ホーム > 県政情報・統計 > 県概要 > 知事の部屋 > 知事のコメント・あいさつ・メッセージ > 知事訓示(令和3年4月5日 新規採用職員任用式)

ここから本文です。

更新日:2021年4月12日

知事訓示(令和3年4月5日 新規採用職員任用式)

  • 日時:令和3年4月5日(月曜日)
  • 場所:西庁舎111・112

知事訓示

 新しく県職員になった皆さんを迎えるに当たり、一言、私から皆さんへの期待と激励を込めて、あいさつをいたします。

 まず、4月1日から県職員になられた皆さんを、県職員を代表して心から歓迎いたします。本来、4月1日に任用式を行うことが通例ですが、新型コロナウイルス感染症対策として、開催時期を遅らせていただきました。今日、この会場に出席されている皆さんは採用された職員の一部ですが、それ以外の多くの新規採用職員の皆さんには、このマイクを通じて、この式に参加していただき、私のあいさつを聞いてもらっています。本来は、一堂に会し、みんなで顔を合わせて、スタートだという思いを共有することが望ましいと思いますが、今、長野県においても、新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数が増加基調にあり、第4波と言える状況にありますので、是非、御理解いただきたいと思います。

 先ほど、新規採用職員を代表して、安藤菜乃香さんに辞令を受け取っていただき、服務の宣誓をしてもらいました。是非、皆さんには、県の職員になろうとした思い、今ここに、こういう形で集っていただいている初心を忘れずに、県民の皆様のために活躍していってもらいたいと思います。県職員になったからには、県民の皆さんのために仕事をしたいと思っていますよね。まさか自己中心的に公務員になった人はいないと思いますけれど、県職員の仕事は、県民の皆様の幸せに貢献していく、そして、私たちが愛する長野県を発展させていく、そういう使命を担っています。このことはしっかり共有していただきたいと思います。

 先ほどの服務の宣誓の中で、いくつかキーワードがありました。その中に「地方自治の本旨」という言葉があります。この「地方自治の本旨」というのは、「団体自治」と「住民自治」の二つであるとよく言われます。私は長い間、地方自治の仕事をしてきましたけれど、皆さんは公務員であると同時に、地方公共団体の職員です。法律上の用語では「地方公共団体」ですけれど、私は「地方政府」と言った方が本当は良いだろうと思います。「地方公共団体」というと、何か公共的なことをやっている団体という感覚で、ともすると本質を見失いがちだと思いますが、我々がやっていることは「地方政府」だと思っています。「中央政府」に対する「地方政府」として、国とか霞ヶ関からの指示に従って、粛々と事務を執行する発想は持たないでもらいたいと思います。もちろん、法令を守って勝手な行動はしてはいけませんが、新型コロナウイルス感染症への対応でもそうですが、国が実施していることが本当に全て100%県民のためになっているのかというと、必ずしもそうではない場合もあります。その時、どういう立場をとるべきかというと、先ほど申し上げましたように、我々は県民の皆様の幸せの実現に貢献する立場でありますから、「国の言っていることは少し違う」、「この制度を何とかしなければいけない」と思ったら、それは変えていかなければいけません。県民の視点で、県民の立場に立って、国に言うべきことは言い、変えるべきことは変えていく。それが、地方自治のあるべき姿だと思います。「地方公共団体」と言っていると、そのところが中途半端になってしまいます。私は県民を代表して、選挙で選んでもらっている立場です。県民の皆さんの思いを、ある意味で体現させていただいている責任感を持ちながら仕事をさせていただいておりますし、皆さんは、そうした民主的な形で構成されている「地方政府」の一員ですから、長野県職員として、自治を担う「地方政府」の一員という意識をしっかり持って、仕事に取り組んでいってもらいたいと思います。

