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更新日:2017年4月1日

指導資料No.55 いじめをなくすために

 その子がいじめと感じたら、それはその子にとって「いじめ」なのです。
 子どもの痛みを感じ取る感性を高めるとともに、子どもたちや保護者の訴えを受け止め、速やかに適切な対応のできることが何よりも大切です。
人の「心の痛み」が分かり「いじめ」をしない許さない児童生徒が育ち、一人一人の子どもにとって明るく楽しい学校生活が送れることを願っております。

平成6年2月28日 長野県教育委員会 生徒指導幹

目次

  1. はじめに
  2. 「いじめ」の現状
  3. 「いじめ」の傾向
  4. 「いじめ」に対する指導上の留意点
  5. 事例1(小学校4年)仲良しになりたいA子
  6. 事例2(中学校1年)仲間意識が育ったD男の学級
  7. 事例3(高等学校1年)担任への反抗ですさんだF男

 はじめに

 「いじめ」についての指導は、既に指導資料等でお願いしてきたところですが、平成5年1月には、山形県新庄市や愛媛県松山市で、また4月には、大阪市で中学生の「いじめ」による痛ましい死亡事件が発生しております。
 本県におきましては、「いじめ」の発生校数、件数とも減少傾向を示しておりますが、予断を許せない状況にあります。
 そこで、各学校においては、全ての教師が「いじめ」のもつ深刻な問題性と、その背景の根深さを再認識し、児童生徒の出すサインを見逃さず「いじめ」をなくす指導の一層の充実を図るようお願いします。
 本号は昭和62年6月1日発行の「指導資料」No.36特集号と合わせ、活用してください。

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 「いじめ」の現状

発生件数

 文部省調査によると「いじめ」の発生件数は、図1のように、全国的にみてここ数年減少傾向にあったが、平成4年度は対前年比で増加した。4年度についてみると、小学校で減少し、中学校で増加している。高等学校では発生学校数は増加しているが、発生件数は減少している。
 本県においても、年々減少傾向にあったが平成4年度は中学校で前年度より3件増加し、小・高等学校では前年度より減少している。

「いじめ」の態様

 文部省調査によると「いじめ」の態様は、表1のように小学校では「冷やかし・からかい」「仲間はずれ」「暴力」の順に多く、中学校では「暴力」「冷やかし・からかい」「言葉での脅し」の順、高等学校では「暴力」「言葉での脅し」の順になっている。小学校、中学校、高等学校と学校段階が上がるにつれて、「冷やかし・からかい」や「仲間はずれ」の占める割合は減少し、「暴力」や「言葉での脅し」の割合が増加している。
 本県においても同様な傾向がみられる。

(表1)いじめの態様(全国:文部科学省調査) 注1)複数回答 注2)構成比は%、丸付き数字は順位を表す

区分

小学校

中学校

高等学校

 

年度

件数

構成比

件数

構成比

件数

構成比

言葉での脅し

3年度

1,871

17.0

3,486

20.5

790

21.5

4年度

1,774

16.4

3,969

20.3

799

22.0

冷やかしからかい

3年度

2,599

23.6

3,757

22.1

620

16.8

4年度

2,636

24.4

4,390

22.4

553

15.2

持ち物隠し

3年度

967

 8.8

1,130

6.6

133

3.6

4年度

854

7.9

1,241

6.4

129

3.5

仲間はずれ

3年度

2,310

21.0

2,191

12.9

150

4.1

4年度

2,273

21.1

2,430

12.4

164

4.5

集団による無視

3年度

797

7.2

1,004

5.9

80

2.2

4年度

735

6.8

1,149

5.9

64

1.8

暴力

3年度

1,886

17.1

4,025

23.7

1,254

34.1

4年度

1,846

17.1

4,678

23.9

1,192

32.7

たかり

3年度

187

1.7

925

5.4

431

11.7

4年度

204

1.9

1,021

5.2

458

12.6

お節介 親切の押しつけ

3年度

183

1.7

184

1.1

49

1.3

4年度

189

1.8

259

1.3

62

1.7

その他

3年度

221

2.0

305

1.8

175

4.8

4年度

285

2.6

432

2.2

219

6.0

3年度

11,021

100.0

17,007

100.0

3,682

100.0

4年度

10,796

100.0

19,569

100.0

3,640

100.0

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 「いじめ」の傾向

「いじめ」とは

 文部省では「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの」と定義している。
 このことから、「いじめ」を次のようにとらえることができる。

