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更新日:2023年2月15日

令和5年2月県議会定例会における知事議案説明要旨(令和5年2月15日)

 

 ただいま提出いたしました令和5年度当初予算案をはじめとする議案の説明に先立ち、新年度に向けての県政運営に関する所信などについて申し述べさせていただきます。

【スタートダッシュ・アクション2022】
 「対話と共創」を掲げ、知事として新たな思いで県政に取り組み始めてから、約半年が経過しようとしています。この間、新たな総合5か年計画案の策定、新年度予算案の編成等に力を注いだほか、4期目の初日にお示しした「スタートダッシュ・アクション2022」に掲げた事項の実行・実現に取り組んでまいりました。
 県民の皆様との対話集会については、これまで36の市町村で実施し、延べ1,700人程度の皆様に御参加いただきました。参加者の皆様から県政への期待や課題などをお伺いすると同時に、私自身の考え方や問題意識をお伝えしてきたところです。県民の皆様と同じ目線と方向感を持って県政を進めることができるよう、できるだけ早期に全ての市町村を訪問させていただきます。
 試行として始めた県民参加型予算のうち、諏訪、南信州、長野の3つの地域振興局において実施する「提案・選定型」予算については、23件の事業提案の中から県政モニターの御意見を踏まえて4つの事業を選定し、今回の予算案に計上いたしました。また、「提案・共創型」予算については、5つのテーマに対して頂戴した28件の提案のうちから、共創による実施事業としてふさわしいものの絞り込みを進めているところです。今回の試行から見えてきた課題等を検証し、本格的な実施につなげてまいります。
 ゼロカーボン社会共創プラットフォーム「くらしふと信州」については、先月13日、長野市の中心市街地に拠点を開設し本格的な活動を開始いたしました。県内外、産学官などあらゆる主体の幅広い知恵と力を結集して、「サステナゼミ」などによる問題意識の共有や、脱炭素に向けたプロジェクトの組成などを進め、温室効果ガスの徹底的な削減に取り組んでまいります。
 大学等への進学を支援するための県独自の給付型奨学金制度については、必要な経費を新年度予算案に計上し、令和5年度の入学者から対象としてまいります。また、先月13日に設立した「信州自然留学(山村留学)推進協議会」を通じて、市町村や受入団体等とともに、信州自然留学の受入地域の拡大、中山間地域における学びの充実、情報発信の強化などに取り組んでまいります。
 同性パートナーシップ制度については、県民の皆様の声を広くお伺いするため、現在、パブリックコメントを実施しているところであり、市町村とともに検討してきている支援施策の実施と合わせ、早期の具体化を目指してまいります。「地域就労支援センター」については本年4月から各地域振興局に設置するべく準備を進めており、女性や若者、障がい者など就業に関する悩みを抱える方々に寄り添った支援を実施してまいります。
 単独市町村では採用が難しい保健師や保育士の共同確保を進めるため、昨年12月26日、県と市町村との協議の場にプロジェクトチームを設置いたしました。全市町村を対象に実施した採用状況等の調査も踏まえて、新年度の早い時期に具体的な対応策を取りまとめてまいります。

【しあわせ信州創造プラン3.0の策定】
 一昨年11月に新たな総合5か年計画の策定を表明して以降、総合計画審議会での審議や県民の皆様との対話、それらを踏まえた目標や政策の検討などに県組織を挙げて取り組んでまいりました。この間、県議会におかれても、研究会の場で熱心に御議論いただき、建設的な御提案を頂戴いたしました。県議会の皆様はもとより、これまでの検討に御協力いただいてきた皆様に心より感謝申し上げます。
 このたび、おおむね2035年の長野県の姿を展望し、2027年度までの今後5年間の県政運営の基本となる新たな総合計画案をとりまとめ、今定例会に議案として提出いたしました。

(現状認識と基本目標)
 3年以上にわたり、新型コロナウイルスは県民の皆様の命と健康を脅かし、社会経済活動全般も停滞を余儀なくされました。また、円安やエネルギー価格の上昇に伴う様々な価格の高騰が、コロナ禍における暮らしや産業の困難な状況に追い打ちをかけています。加えて、気候危機とそれに伴う災害の激甚化・多発化、急激な少子化・人口減少とそれに伴う人手不足など、長期的な環境や社会の変動が切実な課題として顕在化しています。
 一方で、SDGsなど持続可能な社会の実現を目指す機運の高まり、地方回帰の流れなど、人々の価値観やライフスタイルなどにも大きな変化が生じているほか、世界経済における我が国の相対的な地位の低下、教育や子育てに関する家計の負担感の増大、性別・雇用形態の違いによる賃金格差などの経済的な問題も深刻化しています。
 こうした中、県民の皆様が明日への希望と安心感を持って日々の生活を送ることができるよう確かな暮らしを守り抜くこと、そして精神的にも経済的にもゆたかな社会を全国に先駆けて構築していくことが急務であると考えます。
 以上のような状況認識のもと、新たな総合計画案では、「確かな暮らしを守り、信州からゆたかな社会を創る」を基本目標として掲げました。これまでどおり県民の皆様のしあわせ実現のための計画であることから、計画名については「しあわせ信州創造プラン3.0」としましたが、一方で、基本目標の達成には社会経済システムの大胆な変革が不可欠であるとの認識から、サブタイトルを「大変革への挑戦 『ゆたかな社会』を実現するために」といたしました。
 こうした考えを県民の皆様とも共有し、総合計画の推進に全力を傾注してまいります。

