ホーム > 県政情報・統計 > 県概要 > 知事の部屋 > 県議会における知事議案説明要旨 > 令和7年9月県議会定例会における知事議案説明要旨
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更新日:2025年9月25日
ただいま提出いたしました議案の説明に先立ち、当面の県政課題について御説明を申し上げます。
【賃上げ環境の整備と物価高騰等への対応】
食料品をはじめとする物価の上昇が続き、米国関税措置の影響も顕在化する中、県民の皆様の確かな暮らしを守り、中小事業者等の経営を支えるという使命感のもと、米やエネルギー価格の高騰対策、生活にお困りの方への支援、中小事業者等への経営支援などに鋭意取り組んでまいりました。7月に日米間で関税措置の合意がなされ、先月には過去最大となる63円の最低賃金の引上げが答申されたことを受け、今般、6月に取りまとめた「長野県物価高騰・米国関税措置支援パッケージ」を改定・強化したところです。
インフレが進む中で暮らしを安定させるためには、物価上昇を上回る賃上げが持続することが不可欠です。このため、新たに「賃上げ環境整備促進補助金」を創設し、政府目標である2029年までの最低賃金1,500円実現を視野に入れ、生産性向上に資する設備投資や人材育成等に積極的に取り組む中小事業者を支援いたします。具体的には、事業場内の最低賃金を30円以上引き上げる事業者を支援対象とし、引上げ後の最低賃金が1,170円以上の場合には、補助対象事業費と補助率をそれぞれ最大960万円、10分の10に引き上げます。また、本県の最低賃金引上げ期日が比較的早期であることから、「中小企業賃上げ・生産性向上サポート補助金(経過措置分)」として、従前と同様の支援を県独自に行います。
事業活動を継続し、賃上げを実現するためには、円滑な価格転嫁が欠かせません。現在、「価格転嫁促進アクション(第2弾)」として、セミナー開催や専門家による支援等を行っており、その一環として新たに「長野県価格転嫁サポーター制度」を創設いたしました。サポーターとして認定した金融機関や商工団体の職員が事業者を訪問して支援策や成功事例を共有することにより、価格転嫁を促進してまいります。
未来を切り拓くスタートアップの支援にも力を注ぎます。本年6月、本県は内閣府から「スタートアップ・エコシステム拠点都市」として選定されました。世界とのつながりを視野に入れたスタートアップの支援戦略を策定するとともに、全国のスタートアップや投資家との連携を強化します。
以上のような政策を総合した「長野県物価高騰・米国関税措置支援パッケージ2.0」を今後力強く推進することにより、県民の皆様の暮らしを守り抜くとともに、中小事業者等の挑戦を支え、本県経済の持続的な発展につなげてまいります。
【ガソリン価格の適正化等に向けた取組】
現在、「ガソリン価格の適正化等に関する検討会」において、本県のガソリン価格が高い要因の分析とその対策、さらに、地域にとって不可欠なサービスステーション(SS)を維持するための方策について検討を進めています。SSは自動車への給油のみではなく、冬季の暖房用燃料、農作業用燃料、そして災害時には緊急燃料の供給など、多面的な役割を担う地域の重要なインフラです。このため、昨日の検討会では、中山間地域等のSSを対象とする支援策について、県としての案をお示ししました。具体的には、SS過疎地等の市町村が「燃料供給に関する計画」に基づきSSの施設整備やSS事業者に対する補助を行う場合に、国の補助金に県独自の上乗せを行うことなどにより、市町村の負担を最大6割程度軽減しようとするものです。中山間地域の暮らしを支えるため、来年度当初予算に向け制度の詳細を詰めてまいります。
長野県石油商業組合を巡るガソリン価格のカルテル疑惑については、公正取引委員会の調査が続いております。県としては、事実関係の確認と県民への説明、再発防止のための申合せや宣言の実施、コンプライアンスの徹底など、県民の皆様の信頼を回復するための取組を組合に対して求めてまいりました。現在、組合が設置した第三者委員会の報告書を踏まえ、事実関係と今後の対応について組合から報告を徴収しているところです。引き続き、長野県中小企業団体中央会とも連携し、SS業界の健全な発展が図られるよう必要な指導等を行ってまいります。
【長野県人権尊重の社会づくり条例(仮称)の検討】