  • 特定の者に対して苦痛を与える。
     「いじめ」の対象になるのは、集団の中で弱い立場にある者、自分たちと比べてみて異物と見られている特定の者たちであることが多い。
  • 強い者が弱い者に対して、個または集団で一方的に苦痛を与える。
  • 身体的・心理的苦痛を継続して与える。
     いずれにしても、その子が「いじめ」と感じたら、それはその子にとって「いじめ」であるという認識が必要である。

最近の「いじめ」の特徴

 次のような傾向が見られるようになってきた。

  • 「いじめ」が見えにくくなってきた。
  • 以前は、弱い立場の子ども(運動能力が低い、学力が低い、動作が鈍い、おとなしい性格等)が対象となっていたが、最近は目だつ子、リーダー性を発揮する子や転校生なども対象とされ、異質なものを排除しようとしている。
  • 一見仲良く遊んでいるように見えても、マンガの登場人物や場面を装って「いじめ」が行われ、ゲーム的・マンガ的で罪悪感が薄れてきている。
  • 昨日までの「いじめっ子」が、今日は「いじめられっ子」になるなど、立場の入れかわりが見られるようになってきている。
  • 「いじめ」を止める者がいなくなり、かかわりを恐れて気づいていないふりをする者が多く、歯止めがなくなってきている。

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 「いじめ」に対する指導上の留意点

指導にあたる場合には、次のことに留意することが必要です。

  1. 「いじめ」には毅然とした態度で臨む。
    • 「いじめ」が発生した場合には、教師は「いじめは人間として絶対に許せない」といった毅然とした態度で臨むことが必要である。
  2. 指導体制の確立を図る。
    • 当該者や当該学級だけの問題としてでなく、学校全体の教育課題として全教師の共通理解のもとに取り組む指導体制を確立する。
    • 指導に当っては、一人で悩まず全員で協力して当たれるように校内体制を充実させる。
    • 校内研修を充実し、全職員で「いじめ」の具体的な事例研究や、ロールプレイング(役割演技)等を通して、児童生徒の心の内面にせまることのできるようカウンセリングマインドを身につける。
    • 早期に発見できるように、日常的な触れ合いの機会を増やし、児童生徒の生活状況の把握に努める。
    • 「いじめ」を受けた児童生徒が、安心して相談に行ける場を設定し、よく聴き、受け止め、心に寄り添った対応をする。
    • 専門機関との連携のもとに指導出来る態勢を確立する。
  3. 児童生徒が傍観者にならない、許さない集団を育てる。
    • 学校を、思いやりや助け合いの精神で満たし、正義を行きとどかせる。
    • 傍観者的な態度をとる児童生徒をなくすために、正義と勇気に目覚めさせるよう、全領域を通して指導し、「心の痛み」の分かる子どもを育てる。
  4. 児童生徒一人一人に生き生きとした活動の場を。
    • 子どもの良い面をみつけ伸ばしてやることを通して、どの子にも居場所・生きがい・存在感のもてる学校づくりをすすめる。
    • 必要以上に子どもの競争心をあおらないようにする。
  5. 地域・PTA活動や家庭との連携を図る。
    • 学校における指導方針や具体的な取り組みを、学級通信等を通して徹底を図り、地域・PTAや家庭との信頼関係を醸成する。
    • 家庭や地域・PTAに開かれた学校づくりに努める。
    • 地域活動への教師の積極的参加の姿勢を確立する。

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 事例1 仲良しになりたいA子(小学校4年)

問題行動の概要

 7月始めの昼休み、B子が「先生、A子さんの鉢の苗がなくなっているよ」と言ってきた。その直後、A子も鉢の苗が抜かれていることを訴えてきた。一人一鉢運動の苗のことである。子どもたちといっしょに一階ベランダに降りてみると、苗と土が散乱していた。放課後、仲の良いB子、C子といっしょにA子を慰め励ました。
 数日後の朝、提出されたB子とC子の日記に大きく斜線が引かれていた。いたずらである。その翌日もB子の日記の端に“A子のばか”と書いてあるのが目に止まった。B子が提出する時には書いてなかったと言う。担任は、直観的にA子の字によく似ていると感じた。体力づくりの時間に、A子を呼んで「A子さん、自分でなんか書かないよね」と聞いてみると、A子は「自分でなんか書かないよ。第一私の字の癖と違うよ」と紙に書いて説明した。
 担任は、三人の友達関係がうまくいっていないのではないかと考え、放課後B子とC子も呼びともに話し合った。二人に落書きされた時の気持ちを聴いたり、書いた人の気持ちを考え合ったりした。A子の話の中で落書きした人の気持ちとして「友達になりたかったから書いたんじゃあない」という言葉が出た。三人が十分に打ち解けるまで、いろいろな話題について話し合う場とすることができた。その結果、雰囲気も良くなり揃って下校して行った。
 翌朝、B子の日記に「帰り道、A子さんが『私が書いたの、ごめんなさい』と言った」と書いてあり、A子の日記には「前のように仲のよい友達になりたかったけど、二人がくっついてばかりいるので、いらいらしてやってしまった」と書いてあった。

