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更新日:2019年10月25日

林業総合センター

研究報告要旨(特産部)

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特産部(きのこ、山菜、特用樹、木炭)

26号(2012年)

関東・中部の中山間地域を活性化する特用林産物の生産技術の開発(PDF:1,340KB)

増野和彦・高木茂*

中山間地域の林床等を活用し、中小規模生産者による多品目の特用林産物を長期にわたって生産する技術開発を図り、以下の結果が得られた。
(1)マイタケ殺菌原木栽培について、林内埋設後5年間でコナラ原木(長さ15cm)1本当たり404gの、パイプハウス内プランター埋設により4年間でコナラ原木1本当たり83gの収量があった。
(2)ヤマブシタケ殺菌原木栽培について、パイプハウス内プランター埋設により発生を図ったところ、春と秋の年2回子実体が発生した。埋設資材としては山土、バーク堆肥、鹿沼土いずれも利用可能であった。収穫は埋設後2年間でほぼ終了し、コナラ原木1本当たり160g~170gの収量であった。
(3)ムラサキシメジは、落葉マウンド法を改変して簡易施設内での増殖を組み合わせる方法、誘導栽培法により2系統を隣り合わせて埋設する方法により子実体を3年間発生させることができた。
(4)サケツバタケは、パイプハウス内でプランターに培養菌床を埋設する方法で発生を図ったところ、埋設当年の6~7月に収穫できた。
(5)里山を活用した2つのきのこ栽培グループと連携し、活動の収支計算結果から問題点を摘出した。その結果、害菌等によるロス率の低減と労務費の減少が重要なことが見出された。
(6)長野県における野外きのこ栽培における病害虫発生状況の情報を、5品目について12例収集した。
山村・都市交流型特用林産物生産体験活動の構築のため、事例調査、アンケート調査を行い、体験学習プログラムに必要な基本的な考え方を提示した。
特用林産物の高付加価値化のため、機能性成分が明らかになっているヤマブシタケについて、機能性成分量が多い系統の育成を行うとともに、機能性成分量を高める栽培技術の開発を行った。その結果、静岡大学農学部と共同で、ヤマブシタケの交配により子実体中のヘリセノン類含有量が安定して高く、収量性に優れる系統を育成した。
キーワード:林床活用、マイタケ、ムラサキシメジ、ヤマブシタケ、ヘリセノン類


26号(2012年)

マツタケの養分獲得に関する生物間相互作用の解明
-マツタケのシロ形成における窒素固定機能の評価-(PDF:1,914KB)

竹内嘉江・増野和彦

マツタケのシロの生態と窒素循環に関して調査した。シロ付近土壌の窒素固定活性が、20℃、24時間のアセチレン還元法で測定可能であることが分かった。マツタケのシロ付近土壌の窒素固定活性は、季節変動が大きかった。土壌pHは年間の変化が少なく、全窒素量はシロ部で多い傾向がみられた。シロ付近に生息する細菌数はシロ部で少なく、シロの内外で多くなる傾向がみられた。マツタケ子実体発生数の多いシロ部では、他の外生菌根菌の生息密度が低く、アカマツの細根密度が高く、含水率が低かった。広葉樹立木密度の低い場所では、マツタケ菌と競合する無胞子不完全菌目・セノコッカム属等の外生菌根菌の生息密度が低かった。
キーワード:外生菌根菌、アカマツ細根、菌根チップ数、窒素固定活性、土壌pH

26号(2012年)

マツタケの養分獲得に関する生物間相互作用の解明
-ミニライゾトロン(根カメラ)によるシロ成長過程の観察-(PDF:15,920KB)

増野和彦・竹内嘉江

CCDカメラを搭載した「ミニライゾトロン」(根カメラ)を用いて、アカマツ林土壌中の外生菌根及びマツタケのシロの動態を経時的に撮影し、菌根相の消長を観察した。土壌中の外生菌根等の菌糸構造物について、観察を開始した2005年から2007年の状況と比較すると、2008年及び2009年には部分的な消長は認められたが、全体的には観察頻度は減少した。2010年には一部であるが、土壌中における大量の子実体原基が確認された。
キーワード:ミニライゾトロン、根カメラ、外生菌根、アカマツ


26号(2012年)

機能性を活用した木炭及び木酢液の効果的な利用に関する試験(PDF:2,039KB)

高木茂*・小坂信行*

機能性を活用した木炭の利用について次のような結果が得られた。
(1)木炭を施用した土壌でコマツナ栽培を行ったところ、木炭を施用しない土壌に比べて生長量は大きくなった。
(2)木炭を水質浄化資材として用いる場合、あらかじめ木炭を水洗浄することにより水質浄化機能を向上させることができた。
(3)木炭を植樹帯に敷設することにより雑草抑制効果が見られた。
木酢液の利用について次のような結果が得られた。
(1)異なる濃度の木酢液を土壌に灌水してコマツナ栽培を行ったが、生長量に有意な差は見られなかった。
(2)木酢液にナメクジ類に対する高い忌避効果が認められた。また、冷凍濃縮法による濃縮木酢液を用いることで、ナメクジ類に対する忌避効果の持続性を高めることができた。
キーワード:水質浄化、雑草抑制効果、濃縮木酢液、ナメクジ類、忌避効果


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25号(2011年)

マツタケ発生林施業法の開発(PDF:3,968KB)

竹内嘉江・松瀬収司*・小坂信行・増野和彦

マツタケが発生している林分で、気象条件、マツタケの発生状況、マツタケのシロの生態、獣害防止、マツタケ増産のための施業等について、平成17~21年の5年間、調査と試験を行った。主な内容は次のとおりである。
(1)上伊那郡辰野町、下伊那郡豊丘村及び松川町に各々試験地を設定した。
(2)マツタケ子実体発生には、毎年豊凶があり3試験地で同様の傾向ではなかった。
(3)マツタケの自然感染苗木の移植では、シロの広がりは認められなかった。
(4)2方法によるマツタケの胞子散布試験では、菌根形成は見られなかった。
(5)豊丘村試験地の施業区と対照区では、30年間の管理によりマツタケ山の寿命に11年の差が認められた。
(6)豊丘村試験地の豊凶指数は、マツタケ子実体発生本数との相関係数が0.79となった。
(7)コニファー水和剤塗布により、ニホンジカのマツタケ子実体食害防止に効果がみられた。
(8)マツタケが、ツガ植栽木に菌根を形成して子実体を発生させているのを確認した。
キーワード:気象、感染、シロ、胞子、ツガ


