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更新日:2023年4月1日
環境保全研究所
長野県環境保全研究所と筑波大学山岳科学センター(菅平高原や野辺山等に拠点を持つ)は、長野県の山岳環境の保全に関する研究の推進と人材の育成を協力して進めるために、2018年2月8日に連携協定を締結しました。
(筑波大学山岳科学センターとの連携協定調印)
そのキックオフイベントとして、シンポジウムを開催しました。県内外から多くの方々にご参加いただき、ありがとうございました。
総合司会:尾関雅章(長野県環境保全研究所)
マーティン・プライス (ハイランズ・アイランズ大学/ユネスコ「山岳の持続可能な開発」議長)
講演内容(概要)
基調講演の詳細は、情報誌「みどりのこえ」No.57のp.6(PDF:386KB),p.7(PDF:433KB)(平成30年9月発行予定)をご覧ください。
司会:上野健一(筑波大学)
1 渡辺悌二(北海道大学 地球環境科学研究院) 「大雪山の協働型登山道維持管理」
大雪山は北海道を象徴する山で登山者も多いが、登山道沿いに浸食が激しく、ある道では20年で60cmほどが浸食された。この維持を誰が行うかが問題となっている。国立公園内でもあり、補修工事には許可も必要。浸食の実態把握と補修を行政や大学、ボランティア等による協働作業で実施している。
2 須賀 丈(長野県環境保全研究所 自然環境部) 「山の生態系 歴史への旅」
山岳の自然は、人類が誕生する前からの地球規模の気候変化と人間誕生後の人の関わりの歴史により今の姿になっている。1万年前縄文時代には、火入れなどが盛んになり、霧ヶ峰等の半自然草原が維持されてきた。近年、人が自然を利用しなくなることで自然が変化し、半自然草原等で生き残ってきた草花やチョウが絶滅の危機にさらされている。自然の豊かさを維持するためには、多くの人が自然に関わり、共創していくことが重要になる。
3 出川洋介(筑波大学 山岳科学センター) 「キノコ達からのメッセージ」
キノコと山は切っても切れない関係。菌類は太古から人との関係があった。南方熊楠、柳田国男など先人も菌類と関わりがある。長野県の山岳地域は火山帯で、天狗の麦飯がみつかる。京都大学の宮下先生の研究によると10種類くらいからなる微生物集合体であることがわかった。山のキノコには、根と共生する菌根菌と木の幹に生えるものがある。また、地衣類は、菌類と藻類の共生体である。菌類に思いをはせて山に登ると新たな見方ができるようになるはず。
4 高野賢一(信州いいやま観光局 飯山駅観光交流センター) 「裏山と地域づくり、人づくり」
信越トレイルクラブは、長野県と新潟県を結ぶ80kmの稜線沿いのロングトレイル。山の自然を保全しながら利用を進め、道を作って地域の資源に光を当てる活動。地元の環境学習の場として裏山が利用されることも多くなった。10年で3万8千人が利用した。大きなお金で大きな投資よりは、小さくコツコツすすめているところに特徴がある。観光はアイデア商売のところが大きい、地域のアイデンテティーを確立し、地域資源を活用していきたい。
ヨーロッパと日本の山の差は、農業形態の差。ヨーロッパ(北)には火山がなく温泉がない。世界のほかの地域で日本のような「里山」はないかもしれない。ヨーロッパでは、高齢化や農林業の衰退などに直面し、山岳集落がなくなることはある。山の環境を維持することが共通の課題。ツーリズムの盛衰があるなどは共通している。
長野県は全体を山と言ってよいか?日本の中では、長野県は山岳と高原とは言えるのではないか。
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