A子をとりまく状況

 A子は4月に転校してきた。都会っ子らしく、はきはきとし活発であった。両親は学校になじめるか心配すると同時に、他の子どもより成績が上位であることを強く望んでいた。家ではA子に対する生活上のきまりが厳しく、本人は窮屈な思いをしていたようである。そこで家庭訪問のおり、A子の学校での様子を伝え、A子の気持ちを十分受け入れてくれるようお願いしてきた。

三人に対する指導

 B子とC子は家も近く、当初からA子を支えてくれる仲のよい友達になった。しかし、A子は6月頃から自分の意見を強引に通そうとしたり、グループ活動中や友達の家で、欲しい物があると無断で借りたりするなどのわがままな行動が目立ち始めた。そのためにクラスの子どもたちは徐々に警戒するようになっていった。A子は余り気にせず行動していたが、次第にクラス内で孤立していった。
 A子が落書きの事実を認めた翌朝、A子はB子といっしょに職員室にきた。C子を呼び、A子が事実を話した勇気をほめ、転校してきたA子を支えてくれた二人には心から感謝していることを伝えた。また、仲の良い友達がこれからもどんなに大切であるかを考え、話し合った。
 放課後、A子は職員室に来て「クラスには女子のグループがいくつもあり、なかなか仲間に入れなかった。B子さんとC子さんには仲間外れにされているように感じた」ことを涙ながらに訴えた。B子、C子には仲良くしてほしかったA子の心の内を伝えた。

学級に対する指導

 4月に学級を引き継いだ時に、女子の中にはいくつものグループがあり、時にはグループ同士の衝突もあったために、“いろいろな友達の良さを知ろう“を学級目標として掲げた。具体的には、2ケ月毎に席替えをしたり、学級会ではクラスの問題や友達の悩みを語り合ったりする活動を組むなど、子どもたちが自主的に活動する時間を意識的に確保してきた。しかし、今回のことをきっかけにして朝と帰りの学級活動において、”今日一日を過ごして、友達の良かったこと”を発表し合うことを続けている。
 最近では、A子が友達のことを心配している姿を他の子どもが発表したり、互いに自分の悩みや友達関係の問題も気軽に発表する雰囲気が生まれて、話し合いにも真剣さが増してきた。また、落書き事件についても友達関係のあり方として学級の話題にした。A子はその時の悩みを全員の前で語り、B子とC子はA子の気持ちを余り考えなかったことを反省する気持ちを述べることにより、クラスの子どもたちもA子の気持ちを素直に受け入れることができた。A子自身も周囲のことを考えた行動が、徐々にできるようになってきている。

考察

 活発で元気のよいA子であったが、転校しクラスに適応するまでには、さまざまな悩みを克服しなければならなかった。
 転校生A子がクラスの子どもたちから警戒されるようになり、孤立する以前に指導することができれば、A子に不安を持たせずに済んだのではないか。
 子どもの示すサインを見落とさず、早期発見、早期対応をすることがいかに大切であるかを学ぶ。

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 事例2 仲間意識が育ったD男の学級(中学校1年)

問題行動の概要

 入学当初の家庭訪問で、D男の母親から次のような訴えがあった。「この頃、親に反抗的で、父とは口もきかず、夕食後すぐ自分の部屋に閉じこもってしまう。朝、友達も呼びに来ないし、戸をバタンと閉めてこわい顔をして登校します。学校ではどうでしょうか」
 担任は、母の言葉を真剣に受け止め、D男の落ち着かない原因を考え、D男を含めた学級の様子を担任なりきに振り返ってみた。教科担任によると、D男は新入生代表の挨拶をした入学当時と比べると、数学、体育の授業に時々遅刻し、集中力に欠けているとのことだった。また、活発なE男をリーダーとするグループから仲間はずれにされ、いじめがあることに気づいた。
 生活ノートを基に個人面談をした中で、次のこともわかった。山菜採りに行き、遅く帰宅し、父に強く叱られショックだったこと。数学の授業中、問題を一生懸命やって先生に見せたところ「速くばかりやっても、間違っていれば駄目だ」と言われて自信を失いかけていたこと。下校途中、D男をからかったE男に石を投げつけ、精神的に不安定だったことなどである。
 学級内は、2つの小学校出身者が集まっていたこともあり、まだまとまりもなく、冷たい雰囲気があった。他の先生からも、授業は静かであるが、反応があまりないと指摘された。特に、D男に注目して見返すなかで、学級にいやがらせ等のいじめが、他にもあるらしいことに気づいた。

