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更新日:2025年12月8日

環境保全研究所

「令和7年度(2025年度)信州自然講座」を開催しました

信州自然講座は、自然環境に関する調査研究の成果や、地域のすぐれた自然、注目される取り組み等を紹介するとともに、その課題を県民のみなさまとともに考えるイベントです。平成16(2004)年度から県内各地で毎年1~2回開催しています(通算31回目)。

本年度は、全国各地で里山の自然や文化の継承が課題となる中、里山で育まれてきた自然や文化の魅力をどう活かし次世代に引き継ぐか、数千年にわたる人の暮らしによって形作られた自然と文化が根付く開田高原を例に、参加者のみなさまと考えました。

講座は、講演、展示、意見交換の3部構成で実施しました。講演では、開田高原で研究や活動を実施する5名がその内容を紹介しました。展示では、県内10団体が環境保全の取組等を紹介しました。参加者のみなさまには、講演や展示の内容をふまえ、草地や木曽馬を活かした地域づくりへの提案をいただきました。意見交換会では、地域づくりに関する魅力的なアイディアが多数あがり、開田高原の人の暮らしが育む自然の持つ可能性が示されました。

当日は、木曽町をはじめとする県内の他、兵庫、東京、愛知など県外からご参加いただき、議論を深めることができました。今回の信州自然講座を共催し、準備や展示へのご協力をいただきました木曽町とエコネットきそ(木曽町環境協議会)のみなさま、後援をいただき、展示にもご参加くださいました環境省信越自然環境事務所みなさまに、心より御礼申し上げます。

テーマ「開田高原の生物多様性と人の暮らし」

開催概要

  • 日時:令和7年(2025年)11月15日(土曜日)13時00分~16時00分
  • 会場:木曽町文化交流センター多目的ホール(木曽郡木曽町福島5129)
  • 主催:長野県環境保全研究所
  • 共催:木曽町、エコネットきそ(木曽町環境協議会)
  • 後援:環境省信越自然環境事務所
  • 参加者数:60名
  • 当日配布資料:プログラムと要旨(PDF:1,914KB)

展示参加団体

  1. 木曽町環境協議会(エコネットきそ)・株式会社光商会

  2. 認定特定非営利活動法人長野県NPOセンター

  3. 環境省信越自然環境事務所

  4. NPO法人信州草原再生

  5. 山田牧場を愛する会

  6. (一社)木曽おんたけ観光局

  7. 長野県木曽地域振興局総務管理・環境課

  8. わかぜん

  9. 名古屋大学博物館

  10. ニゴと草カッパの会

  11. 長野県環境保全研究所

講演・質疑応答

  • 講演1「開田高原の生物多様性をはぐくんできた歴史と文化」浦山佳恵(長野県環境保全研究所)

質問1:ここから先の未来、どのように次世代に残すか、どのような実践があるか。
回答:後半の意見交換会でみなさんと議論することになると思うが、個人的には、何事もやってみないと分からないので、それぞれができることを実施すればそれほど暗い未来ではないと考えている。

質問2:人の手が加わらなかった場合、草地は残っていなかったのか。
回答:草地として残っているのは火入れをしているところだけといってよい。何もしなければ森林になってしまう。
回答:今ある草地は手入れしなければ森林に戻っていく。縄文時代からの人の影響がなかったと仮定した場合は、河川の氾濫原など草地が残りやすいところのみが草地だったのではないかと考えられる。

  • 講演2「開田高原の人の暮らしが育む生物多様性」中村寛志(信州大学)

質問3:火入れをせずに草だけ刈った場合はどうなのか。
回答:裸地率を高いまま維持できればチャマダラセセリにはプラスになるだろう。韓国のチェジュやモンゴル等火入れせずともチャマダラセセリがたくさん生息しているところがあるので、必ずしも火入れがなければ生きていけないわけではない。

  • 講演3「花野で草を刈る木曽馬との暮らし」田澤佳子(ニゴと草カッパの会)

(時間の関係で講演の部での質疑はなし。)

  • 講演4「開田高原の草地環境に対する住民の意識」畑中健一郎(長野県環境保全研究所)

質問4:自然が豊かであるかという問いは、どのような基準で豊かか、あるいは、そうではないと判断したかを聞いているか。
回答:そこまで詳細には聞いていないが、景観、例えば御岳山の見える風景や里地里山の風景等により判断していると思われる。

  • 講演5「木曽馬とはどのような馬なんだろう?」高須正規(岐阜大学・岡山大学)