25号(2011年)

クリタケ菌床栽培技術の効率化(PDF:1,072KB)

増野和彦・細川奈美*・高木茂

空調施設栽培におけるクリタケ菌床栽培の効率化を図るため、林内における地温変化を模倣した変温発生処理を施し、子実体収穫所要日数の短縮効果を検討した。その結果、系統により差があったが、定温発生管理に比較して、7日間~19日間の短縮効果が見られた。しかしながら、クリタケ空調施設栽培の実用化を可能にするまでの期間短縮には至らなかった。
キーワード:クリタケ、菌床栽培,変温管理,収穫所要日数,空調施設栽培


25号(2011年)

マツタケ・イグチ等有用菌根菌の現地適応化調査試験(PDF:4,367KB)

竹内嘉江・松瀬収司*・小坂信行・高木茂・増野和彦

上田市、塩尻市、諏訪市、松川町にマツタケ発生環境調査のため試験地を設定して、気象観測、子実体発生調査、シロ生態調査、散水試験、胞子散布試験、子実体食害防止試験、ツガ幼木植栽試験、地温再上昇防止試験、豊凶因子分析等を行った。また、諏訪市にハナイグチ試験地を設定して、胞子散布試験を行った。
(1)上田市試験地では、松枯れ被害が進行しており次第にマツタケ子実体発生量が減少した。
(2)塩尻市小曽部試験地での調査から、豊凶指数とマツタケ子実体発生本数との間に高い相関関係(r=0.95)が認められた。
(3)塩尻市宗賀試験地での調査から、寒冷紗による庇陰で地温変動を緩慢にできることが分かった。また、動物忌避剤散布によりニホンジカのマツタケ食害を防止できることが分かった。
(4)諏訪市試験地での散水試験により、5年間の平均でマツタケ子実体個重が38%重くなることが認められた。
(5)松川町試験地では、アカマツ平均樹齢37年生の中に直径1.9mのマツタケのシロが形成されていた。
(6)諏訪市ハナイグチ試験地での胞子散布試験により、5年間平均で子実体発生本数が5.4倍に増加することが認められた。
キーワード:菌根菌、地温、豊凶指数、自然感染苗木、ツガ


25号(2011年)

新規培地素材を使用したきのこ栽培条件の確立に関する研究(PDF:1,082KB)

増野和彦・高木茂

チーズ製造残渣であるチーズホエイを添加して、ナメコ菌床栽培試験を行ったところ、無添加区に対して有意に子実体収量が増加した。チーズホエイの最適添加濃度は、培地重量の3%及び6%と考えられた。また、チーズホエイから、主にラクトースを除去したホエイパーミエイトを添加して、ナメコ菌床栽培試験を行ったところ、添加濃度1%で有意に子実体収量が増加した。
これらの結果、チーズホエイ及びホエイパーミエイトは、ナメコ菌床栽培における栄養添加剤として、増収効果があると判断された。
キーワード:ナメコ、チーズホエイ、ホエイパーミエイト、菌床栽培、栄養添加剤


25号(2011年)

里山を利用し殺菌原木を使用したきのこ生産技術の確立(PDF:1,635KB)

増野和彦・湯本孝幸*・三原聡*・高木茂

観光と農林業をむすびつけた新たな地域興しを目指して、里山や周辺の遊休農地を利用したきのこ栽培について実証試験を実施した。平坦な遊休農地内では、直射日光による乾燥等の障がいを防ぐ対策、害虫対策が重要であることが確認されたが、牧草や野菜を栽培することによる「日除け」に一定の効果があることが示された。
キーワード:里山、遊休農地、観光農林業、マイタケ、ナメコ


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24号(2010年)

高品質きのこの育種と持続的生産技術の開発(PDF:562KB)

増野和彦・高木茂・松瀬收司*

ナメコ菌床栽培について、生産物の高付加価値化と持続的経営のための生産技術改良を図った。
(1)ナメコ野生株82系統、その他の野生きのこ16種88系統を収集し、分離・培養して保存に供した。野生株の試験栽培結果に基づき、ナメコ野生株から4系統を、「大型ナメコ」用の優良育種素材として選抜した。
(2)大型ナメコを生産するため、空調栽培用ナメコ極早生5品種を用いて、発生処理前の0℃あるいは25℃の温度刺激効果を検討した。1品種で、0℃低温刺激によって子実体個重の増大が見られた。
(3)「カラマツ・アカマツ混合ペレット」「アカマツペレット」のナメコ空調施設栽培における培地基材としての適性を調べた。オガコに対する置換率が容積比25%以下であれば利用可能なことが示された。
(4)ナメコ空調栽培におけるオガコの代替材として、「ヤシガラ」及び「ゴムの木」の利用可能性を検討した。ゴムの木粉砕物でオガコに対する置換率20%(容積比)の場合に、ナメコ極早生品種としての栽培特性を示した。
(5)ナメコ生産現場で傘に赤褐色のシミが発生して商品価値を損ねる事例が発生したため調査分析したところ、発生室や散水器具環境が、原因と考えられた。
キーワード:ナメコ、空調施設栽培、優良育種素材、大型化、木質ペレット


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23号(2009年)

里山を活用した特用林産物(山菜類)の生産技術の開発(PDF:399KB)

高木茂・増野和彦

里山を活用した山菜栽培について、各種山菜類の栽培技術の開発のため栽培実証試験を行い、次のような結果を得た。
(1)コシアブラ:播種及び根ざし法による増殖ができることを実証した。
(2)モミジガサ:播種及びさし木法で増殖ができることを実証した。植栽地としては、アカマツ林床よりもスギ林床が植栽に適した。
(3)ギョウジャニンニク:通常は廃棄される茎盤部から増殖できることを実証した。
(4)オオバギボウシ:播種及び塊茎により増殖できた。
キーワード:里山、コシアブラ、根ざし法、モミジガサ、さし木法


23号(2009年)

里山を活用した特用林産物(きのこ)の生産技術の開発(PDF:3,638KB)

増野和彦・高木茂・松瀬收司*

里山の林床と遊休きのこ施設の有効活用のため、里山の野生きのこを用いて殺菌原木栽培法により栽培試験を行い、栽培技術としての可能性を検討した。その結果、
(1)ヤマブシタケについて、殺菌原木栽培法により普通原木栽培では得られない大型の子実体が発生した。また、埋設当年から春と秋に年2回、子実体が発生することを確認した。
(2)チャナメツムタケ、シロナメツムタケについて、殺菌原木栽培法での子実体の発生を確認した。
(3)ムキタケ、ヌメリスギタケモドキについて、殺菌原木栽培法により埋設当年から子実体の発生が可能なことを実証した。
キーワード:里山、殺菌原木栽培、ヤマブシタケ、シロナメツムタケ、ヌメリスギタケモドキ


