ホーム > 県政情報・統計 > 県概要 > 知事の部屋 > 県議会における知事議案説明要旨 > 令和7年6月県議会定例会における知事議案説明要旨
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更新日:2025年6月19日
ただいま提出いたしました議案の説明に先立ち、当面の県政課題について御説明を申し上げます。
【人口問題への対応】
今月4日、令和6年人口動態統計が公表されました。全国の出生数は68万6,061人と統計開始以来初めて70万人を下回り、本県においても、出生数1万512人、合計特殊出生率1.30といずれも過去最低を記録し、我が国における少子化の深刻化が改めて浮き彫りとなりました。これらの数字は、特に若い世代を中心とした価値観の多様化や、将来に対する経済的・社会的な不安の反映であり、新たな命の誕生が減少するという現実は、未来を紡ぐ力が細りゆくことを意味します。私たちは今、どのような社会を築いていくのか、根本から考え直すことを迫られています。こうした危機感のもと、昨年末に、「私のアクション!未来のNAGANO創造県民会議」で決定した信州未来共創戦略に基づき、固定的な性別役割分担意識の見直し、若者の社会参画の促進、更には女性・若者が活躍しやすい職場環境の整備など、若者や女性から選ばれる寛容で多様性を尊重する社会の実現に向け、多くの県民の皆様と力を合わせ、スピード感を持って取組を進めてまいります。
一方、市町村をはじめとする多くの関係者の御尽力により、令和4年以降、本県は3年連続で人口の社会増を実現しました。今後とも本県の強みを活かしながら、移住・定住の促進に加え、二地域居住の推進や関係人口の拡大などに積極的に取り組んでまいります。
人口問題を論じるにあたり、忘れてはならないのが「東京一極集中」の問題です。東京への過度な人口集中は、地方の活力を奪うばかりか、我が国全体の人口減少を一層深刻化させる要因となりかねません。また、東京都は全国でも際立って豊かな財源を背景に、子育て支援や教育施策の充実を加速度的に進めており、その結果、居住地域によって受けられる行政サービスに大きな格差が生じています。急速に子どもの数が減少する中で、子どもの医療費や保育料、学校給食費の負担軽減といった、子ども・子育て支援の根幹に関わる行政サービスについては、居住地に関係なく等しく受けられることが望ましいと考えます。このため、国に対しては全国的視野に立った責任ある対応を強く求めるとともに、地方税財源の偏在是正についても積極的に問題提起を行ってまいります。
【長野県物価高騰・米国関税措置支援パッケージの実施】
令和3年以降、全国的な物価上昇が続く中、長野市の消費者物価指数も本年4月まで44か月連続で前年同月を上回る水準となっています。本年1月に長野経済研究所が実施した県内の消費動向調査によれば、多くの県民の皆様が食料品やガソリン、水道光熱費など日々の生活に欠かせない品目の値上がりを実感しており、家計の負担感が増大する一方、実質賃金は伸び悩み、暮らしの厳しさが増しています。また、米国による一連の関税措置は、本県の基幹産業である製造業をはじめとする多くの産業に大きな影響を及ぼすことが懸念され、既に一部では生産調整等の動きも出始めています。
このように先行きが不透明な厳しい経済環境を踏まえ、県民の皆様の確かな暮らしを守り、中小企業等の安定的で持続的な経営を支えるため、先週、「長野県物価高騰・米国関税措置支援パッケージ1.0」を取りまとめました。以下、4つの柱に沿って御説明いたします。
(県民の確かな暮らしを支援)
まず第一に、物価高騰から県民の皆様の確かな暮らしを守ります。米価の高騰等で家計が苦しくなっている子育て世帯等を幅広く支援するため、フードバンク団体が緊急的に行う米などの食料品の購入及び配布に必要な経費を補助します。また、生活就労支援センター「まいさぽ」では、民生委員等と連携しながら、より丁寧な相談支援を行い、食料支援が必要な方を確実に長野県フードサポートセンター「ふーさぽ」へつなげるとともに、「ふーさぽ」における米などの食料品の購入費を増額し、人員体制についても拡充します。