本人及び家庭の状況

 会社員の父、母、祖母。経済的に恵まれ教育熱心な家庭。本人は末っ子の長男で、時には暴力を振るう父から厳しく育てられる一方、祖母には大変可愛がられていた。学校では、無口で、嫌なことも我慢していたが、成績はよく、目立ちたがり屋の面もあった。担任は、D男自身には問題はあまりなく、学級集団に課題がありそうだと感じた。

指導の概要

 担任は事実をより正確に把握するために「いじめがクラスにあるか」のアンケートを行った。結果は「いじめがある」約4割「わからない」5割、「ない」が1割だった。具体的には、“あだ名を言う・陰口を言う・人をからかう・無視する・特定のグループがある”等の答えが出てきた。
 担任は生徒指導主事と相談の上、個人指導ではなく、いじめをテーマとして学級全体で取り組むことにした。まず、学級会を開き、入学以来の問題点を出し合い、学級目標をつくることにした。話し合いでは、自分の身体・性格のことを言われたこと、名前の呼び捨て、男女間の仲の悪さ、つまらないクラス等のことが新たに出された。
 班ごとに学級目標を検討した後、班長会では、担任の意見も入れながら、次の3点にまとめた。

  • みんなが一人の為に、一人がみんなの為に
  • 協力と団結を
  • 明るく楽しいクラスに

 その後、これをもとに再び話し合いが続けられ、毎週の学級反省会、リレー学級ノート、一人一役の係の選出が決まった。担任は話し合い等の中で、生徒がいじめを傍観者的態度でとらえる傾向が強いことを知った。
 そこで、この問題をもっと深めるために道徳、同和教育の授業でも集中的に学習することにした。資料「ある日の教室から」「君たちも差別していないか」を基に話し合いをしたあと、一人一人が自分の気持ちをみんなに発表した。偏見やいじめで、心が傷つけられている人の気持ちを知ること、それらを許さない態度や行動が大切であること等の意見が多く出された。
 数日後、担任はE男と、仲間はずれをされている人の気持ちについて個人面談を行った。

生徒の変容

 その後、何回かの学級会を経て、D男は代議員に選出され、レクリエーション係のE男と協力してクラス遠足を実施した。
 毎週の学級反省会では、ささいなことについても活発に意見が出され、みんながまとまってクラスを良くしようと盛り上がってきた。どんないじめもよくないこと、みんな仲間であるという共通認識が生まれ育ってきた。リレーノートには、積極的に自由に本音が書かれた。また、学級通信に親の励ましの言葉が紹介された。このような多面的な取り組みで、いじめをなくしクラスのまとまりを示すような活動ができるようになり、担任への信頼も深まってきた。

考察

  • クラスのいじめに気づかなかった担任が、D男の母の訴えから、アンケート等で早めに実態を把握し、1年生の初期に早期対応を行っていることを学ぶ
  • D男の気持ちを大切にするとともに、学級経営を中心とした全体指導に重点を置いて学級の雰囲気を高めていることを学ぶ。
  • 生徒指導主事の助言もあって、道徳、同和教育の授業の中で、話し合いを通じ、いじめの本質に迫り、人権感覚を育てていることを学ぶ。

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 事例3 担任への反抗ですさむF男(高等学校1年)