(共通視点と政策の柱等)
 激変する本県を取り巻く状況や本県の特性を踏まえ、政策構築・推進に当たっての「共通視点」を設定いたしました。女性・若者の希望実現と少子化・人口減少への対応、人権の尊重と公正さの追求、環境と調和した持続可能な発展、デジタル技術の徹底活用、世界を視野に入れた行動といった視点のほか、本県の特性を踏まえ、「学びと自治」の力を生かすこと、信州の強みや各地域の個性を伸ばすことを強く意識して政策の構築・推進に当たってまいります。
 新たな総合計画案の政策の柱は大きく5つです。
 「持続可能で安定した暮らしを守る」ため、脱炭素社会実現のための取組等により地球環境の保全を進めるとともに、災害に強い県づくり、道路・河川・上下水道等社会的なインフラの維持・発展、公共交通の充実など移動の利便性の向上、医療・介護サービスの充実などに取り組みます。
 「創造的で強靱な産業の発展を支援する」ため、成長産業の創出・振興、県内産業の稼ぐ力とブランド力の向上、農林業の振興、産業人材の育成・確保等に取り組み、産業の生産性と県民所得の向上を図ります。また、循環経済への転換や地域内経済循環の促進、伝統的工芸品産業や食品産業など地域に根差した産業の活性化などを進めます。
 「快適でゆとりのある社会生活を創造する」ため、森林や自然公園の利活用推進、都市の緑化推進などによる快適な空間づくりや、デジタルの力を活用した便利で快適な暮らしの実現に努めます。また、高規格道路やリニア中央新幹線の整備促進、信州まつもと空港の利便性向上等による本州中央部広域交流圏の形成、世界水準の山岳高原観光地づくり、文化・スポーツの振興などに取り組みます。
 「誰にでも居場所と出番がある社会をつくる」ため、子どもや若者の幸福追求を最大限支援するとともに、年齢、性別、国籍、障がいの有無や家計の所得などにかかわらず、個性や能力を最大限発揮することができる公正な社会の実現を目指します。また、働き方改革の推進や就労支援の強化、女性が自分らしく輝ける環境づくり、高齢者の活躍支援などに取り組みます。
 最後に、「誰もが主体的に学ぶことができる環境をつくる」ため、個別最適な学びや高校改革の推進、認知や発達に特性がある子どもたちの能力や可能性を最大限引き出すことができる環境づくりなどを進めるほか、工科短期大学校や農業大学校、林業大学校等も活用した地域中核人材の育成、高等教育の充実や生涯学習の振興などに取り組んでまいります。
 今回も地域振興局が中心となって市町村をはじめ地域の皆様と対話を重ね、10の広域圏ごとの地域計画を取りまとめました。広大な県土と多様な気候風土を有する本県では、地域の強みや個性を最大限生かした取組が重要です。そのため、例えば、南信州地域におけるリニア中央新幹線開業等の効果を最大限活かすための基盤整備の推進、木曽地域における森林資源を活かした林業・木材産業の振興、北信地域における雪国の暮らしを支えるライフライン等の維持・確保など、地域ごとに特色ある政策を掲げたところです。
 県民起点を一層徹底し、県民の皆様との対話と共創を意識するとともに、市町村との連携強化や役割分担の改革、地方分権や規制改革による対応等を念頭に置きながら計画の推進に当たってまいります。

(新時代創造プロジェクト)
 明るい未来を切り拓(ひら)いていくためには、従来の常識にとらわれることなく真に必要な政策を果敢に立案・実行していかなければなりません。今回、新しい時代に向けて、社会経済システムの転換や実行スピードの加速化が必要と考えられる8つの分野の政策を「新時代創造プロジェクト」として位置付け、知事直轄の取組として推進することといたしました。
 女性や若者の希望の実現を応援し、安心して暮らすことができるよう「女性・若者から選ばれる県づくりプロジェクト」を進めてまいります。「少子化・人口減少対策戦略検討会議」を設置して、保育・教育環境の充実や経済的負担の軽減等について検討するほか、固定的な性別役割分担意識の解消、子育てと両立できる働き方への転換、魅力あるまちづくりの推進などに取り組みます。
 「ゼロカーボン加速化プロジェクト」では、2030年度までに温室効果ガスの正味排出量を2010年度比6割削減するという高い目標の達成を目指し、新たな技術や仕組みを積極的に取り入れ、省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの普及拡大、事業活動やライフスタイルの転換スピードの加速化に全力を傾けてまいります。
 暮らしの利便性向上や産業の生産性向上、地域の魅力向上等を図るためには、デジタルや最先端技術の積極的な活用が必要です。「デジタル・最先端技術活用推進プロジェクト」では、医療、教育、観光、物流など様々な分野においてデジタル・最先端技術の社会実装を徹底的に進めるとともに、デジタル人材の育成・確保、中小企業や市町村等への支援体制の構築などを進めます。
 「個別最適な学びへの転換プロジェクト」では、信州発で教育改革を進めるべく「信州学び円卓会議(仮称)」を開催し、学校や教員の在り方、教育に関する国や市町村との関係など、個別最適な学びの実現にふさわしい新たな教育システムの構築を目指して取り組んでまいります。
 全産業共通の課題である人手不足に対処するため、「人口減少下における人材確保プロジェクト」では、女性、高齢者、障がい者、外国人など多様な人材の労働参加の促進、UIJターンの促進など県外からの人材確保、成長分野への労働移動や兼業・副業の促進、学校におけるキャリア教育の推進など、あらゆる手段で担い手不足の解消に取り組みます。
 「世界で稼ぎ地域が潤う経済循環実現プロジェクト」では、海外・県外から資金を獲得し、その資金をできるだけ県内で循環させるための仕組みづくり等に取り組みます。成長産業分野のグローバルサプライチェーンへの参入支援、食品や農産物を含む輸出の促進、インバウンドの更なる増加など、世界から稼ぐ取組を徹底するとともに、しあわせバイ信州運動やエシカル消費の浸透、地消地産の推進や県産農産物の県内での利用拡大などに取り組んでまいります。
 高齢者や高校生など自ら自家用車を運転できない方の移動手段の確保が焦眉の急です。「県内移動の利便性向上プロジェクト」では、地域公共交通を維持・発展させるための新たな制度づくりに取り組むとともに、地域の助け合いやグリーンスローモビリティ、MaaS(マース)など様々な取組を総動員して移動手段の確保に取り組んでまいります。
 「輝く農山村地域創造プロジェクト」では、豊かな自然、歴史や文化、産業や特産品など地域が持つ有形・無形の資源を磨き上げ、活用することにより、オンリーワンの「輝く農山村地域(クリエイティブ・フロンティア)」を創造しようとする市町村を支援してまいります。