23号(2009年)

シイタケの品質向上・安定生産・新栽培法に関する研究
-原木シイタケ栽培の品質向上と安定生産に関する研究-(PDF:339KB)

竹内嘉江・高木茂・小坂信行

大径原木を短木化したところ、子実体発生量が増加する区が認められた。浸水後の発生収穫時に送風処理することで、発生量が増加する品種が認められた。オガ種菌接種で穴の深さを1月2日にしても発生量に差がみられない区が認められた。駒種菌とオガ種菌を同時に接種する試験において、個重・発生量が増加する区が認められた。小径木に駒種菌を接種する試験では、700gの収量を得るためには25穴接種、中径木にオガ種菌を接種する試験では、800gの収量を得るためには57穴接種が必要であることが分かった。
キーワード:短木化、送風、枠休養、浅穴、両接種


23号(2009年)

シイタケの品質向上・安定生産・新栽培法に関する研究
-自然環境を活用した菌床シイタケ栽培法の開発-(PDF:501KB)

竹内嘉江・高木茂・小坂信行・松瀬収司*

シイタケ市場価格の低迷傾向に対応するため、自然環境下の非空調簡易施設を利用した低コスト栽培法について検討し、生産現場で使用可能な品種として5品種を選択した。温度管理等を行わない栽培法には、培養途中での低温刺激に反応しやすい品種、奇形子実体発生の多い品種、商品価値の低い小型子実体が発生する品種等は適さないと考えられた。適正品種を使用し培養中の袋内発生や低温期の温度水分管理に留意すれば、簡易施設を用いた低コスト栽培は可能であることが認められた。
キーワード:簡易施設、低コスト、袋内発生、子実体発生、適品種


23号(2009年)

里山を活用したきのこの栽培及び増殖システムの開発(PDF:1,650KB)

増野和彦・福田正樹*・西澤賢一*・吉村智之*・細川奈美*・伊藤淳*・山本郁勇*・市川正道*・高木茂・竹内嘉江

中山間地域の里山・遊休農地を活用して、多くの人々が参画できる、きのこの栽培及び増殖技術の開発を図った。また、自然味に溢れたきのこの生産・販売を促進するため、里山きのこの安全性確認試験、販売・流通特性の改良、を行った。
1)クリタケ野生株について、「わりばし種菌」「つまようじ種菌」による簡易接種法を考案し、林内の原木、伐根を用いて、子実体を大量に発生することができた。
2)対峙培養試験及びDNA分析により系統識別を行い、殺菌原木栽培により接種したクリタケの系統が、林内に増殖していることを明らかにした。
3)クリタケの自然増殖を促進する技術として、培養菌床を原木に接触させて埋設することで、培養菌床から子実体を発生させ、さらに接触した原木からも子実体を発生することができた。
4)遊休農地に設置した簡易施設で培養した菌床を、遊休農地、林床に埋設することで、ハタケシメジ及びクリタケの栽培ができることを実証した。
5)ドリフト残留農薬、有害重金属、有害微生物の分析体制を確立し、試験で発生した子実体、使用した培地資材について分析・定量した結果、安全であることを確認した。
5)「山取りきのこ」の直販状況を調査して課題を摘出し、その課題を解決する「モデル商品」、加工品、鮮度保持技術を開発して、流通特性を改良した。
キーワード:里山、遊休農地、クリタケ、ハタケシメジ、接種法


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22号(2007年)

クリタケ菌床栽培技術の高度化(PDF:2,564KB)

増野和彦・松瀬收司・高木茂

クリタケ菌床栽培技術の改良を(社)長野県農村工業研究所と共同して行ったところ、以下の結果を得た。
(1)野生株からの選抜によりこれまでの菌株を上回る栽培適性のある菌株を優良素材として選抜することができた。
(2)培地組成は、ブナオガコに栄養材としてスーパーブランを容積比で10対2に配合した組成が優れていることが改めて確認された。
(3)培養の後期に温度を下げることで子実体の収穫所要期間を短縮した。
(4)ビンの形状、接種孔の太さ及び数により培養期間を短縮した。
キーワード:クリタケ、菌床栽培、栽培期間


22号(2007年)

機能性を強化したきのこの成分育種及び栽培技術の開発
-ヤマブシタケ-(PDF:2,504KB)

増野和彦・松瀬收司・高木茂

ヤマブシタケ子実体中に存在することが分かっている、神経成長因子(nervegrowthfactor,NGF)誘導促進物質の一つであるヘリセノン類の含有量を高める成分育種を静岡大学農学部と共同して行ったところ以下の結果を得た。
(1)ヤマブシタケ子実体におけるヘリセノン類含有量の効率的な定量方法を確立した。
(2)栽培条件によってヘリセノン類含有量に差が生じるものの、既往の栽培技術をヘリセノン類含有量評価の標準的な栽培方法としてもよいことが示唆された。
(3)ヘリセノン類含有量が多く、収量の優れた菌株を優良素材として選抜した。
なお、本研究は(独)森林総合研究所交付金プロジェクトIの一環として実施した。
キーワード:ヤマブシタケ、へリセノン類、成分育種


22号(2007年)

複合培養系を用いる里山きのこの増殖技術の開発
-里山における腐生性きのこ類の生態的特性の解明と増殖技術の開発-(PDF:6,737KB)

増野和彦・松瀬收司・高木茂

クリタケについて、里山におけるきのこの栽培と増殖のため、林地に埋設した原木・菌床の活着ならびに菌糸体の拡散にかかわる生態的側面の解明を、文部科学省化学研究費補助金の一環として信州大学農学部との共同研究により行った。その結果、
(1)クリタケの原木栽培で起こるハナレ現象には、少なくとも根状菌糸束が関与している。
(2)菌糸の定着した原木・菌床から根状菌糸束を発生し、さらにその先に子実体を形成したことから、クリタケの分散及び増殖機能の一部を根状菌糸束が担っている。
(3)根状菌糸束の形成が、殺菌原木栽培及び菌床栽培において多くの野生株で起こったことから、クリタケにおける根状菌糸束の形成は一般的な現象である、という3点が明らかになった。
地中に埋設されたアクリル製の中空で透明な管内に、CCDカメラを挿入して土壌内を観察するミニライゾトロン法を用いて、培養菌床からの菌糸体及び根状菌糸束の形成状況を経時的に観察した。その結果、地下部において、
(1)濃い菌叢の形成
(2)子実体の形成
(3)子実体の劣化
(4)根状菌糸束の形成
の順に変化する状況を観察した。
当初、無色であった菌糸束から次第に表層に厚い膜が形成される二重構造化が一部で観察された。
キーワード:クリタケ、根状菌糸束、ハナレ現象、ミニライゾトロン、里山


