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更新日:2021年10月15日
北アルプス地域振興局
大町市の北西部に位置する上原(わっぱら)地区では、昭和21年から37年にかけて戦後の食料増産政策の一環で「代行開墾建設事業平(たいら)地区」として長野県が事業主体となり282haの水田地帯が開墾されました。
この開墾された水田に水をかける過程において、同時期に上流部の区間で造成されたのが地元で「ぬるめ」と呼ばれている温水路です。その後、大町ダム砂利採取の補償工事で昭和57年に一部改修を行い、現在の姿となっています。
幅が広く、水深が浅い水路の構造は全国的にも珍しいものです。
また平成13年度には県営事業により「ぬるめ」周辺の遊歩道や駐車場、トイレ等の整備を行っています。
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上原温水路(ぬるめ)は、長さ約300mの区間で幅は16mから18mほどありますが、水深は10cm程度しかありません。
上原地区の水田には、その地形上の制約から木崎湖や青木湖の温かい水ではなく、北アルプスを源とする篭川の冷たい水を取水しなければなりませんでした。一般に水稲の生育に最適な水温は25度から30度(気温、地温等気象条件を考慮しない場合)、最低水温は12.5度と言われています。
稲の生育は「1度1俵(水温を1度上げることにより、米1俵増収すること)」とも言われ、田んぼに掛ける水の温度を少しでも温かくしたいという先人たちの強い思いから、水路の幅を広くし、水深を浅くすることによって水田にかける前に少しでも温めようという昔の人々の知恵により造成された施設です。
夏の暑い日に取水地点の篭川に行って実際に水温を測ってみたところ、13度でした。
上原温水路の出入り口で測ったところ、入り口では15度でしたが、出口では17度まで上昇していました。
上原地区では、「ぬるめ」は地域の財産との認識から、地元自治会に学識経験者らを加えた「わっぱらんどの会」を自発的に発足させました。同会が中心となって、地域住民が主体的にかかわり、また県外からの来訪者も対象として、上原地区の特性(温水路やその周辺の歴史環境、自然環境、景観)を十分に活かした農村アメニティの向上に取り組んでいます。また、温水路周辺の維持管理作業、専門家による自然観察会などを通じて、次代を担う子どもたちへの環境教育を実施しています。
わっぱらんどの会は、「ぬるめ」を単なる農業用水路として見るのではなく、稲作文化を後世に伝え、「ぬるめ」文化を学べる場所として活用し、活動目的を
(1)上原地区全体の歴史遺産・農村環境の保全、活用、継承
(2)子どもを健全に育む環境教育の場の整備
(3)市民を主役とする地域社会づくり
としています。
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現在、わっぱらんどの会は「NPO法人ぐるったネットワーク大町」内に事務局を置き、毎年夏祭りや体験学習等の受け入れ等のイベントを定期的に開催しています。
また周辺には木陰の広場やツリーハウスがあり、夏の憩いの場として過ごすには最適の空間が創出されています。真夏の暑い日でも水温は冷たく、むしろ水路の中に長時間入っているのが我慢できないほどです。
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