【令和5年度当初予算案】
 今定例会に提出いたしました令和5年度当初予算案及びその他の案件について御説明申し上げます。
 令和5年度当初予算案は、「しあわせ信州創造プラン3.0」の基本目標の実現に向けて確かな一歩を踏み出すとともに、コロナ禍や価格高騰等から県民生活を守るための「長野県総合経済対策」を切れ目なく実施するため、令和4年度11月補正予算と一体のものとして編成しました。予算案の総額は、一般会計1兆456億534万6千円、特別会計4,402億6,266万円、企業特別会計565億3,025万7千円であります。特別会計は公債費特別会計など11会計、企業特別会計は総合リハビリテーション事業など4会計であります。
 一般会計では、社会保障関係費が約38億円増加する一方、新型コロナに対応するための経費や、人件費、公債費などの義務的経費の減少により、予算総額は前年度比約393億円の減となっております。歳入面では、県税と臨時財政対策債が減少するものの、地方交付税や地方消費税清算金収入が増加することから、実質的な一般財源総額は今年度当初予算とほぼ同水準となる見込みです。予算編成に当たっては、子育てや学び、ゼロカーボンなど新たな総合計画案における重点分野にできるだけ財源を振り向け、メリハリのある予算案となるよう心掛けました。なお、国庫補助金や後年度に交付税措置のある県債の活用等に努めた結果、実質公債費比率や将来負担比率はいずれも財政健全化法に基づく早期健全化基準以下となり、引き続き健全な水準を維持できる見通しです。

 続いて、当面の課題である新型コロナウイルス感染症と価格高騰への対応につきまして、御説明申し上げます。

【新型コロナウイルス感染症への対応】
 新型コロナの第8波は、昨年11月下旬から12月上旬に確保病床使用率が70.8パーセントまで上昇し、その後1月に入ってからも新規陽性者数及び確保病床使用率が高水準で推移いたしました。この間、医療現場のひっ迫を回避し、高齢者など重症化リスクが高い方を守ることができるよう、ワクチン接種の促進や確保病床の効率的な運用、高齢者施設等における頻回検査への支援などに全力で取り組んでまいりました。
 医療・介護従事者の皆様の御尽力や県民の皆様の御協力により、入院者数や陽性者数が減少したことから、先月31日には「医療非常事態宣言」を、先週10日には「医療特別警報」をそれぞれ解除したところです。現在は、依然として厳しい対策が必要な医療・介護現場に対する支援を継続する一方、新型コロナや季節性インフルエンザに気を付けながらも、会食や旅行などの日常を取り戻していただくよう県民の皆様に呼び掛けております。今後とも、XBB.1.5(エックスビービーワンファイブ)など新たな変異株の感染拡大に注意を払いつつ、必要な対策を継続してまいります。
 5月8日から新型コロナウイルス感染症を5類感染症に位置づけるとの政府方針が出されました。今後、入院調整や医療提供体制の在り方など、移行に当たっての課題等を整理し、県民や医療現場等が混乱することなく5類への移行がなされるよう必要な対策を講じてまいります。なお、こうした状況を踏まえ、今回の予算案には、患者受入医療機関の病床確保に対する支援、ワクチン接種推進のための医療機関等への支援、高齢者施設のサービス継続に要する経費の支援など、当面必要と見込まれる経費について計上いたしました。

【価格高騰への対応】
 昨年12月に策定した「長野県総合経済対策」を今後とも着実に推進し、県民の皆様の生活と産業をしっかりと支えてまいります。
 生活者支援としては、生活就労支援センター「まいさぽ」の体制を充実して住まいや就労に課題を抱える方への支援を強化するとともに、引き続き生活必需品やLED電球等の提供を行ってまいります。長野県フードサポートセンター「ふーさぽ」における民間企業等と連携した多様な食料支援や、信州こどもカフェにおける食材費等のかかり増し経費への支援を継続するほか、緊急小口資金等の償還金を助成します。また、普通公衆浴場入浴料金の上限については激変緩和のために段階的な引上げを行い、あわせて事業者に対し燃料費等の価格高騰分を助成することとします。
 事業者に対する支援としては、まず、中小企業融資制度を拡充します。貸付期間の延長などの条件変更に柔軟に対応するほか、経営健全化支援資金(新型コロナ向け伴走支援型)の貸付要件の緩和を継続します。また、中小企業の事業転換や新分野進出を促すため、信州創生推進資金(事業展開向け)の貸付利率を引き下げ、3年間実質無利子となるよう令和5年度中の貸付分に限り利子補給を行います。商工業はもとより医療・福祉や教育、農林業、観光業など幅広い分野の事業者が行う省エネ・再エネ設備の導入を支援するため、エネルギーコスト削減促進事業を新年度も継続します。農業分野では、過度に輸入資材等に依存しない安定的な農業経営への転換を促進するため、自給飼料の増産や有機農業など環境にやさしい農業の拡大を支援するとともに、地消地産の観点で県産小麦の生産拡大を支援します。観光面では、インバウンドも含めた観光需要の本格的な回復を見据え、誘客促進のためのプロモーションを積極的に展開します。
 全国の毎月勤労統計調査によると、昨年の実質賃金は速報値で前年比マイナス0.9パーセントであり、急激な物価の上昇に賃金が追い付いておりません。こうした中、経済・労働団体、国、市町村とともに、昨年12月27日、「価格転嫁と賃上げを促し地域経済の活性化に取り組む共同宣言」を行いました。県発注工事の資材単価等を実勢価格に応じて速やかに改定するほか、県内産品やサービスの適正価格での流通・消費を促すために生産者、流通・小売事業者、消費者等関係者相互の意思疎通を図るなど、価格転嫁の促進と賃金引上げの環境整備等に努めてまいります。
 以下、新年度に取り組む主な施策につきまして、新たな総合計画案の政策の柱に沿って、順次御説明申し上げます。