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21号(2006年)

機能性木炭の生産・利用の検討と木酢液の品質安定化に関する試験(PDF:13,210KB)

高木茂・大矢信次郎・小坂信行・松瀬収司

木炭の物性や機能性について各種試験を行い、次のような結果が得られた。
(1)木炭の吸着試験により炭化温度800~1000℃付近で吸着能が最も高かった。
(2)木炭がVOC除去に高い効果を発揮した。
(3)木炭は高湿度環境下ほど吸放湿速度が高かった。
(4)木炭の水質浄化能は樹種や炭化温度により相違があった。
(5)木炭からは水質に影響を与える物質が滲出していた。
(6)木炭を野外に長期敷設した場合、粒度の大きい木炭で保水量が高かった。
(7)木炭を添加した土壌で植物栽培を行うと、木炭添加量や土壌条件により植物成長に差が見られた。
木酢液について試験を行ったところ次のような結果が得られた。
(1)採取条件により成分量等に相違があった。
(2)木酢液に発芽抑止効果が見られた。
(3)木酢液に植物成長抑制効果が見られた。
キーワード:細孔特性、VOC吸着、水質浄化、植物成長、成分分析


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20号(2006年)

林地における菌根性きのこ類の増産施業法の解明(PDF:9,454KB)

竹内嘉江・小出博志・増野和彦・松瀬収司

アカマツ林におけるマツタケ増産のための環境改善施業効果について、H12~16年にわたり調査と試験を行ったところ次のような結果が得られた。県下辰野町と豊丘村に各々0.5haの試験地を設定し、気象観測と発生量調査等を行った。
(1)5年間のマツタケのシロ数は、辰野町試験地では施業区で1か所、対照区で0か所、また豊丘村試験地では施業区で22か所、対照区で8か所でともに変動はなかった。
(2)豊丘村試験地の5年間の発生量は、施業区で1,137本、46.3kg、対照区に比べ340%本、359%生重となった。
(4)豊丘村試験地の5年間の発生本数推移を見ると、25年間平均値と比較して127、34、63、138、114%となり作柄の規則性は認められなかった。
(5)イノシシ掘り起こし被害防止のため、n-ラク酸散布試験を行ったが、効果判定は明確にできなかった。
(6)シロの前線に位置する広葉樹の根圏を枯らしてシロを広げる施業を行ったところ、子実体発生本数の増加が認められた。
(7)子実体発生本数と気象条件との関係を調査した結果、相関係数r=0.82となる豊凶指数を見いだすことができた。
キーワード:マツタケ、環境改善施業、シロ、胞子、豊凶指数


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19号(2005年)

ニュータイプきのこ資源の利用と生産技術の開発(PDF:30,577KB)

増野和彦・小出博志・高木茂・松瀬収司

きのこ消費の拡大や高付加価値化に繋がる新品目の開発ときのこの機能性評価技術の開発を行った。また、ナメコの発生不良現象の解明と栽培技術の改良を図った。結果は、以下のとおりである。
(1)ナメコ247系統、その他の野生きのこ22種467系統を遺伝資源として収集した。
(2)ナメコ野生株から21系統を空調施設栽培用の優良育種素材として選抜した。
(3)ヤマブシタケのヘリセノン類含有量は系統間に差があること、ヤマブシタケ子実体熱水抽出物の抗腫瘍活性は系統間及び培地組成により差があることが分かった。
(4)ヤマブシタケの栽培技術について培地の低コスト化、培養期間の短縮化を行った。現地適応化試験により実用性を確認した。
(5)ヌメリスギタケ新品種「長林総NU-1号」の効率的栽培に必要な特性を把握した。
(6)ナメコ新品種「長林総2号、3号」について現地適応化試験により空調栽培用極早生品種としての実用性を確認した。
(7)クリタケ菌床栽培について、パイプハウス内で発生させる簡易施設利用法を開発した。現地適応化試験において実用性を確認した。
(8)ナメコ空調施設栽培における発生不良現象の環境要因としては、培養温度と栄養材の種類が大きく影響することを明らかにした。
(9)ナメコ空調施設栽培の栽培期間の短縮化について、培養期間、培地基材、栄養材に関して明らかにした。
キーワード:ナメコ、ヤマブシタケ、へリセノン類、ヌメリスギタケ、クリタケ


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18号(2004年)

原木シイタケ栽培のニューシステム化の検討と効率・軽量化技術の開発(PDF:5,421KB)

大矢信次郎・小坂信行・竹内嘉江・高木茂

ほだ木休養期間と子実体発生量・品質、浸水時間、生シイタケ栽培における大径木有効利用、原木の外樹皮改善による発生の効率化、大径原木への植菌法に関する試験を行った。このことにより、
(1)休養期間が長くなると浸水1回当たりの発生量は増加するが、2年間での発生量は減少すること
(2)子実体のS級比率は浸水を重ねるごとに増加すること
(3)短時間の浸水では発生量が減少し子実体が小型化すること
(4)大径木の樹皮切削では発生量の増加はできないこと
(5)植菌孔数を3倍にすると発生量は1.3倍になること
等を明らかにした。
キーワード:休養、浸水時間、大径原木、軽量化、木口植菌


18号(2004年)

菌床シイタケ栽培の安定化と経営の健全化に関する試験(PDF:11,385KB)

竹内嘉江・小出博志・小坂信行・松瀬収司・高木茂

コーンコブ、ユーカリオガコ、新鮮オガコ、割り箸材再利用、漢方薬残渣利用、廃菌床再利用、添加材、培養期間、高温下袋カット、ガス環境、高温培養、自家製造種菌、原基数調整、培地含水率調整、休養温度、発生面限定、交配株、品種特性に関する試験及び現場生産者の経営実態調査を行った。このことにより、
(1)割り箸材を利用すると培地分解が早くなること
(2)漢方薬残渣を添加すると増収効果があること
(3)マイタケ廃菌床は再利用可能であること
(4)袋培地のフィルター部の通気が発生状況に大きく影響していること
(5)自家製造種菌は子実体発生能力が劣ること
(6)発生処理前の27℃高温処理により高品質の子実体を収穫できること
(7)収穫中は60%前後の含水率がないと良好な発生は得られないこと
(8)20℃の休養温度により発生量を増加できること
(9)上面発生させることにより高品質子実体を収穫できること
等を明らかにした。
キーワード:培地材料、CaC03、廃菌床リサイクル、培養期間、高温処理


