多数の方々に参加いただくなど、地域の魅力発信と県内周遊の促進につながっています。また、市町村や企業等との連携による記念商品の開発や各種イベントの開催は、地域の活力向上にも寄与しています。引き続き、世代や地域を超えて楽しめる企画を展開してまいります。
 8月21日に行う記念祭典は、「つながる長野県」をテーマに開催し、音楽や伝統芸能、スポーツなどを通じて本県の歩みを振り返るとともに、未来への希望を共有する場といたします。フィナーレでは県歌「信濃の国」の大合唱を行い、県民の絆と一体感を改めて確かめ合いたいと考えております。
 150年という節目は、未来への新たな出発点でもあります。先人たちが築き上げてきた郷土への誇りと県民の絆を力に、本県の魅力を更に高め、未来を切り拓いてまいります。

【県石油商業組合に係る対応】 
 県石油商業組合を巡るガソリン価格カルテル問題は、県民生活や地域経済に深刻な影響を及ぼし、県民の信頼を損なう重大な事案です。県では、本年2月に業務改善命令を発出し、ガバナンスの確立やコンプライアンスの遵守、再発防止策の着実な実行を求めたところです。
 先月提出された改善計画書については、概ね県が求める内容が盛り込まれていることを確認しましたが、その実効性については今後の取組を注視する必要があると考えております。一昨日、吉田和生新理事長(吉は「つちよし」)との面談においては、改善計画の速やかな実行と、県民からの信頼回復に努めていただくよう申し伝えたところです。
 県としては、今後も定期的な報告を受けながら改善状況を厳格に検証し、取組が不十分な場合には必要な指導を行うなど、県中小企業団体中央会とも連携し、適切に対応してまいります。

【決算見込み】 
 令和7年度の決算見込みについて申し上げます。
昨年度は、人口減少をはじめとする様々な課題に対応し、「確かな暮らし」を守り、「ゆたかな社会」を実現するため、「しあわせ信州創造プラン3.0」に基づく施策を着実に推進いたしました。
 とりわけ、物価高騰や米国の関税措置への対応、防災・減災対策やツキノワグマ対策、教育環境の整備など、地域経済の活性化と県民生活の安全・安心の確保のための施策に重点的に取り組みました。その結果、一般会計の歳出総額は前年度比約179億円増の1兆808億円余となる見込みです。
 一方、県税や地方交付税の収入が当初見込みを上回ったことに加え、効率的な予算執行に努めるとともに、物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金などの国庫補助金を積極的に活用した結果、実質収支は75億円余の黒字となる見込みです。

【補正予算案】 
 さて、今定例会に提出いたしました一般会計補正予算案その他の案件につきまして、その概要を御説明申し上げます。
一般会計補正予算案の総額は108億8,287万8千円であります。これまで述べてきた「暮らしと産業を支える中東情勢対応方針」の実行に加え、県民生活の安全・安心の確保、農業の持続的発展と競争力強化、教育環境の整備などに要する経費を計上しました。
県民生活の安全・安心の確保では、患者数や分娩件数の減少により経営環境が厳しさを増している産科・小児科医療施設への支援を行い、地域に必要な小児・周産期医療機能の急激な縮小を防止します。また、地震被害想定の更新に先立ち、災害関連死などを防ぐために必要な調査項目を整理します。
 農業分野では、園芸産地の収益力向上に必要な農業用機械や資材等の導入を支援するとともに、県産畜産物の安定供給を確保するため、北信食肉施設の機能強化や畜産経営体等による運搬車両の導入等を支援します。
 教育環境の整備としては、県立高校再編に伴う佐久新校、赤穂総合学科新校及び中野総合学科新校の施設整備を進めます。また、猛暑時でも良好な学習環境を確保するため、特別支援学校体育館の空調整備に向けた設計に着手します。
 この補正予算案の財源として、国庫支出金45億7,285万3千円、諸収入36億5,142万7千円、その他繰越金など26億5,859万8千円を見込み、計上しました。
 今年度の一般会計予算総額は、今回の補正を加えますと1兆767億3,477万6千円となります。