 それから「全体の奉仕者」という言葉がありました。地方自治法とか憲法を学んだ人たちは、「全体の奉仕者」という言葉をいろいろなところで聞いてきていると思いますが、簡単に言えば、公共の利益のために、全ての県民のために働くということです。「全体の奉仕者」と言うこと自体は簡単ですが、なかなかそう割り切れないケースも多いのではないかと思います。公務の特性にはいくつか種類があると思いますが、一つは公益のために仕事をするということです。非営利組織として仕事をしなければいけません。皆さんも民間企業に就職しようかどうか考えた人もいるかと思いますし、民間企業から県職員になられた方もいると思います。民間企業と大きく異なるのは、公益性や非営利性だと思います。民間企業はとにかく稼いで持続可能な経営をしていかなければいけません。それに比べて、私たち行政は強制的に税金を納めてもらえる立場ですから、「まずは稼ごう」という発想は持たずに仕事をしています。ある意味、そういうことを考えずに仕事ができる、恵まれた立場だと思います。お金の価値や資本主義の論理に必ずしも捕らわれずに、いろいろな発想ができる点がメリットだと思います。しかし、その一方で、コスト意識が無くなりかねません。たとえば、コピー機をいくら使っても、長野県庁は行政組織なので、倒産しません。普通の民間企業やNPOなどに就職したら、「こんなにお金使って大丈夫か」と必ず上司から言われると思います。皆さん一人ひとりが気を付けるとは思いますけれど、我々の組織は、ともするとコストについて意識が薄くなりがちです。行政のメリットである反面、意識しなければいけない生産性について、最小の経費で効果を上げなければいけないことは、常に意識していただきたいと思います。

 また、「公平性」や「中立性」ということも、いろいろな研修の中で言われると思います。「全体の奉仕者」ですから、一部の人たちのために仕事をするのではなくて、みんなのために仕事をすることで、これは一般的に考えれば良いことですよね。だけど、これもまかり間違うと、問題になってしまいます。例えば、目の前に本当に困っている人がいても、「あなたのためだけに仕事は出来ません」なんてことは絶対に言ってはいけません。「全体の奉仕者」というのは、一部の人たちの声を切り捨てろということではありません。一部の人たちの声もしっかり聞きながら、どうすれば全体として良い方向に社会を変えていけるのかということをしっかり考えていくことも我々の役割です。ときどき「公平性」・「中立性」を気にして、一部の人たちの意見は聞けないかのような錯覚に陥ってしまう人も中にはいます。また、時代を超えての「公平性」・「中立性」を考えると、「昔、こういうやり方をしているので、これからもこのやり方でやっていく」という前例踏襲に陥ってしまいかねません。「公平性」・「中立性」について、皆さんにそんなことを期待しているわけではありません。言うまでもありませんが、実際に目の前の仕事が山積していると、楽な方へ、楽な方へと行ってしまいがちです。そうしたことも気を付けてもらいたいと思いますし、また、我々公務員の仕事は、ある意味で「独占業務」です。皆さんはいろいろなところに配属されますが、皆さんと同じ仕事をしている人は、他の都道府県にはいるとは思いますが、長野県にはあなたしかいません。チームで仕事をしている場合、同じような業務を職場で分担はしていますけれど、県民から見たときは、この仕事をやっているのはあなただけです。ある意味、責任感をもって、やり甲斐をもって仕事ができますが、独占企業として問題になるのは、やはり、競争しない、改善する意欲が損なわれてしまって、ともすると、常に向上する努力が失われがちになります。また、競争原理が働いていれば、県に来たくない人が、別のところ行ってサービスを受けることが可能ですが、県の行政は一つしかないため、県民はそのようなことはできません。そうすると、県の行政サービスを受けるために、県民は嫌でもあなたのところに行かなければいけません。ふんぞり返っていても、仕事が出来てしまう可能性があります。そのようなことために、我々は仕事を独占しているわけではありません。「この人にいくら相談してもダメだね。本当は他の人のところに行きたいけれど、あなた以外に行くところがない」とハッキリ言う人はいないと思いますが、そのようなことを思われるような職員には、絶対にならないでください。