18号(2004年)

マツタケ等現地適応化調査試験4.(PDF:5,533KB)

竹内嘉江・小出博志・増野和彦・松瀬収司

上田市・塩尻市・松川町の3試験地において子実体発生調査・気象観測・植生調査・きのこ相調査を行い、子実体発生本数と高い相関関係を示す豊凶指数(豊凶指数=7、8月降水量/地温再上昇日数、r=0.989)を見出した。このことにより、
(1)上田試験地は発生量が減少傾向にあり、シロ成長過程の後期にあたること
(2)松川試験地は10年間で豊凶の差が小さく、マツタケ山としては若い時代に属していること
(3)塩尻試験地でのデータ分析から、地温19℃が原基刺激温度であり、地温再上昇で20℃以上になると原基が消滅すること
(4)マツタケの不作回避には夏期の地温低下、秋期の残暑による地温再上昇、7~8月の降水量不足を防ぐことが有効であること
等を明らかにした。
キーワード:マツタケ、イグチ、低温刺激、地温再上昇、豊凶指数


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17号(2003年)

木炭及び木酢液の新用途開発(PDF:5,104KB)

大矢信次郎・一ノ瀬幸久・小坂信行

木炭・木酢液の性質を把握し、基礎データを蓄積するとともに、新たな利用法を検討した。その結果のことが判明した。
(1)サルナシさし木床に木炭粒を混合したところ、根数・根重が増加した。
(2)木酢液は炭材の含水率や採取温度によって品質に相違がみられた。
(3)県内外で採取された木酢液の品質を検査したところ、炭化条件によって品質に差があり、また同一条件でも品質差があることが確認された。
(4)採取温度や生産者の異なる木酢液をPDA培地に添加し、ナメコ及び害菌Hypocreanigricansの菌糸伸長に与える影響を調べたところ、採取温度が高く濃度が高いほど菌糸の成長を抑制した。また、竹酢液は生産者が異なることにより殺菌効果に大きな差が認められた。
キーワード:木炭、木酢液、竹酢液、挿し木、殺菌


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16号(2002年)

菌根性きのこ類の人工栽培技術の開発(PDF:5,843KB)

小出博志・増野和彦

昭和55年に上伊那郡辰野町と下伊那郡豊丘村のアカマツ若齡林2か所に各々0.5haの試験地を設定して環境改善施業を実施し、延べ20年間気象観測と子実体発生量調査を行った。この主な結果は次のとおりである。
・マツタケのシロ数は20年間に、豊丘村施業区では8か所から22か所に、辰野町施業区では0か所から4か所に増加した。
・マツタケの発生本数と月別降水量の関係をみると、9月の降水量が最も相関が高く、梅雨期の降水量は低かった。
・豊丘村施業区の原基形成開始から子実体発生終了に至るマツタケ発生パターンを把握することができた。
・両試験地におけるシロの位置の広がりの状況を把握できた。
・豊丘試験地における作柄と気温・地温・降水量の関係について考察した。
・以上の結果から、アカマツ若齢林において適地を選定し環境改善施業を行うことが、マツタケの新シロの形成や子実体の安定発生に効果があることを確認した。
キーワード:菌根菌、マツタケ、環境改善施業、子実体発生量


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15号(2001年)

原木シイタケ栽培における適品種選定と施設利用に関する試験(PDF:3,385KB)

大矢信次郎・一ノ瀬幸久・竹内嘉江

乾シイタケ用市販品種の栽培、生シイタケ用市販品種の栽培、適品種選定、春子発生量と降水量、水分管理法、本伏せ管理法、施設と発生状況に関する試験を行った。このことにより、
(1)乾シイタケ生産では発生時期の散水・乾燥防止が大切であること
(2)高冷地に適した乾シイタケ品種の選定
(3)4月の降水量と春子発生量との関係
(4)生シイタケの適品種選定とその使用方法
(5)温度確保ができるビニールハウスで本伏せ管理すると早期から発生可能となること
等を明らかにした。


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14号(2000年)

きのこ廃菌床等の畜産的利用に関する調査(PDF:3,601KB)

増野和彦・小出博志・大矢信次郎

きのこ廃菌床について飼料や敷料などへの畜産的利用を図るためには、栽培過程において培地中のリグニン含有率が低下している必要がある。そこで、ナメコ、エノキタケ、ブナシメジ、ヌメリスギタケ、ヤマブシタケ、クリタケ、マンネンタケについて菌床栽培試験を行い、培地内リグニン含有率の経時的変化を調査した。その結果は以下のとおりである。
(1)今回の検討では、栽培期間内において培地内のリグニンが選択的に減少しているきのこの種類、系統を明確に確認できず、廃菌床を飼料等に利用するための脱リグニン処理として、菌床栽培過程のみでは、不十分であることが示唆された。
(2)広葉樹オガコを用いた場合も、針葉樹よりリグニン含有率の減少傾向はあるものの、全体的には減少傾向は小さく、菌床栽培期間内では、リグニンの分解が進んでいないことが示唆された。
(3)食用きのこ類の菌床栽培における培地内の状態を把握するための資料が得られた。


14号(2000年)

シイタケ菌床栽培の安定化に関する試験(PDF:8,768KB)

竹内嘉江・小出博志

培地組成・重量・含水率、廃オガ、クエン酸添加、栄養材、種菌、栽培袋比較、原基数調整、原基消長、温度別原基刺激、積算温度、低温・高温経験培地、過熟培地、培地重量・表面積比較、交配株に関する試験を行った。このことにより、
(1)バカス、ゴムオガコ、モミガラ加工物は培地基材として混用割合を工夫して使用可能なこと
(2)エノキタケ廃菌床は2割程度まで混用して使えること
(3)クエン酸添加は効果ないこと
(4)原基数調整により子実体個重を重くすることができる
(5)培養中に5,30℃を経験した培地は発生状況が悪化すること
(6)過熟培地に物理的刺激を与えると小型子実体が多く発生すること
(7)品種により原基形成状況に差がみられること
(8)高価格子実体を収穫するためには2.0~3.0kgの培地を採用すると良いこと
(9)交配株の中には市販品種よりも発生量が多くなるものがあるが個重が軽くなること
等が明らかになった。


