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更新日:2022年7月6日

知事会見(令和4年(2022年)4月22日(金曜日)15時01分~15時42分 会場:県庁)

項目

阿部知事、小林総合政策課長、京都大学 人と社会の未来研究院 広井教授、株式会社日立コンサルティング 須藤マネージャーからの説明

  1. AIを活用した長野県の未来に関するシミュレーションについて

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取材者からの質問

  1. AIを活用した長野県の未来に関するシミュレーションについて

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本文

阿部知事、小林総合政策課長、京都大学 人と社会の未来研究院 広井教授、株式会社日立コンサルティング 須藤マネージャーからの説明

 1 AIを活用した長野県の未来に関するシミュレーションについて

京都大学 人と社会の未来研究院 教授 広井良典 氏
 専門は公共政策の分野で、このAIのシミュレーション3年前のものにも参加させていただきまして、今回も関わらせていただいて大変光栄に思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

株式会社日立コンサルティング マネージャー 須藤一磨 氏
 こちらの政策提言AIですが、ここ数年にわたり担当していまして、いろいろな自治体さんと取り組みを進めています。よろしくお願いいたします。

長野県知事 阿部守一
 それでは、私から趣旨の説明をしたいと思います。メディアの皆さまもだいぶ変わられたようですが、本県2018年にもこのAIシミュレーションを行っています。京都大学、日立製作所と連携をしてAIを活用した長野県の持続可能な未来に向けた政策研究を行わせていただき、2019年4月に広井先生にもご同席いただいて結果発表をしたところです。長野県の社会を表すモデルを作成してAIで2万通りの未来図をシミュレーションして、六つのシナリオを導いたところであります。当時の最も望ましい未来シナリオは「観光など外部に対して開かれていると同時に、地域内経済循環や郷土愛なども優れているという『開かれたローカライゼーションモデル』と呼びうる姿」でした。一方でシミュレーションを行うモデルの精度の向上といくつかの課題もあったところです。今回、この3年前の取り組みも踏まえて新しいシミュレーションを行わせていただきました。ご承知の通り、現在本県では次期総合計画を検討しているところです。総合計画審議会をはじめ、いろいろな場面で未来の長野県の在り方の議論を行っているところですが、今回のシミュレーションをこうした長野県の未来を考える場における議論の参考にしていきたいと思っています。またデータを用いた政策形成EBPM(イービーピーエム/根拠(エビデンス)に基づく政策形成)を長野県として着実に推進をしていきたいと思っていますが、そうしたEBPMを推進していくという観点でも有効な取り組みだと考えています。そういう趣旨で行いましたが、具体的な内容については総合政策課長から説明をします。