近年、インターネット上での誹謗中傷をはじめ、差別やいじめ、虐待など、人権を侵害する行為が後を絶ちません。今こそ、多様性を認め合い、誰もが安心して暮らせる社会の実現が強く求められています。こうした状況を踏まえ、人権尊重の理念を県民と共有し、人権がより尊重される社会の実現に向け、「長野県人権尊重の社会づくり条例(仮称)」の検討を進めています。人権啓発等に御協力をいただいている120の団体や市町村から広く御意見を募ったところ、条例制定に対しては賛同する意見が多く、「県民の行動変容につながるものにすべき」、「インターネットによる人権侵害に関する項目を設けるべき」といった具体的な提案も寄せられました。
こうした御意見を踏まえ、今月9日には条例骨子素案のたたき台を人権政策審議会にお示ししました。人権侵害は決して許されないとの強い決意のもと、行ってはならない人権侵害行為を明確に示すとともに、インターネット上の人権侵害情報については県として削除に向けた必要な措置を講ずることなどを盛り込んでいます。また、人権相談体制については、相談窓口の連携や法律専門家の関与によって一層の充実を図ってまいります。
引き続き、審議会での議論を深めながら、検討の経過を広く県民の皆様にお伝えし、県全体で人権尊重の意識が高まるよう、丁寧に取組を進めてまいります。
【信州まつもと空港の更なる活性化】
昨年7月にジェット化開港30周年を迎えた信州まつもと空港は、今年度8月までの定期便利用者数が前年度比で約1万人増加するなど、順調に利用者が伸びています。
今月中旬にはモンゴル及び韓国から国際チャーター便が就航し、沖縄とのチャーター便についても、11月のJTA(日本トランスオーシャン航空)の運航に加え、12月にはFDA(フジドリームエアラインズ)が新たにプログラムチャーター便を3週間で12便連続運航する予定です。FDA便では個人向け航空券の販売も行われることから、定期便化に向けた大きな一歩となります。今後も地域の皆様の御理解をいただきながら、利用の促進と路線の拡充に努めてまいります。
一方で空港施設については、ターミナルビルの老朽化や狭隘化、駐機場や誘導路の不足、駐車場のひっ迫といった課題を抱えています。本県の空の玄関口としての機能を高めるため、現在行っている駐車場の拡張工事を着実に進めるとともに、委託調査中の空港の機能強化に関する概略検討の結果を年度内に取りまとめ、できるだけ早期に具体的な整備事業に着手いたします。
【宿泊税の導入に向けた取組】
今月10日、「長野県宿泊税活用計画(仮称)」の骨子案を観光振興審議会宿泊税活用部会にお示ししました。観光消費額と旅行者満足度を重要目標達成指標(KGI)として設定し、今後5年間、3つの観点から施策を進めてまいりたいと考えております。
第一に「長野県らしい観光コンテンツの充実」です。旅行者の県内周遊や長期滞在を促進するため、園路等の整備を通じた魅力ある自然公園づくり、サイクリングルート・遊歩道の整備等移動自体をアクティビティとして楽しめる環境の整備、季節や天候にかかわらず楽しめる新たな観光コンテンツの整備などを進めます。第二に「観光客の受入環境整備」です。鉄道駅や宿泊施設から主要な観光地にストレスなくアクセスできるような二次交通の充実、宿泊施設の集積地における観光まちづくりの推進、宿泊施設の滞在環境の向上などに取り組みます。第三は、「観光振興体制の充実」です。地域のDMOや観光協会の活動を支援するため、人材の育成やマーケティングデータの集積・活用などを進めます。今後、県議会、市町村等への説明やパブリックコメントを通じて様々な御意見をお伺いしながら、宿泊税を活用して実施する事業を具体化してまいります。
今回、独自に宿泊税を導入する松本市、軽井沢町、阿智村、白馬村において税率の特例を適用するための条例改正案を提出いたしました。あわせて、これらの市町村における宿泊事業者のシステム改修事業等を県として支援するための予算を計上しました。来年6月1日の宿泊税導入に向け、広報の実施や徴収体制の整備なども含め、着実に準備を進めてまいります。
【信州やまなみ国スポ・全障スポの開催に向けた取組の強化】
去る7月、本県が国スポ・全障スポの開催地となることが正式に決定いたしました。開催年となる令和10年は、昭和53年の「やまびこ国体」「やまびこ大会」から50年目、長野冬季オリンピック・パラリンピックから30年目となる、本県にとって記念すべき年に当たります。スポーツを通じた元気な長野県づくりを目指し、「信州やまなみ国スポ・全障スポ」の成功に向けた取組を加速してまいります。