【持続可能で安定した暮らしを守る】
(地球環境の保全)
 地球環境を守るため、省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの普及拡大に全力で取り組みます。
 2025年度以降のできるだけ早い時期に新築住宅のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の義務化を図ることを念頭に、省エネ性能が高い住宅への誘導策を強化します。信州健康ゼロエネ住宅助成金については、ZEH基準を超える住宅に対する助成を拡充するほか、建売住宅についても新たに助成対象とし、あわせてZEH仕様の設計・施工に関する研修会の開催等により、県内工務店の技術力の向上を図ります。また、県内企業が製造する製品のライフサイクルにおけるカーボン排出量の可視化・削減等を支援します。
 再生可能エネルギーの普及拡大に向けては、地球温暖化対策推進法に定める促進区域内での太陽光発電事業を新たに収益納付型補助金で支援するほか、住宅における太陽光発電設備等の設置補助や共同購入による支援を継続します。小水力発電については、新たに県と市町村等が計画の初期段階から連携して取り組む仕組みを設け、「くらしふと信州」も活用して年間10件以上の事業化を目指します。さらにエネルギー自立地域の創出を目指す市町村に対しては、5年間で最大1億円を助成するなど総合的な支援を行ってまいります。なお、地上設置型の太陽光発電に関しては、防災面や景観面での配慮が必要であることから、設備の設置に当たって許可又は届出を必要とする条例の制定を現在検討しております。環境審議会や市町村の意見を踏まえて成案を取りまとめ、9月県議会への条例案提出を目指して取り組んでまいります。
 主伐・再造林の推進は、森林が二酸化炭素吸収機能を十分発揮するためにも重要です。そのため、森林づくり県民税を活用して、植林と一定期間の保育作業に必要な標準的な経費を全額補助する制度を創設します。
 県自らも率先して温室効果ガスの削減に取り組みます。「諏訪湖環境研究センター(仮称)」など県有施設のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)への改修や8箇所の合同庁舎での照明設備のLED化を進めるほか、特殊車両を除く全ての更新自動車の電動化、障がい者福祉センターなど13施設での太陽光発電設備の設置、128の施設における再エネ由来電力への切替えなどに取り組みます。
 人と自然が共生する社会の実現のため、自然公園の保護と利用の好循環に向けた取組を推進するほか、御嶽山の国定公園化に向けた自然環境調査等を実施します。「人と生き物が共存し、誰もが訪れたくなる諏訪湖」の実現を目指し、新たな諏訪湖創生ビジョンのもと、ヒシ繁茂対策の強化、利水と生態系保全を目的とした試験的な浚渫(しゅんせつ)、水生生物の生息場所の整備などに取り組みます。

(災害に強い県づくりの推進)
 大規模な自然災害による被害を最小限に抑えるため、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策を最大限活用して、道路・河川施設等の老朽化対策、道路ネットワークの強化、流域治水対策、治山施設や農業生産基盤の整備、ため池の耐震化など、災害に強い県づくりを進めてまいります。
 土砂等の盛土の崩落による災害の発生を防止するため、先月に「長野県土砂等の盛土等の規制に関する条例」を施行し、いち早く盛土等を規制する体制を整備しました。危険な盛土等を全国一律の基準で規制する宅地造成及び特定盛土等規制法が本年5月に施行されることに伴い、法に基づく盛土等の規制区域を指定するための基礎調査を実施してまいります。
 逃げ遅れゼロを実現するため、信州大学等と連携して避難対策等に携わる防災人材を育成するほか、災害関連死を防ぐとともに積極的な避難につなげるため、避難所におけるTKB(トイレ・キッチン・ベッド)の環境改善を引き続き進めてまいります。
 平成26年に発生した御嶽山噴火災害の教訓を風化させることなく引き継ぎ、火山防災対策等の一層の推進を図るため、9月27日を「信州 火山防災の日」として定めたいと考えております。これを契機に、御嶽山をはじめ浅間山、焼岳などの各火山防災協議会同士の連携を強化するなど火山防災の先進県を目指して取り組んでまいります。

(社会的なインフラの維持・発展)
 多くの公共インフラが更新時期を迎えていることから、各施設の長寿命化計画に基づき、道路や河川・砂防施設、農業水利施設等の適切な維持・修繕等を行ってまいります。特に道路の舗装や区画線等に関する県単独の修繕予算を令和4年度当初予算と比べ約1.4倍の37億7千万円余に増額し、交通量の多い市街地や観光地での道路修繕を重点的に進めてまいります。また、水道事業及び生活排水事業の広域連携等を促進してまいります。

(公共交通の充実をはじめ移動の利便性・快適性の向上)
 交通政策を総合的・一体的に推進するため、新たに「交通政策局」を企画振興部内に設置します。交通政策局では、広域・高速交通ネットワークの充実に取り組むほか、日常生活を支える移動手段の確保などに力を注いでまいります。
 地域連携ICカードに対応した機器整備等を今後3年間集中的に支援することにより路線バスのキャッシュレス化を促進するとともに、県から乗合バス事業者に対して新たに7台のバス車両を貸与し、累計22台で県内幹線バス路線の運行を支えてまいります。

(健康づくり支援と医療・介護サービスの充実)
 県民の皆様が生涯にわたって元気に自立して暮らすことができるよう、健康づくりの推進や医療・介護サービスの充実に取り組みます。
 循環器病予防に資する測定機器を市町村等に貸与して体験型の普及啓発活動を支援するほか、歯科レセプトと医療レセプト等の相関分析や歯科衛生士の派遣により市町村の検診・保健指導を支援するなど、信州ACEプロジェクトを一層推進します。
 医療需要の変化に対応し、二次医療圏における病床機能の分化と連携を進めるとともに、在宅医療を担う医療機関への助成や訪問看護師の特定行為研修受講に対する支援を行います。また、本県の修学資金の貸与を条件とする東京医科歯科大学の地域枠を2名から5名に増員するなど、医師確保対策を強化します。介護職員確保のため、修学資金貸与事業を継続するとともに、ロボット・ICT機器の導入促進による介護現場の労働環境改善に努めてまいります。

(県民生活の安全確保)
 「誰も自殺に追い込まれることのない信州」の実現を目指して市町村や関係機関等との連携を深めるとともに、自殺未遂者支援のための体制構築等に取り組みます。本県が全国に先駆けて設置した「子どもの自殺危機対応チーム」については、県内4つの「地区チーム」が臨機応変に活動できるよう体制を強化するとともに、心身の不調など子どもの潜在的な自殺リスクを可視化して早期の支援につなげるシステムを、高校等にモデル的に導入します。
 子どもが置き去りにされる事故を防ぐため、保育所等における送迎用バスへの安全装置の設置や登園管理システムの整備等を支援するとともに、送迎時に子どもの所在確認の義務付け等を行う条例案を今定例会に提出いたしました。
 犯罪や交通事故などのリスクから県民生活を守り、県民の安全・安心を確保するため、交番ネットワークカメラの整備による交番の機能強化や、歩道の設置等による通学路の安全対策などを進めてまいります。