エネルギー価格の上昇に対しては、まず、国の支援対象外となっているLPガス利用料金の負担を軽減します。ガソリン価格の抑制や必要なサービスステーション(SS)の維持は、地域生活の基盤を守る上で喫緊の課題です。このため、「ガソリン価格の適正化等に関する検討会」において、中山間地域の小規模SSを維持するための対策や、SS店頭における価格表示の実態調査等に基づく公正な競争環境の整備について、議論を深めてまいります。
このほか、既に予算措置を行っている低所得世帯への支援金の支給、学校給食費の負担軽減、信州こどもカフェの運営支援、省エネ家電への切換え支援などを通じて、物価高に苦しむ県民の皆様の生活を支えてまいります。
(当面の経営環境の変化への対応)
第二に、経営環境の変化に各企業が適切に対応していくことができるよう、中小企業等への支援を強化します。まず、米国関税措置の影響を受ける事業者の資金繰りを支援するため、中小企業融資制度に低金利で利用しやすい新たなメニューを創設するとともに、国の電気料金支援の対象外となっている特別高圧電力を使用している中小企業等に対して支援金を支給します。また、酒米の価格高騰に直面している県内酒蔵の経営を緊急的に支援するため、県産酒米の購入費を補助します。
さらに、持続的な賃上げを後押しするため、賃上げ促進税制や県で上乗せ補助を行っている業務改善助成金などの制度を積極的に周知するとともに、きめ細かな伴走支援も行ってまいります。
(中長期的な経営基盤の強化・構造転換)
第三に、中長期的な視点で企業の経営基盤の強化や経営革新を支援します。まず、企業の付加価値向上やDXを進めるため、中小企業に対する専門家の派遣やプロフェッショナル人材の活用支援を拡充します。本県が新たにスタートアップ・エコシステム拠点都市として採択されたことを契機として、地域資源を活かしたスタートアップの一層の創出と集積、地域発イノベーションのグローバル展開を目指してまいります。業務の共同化やITビジネスの創出、IT人材の確保を支援するほか、国に対する規制改革提案を積極的に行います。
また、企業の海外展開を支援するため、米国以外での海外販路の新規開拓、農畜産物の一層の輸出拡大などに取り組みます。
さらに、「しあわせバイ信州運動」として、地域内経済循環とエシカル消費の拡大に全力で取り組むほか、「長野県産米確保・流通等検討会議(仮称)」を設置し、県産米の生産・流通等に関する課題とその解決策を検討します。
(「伝わる」情報の発信)
国・県などが実施する暮らしや産業に関する様々な支援策も、それを必要とする個人や事業者の皆様に情報が届かなければ、十分な効果を発揮することができません。そのため、第四の柱として、「伝わる」情報の発信に力を入れてまいります。米国関税措置に対応するため、県庁及び各地域振興局に設置した特別相談窓口や、経済団体等とともに立ち上げた「米国関税に係る長野県連絡協議会」を活用し、関係者間での情報共有を進めます。さらに、SNSの積極的な活用や金融機関等との連携による「プッシュ型」の情報発信にも取り組み、支援が必要な方に必要な情報を確実にお届けできるよう努めてまいります。
【観光の振興】
昨年、長野県内の延べ宿泊者数は前年比で約70万人増加し、1,867万人に達しました。なかでも、外国人延べ宿泊者数は過去最多となる219万人を記録し、インバウンド需要の高まりが顕著に表れています。この好調な流れを追い風に、積極的な観光プロモーションを展開してまいります。
本県が舞台となっている映画「名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)」が4月から全国公開され、県庁の県民ホールに設けた特設コーナーには、ゴールデンウィーク期間中だけで約5,000人もの方が御来場されました。また、コナン関連情報を発信した県公式Xは、過去の投稿記事の中で最多の表示回数を記録するなど、大きな反響を呼んでいます。映画に登場する国立天文台野辺山電波観測所への注目が高まっているこの機会を活かして「長野県は宇宙県」の情報発信を強化するとともに、いわゆる「聖地巡礼」で訪れた観光客が県内各地を巡っていただけるよう取り組んでまいります。