質問5:遺伝的に木曽馬は北海道の南部にいた馬に近いと聞いたことがある。在来野菜等は気候や人の好みによる選択圧がかかっていると思うが、木曽馬も木曽独自の選択圧がかかったのか。
回答:木曽馬は、お腹がでぽっとしている、足が短い、エックス脚等が特徴。それがどのような利用価値があるかは不明。

質問6:数年前まで木曽馬を飼育していた。草刈りや馬の飼育を体験するテーマパークのようなものを作るのはどうだろうか。
回答:一つのよい考え方だと思う。トンネルを抜けたら馬がいる、町長が馬で出勤する等馬を活用した観光は一つの方法だろう。大事なのは、自由な発想。自由な発想が木曽馬を残すカギではないかと思う。

意見交換会

  • 講演内容への質問と講演者の所感

所感(浦山):研究所で開田高原の草原研究を始めて10年以上が経過した。国内の草原といえば阿蘇だが、その次の次くらいの研究の土台ができてきたように思う。

質問7:火入れができなくなったら生物多様性は保たれるのか。
回答(中村):今日はチャマダラセセリについて話したが、アカハネバッタは5年前に火入れをしなくなったところでまったくいなくなってしまった。オオルリシジミについても火入れが重要。草原性の昆虫、特にチョウと農業のサイクルとの間には非常に深い関係がある。チャマダラセセリは草刈りだけでも維持できるが、草刈りをやめるといなくなる。

所感(中村):これまで絶滅危惧種の保護・回復について研究してきたが、チャマダラセセリは非常に難しい。木曽馬の保全も、木曽馬の価値を皆で見出した先に希望があるのであれば、チャマダラセセリの価値は何だろうと考えている。小さな命が消える危機感を皆に持ってもらうことが希望なのではないか。

質問8:草刈り歌にはメロディがあるのか、歌ってもらえないか。
回答(田澤):草刈り歌にもメロディがあった。~実際の歌唱~

質問9:ニゴと草カッパの会では草刈りをやっているとのことだが、火入れはしないのか。
回答(田澤):開田地域では火入れの主体は集落。ニゴと草カッパの会では火入れの際に集落の手伝いを行っている。採草を行った場所は防火帯の一部であり、具体的に防火帯を作っている場所もある。今年わかぜんさんと一緒にあらたに一つの区画で防火帯の作業を開始した。参加したい方がいれば声をかけてほしい。

所感(田澤):大阪の出身で木曽に移住し、はじめて自生のキキョウに出会い、それが絶滅危惧であることを知り、次に木曽馬のことを知った。その関係性がなければこのような活動は始めなかったと思う。

質問10:現在水上町で草原再生活動をしているが、参加者の多くは首都圏の方。地元からの参加が少ない。地元の参加を促すよいアイディアはないか。
回答(畑中):非常に難しい質問。地元はどこも人がたりない。自分たちの活動に参加してもらうだけでなく、地元で実施する活動に自分たちが協力できないかと考えるとよいのではないか。

所感(畑中):本日は多くの方に関心を持って集まっていただいた。本日参加された方を木曽馬文化と草原の再生チームに組み入れるとよいのではないか。

質問11:開田高原といえば木曽馬と蕎麦のふるさと。木曽馬と蕎麦に何か深い関係性はないか。
回答(高須):直接的な関係はないが、木曽馬の糞で育てた蕎麦に付加価値をつけて販売することはできるかもしれない。

所感(高須):本日の発表とこれまでの質疑を聞いて、それぞれの意見を対立ではなく対話という形で取り入れていくことで前に進むことができるのではないかと感じた。

質問12:干し草のための山と生草のための山の違いや、植物の違いはあるのか。
回答(浦山):干草山はススキ。それを干したものが干し草になる。平坦な場所で刈った草を並べて干すとなかなか乾かないため、干し草山は草が乾きやすい斜面に多い。一方で生草山は、比較的傾斜が緩やかな場所。運搬の点からも違いがあり、干し草は軽いが、生草は重いので生草山は家の近くにあることが多い。また、生草は草種にこだわりがないため生草場には様々な種があるが、干し草にはススキを使うので干し草場はススキが主。

質問13:野生動物、耕作放棄地、農薬利用の問題が切実。動物たちや自然との付き合い方をどうしていけばよいか。
回答(須賀):部分的な回答になるが、例えば現在各地で獣害が問題になっているが、人里近くに藪があることは一つのリスクと言われており、草を刈って電気柵を設置する等、緩衝帯を作る必要がある。開田高原の場合は火入れや草刈りを実施しており、これが緩衝帯になっている可能性がある。これに加え、開田高原を木曽馬がたくさんいるような開けた場にすることで、獣が寄り付かない場にすることができるのでは。合わせて農薬利用も減農薬、無農薬等にすることで地域発信の一つになるのでは。