先月25日に準備委員会から移行した実行委員会では、来年度から開始する予定の募金や企業協賛の制度設計、式典や競技会運営を支える運営ボランティアの募集準備、開閉会式の基本計画策定などを着実に進めてまいります。
先般の北信越国民スポーツ大会では、接戦を勝ち切れなかった競技が多く、国民スポーツ大会への出場枠も北信越5県で最少となるなど厳しい結果となりました。この結果を踏まえ、優れた指導力を持つコーチの招へいや各競技団体が行う選手強化活動に対する支援の拡充など、戦略的・重点的に競技力向上対策を進めてまいります。
現在、第79回国民スポーツ大会の会期前競技が始まっています。滋賀県で開催される国スポ・全障スポに出場する本県選手の皆様には、日頃の努力の成果を存分に発揮し、「信州やまなみ国スポ・全障スポ」に向けて弾みとなるような活躍を期待しております。
【持続可能な地域医療体制の構築】
本県の医療は、今まさに大きな転換点にあります。人口減少と高齢化により地域の医療ニーズが急速に変化する中で、限られた医療資源を有効に活かすため、県では昨年、「医療提供体制のグランドデザイン」を策定し、広域型病院と地域型病院の役割分担と連携を進めています。今後は、地域医療構想調整会議に市町村長や住民代表にも御参加いただき、診療報酬データの分析結果等を共有することにより地域全体で危機感を共有しながら、持続可能な医療提供体制を築いてまいります。
7月の木曽執務週間では、県立木曽病院における小児・周産期医療について、多くの皆様から不安や課題を直接お伺いいたしました。このことも踏まえ、来年度予定している保健医療計画の中間見直しに向けては、小児・周産期の医療体制に係る検討を他の医療分野に先行して開始しました。一方、出産件数の減少等により分娩取扱医療機関が減少する中、妊産婦の皆様が遠方の医療機関でも安心して出産できるよう、健診や出産に係る交通費助成の拡充や病院間の患者情報の共有の仕組みづくりなどを検討しています。特に来年4月に県立木曽病院での分娩受入れが停止される木曽地域においては緊急の課題であることから、町村とも連携して妊娠・出産の相談に丁寧に対応することなども含め、早急に支援策を取りまとめてまいります。
物価や人件費の高騰により医療機関が厳しい経営を余儀なくされる中、県としても救急など採算性の低い政策医療を支えていかなければなりません。今回、政策医療を確保するための取組として、病気やけがをされた精神疾患がある方を新規に精神病床で受け入れる医療機関に対する助成を新たに行うことといたしました。来年度当初予算に向けては、他の不採算分野への支援策を検討するなど、県民の皆様がどこに住んでいても安心して医療を受けることができるよう、全力で取り組んでまいります。
【松本食肉施設の移転新設断念に係る対応】
松本市に所在する食肉施設につきましては、事業主体である長野県食肉公社とJA全農長野による慎重な検討の結果、移転新設を断念し、今後は代替策の検討を進めることとなりました。
この施設の閉鎖は、県内畜産業、特に生産者の経営や流通体制に大きな影響を及ぼすことが懸念され、極めて重要で切実な課題であります。生産者の持続的な経営を守り、県民の皆様をはじめ消費者に県産畜産物を安定してお届けするため、JAグループや市町村とも連携し、生産者や流通事業者等の声を丁寧にお伺いしながら、実効性のある支援策を検討してまいります。
今月19日には、関係者の皆様にお集まりいただき、畜産経営支援等を協議する検討会議を開催いたしました。今後、いただいた御意見を踏まえ、施設閉鎖に伴う運搬費増加等の影響を緩和するための取組を早急に明確にすることに加え、生産者の経営規模拡大や生産性向上に対する支援、県産食肉の消費拡大やブランド価値向上に資する取組など、幅広い畜産振興策を具体化してまいります。また、県内唯一となる中野市に所在する食肉施設のあり方を含め、中長期的な食肉流通の方向性についても協議してまいります。
【県民の命と暮らしを守るツキノワグマ対策の抜本的強化】
全国でクマの出没が相次ぐ中、県内でも人身被害や農業被害が発生し、県民の皆様の安全が脅かされています。こうした事態を重く受け止め、総合的かつ抜本的にツキノワグマ対策を進めてまいります。