大阪・関西万博の8月の自治体催事に、本県は「五感で感じる信州まるごと体験」をテーマに出展します。涼しさや爽やかさといった信州ならではの魅力を、来場される皆様に広く発信してまいります。
令和9年の夏に、JRと連携した信州デスティネーションキャンペーン(DC)を開催することが決定しました。このキャンペーンは、前後のプレDC・アフターDCを含めた3年間にわたる大規模な観光プロモーションです。その成功に向けて、関係者の皆様と力を合わせ、具体的な取組内容等を検討してまいります。
来年6月に導入を予定している宿泊税については、現在、総務大臣との協議を行っております。並行して宿泊事業者に対する説明会なども行っており、制度への理解を深めていただくよう努めています。今月17日には、観光振興審議会宿泊税活用部会を開催し、この税をどのように活用していくかについての具体的な議論を開始しました。10月を目途に、中長期的に取り組む観光の目指す姿や目標なども盛り込んだ「長野県宿泊税活用計画(仮称)骨子」を取りまとめる予定です。宿泊税を納めていただく方をはじめ多くの皆様に施策の効果を実感していただけるよう取組を進めてまいります。
【農福連携の推進】
農福連携は、農業の担い手不足を解消しながら、障がいのある方々の就労の場を広げていく、極めて意義深い取組です。本県ではこれまで、農業者と障がい者就労施設とのマッチング支援や技術指導などを進めてまいりました。その結果、農福連携に取り組む施設は年々増加しており、こうした施設における令和5年度の平均工賃月額が県内の全施設の平均を上回る水準となるなど、着実な成果が現れています。今年度は、専任の農福連携促進コーディネーターの配置や農福連携技術指導員の増員、農業器具の導入に対する補助制度の創設などにより、農福連携の取組を一層推進してまいります。
また、今年1月、私が「農福連携全国都道府県ネットワーク」の会長を拝命したことを踏まえ、今後は、他の都道府県との連携を一段と強化するとともに、SNSの活用や県内外でのイベントなどを通じて、農福連携の意義や魅力を広く社会に発信してまいります。
【広域的なバス路線への新たな支援制度の創設】
路線バスは、地域の暮らしを支える重要な社会インフラです。しかし近年、利用者の減少に加え、運転手の不足や高齢化が深刻化しており、バス路線そのものの維持が難しくなってきております。かつては貸切バスなどの収益で赤字路線を支えることもできましたが、そうした手法も限界となり、県内ではバスの減便や路線の廃止が相次ぎ、県民や観光客の移動に大きな影響を及ぼしています。
こうした状況を踏まえ、高齢者や高校生など、自家用車に頼ることのできない方々の移動を将来にわたり保証するため、県として新たに「信州型広域バス路線支援制度」を創設いたしました。この制度では、運行経費の原則半分を県が支援するほか、サービスの向上や運転手等の処遇改善に必要な経費の一部も県が独自に支援します。これにより、バス事業者の経営基盤を下支えし、持続可能な運行を目指します。今後は、県内10の広域圏ごとの「長野県公共交通活性化協議会地域別部会」において、通院・通学・観光に関する路線バスとしてのサービス品質を保証する観点で、現在の運行形態やルートの見直しを検討することとなります。来年度以降、見直しが完了した地域から順次、新たな制度による支援を行ってまいります。
【松本食肉施設の移転新設への対応】
松本市に所在する食肉施設の移転新設につきましては、これまで事業主体である長野県食肉公社と同公社をグループ会社とするJA全農長野が、施設建設に向けた地元調整や経営シミュレーション等の検討を進めてきました。県としても、令和4年5月に移転新設に係る支援の要請を受けて以降、県、市町村、JA全農長野等で構成する「松本食肉施設整備支援検討会」を設置し、移転候補地の探索などの協力を行ってまいりました。
昨日開催した検討会においては、長野県食肉公社から経営シミュレーションの現時点における報告があり、施設建設費の大幅な増嵩などにより、これまでの想定をはるかに上回る公費による支援を受けたとしても、持続可能な健全経営を行うことは厳しい状況であるとの見通しが示されました。検討会の出席者からは様々な質問や意見があり、長野県食肉公社に対して、更に事業計画を精査して今後の方向性を速やかに示すよう要請したところです。