総合政策課長 小林真人
 それでは、今回実施したAIシミュレーションの枠組みについて簡単にご説明します。今回のシミュレーション(会見資料/スライド3ページ)です。基本的な主眼としては起こり得る未来シナリオを全て列挙するということで、いわゆるシナリオプランニングといわれる手法の一つです。基本的に指標を選択してその指標の選択の因果関係をつくります。因果連関モデル、こうしたモデルを構築します。この中で指標間の関係性や関係の強さ、あるいは時間的な遅れをインプットして、アウトプットとして数多くの未来シナリオが出てきます。これを幾つか束ねることができるということが一つ。それから二つ目としてはシナリオの分岐というものが起きますが、その上でその分岐点でどういった指標がその分岐に影響しているかという影響度を分析ができるというものです。因果連関モデルの作成について(会見資料/スライド4ページ)ですけれども、まずは情報収集ステージということで、これは人とデータによるもので、県職員、それから日立コンサルディングの須藤さんをはじめとするスタッフの皆さま、こうした皆さまでワークショップなどを重ねて、データの選択だとかケース設定などを行います。その上で選択肢の検討ステージということで、ここでコンピューターAIを出してAIで計算をしてもらうということで、最後に戦略選択ステージということで、ここで人が関わって未来シナリオとか比較分析や価値判断を行ってまとめに入るということで、この段階においては県の職員、それから日立のスタッフの皆さま、それから広井先生にも関わっていただいたというところです。今回用いました指標(会見資料/スライド5ページ)は12分野から215個を選定しています。今回は抽象的なキーワードは排して定量指標、数値指標のみを採用したというところが特徴です。採用した指標に関してはお配りしている資料の一番最後に全体の215指標を掲げていますのでご覧いただければと思います。因果連関モデルの作成(会見資料/スライド6ページ)の具体ですが、因果関係の設定は、先ほど申し上げたワークショップの形式の意見交換で設定しています。右側に写真が二つありますが、これはホワイトボードに付箋を貼り付けて相関関係図を図示したものです。こうした作業を行って、因果関係の設定などをしているということです。その下に表がありますが、例えば「太陽光発電のエネルギー生産量」と、もう一つの指標である「再生可能エネルギーの自給率」、これがFrom(説明変数)、To(目的変数)の関係にあって、「太陽光発電エネルギー生産量」がプラスであれば「再生可能エネルギーの自給率」がプラスだという関係性にある。一方で上から三つ目の「一般労働者の総実労働時間」、これはプラスになると目的変数のところにある「3次活動の時間」、これはマイナスに振れるということで、こういう相関関係を基本的に設定していくということになります。設定の係数に関して(会見資料/スライド7ページ)ですが、今回のシミュレーションでも設定係数の設定ができます。一つは関係性の強さの「線形」、それから時間の遅れである「遅延」というこの二つの設定ができるということで、それぞれ1パーセント指標が変化した場合に影響を受ける指標というのはどの程度増加するかということ、さらにはそのばらつき具合も設定できるということです。遅延に関しても指標が動いた時に何カ月間、あるいは何年その効果が出るのが遅れるかというところの設定もできる、それについてもばらつきの設定ができるということでして、この係数の設定に当たっては、今回は基本的には22年分の指標のデータ収集をして、そのデータを用いて回帰分析を行って設定をしているというところです。こうした作業を経てできたのが因果連関モデル(会見資料/スライド8ページ)です。クモの巣のような絵ということで、これはポンチ絵にしているところですが、これは因果連関モデルの全体像ということになります。楕円(だえん)形のものが指標で、そこに矢印で因果関係を振っています。青の矢印が正の因果関係、赤が負の因果関係ということになり、指標数総数が215、因果関係数が529ということになります。これは2018年に行ったモデルとの違い(会見資料/スライド9ページ)ですが、端的に申しますと先ほど申し上げましたが、前回は抽象的なキーワードを使った部分があるのですが、今回はすべて定量的な指標、数値指標を用いているということ、さらに係数設定に当たっては回帰分析によっていると、この2点が特に今回の特徴になっているところです。こうしてできたシミュレーションのイメージ(会見資料/スライド10ページ)ですが、因果連関モデルを元にして2022年から2050年、これを1カ月単位で指標の推移をシミュレーションして2万通りの未来シナリオが算出できたというところです。先ほど申し上げたように、ばらつきも指標の中に内包していますので、全く同じシミュレーションというのは生まれていませんので、多様なシミュレーションが創出されるというところになっています。ただし、人口に関しては国立社会保障・人口問題研究所の推計というものがありますので、この推計をプラス、マイナス30パーセントの範囲で基本的に設定をしていて、一定程度人口に関しては制御をしているということになります。従って、結果としては人口減少を前提としたシミュレーションになっているということが言えるかと思います。こうした中でシミュレーションを行った結果(会見資料/スライド11ページ)が上のもので、2万通りのシナリオができていますが、これを同じ傾向のシナリオというのをグルーピングして、最終的に七つのグループ、七つのシナリオに整理をしたところです。その模式図が下段のものです。ご覧いいただきますと、七つのシナリオに至るまでに分岐点が五つあるということになっています。1回目の分岐、これが2029年ですが、分岐点1で下方に動いたグループというのが、結果的にグループ5、6、7とあるわけですが、これらは七つのグループがいずれも分岐して交わることなく最終的に2050年の状態に到達しているという状況にあるということになります。以上私からの簡単なスキームの説明でした。この後(会見資料)スライド12以降は、各シナリオの比較評価になりますが、ここからは京都大学の広井先生に解説、コメントをお願いすることとして私からの説明を終えたいと思います。