14号(2000年)共同研究
林地における菌根性きのこ類の栽培試験(PDF:5,829KB)

竹内嘉江・大矢信次郎・馬渡栄達

アミタケ・ハナイグチ・ヌメリイグチのコロニー成長、菌糸体を得るための適正培地、カラマツ林へのハナイグチ胞子懸濁液散布、無菌的にアカマツ苗木にアミタケ菌根を形成させること、苗畑で育てた苗木にアミタケ・ハナイグチの菌根を形成させること、等に関する試験を行った。このことにより、
(1)3種の菌根菌は浜田培地・MA培地で良好な菌糸成長を示すこと
(2)6年間のハナイグチ発生状況からは胞子散布の効果は認められなかったこと
(3)バーミキュライト+MS、LP培地+浜田培地においてアカマツ無菌苗木のアミタケ菌根形成生存率で有意差が認められた
(4)アミタケの無菌的菌根形成苗木を順化後に整備林地に植栽したところ、実生のものに比べ良い生育状況を示したこと
(5)苗畑で育成中の苗木に胞子散布しても、目的の菌根は得られないこと
等を明らかにした。


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13号(1998年)

木炭及びその炭化過程で得られる各種成分の高度利用に関する研究(PDF:5,738KB)

大矢信次郎・一ノ瀬幸久・馬渡栄達

木炭及び木酢液の新たな利用技術の検討を行った。主な結果としては、
(1)カラマツ播種床に木炭を施用したところ、地上部・地下部とも成長量は大きくなった。ヒノキとコナラの播種床についても同様の試験を行ったが、効果は認められなかった。
(2)シイタケとナメコの菌床培地に粉炭を混入して栽培したが、どちらも増収効果は認められなかった。
(3)エノキタケ廃菌床に木炭、木酢液を混ぜて堆肥化させたところ、発熱温度が高いことが認められ、発酵促進効果が示唆された。
(4)木酢液をホダ場に散布したところ、散布直後にはバクテリア等が一時的に減少したが、その効果は持続しなかった。寒天培地に木酢液を添加し、土壌微生物の発菌を調べたところ、培地中の木酢液濃度が0.1%程度の場合、バクテリアの成長が抑制され、糸状菌・放線菌には影響がなかった。
(5)木酢液の採取温度が上がるにつれて比重・酸度は上がり、pHは下がっていく傾向が見られた。


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12号(1998年)

菌床栽培用きのこの育種と栽培技術の改良(PDF:15,961KB)

増野和彦・小出博志

菌床栽培用のきのこ新品種作出と新品目栽培技術の開発を行った。また、合わせてきのこ培地材料に関する検討を行った。これらの主な結果は、次のとおりである。
(1)遺伝資源として野生きのこの菌株収集を行い、20種191系統を分離・培養し、保存に供した。
(2)ナメコ野生菌株の特性を検定することにより、空調栽培用極早生品種の選抜基準として原基形成所要日数と子実体個数が重要であることを明らかにした。
(3)ナメコについて一核菌糸の交配により作出した1,056系統から選抜を行い、空調栽培用極早生品種2品種について品種登録の出願を行った。
(4)ヌメリスギタケの菌床栽培技術の開発を行った。野生株から選抜した1品種について品種登録の出願を行った。
(5)ヤマブシタケの菌床栽培技術の開発を行った。
(6)クリタケの菌床栽培技術の開発を行った。
(7)ナメコ栽培培地及び培地材料のC/N比を測定して、培地組成を検討するための基礎資料を得た。


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10号(1996年)

林地における菌根性きのこ類の栽培試験(PDF:5,911KB)

小出博志・増野和彦

アカマツ若齢林における環境改善施業効果並びにマツタケの人工的シロ造成法について平成2年度から5か年間調査、実験を行った。この主な結果は次のとおりである。
(1)豊丘村試験及び辰野町試験地で気象観測と子実体発生量調査を行い、5年間のマツタケ発生と気象条件の関係を把握した。
(2)既存のシロを利用して先植え法により感染苗木を作成したところ高い感染率が得られたが、供試した部分では菌根の回復が悪く子実体が形成されなくなった。また、得られた感染苗木を用いて11か所で再感染試験を行ったがマツタケの発生は認められていない。
(3)マツタケの胞子液について酪酸を加え調整直後の培養では胞子の発芽が認められたが、凍結保存後では認められなかった。胞子を塊状にして寒天培地に接種した場合には接種直後及び5か月間の凍結保存後の培養において発菌が認められた。


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9号(1995年)

シイタケの菌床栽培技術の開発
-生理実験及び育種試験-(PDF:5,790KB)

竹内嘉江・小出博志

プロトプラスト作出、菌糸成長、市販品種・野生株・交配株の比較栽培、変異株の特性、発生刺激温度に関する試験を行った。このことにより、
(1)2核菌糸体から酵素処理6時間で107個/1gのプロトプラストが作出できた
(2)野生株のプロトプラスト再生率は1.24%であった
(3)野生株の菌糸伸長量は市販品種よりも低い値を示すものが多かった
(4)野生株で市販品種よりも良好な発生状況を示すものがあった
(5)品種・系統により子実体の形質・発生パターンに差がみられた
(6)市販品種の中では中温性のもので良好な発生状況を示すものが多かった
(7)14℃よりも低温での原基刺激は子実体発生にマイナス効果なること
(8)系統により適正な発生刺激温度が存在すること
等が明らかになった。


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8号(1994年)

シイタケの菌床栽培技術の開発
-菌床栽培実用化試験-(PDF:11,819KB)

小出博志・竹内嘉江

栄養添加材(コメヌカ、フスマ、コーンブラン、スーパーブラン、キノゲン、タイロン、バイデル)、培地基材(ブナオガコ、コーンコブミール、モミガラ、シラカンバオガコ、コナラドリル屑)、消石灰添加、品種特性、防カビ剤、培地重量比較、容器(ビン、袋、栓)、培養温度、収穫中の水分(浸水・休養)管理、種菌熟度、発生不良、培養中の子実体原基消長に関する試験を行った。これにより、
(1)栄養添加材によっては多用すると発生不良になり、品種との適合・栽培法との関係を考える必要があること
(2)菌床シイタケには不適な培地基材、発生量の増加する基材、個重の増加する基材、奇形子実体の発生しやすい基材があること
(3)品種により培地組成・培養法を変える必要があること
(4)通気性の良い容器で培養後に5%以上培地重量が減少するものが、発生量向上に結びつくこと(5)20℃が培養適温であること
(6)熟度が若い種菌では発生不良になり、培養期間を長くすること回避できること
等を明らかにした。


