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更新日:2024年3月27日

林業総合センター

研究報告38号(2024)

研究報告38号(2024)結合版(PDF:8,176KB)

成長に優れた苗木を活用した施業モデルの開発(PDF:407KB)

~最適な植栽密度・下刈り回数の提示~

大矢信次郎・二本松裕太・田中裕二郎*・小山泰弘

大苗による下刈り年数短縮効果の検証及び植栽密度による樹冠閉鎖年数の違いを明らかにするため、カラマツの植栽密度・大苗植栽試験地を佐久市と南牧村に設定した。初期樹高はコンテナ中苗<裸中苗<コンテナ大苗<裸大苗の順であったが、裸中苗の平均樹高は2成長期目にコンテナ大苗を超えた。2成長期後における裸大苗及び裸中苗の平均樹高は南牧で200cm、佐久で150cmを超え、現状ではコンテナ苗に比べて裸苗の方が大苗・中苗とも下刈り省力化に寄与すると考えられた。競合植生との競合状態から下刈りスケジュールを決定し初期保育コストを試算した結果、地拵えをグラップルで行い、競合植生がササであった南牧では、裸中苗と裸大苗で下刈りが不要となり、従来に比べて7割程度のコスト削減が見込まれた。また樹冠幅は、3成長期を経て
もコンテナ苗は裸苗より有意に小さく、このことが樹高成長量にも影響を及ぼしている可能性が示唆された。

キーワード:カラマツ大苗、下刈り省力化、形状比、競合状態、機械地拵え、再造林コスト

 

カラマツ人工林の低コスト更新技術に関する研究(PDF:2,025KB)

大矢信次郎

カラマツ人工林の造林コストを低減する技術の確立を目的として、伐採と造林の一貫作業システムによる造林の機械化を検証するとともに、造林作業のうち特に労働強度が高い地拵えを機械化することによる生産性の向上とコスト削減効果を評価した。また、機械地拵えに伴う土壌攪乱によって競合植生の抑制がどの程度期待でき、下刈り回数をどの程度削減可能であるのか検討した。これらの結果、皆伐後、速やかにバケットまたはグラップルによる地拵えを行い、直近の適期(晩秋または春)に裸大苗を植栽することによって、下刈りは2~3回程度に削減することが可能と考えられた。これにより地拵えから下刈りまでの再造林コストは、従来と比較してバケット地拵えでは約2分の1に、グラップル地拵えでは約3分の2に抑制されると試算され、作業人工は約5割~6割減となり、それらの労働力を他の造林地に振り替えることによって再造林を一層推進することが期待できる。

キーワード:伐採・造林一貫作業、機械地拵え、生産性、コスト、下刈り回数削減

 

成長に優れた苗木を活用した施業モデルの開発(PDF:465KB)

~成長に優れた苗木の育苗技術の高度化~

二本松裕太・小山泰弘・清水香代*

優れた樹高成長が期待できる形状比の低いカラマツコンテナ苗を1年で生産することを目指し、コンテナ容器、元肥量、育苗密度について検討した。県内に最も普及している150ccコンテナ容器でも、育苗密度を1コンテナあたり24個体に調整し、元肥量を抑えることで、形状比100未満の得苗率は92%、80未満の得苗率は71%となり、形状比の低い1年生コンテナ苗の生産は可能と判断した。植栽後の樹高成長は形状比100未満の苗であれば良好であったが、形状比80以上で枯死率が高くなる場合があり、目指すべきカラマツコンテナ苗の条件としては形状比80を1つの目安とするのが妥当と考えられた。

キーワード:カラマツ、一年生コンテナ苗、育苗密度、形状比

 

シイタケ産業活性化のための省力栽培技術の開発(PDF:764KB)