京都大学 人と社会の未来研究院 教授 広井良典 氏
 それでは、私から説明をさせていただきます。今ご覧いただいている(会見資料)12ページ、これは先ほどのご説明にもありましたように、AIシミュレーションでの未来が大きく七つのグループに分かれたわけですが、その七つのグループにおける指標の動きを表の上段にあります、左から右への12の分野ごとに評価したものです。表の〇は改善した指標が多いこと、△は改善の度合いが中程度であること、×は悪化した指標が多いことを示しています。ざっと眺めていただければ分かりますように、グループ4より下のグループは×が目立ち、望ましい未来の姿とは言えません。グループ1から3は比較的良好ですが、ご覧いただいてわかりますように、グループ2が相対的に最も優れたパフォーマンスを示しているといえます。またグループ2は全体としていわゆる環境、経済、社会という三つの領域のバランスが取れており、いわばSDGs(エスディージーズ/国連が定めた持続可能な開発目標)的な社会像に近いと言うことができるかと思います。これは、先ほどマル、バツ表で示した七つのグループの特徴(会見資料/スライド13ページ)を文章で示したものです。先ほど申しましたように、相対的にパフォーマンスのよいグループはグループの1から3までですが、例えばグループ1は環境や雇用面は比較的良好であるものの、人口減少が大きいなど問題点が多く、またグループ3は、環境や観光の領域を除いては概してパフォーマンスが悪く望ましい未来像とは言えません。一方グループ2は先ほど申しましたように、SDGs的な環境、経済、社会の領域が概して良好で、バランスが取れていることに加えて「移住・交流・観光」の領域が良好な姿になっています。これは外部との交流が活発であるとともに、地域内の経済循環や産業基盤もしっかりしているという意味で、先ほどの知事のお話にもありました3年前のシミュレーション、「開かれたローカライゼーション」という姿とも親和的であると考えられます。以上のような点を踏まえて、グループ2が望ましい未来シナリオと設定してよいかと思われます。それでは望ましいと考えられるグループ2に進んでいくにはどのような要因、あるいは対応が重要となるのでしょうか。これはいわゆるバックキャスト、つまり望ましい未来に進むための道筋というテーマといえますが、こうした点についてもAIを活用して分析を行いました。今回のシミュレーションではグループに至る分岐点が大きく三つ示されています。このうち、まず最初の分岐点は分岐点1です。これは2029年ごろのもので、ここでは第1位に「県内大学の収容力」が出ました。やはり県内の若者が地元に居ながらも高等教育を受けることのできる環境が整備されているという点は非常に重要と考えられ、関連して「県内出身学生のUターン就職率」も4位に上がっており、若者への支援が重要な課題であることが示されています。加えて「エネルギー消費量」や「森林蓄積量」、「小水力発電」といった環境関連、あるいは「公共交通機関利用者数」といった公共交通の関連、さらに教育関係などが上位に示されており、先ほど申しましたように、グループ2がSDGs的な社会像という点からも理解されると思います。次の分岐点2は2034年ごろのものですが、ここでは「平均寿命」や「要介護認定率」、「高齢人口」、「健康寿命」といった高齢者、あるいは介護、健康関係のものが上位に示されています。ご案内の通り、長野県は長寿県として広く知られているわけですが、そうした強みを一層発展させていくことが重要という理解ができるかと思います。分岐点3は2037年ごろのものですが、ここでは「自然公園利用者数」、「農林水産業の法人経営体数」など観光や農林業関係が多くみられますが、これらは先ほどから述べていますグループ2の特徴、つまり外部に開かれつつ1次産業を含めた地域の経済循環もしっかりしているという点と関連していると思われます。次は、全体のまとめ(会見資料/スライド15ページ)でして、その内容はこれまで申し上げてきたことを整理したものとなっています。全体としては先ほども触れました、長寿という点や環境など長野県の強みを生かしながら、若者支援、公共交通など課題点を改善しつつ、SDGs的な社会像を実現していくといった方向が示されていると言えるのではないかと思います。最後に、以上が今回行ったAIシミュレーションの概要ですが、こうした試みはなお試行錯誤の段階でして一層のブラッシュアップを続けていきたいと考えています。いずれにしてもEBPM、つまりデータないし客観的根拠に基づく政策立案ということの重要性が言われる中で、こうしたAIシミュレーションは新たな試みの一つであり、3年前に続きまして長野県がこうした取り組みを継続的に続けておられるのは、全国的に見ても先駆的な意義を持つと言えるのではないかと思っています。