【創造的で強靱な産業の発展を支援する】
(成長産業の創出・振興)
 県内産業の労働生産性の向上を図るため、多様な主体が共創し新しい価値を生み出す「クロスイノベーション」の促進、成長期待分野への新規参入・事業拡大やスタートアップに対する支援などに積極的に取り組みます。また、自動車の世界的なEVシフトの流れを踏まえ、グローバルサプライチェーンへの参入支援等によるEV関連産業クラスターの形成を目指すほか、ゼロカーボン関連の技術開発等を支援します。医療機器や航空機産業分野での技術開発や人材育成については、長野県産業振興機構や信州大学等と連携して継続的に支援してまいります。
 IT企業やIT人材の集積を目指す「信州ITバレー構想」に基づく取組は、構想を策定した令和元年9月以降にICT産業立地助成金を活用した立地企業が14件、「おためしナガノ」参加後に引き続き県内に拠点を維持したIT企業等が36組となるなど、着実に成果を挙げています。新年度は、県内IT企業の強みをデータベース化して他産業との協働を促進するとともに、グローバル企業等とのマッチング支援などを行ってまいります。
 松本・長野の2箇所に設置した信州スタートアップステーションでは、昨年末までに71件の起業支援を行い、また、「信州スタートアップ・承継支援ファンド」による投資も先月末までに3件となるなど、支援の成果が少しずつ現れております。今後は、地域創業応援プラットフォーム会議の開催により起業家の掘り起こしを行うとともに、女性専用の起業相談窓口の開設や女性起業家のコミュニティづくりへの支援を行うなど、スタートアップ・エコシステムの更なる充実に取り組んでまいります。
 
(産業としての農林業の振興)
 本県農業の持続的な発展と競争力の強化を図るため、農業経営体の育成や人材の確保、本県農業の基幹である果樹の振興、有機農業等環境にやさしい農業の拡大などに重点的に取り組みます。
 地域農業をけん引する中核的経営体やおおむね1千万円以上の所得水準の大規模経営体を育成することにより、県内農業の稼ぐ力を強化します。そのため、経営管理の専門家の派遣や研修事業を引き続き実施するとともに、農地の集約化を加速します。全国トップクラスのくだもの産地を目指し、「クイーンルージュ®」、「シナノリップ」などポテンシャルの高い本県オリジナル品種の生産拡大や品質向上の取組を支援します。また、有機農業に係る新たな認証制度を検討するほか、地域ぐるみで有機農業を進める「オーガニックビレッジ」に取り組む市町村を支援します。
 林業においては、スマート林業技術の導入、再造林経費への支援等により間伐から主伐・再造林への転換を加速させ、事業体の生産性や経営力の向上による「稼ぐ林業」の実現を目指します。また、信州ウッドコーディネーターを増員し、製材工場間の水平連携による製品の供給力強化や、いわゆる川上から川下までの事業者間の垂直連携による県産材の安定的な流通体制の構築を支援するほか、県産材製品の高付加価値化や新たな販路開拓に取り組みます。

(稼ぐ力とブランド力の向上)
 人口減少等により地域経済全体が縮小する中、長野県の稼ぐ力を向上させるためには、事業者の国内外での販路拡大を支援するとともに、県全体のブランド価値を高めていくことが重要です。
 新年度は、特に海外の成長市場を取り込むための輸出拡大に力を入れて取り組みます。工業製品については、展示会への出展支援等により中小企業の新市場開拓を促進するとともに、日本酒や味噌をはじめとする加工食品については、ヨーロッパやオーストラリアにも範囲を広げ、商談会の開催や越境ECの活用などに取り組みます。農産物については、ぶどう、コメ、花きの輸出促進のため輸出関連事業者との連携を強化し、海外における販路開拓を進めます。
 国内外から選ばれる長野県を目指して「信州ブランド戦略」を見直し、多様な主体との共創により本県のブランド力向上に取り組んでまいります。

(産業人材の育成・確保)
 若者の県内就職と定着を促進するため、従業員に対する奨学金の返還支援を行う企業等に対して一人当たり年間最大10万円を助成します。女性農業者や若手農家のクリエイティブな発想を生かして就農支援策の検討を行うとともに、中高生を対象にした農業版キャリア教育を推進するなど、農業人材の確保に力を入れてまいります。林業人材に関しては、移住者や転職者に対する最大100万円の新規就業支援金の創設、多様な担い手を受け入れる事業者や創業者が行う資機材調達等に対する支援、保育従事者の確保に向けた奨励金の対象拡充など、関連予算を倍増し、全国トップクラスの総合的な施策により人材の確保・定着に取り組みます。また、観光業に興味のある学生や移住希望者を対象に、観光地の様々な仕事を経験できる体験型インターンシップ事業を実施します。
 工科短期大学校をデジタル人材の育成拠点とするべく、県内企業・高校との連携による教育モデル「信州P-TECH(ピーテック)」や、県内大学等と連携して学生等のITリテラシーを養成する講座の開催などに取り組みます。幅広いデジタル人材を育成するため、育児・介護等を行っている方でも受講しやすいオンライン型訓練を実施します。

(人や社会に配慮した環境再生的で分配的な経済の実現)
 地域が活力を維持し将来にわたって持続可能であり続けるためには、地域外から獲得した資金を地域内で循環させていくことが重要です。エシカル消費の促進と併せてしあわせバイ信州運動を展開し、県内産品の消費拡大に向けた取組を進めるとともに、先進事例の検証などを通じてデジタル地域通貨の普及方策を研究します。また、廃棄物等を別の製品に生まれ変わらせる取組を支援するなど、サーキュラーエコノミーへの転換を促進するとともに、健康志向や安全性など世界基準に適合したサステナブルな食の需要に対応するため、廃棄食材の活用等によるサーキュラーフードの商品開発や、発酵食品、「GI長野」など信州の食のブランド化に向けた取組を進めます。さらに、農産物の地域内利用を促進するため、学校給食での有機農産物の活用や信州の伝統野菜等地域固有の食を生かした観光地域づくりを進めるとともに、身近な生活用品等を木質製品に転換するウッドチェンジの取組を進めてまいります。

(地域に根差した産業の活性化)
 伝統的工芸品産業や食品産業など、地域に根差した産業の活性化に取り組みます。匠の技と心が息づく伝統的工芸品産業を未来につなげるため、後継者の確保や県内外の販路開拓、県内企業等との連携による新規ビジネスの創出等を支援します。
 日本酒を一層振興するため、純米酒などの醸造技術の向上を図るとともに、SNS等を活用した認知度向上に取り組みます。ワイン・シードルについては、新規参入支援、若手醸造家の育成等を行うほか、各地のワイナリーを巡ってワインとその地域の食などを愉(たの)しむイベントを開催するなど、多くの人に知って、味わっていただく機会を増やしてまいります。