8号(1994年)

原木食用きのこ類の発茸及び保存に関する試験(PDF:8,895KB)

一ノ瀬幸久・竹内嘉江

秋期接種、葉枯し・即玉切り原木、コナラ・クヌギ・ミズナラ原木、オガ菌、接種量(直径の0.7、1.5、2.5倍孔区)、封ロウ・スチロール栓比較、ビニールハウス管理、ほだ木重量変化測定、本伏せ管理、浸水前予備散水、木口切断浸水、古ほだクギ目入れ処理浸水、クエン酸水溶液浸水、人工気象器内温度別管理、ほだ木電気刺激、針葉樹間伐材利用、シイタケ野生株栽培及びクリタケ林地栽培、ナメコの原木・ほだ場環境改善、ヒラタケ短木栽培、ムキタケ原木栽培、きのこ保存方法に関する試験を行った。このことにより、
(1)秋期植菌は早期発生に効果があること
(2)樹種により管理方法を変える必要があること
(3)古ホダでは木口切断により発生量を増加させることができること
(4)ナメコの連年使用ほだ場ではケイ酸カルシウム施用により発生量を増加させることができること
等を明らかにした。


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6号(1992年)

細胞融合による食用きのこの優良個体の作出(PDF:10,515KB)

(pdf形式10,515kb/23ページ)増野和彦・小出博志・竹内嘉江

遺伝資源として野生きのこの探索と特性の解明を行うとともに、細胞融合・細胞選抜等プロトプラストを利用した育種法の検討を行い、きのこ優良個体の作出を図った。その結果は以下のとおりである。
(1)遺伝資源として野生きのこの菌株を収集し32種114系統を分離・培養し保存に供した。
(2)収集した菌株の針葉樹材での栽培特性を調査した。ヌメリスギタケ、チャナメツムタケについてヒノキ原木での子実体の発生を確認した。
(3)ナメコ、ヌメリスギタケ、クリタケ、シイタケについてプロトプラストの作出条件を検索した。
(4)ナメコについて一核菌糸由来のプロトプラストを用いて種内融合による系統の作出を行い、融合株を分離した。
(5)ナメコプロトプラスト再生二核菌から発生量、原基形成所要日数、発生温度特性について親株を上回る系統を選抜した。
(6)ナメコプロトプラスト再生二核菌と親株について、エステラーゼアイソザイムの分析によりパンドパターンの差を確認した。


6号(1992年)

人工による菌根性きのこ類のシロ造成法に関する試験(PDF:7,413KB)

小出博志・一ノ瀬幸久・増野和彦

アカマツ若齢林における環境改善施業の効果調査並びにマツタケの人工的シロ造成法について昭和60年から5年間試験を行った。その結果は次のとおりである。
(1)試験地は辰野町と豊丘村で、各々に放置した対照区0.25ha、環境改善施業を加えた施業区0.25haを設けた。施業は昭和55年の夏に実施した。
(2)調査した期間のマツタケの発生状況は、昭和60年は8~9年の旱ばつで平年作、61年は春~夏の低温と秋の旱ばつでやや不作、62年は昭和60年は8~9年の旱ばつでやや不作、63年は夏の温度上昇と豊富な降雨で豊作、平成元年は秋の残暑のぶり返しで平年作という状況であった。
(3)マツタケのシロ数については10年間で、豊丘村試験地の施業区では8か所から19か所に増えたのに対し対照区では6か所から8か所に増えたに過ぎなかった。辰野町試験地では隣接部において施業後8年目にして初めてシロ1か所が形成された。
(4)豊丘村試験地のシロの形状を調査した。


6号(1992年)

ナメコ周年栽培の効率化に関する試験(PDF:7,185KB)

小出博志・一ノ瀬幸久・増野和彦

菌床ナメコの周年栽培をより効率的に行うため、800cc広口ビンを用いて最適培地、空調栽培用品種、環境調節法について試験を行った。この主な結果は以下のとおりである。
(1)培養期間を60日間程度に短縮して栽培すると、コメヌカを使用した培地では1番発生の遅れや収量低下といった培養不足の状態が認められた。
(2)コメヌカに代わる栄養添加材としてフスマ、コーンブラン、スーパーブラン、キノゲン、ジャームカスでは1番発生が円滑でかつ収量も良好であった。
(3)添加剤のうち、消石灰ではコーンブランとの組合せで、酸素供給剤ではコメヌカとの組合せにおいて増収が認められた。
(4)培地基材としてコーンブランについて検討したところ、コメヌカとの組合せでは不適であったが、スーパーブランとの組合せで利用可能と認められた。
(5)ナメコ種菌の子実体生産能力については、20℃で38日から61日培養の状態で高いことが認められた。


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4号(1988年)

薬用植物の林地における栽培技術の開発(PDF:3,533KB)

(pdf形式3,533kb/8ページ)一ノ瀬幸久・竹内嘉江・石沢道雄

オウレンの保育・施肥試験を行い、標高の高いカラマツ林下でも栽培可能であり適地選定(湿潤肥沃地)が重要であること、地力が低い林地では基肥・追肥により生育期間短縮と収量増大が図れることを明らかにした。イカリソウの地拵・施肥・供試苗比較試験を行い、実生で繁殖させるよりも自生地から苗を採取し分根することで早期に大量に増殖させることが可能であること、春~夏の照度管理が大切であること、トキワイカリソウは自生地と異なる環境では生育パターンが違ってしまうため適地での栽培がポイントになることを明らかにした。


4号(1988年)

細胞融合による新品種の育成に関する研究(PDF:1,406KB)

増野和彦・小出博志・竹内嘉江・小椋昭二

きのこ類の新品種の育成のため、細胞融合技術を導入し、育種技術の開発を行った。ナメコの培養菌糸からプロトプラストを調製して培養し、再生菌株を得た。ナメコプロトプラスト再生二核菌7系統を用いて温度別菌糸体伸長量を調べ親株と比較した。


4号(1988年)

林地における山菜の栽培技術に関する調査(PDF:3,505KB)

