ホーム > 県政情報・統計 > 広報・県民参加 > 県民ホットライン > 『県民ホットライン』2026年1月分(月別) > EF62形電気機関車7号機保存・展示プロジェクト企画提案書について
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更新日:2026年3月16日
はじめに
現在、長野駅と東京駅は新幹線で結ばれ、最速一時間二十分ほどで結ばれています。この新幹線ができる以前は、信越本線により長野駅と上野駅を約三時間半をかけて行き来していました。
さらに歴史をさかのぼり、鉄道が通るまで信州は陸の孤島でした。先人たちはこの孤島を鉄路で切り開きました。
県歌「信濃の国」にも歌われている
嘆(なげ)き給(たま)いし碓氷山(うすいやま)
穿(うが)つ隧道(トンネル)二十六
夢にもこゆる汽車の道
まさにこの碓氷山(碓氷峠)を通り、険しい信州の鉄路を駆け抜けた機関車があります。
本企画書では、現在旧篠ノ井機関区(現・JR貨物関連施設)に秘蔵され、解体の危機にひんしている「EF62形電気機関車7号機(以下、EF627)」を長野県が譲り受け、長野県の歴史の新たなシンボルとして恒久保存・展示の提案となります。
EF627とは、かつて信越本線の難所・碓氷峠を越えるために開発され、その後信州の山岳路線と共に歩み、引退後も奇跡的に篠ノ井の地で眠り続けてきた「地域の産業遺産」です。
本提案は、単なる車両保存にとどまらず、優れた観光資源とし、地域活性化、そしてクラウドファンディングを活用した持続可能な資金計画を含む、包括的な地域戦略です。
1.なぜ「EF627」なのか
(1)碓氷峠の専用機、信州の汎用機
EF62形電気機関車は、日本の鉄道史上最も過酷な勾配区間であった信越本線の横川から軽井沢間(碓氷峠)を直通運転するために開発された特殊な機関車です。
しかし、その設計思想は碓氷峠専用にとどまらず、長野県内の勾配線区でも活用されました。
特に注目すべきは、動輪軸重を軽減するために採用された「C-C」軸配置(3軸ボギー台車)です。
これは線路規格の低い亜幹線への入線を可能にするための工夫であり、EF62が篠ノ井線のような山岳路線でも活躍できた理由の一つです。
(2)歴史的な流れ
EF627は、長きにわたり「篠ノ井機関区」と深い縁を持っています。
多くの同型機が廃車・解体される中、7号機は篠ノ井の地で保管され続けてきました。
1990年代後半に解体されたとの情報が錯綜(さくそう)しましたが、近年の調査により、旧篠ノ井機関区(現・JR貨物関連施設)の庫内で静かに眠っていることが確認されています。
現在、保管場所からの撤去・解体が懸念されております。
(3)希少性
EF62には前期形と後期形で外観上の差異が存在します。
7号機は一桁ナンバーの初期型であり、側面フィルターの形状や尾灯の意匠などに、高度経済成長期の国鉄デザインのこだわりが見て取れます。
現存するEF62は極めて少なく、碓氷峠鉄道文化むら(群馬県)に保存されている1号機・54号機などを除けば、7号機は現存する数少ない、そして長野県内に残る唯一の個体となります。
この希少性は、鉄道ファンのみならず、産業考古学的見地からも極めて高い価値を有します。
2.保存についての提案
鉄道車両の屋外保存において最大の敵は「紫外線」と「雨雪」による腐食です。
過去の失敗事例の多くは、露天保存による急速な老朽化が原因です。
本プロジェクトでは、当初より「屋根付き展示」を強くお勧めします。
・デザイン:単なるトタン屋根の車庫ではなく、駅周辺の景観と調和した、透過性のあるポリカーボネートや強化ガラスを多用した明るいキャノピーなど。
・プラットホーム:機関車の足回り(台車構造)を観察できるよう、片側には低いプラットホームを設置し、もう片側は地面レベルから見上げる構造とし、3軸ボギーの特徴的なジョイント音を想像させるような、バラストと枕木による軌道再現を行います。