【快適でゆとりのある社会生活を創造する】
(地域の特徴と自然の恵みを生かした快適で魅力ある空間づくりの推進)
 森林の多面的な利活用や都市緑化の推進などにより、快適で潤いのある暮らしの実現を目指します。
 癒しやレクリエーションの場としての「開かれた里山」の仕組みづくりを進めるとともに、多様な分野で森林の有効活用に取り組む森林ベンチャー企業等への支援、農ある暮らし農園の開設支援などを行います。また、UDC信州を中心に公・民・学が連携して快適で賑(にぎ)わいのあるまちづくりを推進するほか、緑地の整備等グリーンインフラの整備促進、歩きやすい歩道の整備や公共空間の利活用などに取り組みます。

(デジタルの力を活用した便利で快適な暮らしの実現)
 現在策定中の新しいDX戦略の下、県内全市町村が参加する「長野県先端技術活用推進協議会」や産学官による「信州ITバレー推進協議会」を活用し、あらゆる分野におけるDXを推進してまいります。
 暮らしの利便性を高めるため、へき地医療を補完するためのオンライン診療の導入、行政手続の徹底的なデジタル化などを進めます。産業生産性の向上と職場の魅力づくりのため、スマート農林業機械の導入や、建設工事におけるデジタル技術の活用などを促進します。
 ドローンやeVTOL(イーブイトール)、いわゆる空飛ぶクルマを新たな移動・輸送インフラとして活用する「空の移動革命」を産学官の連携で推進するとともに、観光、教育などの分野におけるメタバースの活用を進めます。

(地域活力の維持・発展)
 県内各地の自主的・主体的な地域づくりの取組を応援します。
 地域発元気づくり支援金や地域振興推進費を活用して、各地域の特色ある地域づくりを支援するとともに、研修の実施や広域的なネットワークづくりなど地域おこし協力隊員に対する支援を充実します。また、農地の保全活動や生活扶助など地域コミュニティの維持を図る農村型地域運営組織「農村RMO」の形成を支援します。
 県庁周辺には老朽化した県有施設や有効活用されていない県有地がある一方、庁舎内の執務環境の改善等が課題となっています。このため、県庁周辺の県有地等の有効活用に向けた調査・検討を行い、警察本部庁舎の整備を含め県庁周辺の一体的な整備に取り組んでまいります。

(本州中央部広域交流圏の形成)
 本州中央部広域交流圏の形成に向け、高速交通網の整備促進に努めてまいります。
 信州まつもと空港については、地域の皆様の御理解・御協力をいただきながら、神戸線など既存路線の利用促進や更なる路線の拡充に取り組むとともに、国内外の航空会社等に対して国際チャーター便の就航を働きかけてまいります。また、空港運営への官民連携手法の導入可能性調査や入国審査用施設の整備に取り組みます。
 中部横断自動車道や中部縦貫自動車道、三遠南信自動車道の整備を引き続き促進するとともに、伊那木曽連絡道路の姥神峠(うばがみとうげ)道路延伸工区や松本糸魚川連絡道路の安曇野道路工区においては、早期の工事着手に向けた取組を進めます。
 リニア中央新幹線については、昨年12月に長野県駅(仮称)の安全祈願・起工式が執り行われるなど県内工事が着実に進んでいます。整備効果を一層高めるため、関連道路の整備推進とリニアバレー構想の具体化に取り組んでまいります。

(信州回帰プロジェクトによる人や企業の呼び込みの推進)
 地方回帰の動きをしっかりと掴(つか)むことができるよう「信州回帰プロジェクト」に引き続き取り組みます。移住イベント「信州で暮らす、働くフェア」では新たに企業からも出展をいただき、働く場としての信州の魅力を発信してまいります。3大都市圏からの移住者を対象としたUIJターン就業・創業移住支援金については、子ども一人当たりの加算額を30万円から最大100万円に増額します。
 つながり人口の創出・拡大に向けては、「ワーケーションエキスポ信州(仮称)」を開催して、ワーケーションにおける本県の優位性や取組を全国に向け発信するほか、銀座NAGANOにおける若者向けのイベントなどを通じて、県内各地と都会の若者がつながる機会を提供してまいります。

(世界との積極的なつながり・交流の推進)
 中国河北省との交流は、今年で友好提携40周年を迎えます。コロナ禍にあっても、県内大学生の在京中国大使館等への訪問や学生同士のオンライン交流などにより、中国との絆を深めてまいりました。新年度においては、私自身も4年ぶりに河北省を訪問し、未来志向での関係強化に努めてまいりたいと考えております。加えて、観光プロモーションによるインバウンド誘致や大学生をはじめとする青少年交流の推進などにも取り組んでまいります。
 韓国江原道(かんうぉんど)との友好交流協約、ソウル特別市との観光交流協約が、それぞれ締結5周年となることを契機に、長野県議会日韓親善促進議員連盟の萩原清会長をはじめ県議会の皆様にも御同行いただき、先月、関副知事が韓国を訪問してまいりました。江原道では、山岳高原を生かした観光振興や青少年交流について、ソウル特別市では、観光分野での相互協力・連携強化について会談し、また、現地の旅行会社・航空会社においては、旅行商品の造成や国際チャーター便誘致のトップセールスを行ってきたところです。引き続き、交流・連携の促進とインバウンドの拡大に取り組んでまいります。
 この他、交流実績のあるベトナムやタイ、デジタル化が進んでいるシンガポールなど、アジア各国とのつながりを深めるとともに、環境分野で先進的な取組を行っているオランダをはじめとするヨーロッパやスキーシーズンに多くの観光客をお迎えしているオーストラリアとも、産業面での提携や輸出促進等も視野に入れた交流を進めてまいります。

(世界水準の山岳高原観光地づくりの推進)
 「信州割SPECIAL」等の需要喚起策や水際対策の緩和によるインバウンドの回復により、コロナ禍前と同程度の入り込みが見られる観光地も出てきました。こうした動きを確実なものとし、観光産業の再興を図るため、観光プロモーションや観光地域づくりに積極的に取り組みます。
 本県の多彩なアウトドアカルチャーをメインテーマに据え、コンテンツの造成や情報発信の強化に取り組みます。また、県公式観光サイト「Go NAGANO」の閲覧データの分析システムを構築し、サイト訪問者の嗜(し)好に合わせて観光情報を提供するなど、デジタルマーケティングに力を入れてまいります。
 インバウンドについては、実績のある東アジアに加え、北米、ヨーロッパ、オーストラリアなど高付加価値市場をターゲット国と位置づけ、新たにアメリカ、ドイツ、オーストラリアに現地コーディネーターを配置して、現地商談会や観光セミナーなどを実施してまいります。
 また、世界から選ばれる観光地域づくりを進めるため、環境への貢献、文化遺産の保護等を指標化した国際基準「GSTC認証」の取得に取り組む地域を支援し、「世界の持続可能な観光地TOP100」に選出されることを目指します。