長野県知事 阿部守一
 今回ご協力いただく中で新しいシミュレーションを行うことができて大変ありがたく思っています。まとめと言われましたけれども、長野県もSDGs、今の総合計画上でもかなり意識をして取り組んでいますけれども、広井先生からお話があったように、このシミュレーションを行った結果のグループにSDGs的というお話がありました。まさにこのSDGsの視点での取り組みは非常に有効だということが再確認できるシミュレーションではないかと思いますし、もう少し具体的な場面で見れば、当面この影響度の高い上位20指標の2029年分岐を見ると、今長野県も県立大学を設置したり、私立大学の新学部設置を応援したりということで、まさに大学収容力高める努力をしていることであったり、あるいは脱炭素社会に向けた取り組みを進めて自然エネルギーの普及拡大とエネルギー消費量の削減ということに取り組んできていますし、今まさに重要なテーマとして公共交通の在り方にも向き合っています。こうした政策の方向性はこれからの社会をしっかり確実なものにしていく上で、非常に望まれる方向だということを改めて確認できたと思っています。また、学びと自治ということで今の総合計画で言っていますが、この2029年分岐を見ると、学びと自治に関連するものもかなり多いなと思っています。県内大学ももちろん学びでありますし、社会教育も学び、あるいは自治の両方重なるものでありますし、地域運営組織もまさに自治のテーマですので、そういう意味で長野県としてこのAIシミュレーションを踏まえて、さらに目指すべき方向性をより具体化をしていきたいと思っています。まだまだシミュレーションとしてAIの活用としての限界の部分もありますが、そこはまた広井先生、須藤さんにもご協力いただきながら引き続き取り組んでいきたいと思いますし、また今回得られた結果を踏まえて、今後の総合計画作りも着実に進めていきたいと思っています。改めて広井先生、須藤マネージャーに感謝を申し上げて私からのコメントとさせていただきます。

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取材者からの質問

 1 AIを活用した長野県の未来に関するシミュレーションについて

読売新聞 浅川貴道 氏
 知事にお伺いしたいのですけれども、このようなSDGsに特化といいますか、SDGsを重んじていくと、より望ましい結果にたどり着くのではないかというような結果が出たということですけれども、先ほども知事がおっしゃっていましたけれども、これまでの政策の中にもそういったここで強調されているような政策をやってきたというようなことでしたが、実際に手応えとしてこれまでやられてきたこと、間違っていないのではないかというような実感ですとか手応えですとかそういったものがあったらお聞かせいただきたいのですが。