問題行動の概要

 G男は1組のルーム長で、なにかと目立つ存在であった。一方、夏休み明け頃より3組のF男を中心に同じ組のH男、I男の三人は学年に君臨するようになっていた。
 それまでは、気に食わないとG男に意地悪を言う程度の三人だったが、ある日、F男が「J男はプロレス強いぜ。G男をJ男にやっつけさせようぜ」と提案。F男に命じられると、気の弱いJ男は断れず、昼休みに教室に連れて来られ、プロレスをやらされた。優しいJ男は手加減をしていたのでF男は真剣にやらせるために「負けた奴は袋叩きにされる」という決まりを作って更に戦わせた。J男が劣勢になると、H男やI男が加勢するので、G男はついに負けた。決まりだからと三人は殴ったり、飛び蹴り等のひどい暴力を振るった。G男は痛さを我慢して授業に臨んだ。
 面白かったF男達は、次の休み時間も別のK男とG男との取り組みを計画。嫌がるG男の頭をはがい締めにして教室に連れてきた。教室には聞きつけた見物者が多数いた。G男はまた袋叩きにされ、倒れこんでいるところを、所構わず蹴りつけられた。周りの見物者の中からも蹴りをする者が出てきて、これは大変なことになるかもしれないと思ったF男が止めに入ったところで、始業のチャイムが鳴った。G男は泣きながら保健室へ逃げた。

F男と家族との状況

 一人っ子。母から甘やかされ過保護に育つ。父は厳格で、すぐに手をあげるため、父の前では常に小さくなっている。父の転勤のため、転校を重ねる。背は低いがよく喧嘩をし、小学校5年の時、近所に住む中学生のボスを学校で怪我をさせるほどの腕白者。中学校1年で転校、始めは転校生ということでいじめられるが、そのうちいじめる側に立つ。3年時また転校するが、そこでもいじめる側にあった。

指導経過の概要

 3組は入学後1ケ月程は落ち着いたクラスだった。若い担任は自分の性格どおり、非は非として厳しくけじめをつけていこうと熱心に学級経営に取り組んだ。しかし、担任の熱意とは逆に生徒たちは背を向けはじめた。特にF男を中心に学習意欲の低いH男,I男の反抗的行為が目立ってきた。三人は授業妨害をしたり、抜け出して廊下を徘徊したり、落書きや壁板を蹴って壊したりした。担任はそれらの行為に、毎日叱責を繰り返し、説教することに懸命であった。しかし生徒との関係はますます悪化し、反抗的な雰囲気が学級全体を覆っていった。担任は自分の力でなんとかしようとして、一人で苦しみ指導の壁にぶつかっていた。
 保健室へ逃げてきたG男をみた養護教諭はその異状を担任に連絡。1組の担任はG男からようやく、三人から暴力を受けたことを聞き出す。F男達の担任は、この事件の少し前から入院しており、副担任を中心に生徒指導部とともに事情を聴くが、誰も知らぬ存ぜぬで一向にらちがあかなかった。
 そこで、1学年会では全学級一斉に、授業をホームルームに切替え「見て見ぬふりすることの非」「集団としての責任」をテーマに、繰り返し考えさせた。傍観していたと思われる生徒全員にも個人面接をして自覚に訴えた。そうした中でようやく全貌が確認できた。しかし、本人たちは翌日も、翌々日も「俺を信じねーのか。ブッ殺すぞ」と暴れ回る始末だった。
 そこで、三人をグループ行動から切り離し、自分を十分に見直させるために、家庭反省として、親に事情を説明し、素直な姿になれるよう援助をお願いした。何回も家庭訪問をするなかで、先生方の生徒の気持ちを大事にする対応と家庭の援助とによって、一週間位経って、三人とも事実を素直に語ることができた。入学以来の自分の生活や将来を見通した在り方等も静かに考えていった。F男は正直な気持ちになれたときから明るく素直な姿に変わってきた。それは家庭反省の中ではあったが、教師が心を開いて真剣に対応してくれたことで、受け入れられた自分を感じ、教師に対する不信感が薄らいできたものと思われる。しかし、入院中の担任に対する深いわだかまりは消すことができなかった。

その後

 担任の転勤に伴い、副担任が正担任になった。F男は目が爽やかになり、授業への取り組みも改善され、服装も整うなど生活姿勢が改められてきた。H男、I男も生徒の気持ちを大事にした穏やかな新担任のもとで、F男の変化に伴い落ち着いていく様子がみられた。クラスの雰囲気も次第にトゲトゲしさやいらだちも消え、落ち着きが見られるようになった。

考察

 教師の価値基準で評価し、指導をしていくのではなく、生徒が「どんな気持ちでいるか」等に関心を寄せ、心から支援していく姿勢の大切さを学ぶ。また、担任の指導の在り様が、その学級の一人一人がよりよい生活を送ることができるための重要なポイントとなることを改めて学ぶ。

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お問い合わせ

所属課室:長野県教育委員会事務局心の支援課

長野県長野市大字南長野字幅下692-2

電話番号:026-235-7450

ファックス番号:026-235-7484

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