(文化、スポーツの振興などゆとりある暮らしの創造)
 文化芸術に親しむことができる機会を県民の皆様に提供するとともに、文化芸術の力を様々な分野に生かしてまいります。
 まず、「信州アーツカウンシル」の相談・助言体制を充実するとともに、助成プログラムによる支援対象団体数を増やします。また、教育現場においては、演劇やダンスの手法に加え、新たに対話型の芸術鑑賞も取り入れ、子どものコミュニケーション能力向上等につなげてまいります。
 長野県立美術館へは、今年度1月末までで、すでに昨年度1年間の実績を上回る約82万人もの皆様に御来館いただきました。新年度は、海外でも評価の高い絵師・葛飾北斎と本県との関わりに焦点を当てた企画展などを計画しており、国内外から多くの皆様にお越しいただけるよう取り組んでまいります。
 現在の長野県史の完結から30年余りが経過し、歴史資料の散逸なども懸念されることから、現代史を中心とした新たな県史の編さんに向けた本格的な検討に着手します。
 令和10年に本県で開催予定の第82回国民スポーツ大会・第27回全国障害者スポーツ大会「信州やまなみ国スポ・全障スポ」はいよいよ5年後に迫ってまいりました。松本平広域公園陸上競技場や市町村の競技施設などの会場整備を着実に進めてまいります。あわせて、有力選手の活動支援など成年選手の強化に力点を置いて競技力向上対策を充実するとともに、障がい者スポーツの普及や指導員の養成等にも取り組んでまいります。

【誰にでも居場所と出番がある社会をつくる】
(子どもや若者の幸福追求を最大限支援)
 県内市町村とともに「若者・子育て世代応援プロジェクト」を引き続き推進します。社会全体で子どもの育ちを支え、安心して出産・子育てができるよう、伴走型相談支援と経済的支援を一体的に行う市町村を支援するとともに、安全で質の高い保育を実現するため、0歳児保育に係る保育士を国の基準以上に配置する私立保育所等を新たに支援します。
 信州こどもカフェに対する支援を継続するとともに、子ども・若者の声を政策に反映していくための「こども・若者モニター制度(仮称)」を新たに設けます。小中学生段階のヤングケアラーの割合が全国平均を上回っている本県の状況を踏まえ、ヤングケアラーを支援する相談窓口の設置と支援機関同士のネットワークの構築を進めます。発達障がいと診断・判定される子どもの増加に対応するため、現在の発達障がい者支援センターを「発達障がい情報・支援センター(仮称)」に改組し、子どもの成長に合わせた医療・福祉・教育の支援機能を強化するとともに、診療・助言ができる専門医・診療医を引き続き養成してまいります。家庭の経済状況によって学びの選択肢が制約されることがないよう、生活保護世帯の子どもを対象として、ケースワーカーによる進学のための相談・支援や学習塾費用等の助成を行います。

(年齢、性別、国籍、障がいの有無や経済状況等が障壁とならない公正な社会の創出)
 人権が尊重され、公正で、多様性が尊重される温かな社会づくりに努めてまいります。
 人権尊重意識の高揚を図るため、県内プロスポーツチームの協力のもと各種啓発活動を実施するとともに、学校への出前講座などを行います。犯罪被害者等への適切な支援を行うため、長野県弁護士会と連携して無料法律相談を行うほか、新たに市町村職員向けの研修を実施します。
 「障がいのある人もない人も共に生きる長野県づくり条例」の理念に基づき、障がい者に対する優れた合理的配慮を提供する「ともいきカンパニー」の認定事業所の拡大を図ってまいります。また、障がい者芸術文化活動支援センター「ザワメキサポートセンター」では、障がい者の芸術文化活動に関する各種の相談対応や支援人材の育成、「ザワメキアート展」の開催などに取り組んでまいります。
 総合リハビリテーションセンターについては、経営状況の把握と事業運営の安定化を図るために公営企業会計を導入するとともに、社会復帰を目指す中途障がい者のための専門的なリハビリ機能を強化します。あわせて県内医療機関等の協力をいただきながら自立訓練施設の全県的な体制整備を図ります。
 がんの治療により外見に変容が生じた方の就労や社会参加の促進、療養生活の質の維持・向上のため、医療用補正具等の購入費用を新たに助成します。

(働き方改革の推進と就労支援の強化)
 希望する仕事やライフスタイルにあった働き方を選ぶことができるよう、働き方改革と就労支援に積極的に取り組みます。
 現在238社にまで広がった「職場いきいきアドバンスカンパニー」の認証取得を企業等に働き掛けるほか、テレワーク導入に向けたアドバイザーの派遣等を行います。また、男性の育児休業取得を促進するため、育児休業手当や各種支援制度の情報発信に取り組むとともに、企業が抱える課題や取組状況の調査を実施します。さらに、育児や介護で時間に制約のある方や、仕事に対する適性が明確でない方など、就業に悩みを抱える方に対しては、新たに地域振興局ごとに設ける「地域就労支援センター」において、一人ひとりに寄り添った支援を行ってまいります。障がい者の就労を支援するため、就労施設と地域の連携を促進するコーディネーターの配置や職場実習費用の助成等を行います。

(女性が自分らしく輝ける環境づくり)
 女性が自らの意思に基づいて、自分らしく働き、生活できる環境づくりを進めます。
 「女性活躍推進アドバイザー(仮称)」の派遣等により女性活躍のモデルとなる企業の創出に取り組むほか、女性起業家のための専用相談窓口の設置、長野県農村生活マイスター認定制度による女性農業リーダーの育成、離職中の女性を対象としたデジタルスキルの習得及びデジタル分野への再就職支援など、様々な分野での女性活躍を応援します。さらに、理工系への進学を目指す女子高校生が自分のロールモデルとなるような社会人からキャリア形成のアドバイスを受ける機会を提供するなど、女性の就職における選択肢を拡大してまいります。