【条例案、事件案、専決処分等報告】 
 次に、条例案は、新設条例案2件、一部改正条例案5件であります。
このうち「一時保護委託者の登録等の基準に関する条例案」は、児童福祉法の改正を踏まえ、一時保護を委託する者の登録等に関する基準を定めるものであります。
 「長野県県税条例の一部を改正する条例案」は、地方税法等の改正に伴い、個人県民税におけるふるさと納税特例控除額の上限設定など、所要の改正を行うものであります。 

 事件案は、18件であります。
 このうち、「長野県道路公社の解散について」は、五輪大橋有料道路の料金徴収期間終了によって道路公社の業務が完了するため、地方道路公社法に基づく解散に必要な同意を公社に対して行おうとするものであります。

 専決処分等の報告は、令和7年度長野県一般会計補正予算の専決処分報告など19件であります。

 以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。

 最後に一言申し上げます。
 県民の皆様に知事としての重責を託していただいてから、間もなく16年を迎えます。この間、私は「しあわせ信州」の実現を目指し、一日一日を大切にしながら、誠心誠意全力で県政に取り組んでまいりました。これまでの歩みは、議員各位をはじめ、市町村、企業・団体、そして県職員など、多くの県民の皆様のお力添えのおかげであり、心より感謝申し上げます。
 この16年間、本県は、大規模災害や新型コロナウイルス感染症など、様々な困難に直面いたしました。しかし、その度に県民の皆様と力を合わせ、一つ一つの課題に真正面から向き合いながら危機を乗り越えてまいりました。そうした積み重ねが、今日の信州を支え、未来への確かな礎になっていると考えております。
 現在、私たちは、人口減少、超高齢化、気候危機、AI・デジタル技術の急速な進展など、社会の前提そのものが問い直される歴史的な転換点に立っています。これまで日本社会を支えてきた仕組みや価値観も、大きな見直しを迫られています。しかし、この変化は単なる危機ではなく、新しい時代にふさわしい社会を創り上げる大きなチャンスだと考えております。
 私はこれまで、「県民起点の県政」を基本姿勢に、常に現場の声に耳を傾けながら県政運営に取り組んでまいりました。また、全国知事会会長として全国の地域が直面する課題とも向き合ってまいりました。その中で確信していることがあります。それは、日本の未来は、東京だけで創られるものではなく、それぞれの地域がその底力を最大限に発揮し、様々な挑戦を積み重ねていくことでこそ切り拓かれるということです。だからこそ私は、県民の皆様と力を合わせ、信州から新しい時代の社会づくりに挑戦してまいります。
 目指すのは、誰もが安心して暮らし続けることができる社会です。子どもたちや若者たちが、夢や希望を持って育ち、学び、挑戦できる社会です。性別や年齢、障がいの有無にかかわらず、一人ひとりが自分らしく活躍し、支え合いながら幸せを実感できる社会です。そして、豊かな自然や地域の絆を未来へつなぎ、新たな価値を創造し続ける活力ある社会です。
 私は、こうした「人口減少下でも豊かで持続可能な社会」の姿を信州で実現し、その成果を日本全体へと広げていきたいと考えています。そのために、全国知事会会長としての責任も深く自覚しながら、県民の皆様との対話を重ね、共に新しい信州を創り上げるため、力の限りを尽くす覚悟です。
 私は先般、来る知事選挙への立候補を決意いたしました。先人の皆様が築き上げてこられた信州の価値を更に高め、次の世代により良い形で引き継いでいく。その責任を果たすため、これまで培ってきた経験を最大限に活かし、全身全霊を傾けてまいります。
 もとより、現在の任期の最終日まで、県民の皆様から負託を受けた知事としての責任を全うしてまいります。議員各位におかれましては、今後とも県政推進への御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 

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