・ライトアップ:夜間はキャノピー内部から機関車を照らし出します。
3.資金計画(ガバメントクラウドファンディングの戦略的活用)
本事業の成否は、財源の確保にかかっています。
機関車の輸送・設置・修繕には多額の費用を要しますが、県の財源のみに依存することは現実的ではありません。
そこで、「ふるさと納税」制度を活用したガバメントクラウドファンディング(GCF)を主軸とした資金調達を提案いたします。
(1)概算予算
※仮に聖高原駅周辺で展示するものとします。
・車両譲渡費:JR貨物からの資産譲渡(概算費用2,000,000円)備考:スクラップ評価額相当+事務手数料
・有害物質除去:PCB・アスベスト除去処理(概算費用8,000,000円)備考:法的義務であり、最も高額かつ不可欠な工程
・輸送費:篠ノ井から聖高原(トレーラー陸送)(概算費用15,000,000円)備考:クレーン作業2回、深夜特殊輸送、道路使用許可等
・基礎・軌道工事:展示場所の地盤改良・レール敷設(概算費用6,000,000円)備考:100トンの重量に耐える基礎
・上屋建設費:専用キャノピー設置(概算費用20,000,000円)備考:積雪荷重を考慮した恒久的な屋根
・初期修繕費:塗装剥離・再塗装・防さび処理(概算費用8,000,000円)備考:現役時代の「青15号・クリーム1号」への復元
合計概算費用59,000,000円
(2)資金調達の内訳案
資金調達を2つに分け、まずは車両の購入移転設置を第一に考えます。
上屋の建設費は第二弾の資金調達とします。
ガバメントクラウドファンディング(目標:3,000万円)
近年の鉄道保存系CFの成功事例を鑑みると、全国規模のファンを持つ「EF62形」かつ「解体危機からの救出」というドラマ性があれば、3,000万円から4,000万円の調達は十分に可能ではないかと考えられます。
返礼品案:
・銘板への芳名:展示施設内に設置する真鍮(しんちゅう)製銘板への名前刻印(5万円から)
・オーナー制度:「第1動輪オーナー」「パンタグラフオーナー」など、部品ごとの仮想オーナー権(10万円から)。
・先行体験:除幕式への招待、運転席への着座体験、夜間撮影会への参加権。
・特産品セット:信州産リンゴや信州牛と、EF62オリジナルグッズ(図面クリアファイル等)のセット。企業版ふるさと納税
・協賛金(目標:1,000万円)建設関連企業や、長野県内に拠点を置く鉄道関連企業、さらには県内に工場を持つ企業等に対し、企業版ふるさと納税を募ります。「地域のランドマーク形成への貢献」は企業のCSR活動として魅力的です。
4.持続可能な運営「EF62保存積立金」の創設
鉄道車両保存において最も恐れるべきは、設置後のメンテナンス資金不足による荒廃です。
これを防ぐため、設置当初から維持費の調達を考えます。
(1)EF62保存維持基金
本プロジェクトでは、イニシャルコストの調達だけでなく、ランニングコストを賄うための「積立金制度」を導入します。
・財源:ふるさと納税の一部をこの基金に繰り入れます。
・使途:5年ごとの部分的補修・コーティング(約100万円)。
10年から15年ごとの全面再塗装(約500万円から1,000万円)。
日常の清掃活動費(ボランティア保険等)。
(2)「守る会」の結成と地域コミュニティ
行政主導の管理には限界があります。そこで、村民、鉄道ファン、そして地元の方々を巻き込んだ「EF627を守る会(仮称)」を結成します。
清掃イベント:年に数回、車両のすす払いやワックスがけをイベント化し、参加者には特製のおにぎりや豚汁を振る舞うなどして、コミュニティ形成の場とします。
教育活用:小学校の写生大会の題材としたり、理科の授業で「電気と動力」「摩擦と粘着」を学ぶ教材として活用します。
5.観光戦略と地域への波及効果