(高齢者の活躍の支援)
 人生100年時代を迎える中、高齢者が培ってきた豊富な知識や経験を生かし、生きがいを持って地域社会の一員として活躍できる社会の実現がますます重要となっています。
 シニア活動推進コーディネーターの支援により高齢者の就業や社会参加を促進するほか、高齢者の活躍を支えるためのプラットフォームの構築に取り組みます。また、長野県シニア大学における学びと実践の場の提供により、高齢者の活躍を応援します。

【誰もが主体的に学ぶことができる環境をつくる】
(一人ひとりが自分にとっての幸せを実現できる学びの推進)
 一人ひとりの子どもたちのしあわせ実現を支援するため、学びの在り方を改革します。
 自由進度学習による学びを取り入れる公立小中学校を支援するとともに、探究を中心とした学びを推進するための教員研修の充実や私立学校等と連携した教員研修プログラムの開発を進めてまいります。
 高校再編については、多くの皆様の御理解と御協力のもと、教育委員会において第三次の再編・整備計画を取りまとめていただきました。教育委員会及び関係者の御尽力に敬意を表します。その一方、子どもたちの未来にとっても、地域の将来にとっても県立高校の在り方は極めて重要であることから、新たに「県立高校改革推進懇談会(仮称)」を設置して、子どもたちや保護者はもとより、産業界など地域社会が求めるニーズに的確に対応し、魅力と特色にあふれた県立高校づくりに向けた検討を進めてまいります。
 信州の豊かな自然を生かして子どもの育ちを支える信州やまほいく認定園に対しては、保育環境向上のための支援や保育料負担の軽減等を引き続き実施するとともに、私立学校における教育条件の維持・向上等を図るため、運営費補助や授業料への支援等を実施します。

(一人の子どもも取り残されない「多様性を包み込む」学びの環境の創出)
 多様な特性を持った子どもたちが、その持てる力や可能性を最大限発揮できる環境づくりが重要です。
 認知や発達に特性があり、学びづらさを抱える児童生徒に合った学びを充実するため、個々の特性に応じた教育方法についての実証的な研究、外部専門家による行動支援に関する実践的な研修の実施、特別支援学校におけるICT機器の積極的な活用や先進的な支援機器の導入などを進めてまいります。過去に学校に通えなかった方等の教育機会を確保するため、夜間中学の開設に向けた検討を行います。子どもたちの多様な興味関心に対応するため、民間団体などが主催するサマースクール等への支援や、「信州型フリースクール(仮称)」認証制度の創設検討などを進め、多様な学びの場の普及に努めてまいります。

(高等教育の振興による地域の中核となる人材の育成)
 県内高等教育機関の教育・研究機能の充実を図り、地域を担う人材の育成・確保につなげてまいります。
 大学等高等教育機関の立地等に関する意向調査・分析等を行い、県内にない学部・学科を中心とした大学等の立地促進に向けた取組を進めてまいります。県内高等教育機関の魅力向上を図り、卒業生の県内就職の促進やリカレント教育の充実に取り組むとともに、長野県立大学が行う教育研究活動や地域貢献活動を引き続き支援します。また、理工系人材の育成・確保を図るため、理工系学生と県内企業による課題解決型プロジェクトを実施します。

(学びの共創による地域づくりの推進と生涯を通じた多様な学びの創造)
 学校をはじめ多くの関係者の連携・協力により、多様な学びを実現してまいります。
 県立高校の再編に当たっては、県立学校学習空間デザイン検討委員会の最終報告を踏まえ、これからの学びにふさわしい、地域と共生する学校施設となるよう整備を進めてまいります。また、県立学校を地域社会に開かれた学びの拠点とするため、学校と地域の連携を担うコーディネーターを新たに配置し、地域連携の仕組みづくりを検討します。公立中学校における土日祝日の部活動に関しては、地域全体で多様なスポーツ・文化活動の機会をできるだけ確保することができるよう、市町村やスポーツ団体等とともに体制整備や指導者確保などについての検討を進めてまいります。

【その他の主要施策】
(沖縄県との交流連携)
 沖縄県との間では、コロナ禍の逆風にあっても、チャーター便の運航、観光商談会の開催や教育旅行の誘致活動、物産展や食材提案会の開催、子どもたちの交流など、様々な分野での交流・連携を推進してまいりました。
 今月1日から3日にかけて、長野沖縄交流促進議員連盟の風間辰一会長はじめ県議会の皆様、一般社団法人長野・沖縄交流促進機構の井田寛晴理事長らとともに沖縄県を訪問いたしました。長野県遺族会が沖縄「信濃の塔」で開催した追悼式に参列して平和への祈りを捧げたほか、玉城デニー知事や観光関係者、経済界の方々とお会いして、未来志向での有意義な意見交換等を行ってまいりました。とりわけ、玉城知事との会談では、これまでの取組を踏まえ、今後の両県の発展につながるよう年度内に交流連携協定を締結することについて合意いたしました。今後、沖縄県との交流・連携を一層強化し、相互の強みを生かしたWin-Win(ウィンウィン)の関係構築に努めてまいります。

(G7長野県軽井沢外務大臣会合の開催)
 開催まで約2か月となったG7外務大臣会合の成功に向け準備を進めてまいりました。先月6日には、軽井沢駅において100日前記念イベントを盛大に開催したほか、SDGsをテーマにした高校生によるワークショップの開催や、駐日ドイツ大使や外務省のG7担当職員と高校生との交流などにより、開催に向けた機運も高まってきております。
 本県の持つ魅力や強みを広く発信するため、今週17日にはG7の大使館職員を招いた夕食会を開催するほか、来月には在京大使館による県内視察や海外メディアを招いた県内ツアーを予定しております。会合期間中には、県産食材を用いた料理やGI認定ワイン等によるおもてなしを行うほか、国際メディアセンター内には本県の魅力に触れていただくための広報スペースを設置いたします。こうした取組を、本県の世界的な認知度向上と観光誘客の促進、県産品の販路拡大等につなげてまいります。

【条例案ほか】
 最後に、条例案などについて申し上げます。

 条例案は、一部改正条例案15件であります。
 このうち、「資金積立基金条例の一部を改正する条例案」は、長野県退職手当基金及び長野県新型コロナウイルス感染症・価格高騰対策中小企業者金融支援基金の新設を行うものであります。

 事件案は、「長野県総合5か年計画の策定について」など16件であります。
 このうち、「高等学校の統合について」は、野沢北高等学校と野沢南高等学校の統合に係るものであります。

 専決処分報告は、「交通事故に係る損害賠償の専決処分報告」など8件であります。

 以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。
 

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