長野県知事 阿部守一
 もちろんシミュレーション自体が唯一絶対のものではありませんけれども、望ましい社会をつくっていく上で取り組むべき施策の大きな方向性はこれまで長野県が取り組んできた方向性と合致しているなということを改めて確認できたと思っています。ただ、政策の責任を負う私の立場からこのシミュレーションを見るとどんどん分岐していくわけです。分岐1で悪いシナリオとしての、例えばグループ5、6、7の方にいかないようにしなければいけないですし、また分岐のたびごとにグループ1の方にいかないようにとか、グループ3、4の方にいかないようにということが、逆にこのシミュレーションを見るとある意味迫られているわけですので、そういう意味では、まず2029年の分岐点であるところでこのシナリオでいった場合のグループ2の方向にいけるように、スピード感を持って対応していく必要があるということを改めて痛感していますので、今後の総合計画においても今回のシミュレーションもどれぐらいの時間で影響するかということを盛り込んでいただいていますけれども、やはり重要な施策についてはできるだけ早い段階でスピード感を持って取り組んでいきたいと思っています。

読売新聞 浅川貴道 氏
 今度は広井先生にお伺いしたいのですが、改善すべき点もまだあるとおっしゃっていましたけれども、今回の結果で今後改善していく、精度を高めるべきところがあるとすればそれはどういったところでしょうか。教えていただけますでしょうか。

京都大学 人と社会の未来研究院 教授 広井良典 氏
 これは従来からAIシミュレーションの課題としてあるわけですけれども、前回やったときは割と今回よりもワークショップを開いた部分を重視して、人が、「未来はこうなるのではないか」という、そういった点を重視して行ったのですけれども、今回むしろ客観性を高めるということで、先ほど課長のご説明にもありましたように、過去20年のデータの分析から相関関係、因果関係を割り出してモデルをつくった、これは客観性は高まった分、やや強く言うと過去の延長に未来をシミュレーションしているような面があって、決して未来は過去の延長ではなくて人間がつくっていく部分、ただ人間の前のやり方の部分に強調が行き過ぎますと今度は主観的バイアスが掛かったものになってしまう。ですから根本的な問題で、いかに人間は未来というものを予測し、あるいはつくっていけるのかというようなかなり根本的なテーマにもなってくると思うのですけれど、そういう客観的な部分とそれから未来は人間がつくっていくという主観的な部分、過去の延長ではないという部分とその辺りのバランスをうまく盛り込んでいくと、さらに客観性といいますか、精度といいますか、未来構想としての意味が高まるのではないかと思っています。

信濃毎日新聞 立松敏也 氏
 広井先生に伺いたいのですけれどもお願いします。今回の調査のやり方について過去の延長線上に未来を予測するとおっしゃいましたけれども、それ以外の控除されてここに入っていない要素として政策とか制度の転換であったりとか、あるいは技術革新とかっていう要素もあるのですけれども、そういうことがあったとしても、今回ばらつきというのを埋め込んであるので、こうした七つぐらいのシナリオに分かれていて、その分かれ目にはこういった時期に分岐点があるんだよという、そういう大筋の部分は変わらないとみていいのでしょうか。先生としてはどのように考えていますか。

京都大学 人と社会の未来研究院 教授 広井良典 氏
 それも非常に根本的なテーマで、結論からいうとそれが変わらないようにできるだけしているつもりではあります。それはおっしゃられた中にも含まれていますように、かなり不確実性の幅を盛り込んだシミュレーションにしている。実はそこがAI的で、わたしは柔らかいシミュレーションと言っているのですけれど、昔ローマクラブが1972年に「成長の限界」という有名な報告書を出して、あれとかに比べるとだいぶコンピューターとかAIの技術が進んでいるので、そういう不確実性の幅をできるだけ盛り込んだ上でのシミュレーションになって不確実性を吸収するといいますか、ですからそういう意味ではかなり確度は高まっているのではないかとは思うのですけれども、それでもやはりおっしゃられたような技術革新とかいろいろな不確実な要素があったりしますので、そこら辺をいかに盛り込んでいけるかというのがなお課題として残っていると考えています。