片桐一弘・加藤健一・増野和彦

【原木栽培】オガ菌を植菌する際の、封ロウ作業の有無により子実体発生量に差が見られない品種が確認され、これらの品種は封ロウ省略栽培の適性が高いと考えられた。わりばし種菌を用いた栽培試験では、一原木当りのわりばし種菌の接種量を増やすと、子実体発生量が増加し、一般的な種駒菌を用いた栽培方法と同程度の収量が得られることが明らかになった。生シイタケ生産を行う場合、必要となる休養の省力化試験では、休養期間中の積極的な加温や加湿処理(蒸し込み)により、通常の休養管理よりも、休養期間が短縮されることが分かった。また、子実体発生量の増加が期待できることから、浸水発生の回数を減らすことが可能と考えられた。
【菌床栽培】(1)培地材料に、おがチップを混合した結果、品種間差は見られたものの、子実体発生量が増加することが確認された。(2)ビン栽培に適性のある市販品種を新たに1品種確認した。(3)ビンの遮光の適切な時期を検討した結果、多くの品種で遮光時期による子実体発生量への影響は無いことが確認された。(4)ビン容器の通気性について検討した結果、通気性の高い蓋を使用したビンで、高収量を得られる品種が確認された。(5)浸水や打床といった、刺激(発生刺激)をビンに与えた結果、子実体の発生促進効果が確認された。(6)高収量かつ短期間での栽培技術の開発試験を行った結果、ビン栽培において、栽培期間を短縮し、回転率を上げることにより、全体の収量を高めることが出来る可能性が示唆された。(7)既存の菌床シイタケ生産者施設において、ビン栽培により子実体が発生することが確認できた。(8)ビン栽培の生産性を上げるためには、一ビン当たりの子実体発生量の増加や、栽培期間の短縮化による回転数を増やす必要があると考えられた。それにより、袋栽培と同等以上の「生産量」を得ることが、菌床シイタケビン栽培技術の確立には重要と考えられた。

キーワード:シイタケ、原木栽培、菌床栽培、省力栽培、ビン栽培

 

タラノキ単年栽培法に関する試験(PDF:2,560KB)

加藤健一・古川仁

本試験ではタラノキについて、その繁殖力を活用した新たな栽培法を開発するため、実際の圃場(耕作放棄地)を用いて実証試験を試み、以下の結果を得た。
(1)タラノキ種根の植付けは、春季より晩秋の方が適期である可能性が考えられた。(2)タラノキ根株を掘り上げる手法について、タラノキを栽培する畝の下にあらかじめシートを敷き掘り上げたところ、人力でも比較的容易に行えた。(3)タラノキの幹と根を毎年新たに更新させる「タラノキ単年栽培法」の実証試験を休耕田で行ったところ、当該栽培法が有効であること及び休耕田でのタラノキ栽培が可能なことが確認できた。(4)タラノキ単年栽培法は通常の栽培に比べ収穫量は少ないが、毎年タラノメを収穫しながら1年生のタラノキの根を調達でき、栽培規模拡大に必要な種根調達の手法として有効である。

キーワード:タラノキ、タラノメ、種根、掘り上げ、幹の切り返し

 

長野県産カラマツ大径材から製材された心去り平角材の乾燥特性及び強度性能の解明(PDF:1,876KB)

奥原祐司・吉田孝久・今井信*・山口健太*

今後、生産の増産が見込まれるカラマツ大径丸太の強度性能と、この大径材から製材された心去り平角材の乾燥特性及び曲げ強度性能を把握し、その利用有効性について検討した。
(1)素材の大(140本)の縦振動ヤング係数の平均値±標準誤差は12.0±0.13kN/mm2、中(41本)は13.8±0.25kN/mm2となり、現在の本県の素材の大及び中のカラマツ丸太の縦振動ヤング係数の平均はEf130になると推測する。(2)2丁取りした心去り平角材の一方を蒸気圧力併用式乾燥ともう一方を蒸気式乾燥した結果、平均含水率は12.6%と15.0%となり、蒸気圧併用式乾燥は約3割以上の時間短縮が期待できる。また、強度性能については、目視等級の基準強度を満足し一部の試験材を除けば機械等級も満足した。(3)2丁取りした心去り平角材をガラスハウス乾燥した結果、約6カ月間で含水率15%を下回り、強度性能では目視等級及び機械等級区分の基準強度をほぼ満足した。(4)丸太の縦振動ヤング係数とそこから製材された2本の平角材の縦振動ヤング係数の平均値には相関関係が認められた。しかし、個々の平角材の曲げヤング係数では丸太の曲げヤング係数と必ずしも一致しない場合もあった。(5)1本の丸太から製材された実大材試験体と無欠点試験体について、実大材試験体の曲げヤング係数は無欠点試験体の範囲内にあり、また、実大材試験体の曲げ強さは4割強(正角材に対しては約2割)寸法効果により低下していた。

キーワード:カラマツ、心去り、平角材、中温乾燥、ガラスハウス乾燥

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所属課室:長野県林業総合センター 

長野県塩尻市大字片丘字狐久保5739

電話番号:0263-52-0600

ファックス番号:0263-51-1311

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