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更新日:2017年4月1日

指導資料No.50 学校一丸となった生徒指導体制づくり

 生徒指導のねらいは「自己指導力」の育成にあり、そのために、(1)子どもに「自己決定」の場を与えること、(2)「自己存在感」を与えること、(3)「共感的関係」を基盤にすること、が必要だといわれています。
 県下の全ての学校で、このようなご指導が展開されることを期待します。

平成4年2月20日 長野県教育委員会 生徒指導幹

目次

  1. 生徒指導の機能する学校体制づくり
  2. 教師間のチームワークづくり
  3. 生徒指導に関する校内研修の充実
  4. 指導実践事例

 生徒指導の機能する学校体制づくり

 生徒指導は教育の重要な機能であり、すべての教育活動の中で機能すべきものです。そのためには、全教師による一致協力体制の確立が必要です。さらに、家庭はもとより、近隣の学校、関係諸機関、地域とも連携を密にして、より効果的に生徒指導を進めなければなりません。以下この生徒指導体制をどのようにして確立していったらよいかを述べていきます。

生徒指導体制の現状と問題点

 生徒指導に当たるものは、言うまでもなく教師ですが、教師にその人を得、その教師が指導しやすいような体制ができていることが、生徒指導の成果をあげるうえでの基本です。生徒指導体制とは、そのような教師の側における生徒指導を行うための構え一般を指すものです。
 言い換えれば、生徒指導体制とは、生徒指導を行うために指導する側で用意する計画や組織、運営、教師の研修などの総体を意味します。問題行動が多発している学校の傾向として、次のようなことが指摘されます。

  • 教師の生徒指導に対する共通理解の不足が見られる。
  • 学習指導に重点をおき、生活指導を二義的に考えている。
  • 組織がマンネリ化しており、事態への対応が遅れたり、形式化している。
  • 指導に一貫性を欠き、相互に連絡を取り合うことなく、それぞれの教師が場当り的に対症療法的指導を行っている。
  • 問題行動に対して、直接関係する学級担任や生徒指導主事のみに指導や処理を押し付けているか、あるいは、協力体制ができているのに、一部の教師のみで処理しようとする。
  • 家庭、地域、近隣の学校、関係諸機関との連携が不十分である。

2 生きて働く生徒指導体制とするために

  1. 生徒指導の方針を確立する
     生徒指導は、全教師がそれぞれの役割を分担し、全児童生徒を対象として行われなくてはならないので、一人一人の教師がいつ、どこで、どのような指導をするかということについての十分な共通理解が必要です。こうした意味から、各学校においては、地域や児童生徒の実情に即して、生徒指導の重点や指導の方針を明確にすると共に、教育課程の各領域との関連、教師間の協力のあり方などについて示した全体的な構想を明らかにすることが必要です。
  2. 全教師が情報を把握し指導方針について理解する
     生徒指導の全体構想が少数の教師の考えだけで決められたのでは、全教師の理解と協力による生徒指導を推進していくのは困難です。教師間の性別、年齢、経験、人生観、価値観などの違いによって、生徒指導に対する意見のくい違い、対立が生じたのでは、指導効果が望めません。したがって、個々の教師の指導にずれや誤りがなく、学校全体としてまとまって指導していくには、この全体構想を決める過程で全教師が参画し、共通理解することが必要です。
     指導は、まず実態を知り、方法を理解することから始まります。計画的な校内研修をとおして共通理解を深め、指導の方法を学び、教師一人一人の資質を高めることです。このことによって指導体制も次第に強固なものになります。
  3. 担任を支え、学校一丸となって教育力を発揮する指導体制をつくり出す
     生徒指導主事(係)、学級担任だけが苦労し他の教師が傍観者になっているとか、学級担任が他の教師に相談せず、一人で難問題をかかえこむとか、逆に学級担任が生徒指導係まかせにすること等により、問題を悪化させたり、指導の機会を逸し、取り返しのつかない事態に発展してしまうことがあってはなりません。
     校長を中心に教師間に信頼感があふれ、悩んでいる教師を温かく支える教師集団をまずつくりあげることが必要です。そして、学級担任、学年会、教科担任者会、職員会等が連携・協力し合う関係を確立し、学校全体の統一的教育力を発揮していくことが重要です。
  4. 生きて働く融通性のある組織とする
     児童生徒の問題に応じて、時には分担を越えて動くこともできる組織でありたいものです。例えば、他学年の児童生徒の問題に気づいても、その学級や学年の教師の体面や縄張り意識にとらわれて、指導するのを躊躇してしまうことがあります。無論、組織を無視してよいわけではありませんが、指導を必要とする場面に直面した際、他の教師の役割だからと手をこまねいているのではなく、適切な指導をすぐその場に居合わせた教師が敏速にすること、またなし得る融通性のある体制にしておくことが必要です。
  5. 庭、地域、関係諸機関との連携を強化する
    • 学校は、平素から家庭と児童生徒の生活や心の動きについて情報・意見交換をきめ細く行い、共に悩み、解決の道を共々に求める姿勢を確立する。家庭との連携にあたっては、次の点に留意する必要があります。
      ・家庭の不安や悩みを十分うけとめ、家庭の訴えに真剣に耳を傾ける温かい受容的な姿勢
      ・児童生徒や家庭を非難し責任を一方的に問うのでなく、家庭と共に取り組んでいく姿勢
      ・どの家庭にも偏らない公平な態度
      ・各家庭の秘密を固く守ること
    • 近隣の学校、関係諸機関、地域との日常的な連携を強化する
       学校で起こる問題は多岐に渡っており、学校や家庭の努力だけで解決できるとは限りません。早期から関係諸機関、地域と連携を図ることで解決できるケースも少なくありません。日頃から情報・意見交換を緊密に行い、協力を得られるような信頼関係を築いておくことが重要です。