  • 草地と木曽馬を活かした地域づくりなどへの提案

提案1:生物多様性の調査結果やニゴと草カッパの会の活動のもようなどを積極的に広報してほしい。
意見(田澤):積極的に広報したいが、手がまわっていない。コロナ禍の間は映像コンテンツの作成をした。Facebookでの発信も行っている。今後は充実したい。図書館など地元向けに紙媒体を置くことなども検討したい。
意見(須賀):畑中のアンケートで、手伝いがしたいと回答している方も一定数いた。現地作業は難しいが、情報発信だけでも手伝えるという方を探すのもよいのではないか。

提案2:馬糞が土壌改良に最適とあった。温暖化や食料自給率等の問題解決にもつながるので、公費で土地を確保して一大農耕地として開拓し、そこに木曽馬の体験施設を併設するというのはどうか。
意見(高須):素晴らしい。馬糞堆肥の利用だけでもキャッチコピーにできるかも。戦略を立てて地域活性を図るとよさそう。
意見(田澤):肥やし馬という概念がある。農家の中には肥やしをつくるために飼っている人もいると聞く。馬にもいろいろな活用方法があるのではないかと思う。

提案3:JRAと連携し木曽馬の競馬はどうか(世界一遅い競馬)。木曽馬で峠を越す旅はどうか。
意見(高須):どういうキャッチフレーズで広報するか、どのような戦略で広報して人を集められるかを検討できればJRAも助成してくれると思う。与那国馬は捕まりづらいので、年に一回採血、健康管理のために捕獲することをイベント化し、JRAが助成していという事例はある。街道旅行もインバウンド需要等がありそう。戦略的に構想を立てられれば活用できるのでは。
意見(須賀):開田高原の小学校では人と馬が走る。そういった地域振興の形もあるのではないか。

提案4:木曽馬と暮らす現代風モデルハウス、お試し住宅はどうか。
意見(田澤):木曽馬と一緒に暮らしている方から意見はないか。
意見(参加者):木曽馬と暮らすために移住してきた。もとはJRAにいた。獣医師。少しずつでも仲間を増やすことでアイディアが現実に向かうのではないか。そのためにも自分でも今一人ずつ仲間を増やしている段階である。
意見(参加者):昔は高ボッチ高原草競馬があった。飼う人が増えていけば草競馬的なイベントができるのではないか。

提案5:チャマダラセセリの移転や再保全はどうか。
意見(中村):岐阜県の日和田高原にはチャマダラセセリがいる。これを移転するためには、DNAの確認が必要。ハプロタイプは開田と一緒だと思うが、標本で確認する必要がある。実施する場合は生息域外保全で個体を増やす必要があるが、人的、金銭的リソースが必要なためプロジェクトとして実施する必要がある。オオルリシジミは安曇野が天然記念物に指定し主導している。チャマダラセセリも天然記念物等に指定した上でプロジェクト化すれば可能だと思う。

提案6:刈り草を食べる木曽馬を増やすことで、生物多様性保全、景観、エサ問題を解決をはかるのはどうか。
意見(田澤):お互いを思う気持ちが大事。馬が草を食べることが蝶々のためになり、それが馬のためにもなるサイクルを考える必要があるのではないか。蝶々を守るため刈り草の食べ役として馬を一方的に利用するだけでは片手落ちに思う。

意見:地元への周知が少なかったように思う。開田の事業全般をどう周知するとよさそうか。
意見(参加者):担い手の確保、次世代にどう引き継ぐかがカギ。明日山田牧場を愛する会でもシンポジウムをやるが、地元の中学生が研究発表を行う。山田牧場を愛する会では教育委員会等と連携して活動している。イベントに学生を巻き込むとよいのでは。

司会(須賀):最後に貴重な意見をいただいた。今日は時間となったのでこれで意見交換を終わりとしたい。

参加者の居住地(60名)

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アンケート結果(回答数30、回収率50%)

  • 回答者の居住地と年代

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  • 研究所の認知度

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  • 講座の内容に対する関心の評価

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  • 講座の満足度・有用度に対する評価

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当日のようす

  • 開会あいさつ・趣旨説明

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  • 講演のようす

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  • 展示のようす

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  • 意見交換会のようす

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  • 講演者・展示参加者のみなさま

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お問い合わせ

所属課室:長野県環境保全研究所 

長野県長野市大字安茂里字米村1978

電話番号:026-227-0354

ファックス番号:026-224-3415

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