信濃毎日新聞 立松敏也 氏
 広井先生に伺いたいのですけれども、最後の2050年にどういう分野で改善しているかというのは何となく描けているのですけれども、例えば分岐点1とか2とかというときに、何が起きて後戻りができない二手に分かれるということになっているのかというイメージが持ちづらいという面があるかと思いまして、これだけだとブラックボックスに見えてしまうところもありまして、どういうことが起きると言ったらいいのかというのをもし伺えれば。

京都大学 人と社会の未来研究院 教授 広井良典 氏
 このAIに対する以前からある批判といいますか、議論としてブラックボックスになっているのではないかと、これは非常に重視するべき点で、ただ思えば実は通常の政策決定よりもある意味では透明度が高いとも言えるのではないかと思っています。つまりこういうモデルをつくって先ほどの課長のご説明にもありましたように、このような数値の入れ方をしたらこういう結果が出たというシミュレーションになっていますので、ある意味では、政策決定を透明化するといいますか、あるいは議論の共通の土台を提起して、その上で皆さんで決めていく、選んでいく、そういうことにできればと思っているのが1点と、分岐点のイメージはここで何が起こるかというよりは、そこの分岐点で望ましい方向にいくために感度というような言い方をしたりしているのですけれど、どの要因が効いてくるかといいますか、どの要因が未来の分岐のこっちにいくかこっちにいくかを左右する重要な要因であるかというのを出したのが、先ほどの分岐点1、2、3の要因ですので、何がそこで起きるかというよりは、そういう未来の分岐のどっちに向かうかに影響を及ぼす度合いを示しているものとご覧いただければと思います。

信濃毎日新聞 立松敏也 氏
 知事に伺います。これまでも5カ年計画、総合計画を県の方でも作ってこられたわけですけれども、こういったシミュレーションを使うことによってそういった政策を形成する上で、課題をどのように改善することができるのかというところを具体的にどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

長野県知事 阿部守一
 これはまさに広井先生もおっしゃっているように、このAIだけではなくて、人間の知恵とか想像力とかそういうものとAIシミュレーションをやはり組み合わせていくということが大事ではないかと思っています。そういう意味で一つ、先ほど広井先生透明性が高まるという話がありましたけれども、恣意(しい)的な政策の優先順位を付けるということではなくて、やはりどの指標を選ぶか、あるいは指標に最終的なアウトプットにどうウエイト付けをするかというところは、ここはやはり政治であったり県民の皆さまの選択という形になると思いますけれども、その間のプロセスどこにどうウエイト付けをするとどういう未来が開けてくるかということについては、一定程度客観的な説明ができるという形になりますので、そういう意味では未来をつくっていく総合計画を策定する上では、非常に大きな役割を果たし得るツールになると思っています。

日本経済新聞 畠山周平 氏
 広井先生にお伺いいたします。モデルを見ていますと、各指標間の関係を関係式で等質してそれの塊をモデルとして分析をかけると、伝統的なマクロ経済分析とかなり似ているところはあるかなと思うのですけれども、これはAIというのはどういう意味でAIと使っていらっしゃいますか。

京都大学 人と社会の未来研究院 教授 広井良典 氏
 それも重要な点で、大きく言うと実は何をもってAIと定義をするかというのは、実は定まったものはありませんで、いろいろなものが非常に高度な計算能力、あるいは最近ではディープラーニング、深層学習ということがありますけれど、ここで使っているAIというのは、基本的にはいわゆる深層学習的な意味のAIではありませんで、先ほど不確実性ということを申しましたけれども、かなり多くの要因間のフィードバックも含めたシステムダイナミクスと言われる、先ほどのクモの巣のようなモデルをつくるわけですけれど、そこでかなり不確実な幅の要因を入れている。課長のご説明にもありました因果関係、矢印の強さ、それからタイムラグ、こっちが動くとこれがこうなる、そこに強さとタイムラグそれぞれに不確実性の幅をかなり盛り込んだモデルになっていまして、それで未来の数も2万とか実際にはもっと多くすることも可能なのですけれども、ですから非常に不確実性の要素を盛り込んだ、しかも複雑系といいますか、極めて多くの要因が絡み合っている、そういうシミュレーションを行っているという点がAI的であると理解しています。