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  教師間のチームワークづくり

 生徒指導は、学校の教育目標に即し、究極において児童生徒一人一人の人格のより望ましい発達を目指して行われます。
 それぞれの指導領域や立場、役割などを通じて、学校の全教師の協力関係を確立し、生徒指導の機能が組織的に十分発揮されるように、次の点に配慮することが必要です。

学級担任を支える教師集団

 学級担任は、生徒指導の直接的、継続的な推進者であり、実践者です。学級担任が生徒指導の原理をよくわきまえ、学級内の一人一人の児童生徒を適切に指導することができるならば、学校全体としての生徒指導は、立派な成果をあげることができるのです。
 このためにも、あらかじめ全教師の共通理解のもとに、学級担任が行う生徒指導の具体的な内容を、明確にすることが大切です。
 また、これらの学級担任の営みを援助し推進していく体制が確立していなければなりません。特に放課後のいわゆる部活動をはじめ種々の公務によって、学級担任と児童生徒が「ともに生活する時間」を確保し難い傾向にあるので、こうした問題について学校体制として配慮していくことが必要です。

教科担任と学級担任の連携

 児童生徒の学校生活の大半は、学級を中心とした各教科の学習によって成り立っています。 したがって、各教科の担任教師と児童生徒との望ましい人間関係のもとに、児童生徒一人一人が意欲的に学習に取り組んでいるか否かという問題は、当然学校生活への適応に関する問題にも結びついてきます。このためには、生徒指導の機能する教科指導が行われなければなりません。それとともに、学級担任と教科担任の緊密な連携・協力についても、その具体的なありかたが職員会、教科担任者会、学年会等で明確にされることが重要です。

教師間、組織間の連携の強化

 教師が協力して生徒指導を進めるにあたって、教師間の信頼関係が成立していない、過剰なほどの縄張り意識があるなどの障がいがあってはなりません。これらを克服して生徒指導の充実を図るためには、生徒指導上の問題を解決し処理していく具体的な手順を全教師に明確に示しておく必要があります。不測の事態が発生した場合でも、あらかじめ確認されている手順にしたがって教師が相互に情報や意見交換をしながら、適切に指導できるように平素から協力体制を確立しておくことが必要です。

教師間の人間関係の調整

 学校において、教師間の人間関係を信頼を基に円滑にしておくことは、生徒指導を進める上で極めて重要なことです。日頃から校内での事例研究会や研修会を通じて、教師が互いに意見を自由に交換し合い意思疎通を図ったり、共通課題に共同して取り組む等により人間関係を深める工夫を凝らすことが必要です。