まず、最優先で緊急対応力を強化します。県独自の対応マニュアルを早急に策定し、緊急訓練を行うとともに、装備を拡充します。あわせて、緊急銃猟や有害個体の捕獲に必要な経費を支援し、現場対応を財政面からも支えます。次に、情報と監視体制を充実します。今月からは目撃情報をリアルタイムで共有できるアプリ「けものおと」の運用を開始しました。これと連動して、センサーカメラや赤外線ドローンを導入し、監視網の精度を高めます。さらに、人材の確保と育成にも力を入れます。狩猟者を増やすためのハンターデビュー講座を開催して地域の担い手を育て、現場の対応力を高めてまいります。
中長期的には、人とクマとの適切な棲み分けが必要です。研修会の開催や専門家の派遣、導入経費の支援を通じて市町村の主体的な取組を後押しし、ゾーニング管理の導入を進めてまいります。
以上のような取組をより効果的なものとするため、先月、実務者で構成する「ツキノワグマ対策のあり方協議会」を設置し議論を重ねています。今後は広域連携のあり方や専門人材の確保など、持続可能な体制づくりに向け議論を深めてまいります。
【全国知事会会長への就任】
今月3日、私は全国知事会会長に就任いたしました。15年に及ぶ長野県政での歩み、そして40年余にわたり地方自治の現場で培ってきた経験を礎に、「現場から、日本を動かす。」との信念のもと、全国の知事の皆様と力を合わせ、明るい未来を切り拓いてまいります。
私が会長として取り組む重点課題は、第一に人口減少対策、第二にジェンダー平等の推進、第三に国と地方の役割分担の改革、第四に地方自治と民主主義のアップデート、この4つであります。全国知事会が我が国の変革の原動力となるよう、政党との対話を深め、経済界等との共創を進めるとともに、国に対しては長期的な視点に立った構造的な改革を強く求めてまいります。
私にとって「現場」とは、ほかならぬ長野県であります。県民の皆様の課題や悩み、そして夢や希望を、県政にとどまらず国の政策にも結びつけ、実効性ある施策として実現する。そうした使命を、全国知事会会長として誠心誠意果たしてまいります。議員各位におかれましては、引き続き格別の御指導と御支援を賜りますようお願い申し上げます。
【補正予算案】
さて、今定例会に提出いたしました一般会計補正予算案その他の案件につきまして、その概要を御説明申し上げます。
一般会計補正予算案は74億6,322万円であります。これまで述べたことのほか、県民生活の安全・安心の確保、教育環境の整備などに要する経費を計上しました。
県民生活の安全・安心の確保としては、大雨により被災した道路・河川・砂防施設等の応急対策・復旧の実施、緊急輸送道路や損傷が進んでいる観光地へのアクセス道路等の集中的な修繕に加え、渇水や降ひょうによる農作物被害対策を実施する市町村への助成を実施してまいります。
教育環境の整備としては、県立高校再編のため、佐久新校の土地造成の設計、伊那新校の校舎建設工事等を実施するとともに、狭隘化や老朽化が著しい松本養護学校の改築に向け、仮設校舎を建設します。
この補正予算案の財源として、県債46億4,600万円、繰越金19億5,322万8千円、その他国庫支出金など8億6,399万2千円を見込み、計上しました。
今年度の一般会計予算は、今回の補正を加えますと1兆246億8,983万円となります。
特別会計の補正予算案は、林業改善資金の貸付金予算を増額するものであります。企業特別会計の補正予算案は、流域下水道事業に係るものであり、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、県流域下水道管路の重点調査等を実施するものであります。
【条例案、事件案、専決処分報告】
次に、条例案は、新設条例案1件、一部改正条例案5件であります。
このうち「県営水道条例の一部を改正する条例案」は、災害など非常時において、県営水道の給水装置の早期復旧を図るため、企業局以外の水道事業者が指定した給水装置工事事業者による工事の実施を可能とするものであります。
事件案は、道路上の事故に係る損害賠償についてなど16件であります。
専決処分報告は、交通事故に係る損害賠償の専決処分報告など10件であります。
以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。
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