(1)ターゲット層の分析と誘客
・コアな鉄道ファン
「篠ノ井のヌシ」であるEF627を撮影・記録するために全国から訪れます。
彼らは滞在時間は短いものの、グッズ購入やSNSでの拡散力が極めて高い層です。
・団塊の世代・シニア層
夫婦での旅行が多く、近隣の宿泊施設での宿泊や食事、善光寺街道(麻績宿)の散策とセットでの観光が見込めます。
・ファミリー層
巨大な機関車は子どもたちにとって単純に魅力的です。聖高原スキー場や聖湖でのレジャーと組み合わせた立ち寄りスポットとして機能します。
6.将来的な展望とリスク管理
(1)うわさされるED62形について
現在、篠ノ井の保管場所にはEF627以外にも、ED62形電気機関車(15号機、16号機等)が存在するという情報が、まことしやかにささやかれています。
ED62は飯田線等で活躍したより小型の機関車ですが、現時点ではその去就は不透明であり、公式な譲渡対象となるかも定かではありません。
本プロジェクトでは、まずは確実性が高く、より大型でシンボル性の高い「EF627」の救出・保存に全力を注ぎます。
もし将来的にED62の譲渡が可能となり、かつ、EF62の保存運営が軌道に乗って資金的余力が生まれた場合には、「第2期展示計画」として検討の俎上(そじょう)に載せるという、段階的なアプローチをとることでさらに話題性を作り上げることもできます。
(2)結論:未来への遺産
篠ノ井で静かに眠っていたEF627というこの機関車を保存することは、単なる懐古趣味ではありません。
それは、厳しい山岳地帯を切り拓(ひら)いてきた先人たちの労苦への敬意であり、何より、未来の県民や来訪者に「ここは特別な場所である」と語り続ける、無言の語り部を県に招くことです。
資金面でのハードルは決して低くはありませんが、GCFという現代の手法と、全国の鉄道ファンの熱意、そして村民の郷土愛を結集すれば、必ずや達成可能です。
今こそ、このプロジェクトを始動させる時です。もし長野県が「NO」と言えば、この車両は近々にはガスバーナーで焼き切られ、ただの金属塊になります。
一度失われれば、二度と元には戻りません。何とぞ賢明なご判断をお願い申し上げます。
長野県県民文化部長の直江崇と申します。
「県民ホットライン」にお寄せいただいたEF62形電気機関車7号機の保存・活用に関するご提案につきまして、お答えします。
この度は、詳細な資料を添えて丁寧なご提案をいただきましたことに、心より感謝申し上げます。鉄道遺産への深い関心と、地域の歴史を後世に伝えようとするお考えを、貴重なご意見として拝見いたしました。
ご提案の電気機関車に関しましては、報道により、JR貨物塩尻機関区篠ノ井派出の施設内にEF62形電気機関車が現存していること、また、その保存の理由や今後の活用については、「事業用途に使用している車両ではないため回答を差し控える」とJR貨物広報室が回答したことを承知しています。
当該車両はJR貨物が所有する資産であり、文化財の保護の可否については、一般的に、まず所有者の意向が優先されます。従いまして、JR貨物の意向が示されていない状況においては、県としての見解を示すことができない状況です。
なお、今後、所有者から相談があった際には、県としてどのような関わりが可能か検討してまいります。
以上、ご提案への回答とさせていただきますが、ご不明な点がございましたら、文化振興課文化財・県史編さん担当課長:田中 洋、担当:文化財係までご連絡くださいますようお願い申し上げます。
【問合せ先:県民文化部/文化振興課/文化財係/電話026-235-7441/メールbunkazai(あっとまーく)pref.nagano.lg.jp】
(分野別:その他)(月別:2026年1月)2025000565
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