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 生徒指導に関する校内研修の充実

生徒指導の研修の必要性

 教師にその資質が強く要請されるのは、教育が教師と児童生徒との人格的なふれ合いを基盤とするからです。
 とりわけ生徒指導は、一人一人の児童生徒の人格を尊重し個性の伸長を図りながら、同時に社会的な資質や行動を高め、人間としての生き方を指導・援助するものです。また、すべての教師がすべての児童生徒を対象に、その現実的生活に即しながら、具体的・実際的活動において展開されるものです。
 したがって、生徒指導に当たる教師の人間性がさまざまな形で児童生徒の人間形成に影響することから、教師自身に豊かな人間性が求められます。さらに変化する社会環境を鋭く見つめ、それとともに変容している児童生徒の状況を的確に把握して指導するための知性と実践力が必要とされます。現実には、このような望ましい資質は、教師の絶えざる意欲的・積極的な研修によって培われ、積上げられていくものです。

研修をすすめるにあたって

  1. 基本的な配慮事項
    • 教師一人一人が研修に主体的に取り組む姿勢をもつ
      生徒指導に関する研修を効果的に進めるには、まず、教師一人一人がその必要性を深く認識し、意欲的、主体的に取り組む姿勢をもつことが何よりも大切です。そのためには、児童生徒の現実の姿をよく見つめ、今この児童生徒に必要なことは何か、そのために教師として何をなすべきかを深く自覚して、教師一人一人が目的意識をもつことが肝要です。
    • 実践と結びついた研修になるよう配慮する
      研修の結果は実践に直接役立つもの、実践の基盤になるもの、長い時間をかけて成果が現れるものなどさまざまです。いずれにしても研修の内容を何らかの形で日々の生徒指導の実践に結びついたものとし、その結果を今後の指導に生かすように工夫することが大切です。
  2. 研修計画の作成にあたって
     研修主題の設定に当たっては、全教師が参加して児童生徒の実態分析、指導上の問題点の検討を行い、生徒指導の推進上最も重要な課題となるものをできるだけ具体的に取り上げることです。
  3. 研修の内容は各学校で必要とするものを重点的にとりあげること
     
    研修の内容については、各学校の課題に照らして、必要なものを重点的に押さえ、それを中心に関連するものを取り入れるようにし、ゆとりをもって継続的に進められるよう工夫することです。
     また基本的な内容から応用、実践的な内容に進展するよう系統性、発展性のある計画を立てることが大切です。

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 指導実践事例

仲間に支えられて(小学校指導事例)

夢と期待がこわれて

 子どもたちに囲まれたペスタロッチの姿に自分を重ね「教師たるものかくあるべし」と夢を抱いて赴任した学校は、全校で6学級、山あいの校舎に遅霜がキラキラと輝き、本当に綺麗でした。私の胸は喜びと期待ではちきれんばかりでした。5年生の担任になりました。
 1学期は無事終わりました。夏休みの間に、今までを振り返って、子どもたちの行動記録や作品を整理して、私も十分にリフレッシュして2学期を迎えました。「元気な顔」と休み中の子どもたちの「成長ぶり」を想像しながら教室に行きました。Aさんの顔が見えません。
 電話口のお母さんからは「ちょっと具合が」との連絡です。休む日は始業前に必ず連絡があったのにどうしたのかな、とは思いましたが、教頭と教務主任に報告するにとどめました。
 次の日も登校しません。結局休み明けの最初の週の3日間は全部お休みでした。
 私は土曜日の夜、家庭訪問に行きました。だがAさんは会ってくれません。ショックでした。お母さんとの面談からは「学校に行きたくない」と言っていることがわかりました。
 どうして、どうすればよいのか、私には解決の方法が全くわかりません。日はどんどん経過します。焦りだけが残りました。夢が崩れそうで不安でした。

私の指導が原因?

 「登校拒否の指導」についての解説書を読み、登校刺激の是非や教育相談の方法、カウンセリングマインドなども勉強しました。先輩教師の経験談も伺いました。生育歴も分かりましたので、前の担任にも電話で相談し、原因を探りました。しかし、多くの解決策を試みてもAさんは登校しません。私は「もしかしたら、私の指導に原因が…」と不安と自責の念だけがつのり、どうしたらよいのかわかりません。

チームを組んでの取り組み

 9月になって、校長先生からチームを組んで指導したら、という提案がありました。生徒指導委員会のない校内指導体制を見直しての提案でした。自信を失いかけていた私の心の負担を軽減し、Aさんを多角度から理解していこうとの意見でした。

  • 経験が豊富で学校全体の動きがわかる教頭や教務主任が入る。
  • 精神的な問題があることも予想し、カウンセリングなどの研修をした養護教諭も加わる。
  • 地域との連携に配慮し、父母の理解を得るためにPTA係も入る。