 それから、我々の仕事は「公権力」を背景に行うことがあります。抑制的に使わなければいけないものですが、最終的には、公権力を使う場面もあります。その時に、公権力を振りかざすようになってはいけません。県民の皆様のため、長野県を発展させ、県民の皆様の幸せに貢献するために公権力がありますから、そのことを十分念頭において、公権力を行使してください。そういう発想が希薄になると、「公務員は偉そうだ」とか「何を言っても聞いてくれない」と言われてしまいます。新規採用職員の前で、公務員の問題点ばかりお話させてもらいましたけれど、同じ仕事や同じポジションで働いても、県民の皆様からすごく愛される、親しまれる県職員になるか、ちょっと間違うと、県民の皆様の期待に全く叶わない県職員になってしまいます。本当にわずかな差だと思いますが、最初のスタートに立つ皆さんには、そうしたことをしっかり自覚していただいて、県民の皆様が明るく笑顔に、元気になるような方向に、皆さんに与えられた責任と権限を活かしていってもらいたいです。是非、このことはしっかり自覚してほしいと思います。

 今、長野県政は、いろいろな危機に直面しています。一昨年の台風19号災害以降、災害対応や復旧復興にも取り組み、そして未来に向けて災害に強い県を作ろうと、防災・減災・県土の強靭化に取り組んでいます。我々の仕事の基本は、県民の皆様の幸せの実現だと申し上げましたが、幸せを実感していただくためにも、安心・安全が全ての基本だと思います。ここはしっかり確保していきたいと思いますし、本日も、皆さんには大変不便をお願いしながら、新型コロナウイルス感染症対策として分散型でこの任用式を開催していますけれど、新型コロナウイルス感染症への対応も、我々県組織にとって、当面、大きな課題です。これは健康福祉部、あるいは危機管理部だけが行っているわけではなくて、例えば、ひとり親の家庭など経済的に困窮している方も大きな影響を受けています。飲食店や観光関係者、交通事業者など、新型コロナウイルス感染症の影響で、経営上大変厳しい状況に置かれている多くの事業者の皆さんへの支援は、産業労働部であったり、観光部であったり、あるいは企画振興部であったりしますが、いろいろな職場で取り組んでおります。是非、県民の皆様の命と暮らしを守る、そうした我々の基本的な役割と責任が今求められている局面であります。そうした中で、皆さんは新しい県職員になるわけですので、是非、公務員としての基本をもう一度、改めてしっかり考えて仕事に取り組んでもらいたいと思います。

 長い訓示になって恐縮ですけれど、長野県は「しあわせ信州創造プラン」という総合計画の下で、様々な施策を進めさせていただいております。県民の皆様が明日への希望をもって暮らしていける長野県にしていく。そして、安心を実感してもらえる県にしていく。そうした思いで、この計画を作っています。目指す姿は、「確かな暮らしが営まれる美しい信州」であります。本当に今、新型コロナウイルス感染症や災害で暮らしの基盤が揺らいでいます。そうした暮らしをしっかり支えて「確かな暮らし」を実現するのが我々の仕事でありますし、「美しい信州」というのは、単に風景・景色が美しいということだけではなくて、人と人との支え合いの美しさもあります。額に汗して働くことの美しさもあります。ある意味、お金に換算できない価値が豊かにあることが、長野県だと思っています。先ほど申し上げましたように、我々行政は、決してお金のために働く必要性はありませんが、だからといってお金のことを全く考えなくてもいいわけではありません。効率性をしっかり意識しながらも、しかし、自由な発想で、お金に換算できない豊かさをどう伸ばすかということも、我々行政の役割であり責任だと思っています。

 新しく県組織の一員となる皆さんが加わってもらったこと、私としては大変嬉しく思っていますし、心強く思っています。これから長い間、皆さんは、県民の皆様のために働く立場になります。冒頭申し上げたとおり、是非、今の思い、初心を忘れずに、県民の皆様のため、そして長野県の発展のために尽力していってもらいたいと思います。

 皆さんのこれからの活躍を心から願って、私からの、新しく入庁される皆さんへの期待、そして歓迎の言葉としたいと思います。これから一緒に頑張っていきましょう。よろしくお願いします。

お問い合わせ

総務部秘書課

電話番号:026-232-2002

ファックス:026-235-6232

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?