県としては、今後、検討会で提出された事業計画や収支見通しの詳細を確認させていただくとともに、長野県食肉公社やJA全農長野の考えを踏まえ、必要な対応を検討してまいります。
【長野県150周年記念に向けた取組】
明治9年(1876年)8月21日、当時の筑摩県と長野県が合併し、現在の長野県が誕生しました。来年、その150周年という大きな節目を迎えるに当たり、来年1月から12月までの1年間にわたり、「長野県150周年記念事業」を実施いたします。
県では、県民の皆様に御参加いただけるイベントやキャンペーン、記念式典などを幅広く実施する予定ですが、市町村や企業、各種団体など様々な主体にも呼びかけ、各地域で行われる催しや活動とも連携しながら、県民全体で作り上げる記念事業にしてまいりたいと考えております。
コンセプトは、「自らを知り 互いを知り 高め合おう 私たちの長野県」としました。私たちが、150年の歩みの中で守り・育ててきた多彩な価値や魅力を、再発見し、共有し、磨き上げていくことを通じて、地域や世代の枠を超えてつながりを深め、県全体が一つになって未来に向けた新たな一歩を踏み出す一年としてまいります。
【決算見込み】
令和6年度の決算見込みについて申し上げます。
昨年度は、「しあわせ信州創造プラン3.0」に掲げた5つの政策の柱に基づき様々な施策を展開し、特に、人口減少対策や長期化する物価高への対応、地震防災対策の強化などに力を入れて取り組みました。県税や地方交付税の収入が当初の見込みを上回ったことに加え、効率的な予算執行に努めたことなどから、一般会計の歳出総額は1兆629億円余、実質収支は68億円余の黒字となる見込みです。
【補正予算案】
さて、今定例会に提出いたしました一般会計補正予算案その他の案件につきまして、その概要を御説明申し上げます。
一般会計補正予算案の総額は38億5,661万8千円であります。これまで述べてきた物価高騰・米国関税措置支援パッケージの実行などに加え、医療等提供体制の整備、教育環境の整備、地域公共交通の維持・活性化などに要する経費を計上しました。
医療等提供体制の整備では、「重点医師偏在対策支援区域」における診療所の承継や開業のための施設・設備整備及び運営を支援するほか、長野市が行う母子生活支援施設の整備を助成します。教育環境の整備としては、県立高校の再編に伴い、佐久新校及び中野総合学科新校の設計を進めるほか、赤穂総合学科新校及び須坂新校の仮設校舎等を建設します。さらに、児童生徒の増加による狭隘化を解消するため、寿台養護学校の増築校舎等の設計に着手します。地域公共交通の維持・活性化としては、廃止予定の地域間幹線バス路線について、代替手段が確保されるまでの運行延長に必要な経費を助成するほか、電気バスを導入する交通事業者を支援します。
この補正予算案の財源として、諸収入17億878万3千円、国庫支出金15億5,170万円、その他繰越金など5億9,613万5千円を見込み、計上しました。
今年度の一般会計予算は、今回の補正を加えますと1兆172億2,661万円となります。
【条例案、事件案、専決処分等報告】
次に、条例案は、一部改正条例案8件であります。
このうち「職員の勤務時間及び休暇等に関する条例及び職員の育児休業等に関する条例の一部を改正する条例案」は、職員の子育てを支援するため、現行の1日2時間までの部分休業に加え、1年につき10日相当まで取得できる部分休業を新たに設けるものであります。
事件案は、道路上の事故に係る損害賠償についてなど11件であります。
専決処分等報告は、令和6年度長野県一般会計補正予算の専決処分報告など17件であります。
以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。何とぞよろしく御審議の程お願い申し上げます。
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