保健室への登校

 チーム指導の最初の取り組みは家庭との話し合いでした。私の経験不足を補っていただきながら、父母との面談を始め、指導の手がかりが明らかにされていきました。特に、お母さんの悩みが浮き彫りになりました。お母さんはAさんが登校できないことで、私以上に悩んでいたのです。9月の終わりころから保健室登校が始まりました。養護教諭が保健室での行動や言葉が記録されているノートを作ってくれました。Aさんの考えや家での生活の様子が良く分かり、心の動きも分かりました。

記録をもとに

 保健室登校は毎日できるようになりました。
 記録もたくさんになり、それをもとに定期的な指導検討会が持たれました。そこでは、私の疑問や悩み、希望までも取り上げていただきました。

  • (1)どうして普通学級には行けないのか
  • (2)なぜ、保健室なら登校できるのか
  • (3)組の仲間がAさんとかかわりをもてるようになるには、どんな指導が有効か
  • (4)担任が家庭(特に母親)を援助する方法やかかわりかた
  • (5)Aさんに心理診断を受けさせたい
  • (6)Aさんにかかわっていて、他の子どもへの指導が疎かになるのを恐れている

などをとりあげていただけました。私にとって、自らも悩みを相談し多くの先生から教えを受けられる絶好の場となりました。
 子どもたちを全校職員がかかわって指導する機運と体制が作られました。保健室登校のAさんへ指導のための校内協力が一段とすすみました。

チームワークと指導の成果

  • (1)心理診断テストのことは校長先生が村の教育委員会に要請を出してくださいました。バウムテストが実施され、その診断結果をもとに、意見の交換があり研修が深められました。
  • (2) お母さんが登校に付き添ってくださる日に、チーム関係の職員だけでなく、大勢の職員が話や悩みを聴いてくださったことで、お母さんの悩みが徐々に解消され、学校全体での温かい援助の心が理解されていき、村の人からの学校への信頼感が、より強くなりました。
  • (3)新任の私には、相談し悩みを話せたことで心が軽くなりました。
  • (4)養護教諭の登校拒否児童へのかかわりかたが全校で理解され、毎日の指導内容も良く分かり、「全校で指導する」という生徒指導の基本が確認されました。
  • (5)カウンセリングマインドのあらたな研修の機会にもなりました。

「和と輪」の中での指導を

 晩秋になって私の自信は少し回復し、心の余裕も生まれてきました。初任者研修で、仲間も同じ悩みを抱えながら、頑張っていることも励みになりました。学級の子どもたちを「自分一人の責任で」と考えて頑張ることも時には必要だが、むしろいろいろな方の意見をお聞きして、指導の方向を決定することが大切なこととわかりました。子どもたちと信頼関係をつくることとともに、教師集団の和と、相互の信頼関係を築くことも、指導にとってはとても大切な要素であるんだと実感しました。
 仲間が支えてくれるという安心感、安定感は、子どもたちにも教師にとっても毎日の生活で、非常に重要な基本になっていることを私は強く感じています。生徒指導の原点は、ここにもあるように思うこのごろです。

全校一致した指導をめざして(中学校指導事例)

 家庭では親に指示されたり、親の判断がなくては自ら行動できない生徒、また学校の指導を理解し行動に移すことができない生徒が多くなっています。また生徒の価値観が多様化すると同時に、行動の基準が“正しいかどうか”ではなく、その時の“感情”に左右される傾向があります。このような生徒に対しては、言葉だけによる指示や、力による指導では教師の願いが十分に通じないことが多くなりました。
 都市部の大規模校において、数年前から生徒間暴力や教師に対する反抗、器物破壊等が頻発していました。教師は力で抑えようとする傾向を強め、生徒はますます反発するという悪循環が生まれていました。このような状況の中で教師は有効な手立てを打てない状態が続いていました。

学校長の姿勢

 従来のような力による指導を転換することが急務と考えた学校長は、職員会の度に自ら資料を準備し、望ましい生徒指導のあり方について研修する時間を設定しました。学校長が目指した方向は、カウンセリングマインドに徹した指導姿勢でした。

生徒指導係の基本方針

 新年度の発足にあたり、生徒指導係として次の基本方針を立てました。

  1. 学級づくり‥‥‥開かれた学級、支え合い互いに注意し合える友達関係づくりを目指す。
  2. 生徒会活動の充実‥‥‥自治的、自主的活動の重視。
  3. 全教師の共通理解を図る‥‥‥全校一致した生徒指導のために。
  4. 受容と厳しさのバランス‥‥‥教育相談的な指導と反社会的な行為を許さない厳しさのバランスを図る
  5. 教師自身の変革‥‥‥生徒の心に寄り添い、自らも成長する教師を目指す。