株式会社日立コンサルティング マネージャー 須藤一磨 氏
 広井先生のご説明の通りで、いわゆるディープラーニング系のAIではないですけれども、そういう多変量解析を非常に膨大な量をやっていく。ばらつきの間でモンテカルトシミュレーション(ランダム法)だとかいろいろなアルゴリズム(手順や計算方法)を駆使して見える化をしていくという、一連のプロセス全体を含めてAIというくくりで要約しているというところです。

日本経済新聞 畠山周平 氏
 伝統的な分析の仕方だと外生変数を動かしていくつか下地をつくって動かしていくみたいなそういった感じになるかなと思うのですけれども、こういうやり方をしてばらつきを持たせると膨大な数のシナリオが作れるとそういうところにメリットがあるとそういう理解でよろしいでしょうか。

京都大学 人と社会の未来研究院 教授 広井良典 氏
 そうです。

株式会社日立コンサルティング マネージャー 須藤一磨 氏
 おっしゃる通りです。

中日新聞 城石愛麻 氏
 知事に伺いたいのですが、そもそもAIを使った政策立案の試みというのに挑戦した理由というのは、もともとの動機があれば教えていただきたいのですけれども。

長野県知事 阿部守一
 先ほども少し申し上げましたけれども、EBPMで政策を作っていく上でも、やはりデータ、エビデンスを重視していくということが非常に重要だと思っています。これは当然日々の政策決定においてもデータを意識していくということが重要だと思っていますが、とりわけ未来をどうつくっていくかということに当たっては、非常に膨大な分野、それから膨大なデータを駆使していかなければいけないということになりますので、先ほど申し上げたように3年前を同じようなシミュレーションを行わせていただいていますので、広井先生のお力もお借りしながらこういう形でシミュレーションを行わせていただいたところです。

中日新聞 城石愛麻 氏
 3年前に一度やっていて3年間でどういう結果が出たとは言いにくいかもしれないのですが、一度やってみた手応えみたいなものがあれば知事に伺いたいのですけれども。

長野県知事 阿部守一
 先ほど申し上げたように、例えば回帰分析をして因果関係をひも付けたり、前回に比べて改善したり、あるいは変化をさせたというところがあります。100パーセントこれで最終形ということではないわけですので、引き続き広井先生、あるいは日立コンサルティングの皆さまにもご協力いただきながら、さらにより精度の高いものつくっていきたいと思いますし、今回のシミュレーションで一定程度大きな方向性は示されてきていると思いますので、このことについても政策の中にはしっかり生かせるようにしていきたいと思っています。

中日新聞 城石愛麻 氏
 聞き方を変えますと、政策案、総合計画を作ったり、政策を立案する上で3年前のシミュレーションが生きてきた手応えというのがあったかどうかを教えていただきたいのですが。

長野県知事 阿部守一
 過去のものについては、今回のように総合計画とパラレル(平行)で検討しているというような形では必ずしもないので、今申し上げたように、今回行ったものについては具体的な政策とできるだけ連携させていきたいと思っています。先ほど申し上げたように、一定の制約条件もありますし、AIの結果とそれから民主的なプロセスというか政治的な判断であったり県民の皆さまの判断であったり、そうしたものを組み合わせていくということが必要だと思いますので、そこの部分は県が工夫していかなれければいけないと思っています。ですから今回のシミュレーションは今後に生かしていくということが中心になります。
 ありがとうございました。

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