共通理解のために

 生徒指導係は問題行動発生のあるなしにかかわらず、生徒指導に関する職員間の共通理解を図るため、職員会で意見交換や情報交換の時間を30分確保しました。その結果、生徒指導係の指導方針やねらいが全職員に理解され、さらに各学年の指導に生かされることになりました。

学年の協力体制

 今まで学級の問題は担任一人で解決しようとする傾向が強く、負担が過重になったり初期対応に遅れることがありました。新学年の発足にあたり、学年会のあり方を見直し協力体制を確立する必要があると考えました。そのため次の方針を立てました。

  • 学級のどんな小さな問題でも出し合い、生徒の状況を的確に把握する。
  • 共通理解を図り、早期対応をする。
  • 互いの悩みを語り、共に支える。

 学年主任や生徒指導主事は担任の相談相手になり悩みの解消に努めました。事故発生時には協力して事実確認をするばかりでなく、他の担任も終了まで待機し初期の対応をすることが習慣となりました。
 このような雰囲気の中で時間を気にせず話し合い、学年教職員の力を結集し学年集団としての力量を次第に高めることができました。

養護教諭の役割

 怠学傾向や登校拒否の生徒が増加するなかで、養護教諭の果たす役割が大きくなっています。次のような基本的な態度で接しています。

  • 母親的な受容的態度で接すると同時に厳しさを兼ねた対応
  • 担任、学年とのきめ細かな連携
  • 秘密の保持

 時には乱暴な言葉をはいたり不満を言いながらも指導に従っている生徒がたくさんいます。担任や学年の教師は養護教諭からのさまざまな情報により、生徒の状況を把握し早期に対応することができるようになりました。

外部講師による研修

 生徒理解を深め心が通じる指導をめざして、青少年の補導にかかわる方や、カウンセリングの専門家を招いて研修を重ねることにより、教師の指導力の向上をめざしました。

B君を中心としたグループヘの指導

  1. 学級活動にも出席せず洗面所にいたB君を厳しく指導したのがきっかけで、B君はそれ以後授業に出席せず、校内を徘徊したり喫煙を繰り返すようになりました。以前から仲の良かった他の三人も同調して行動を共にするようになりました。さらに、深夜徘徊・バイク盗・無免許運転にまで行動がエスカレートしていきました。このグループの指導にあたり、学年と生徒指導係は次のことを確認し、全職員の協力を求めました。
    • 全教師が受容的な態度で接し、プレッシャーを与えるような指示的な態度を避け、生徒の乱暴な言葉もまずは受容する。
    • 巡視当番を決め、毎時間二人ペアーで校内を見回り、巡視ノートに気の付いた点を記録しその後の指導に生かす。
    • 夏休みを控え、生徒・保護者・担任の三者で休み中の計画を立てる。
      このような指導を重ねることにより、生徒たちは次第に反抗することが少なくなっていきました。しかし授業に出席することはできませんでした。
  2. 授業に出席できない生徒に、授業に影響の少ない理科準備室を開放し、生徒指導係が指導することになりました。理科準備室を利用するにあたり、次の条件を厳守するよう指導しました。
    • どうしても授業に出れない時に利用する。
    • 飲食はしない。
    • 与えられた課題をやり、学習の遅れを取り戻す。
    • 担任をはじめ、生徒指導係が交替で指導にあたる。
    • 保護者が時々様子を見にくる。

 指導にあたる生徒指導係は受容的な態度で接し、学習の援助を続けるうちに、次第に教室復帰ができる生徒が出てきました。
 このような指導を続けて2ケ月、理科準備室を利用していた生徒の大部分が授業に復帰できるようになりました。

担任を支える学校体制(高校指導事例)

威圧暴力事件

 C男(高2)は、かつての遊び仲間であったD男が最近生意気なので、注意するのだと部室へ呼び出しました。その場には仲間のB男他二名もいあわせ口論の末、殴り合いになりました。C男は止めようと思ったが一瞬のできごとでした。D男は帰宅してから、脇腹が痛んだが、両親には何も言わず、次の日から休んでいました。この件は外部の情報から明るみになりました。

C男の家庭環境

 両親健在、祖父母が家の実権を握っており、孫たちを溺愛していました。父親は寡黙、子どもへの指導権は母親の方が握っており、父親は家庭訪問しても同席したり、発言したりすることはほとんどありませんでした。

指導経過

 この件は不明な点はありましたが、とりあえず、C男とB男他の三人を家庭で反省させるようにしました。C男は過去三回の問題行動で指導を受けていたので、「今度やったら、やめる」と仲間に語っていました。家庭反省が始まって間もなく、担任、母親、C男との話し合いの中で、初めのうちは学校の説明をよく聞いていた母親が「C男はただ呼び出しただけだ」と言い出しました。C男も「先に手を出したのはD男である」と言い張るようになりました。担任はなぜ反省しなければならないか、家庭訪問の度に説得に努めましたが、なかなか理解されず、不信感すらいだくようで、次第に担任との距離が離れていくのを感じました。
 学校ではこの件について様々な検討がなされ、「思春期相談室」のプロジェクトチームで取り組むことになりました。

思春期相談室

  1. 構成組織
    生徒指導委員、養護教諭、図書館司書、実習助手、クラブ顧問
  2. 方針の内容
    • 教育相談的発想に立ち、積極的な生徒指導を推し進める。
    • 保護者の悩みを聞き入れ、担任と保護者の円滑な関係を図る。
    • 約束、時間、秘密を守り、情報は生徒の了解を得ない限り発表しない。
    • 関係機関との連携を密にとる。
    • 生徒は面談者を選定できる。
    • 相談室を常置する。

C男の気持ちに寄り添う

 プロジェクトチームの職員は家庭やC男の了解のもとで家庭訪問したり、面接指導にたずさわりました。
 C男は教室での学習は苦手だったが、実習科目にはある程度興味を示していました。チームの一員でもあったF教諭は、C男と気軽に話すことができました。C男はF教諭と相談室で過しました。授業はサボりがちで、欠課時数が多くなり、「これ以上休んだら大変だ」と言う指導を頻繁に受けていました。それが彼を異常にいらだたせていたかもしれません。
 指導の中で、退学して働きたいと言い始めました。彼の希望する進路を実現するには、少なくとも高校程度の学力と卒業資格が必要だと自覚させることで、学校を続ける意欲を持ってくれることを願いました。
 C男は今の自分の生活を改めていくことだと気づいてはいましたが、言い出せないでいました。F教諭は、彼の考えを否定せず、情報の提供を中心に援助し続け、できるかぎり質問や要望に応えてやり、気力が湧いてくることを、じっと粘り強く待ちました。
 F教諭と担任との連携の中から外部の相談機関を紹介しました。C男はいやいやながらも母親と同行し、そこでは、バイクのことは「学校には絶対ばれない」と勇んでみせました。一方、気になっていたことは一緒にかかわったB男がすでに退学の意思を固めてしまったことです。間もなくC男のバイク無断取得が発覚し「バイクと学校のどちらを取るか」との問いに「バイク」だと、肩肘をはっていましたが気持ちが揺れ動いていたので、それ以上問いたださず説教めいた話しは避けました。

暴力事件再発

 B男の退学はD男の告げ口のためだと勝手に思い込んでいたC男は、いけないと思いながらD男を呼び出してしまいました。登校を許されてから何日もたっていませんでした。担任としては諦めることはできませんでした。いちからの出直しでした。
 しかし、親と本人は諦めてかけており、「これ以上学校に迷惑はかけられない」と言うのでした。それからの指導には素直でした。家庭での反省の状況も以前とは比べものにならない程よくやりました。後で分かったことですが、この時期に無断で乗り回していたバイクも事故で大破してしまい、C男の気掛りだったことが拭い去られたということです。これを契機にC男は変わりました。

この事例から学んだこと

 C男は学校や教師に不満を持ち、つっぱっており、なかなか教師の話に耳を傾けることができませんでした。しかし、どんな生徒でも学校には必ず気持の通ずる教師がいることを改めて認識した事例でした。
 担任一人で抱え込まないで、プロジェクトチームが援助したことで、C男を救う手立てになり、さらに担任のサポートにもなりました。この指導法が本人はもとより、保護者との間の意思疎通を促進したことも、好転する結果につながりました。

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お問い合わせ

所属課室:長野県教育委員会事務局心の支援課

長野県長野市大字南長野字幅下692-2

電話番号:026-235-7450

ファックス番号:026-235-7484

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