石沢道雄・一ノ瀬幸久・唐沢清

山菜は林家の複合経営作目の一つとして栽培されている。しかしながら林地栽培技術も確立されているとは言い難いことから、林地栽培に適した山菜8種について調査を行った。このうち、サルナシ、陸ワサビ、ゼンマイ、山ブキの4種について栽培事例地調査を行った。また、将来有望な山菜としてオオバギボウシ、ハンゴウソウ、カタクリ、クサソテツの4種について生育調査等を行った。この結果、サルナシ、陸ワサビ、ゼンマイ、山ブキ栽培地の土壌型は、適潤性褐色森林土か適潤性黒色土であった。オオバギボウシ、ハンゴウソウ、カタクリ、クサソテツの生育地での土壌型は、適潤性褐色森林土か弱湿性褐色森林土であった。また、生育や品質に及ぼす照度の影響は大きいと思考された。


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3号(1987年)

地域林業の組織化モデルに関する研究(PDF:2,741KB)

百瀬公夫・遊橋洪基

農山村における過疎化に伴う諸問題に対応して、林業生産を維持推進するためには、個別経営の枠を超えた地域的、組織的対応が要請されている。そこで、森林組合を中心とした組織化モデルを課題として、昭和59年度に伊南地域を、昭和60年度に飯田市及び奈川村地域を選定し研究を行った。この結果、地域材安定供給体制の整備、森林組合の拡充強化策、地域内不在者所有林に対する取組、労務確保対策、施業の集団化、労働節約的で自然力を活用した施業の促進、森林組合と地域木材関係業界との連携などが必要であることがわかった。


3号(1987年)

きのこ複合経営の適正規模に関する調査(PDF:4,246KB)

遊橋洪基・百瀬公夫

きのこ複合経営タイプとしてのシイタケ栽培の適正規模等を探るため、昭和60・61年度に調査を実施した。調査方法は、生シイタケ栽培2戸、乾シイタケ栽培1戸を選定し、現地調査を実施した。さらに、昭和58年度に県が調査した4経営事例を加え、合わせて7事例について検討し経営状況の分析を行った。この結果、経営形態別に経営改善方向を示した。また調査から、(1)労働投入は大部分が2~4月(2)ほだ木造成の労働量は栽培タイプによる相違は少ない(3)生産費のうち原木代が大きな割合を占めていたことなどが判明した。


3号(1987年)

食用野生きのこ栽培技術の開発に関する試験(PDF:2,157KB)

一ノ瀬幸久・小出博志・斉藤利隆・小椋昭二・篠原弥寿夫

ヌメリスギタケ、クリタケ、ブナシメジ、スギタケ、マイタケ、ブナハリタケ、マツオウジ、ムキタケの16品種について、温度・培地含水率別の菌糸伸長生理試験、コナラ・ミズナラ・シラカンバ・カラマツの原木を使用して活着・繁殖状況調査、伏込み比較試験、散水試験、子実体発生量調査を行った。多くのきのこにおいて、25℃付近・含水率49~66%で菌糸伸長量が良いこと、樹種により全く菌糸が繁殖しないきのこがあること、カラマツ原木でも発茸するきのこのあること、管理方法の違いにより発生量に差がみられること等を明らかにした。また、アミタケ・ハナイグチの菌根性きのこを、アカマツ・カラマツの根を洗浄した苗に人工的に菌根形成させる試験を行ったが、ポット内で菌根を作り出すことはできなかった。


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2号(1987年)

シイタケの地域栽培型と生産性の向上に関する調査(PDF:10,066KB)

斉藤利隆・小椋昭二・篠原弥寿夫

地域別シイタケ複合経営の仕組みに関する調査を行い、農林複合経営内におけるシイタケ栽培の位置付け、導入品種の使用方法について明らかにした。地域別で品種のほだ化・発茸に関する比較調査を行い、8地域で同一品種を栽培試験してほだ化においては原木伐採方法、発茸においては事前管理法の差が大きく影響することを明らかにした。
同一地域における品種とほだ化・発茸調査を行い、ほだ化においては年毎の気象変動に影響を受けること、発茸においてはほだ化率と発茸量に相関関係がないこと、品種毎の特性に応じた使用方法が重要であることを明らかにした。


2号(1987年)

ナメコ広口ビン栽培体系の開発に関する試験(PDF:6,424KB)

小出博志・一ノ瀬幸久・篠原弥寿夫

オガクズナメコの周年栽培の確立のため、広口ビンを中心に培地詰量、培地組成と培養日数、発生管理法、空調用品種等について栽培試験を行った。この主な結果は以下のとおりである。
(1)空調栽培用の7種類のビンについて害菌の侵入程度を調べたところ、キャップ栓で空隙の大きい形のもので汚染率が高かった。
(2)コメヌカを用いた培地良好な発生に結びつく培養条件を調べたところ、培養日数が増すにつれて子実体の発生は円滑になり安定した経過を示した。
(3)コメヌカに代わる栄養材として、フスマ、トウモロコシヌカを用いたところ、培養日数の短縮化と単位当り発生量が大幅に改善された。
(4)広口ビンの培地の詰め方としては2・ほど空隙を設けるよりもビン一杯まで詰める方が子実体の発生は円滑で収穫もしやすかった。
(5)発生処理時に培地に水をしみこませる発芽水の施用については、1から2時間程度行ったものでは特に原基形成促進、発生量増加に結びつかなかった。


2号(1987年)

オガクズナメコ栽培のコストダウン技術に関する調査・試験(PDF:7,436KB)

小出博志・一ノ瀬幸久・篠原弥寿夫

オガクズナメコ栽培におけるコストダウン要素を把握するため、県下栽培者の実態調査並びに新たな発想を含む開発試験を実施した。この結果の概要は以下のとおりである。
(1)栽培全体に要する労働量は1万本当り281~955人/時間と開きが認められたが、いずれの栽培者でも子実体の収穫、調整、包装の工程で多くの労働量を要していた。
(2)周年栽培では、培地は750~800ccビンや620~710gの袋が利用されており、これらの培養は20℃で75日程度が多く、年回転率は3回転が最高であった。
(3)ナメコ菌糸の伸長量とオガクズ粒子の関係では直径0.5~1.0・のものが最も伸びが良かった。
(4)ナメコ子実体の発生量とオガクズ粒子の関係では、ビン栽培の場合細かい方が良く発生した。
(5)ナメコ子実体の発生時の温度、照度条件を調べた結果、極早生、中生、晩生種とも発芽温度は12~17℃、照度は0.2~0.4ルックスが最も効果的であった。


2号(1987年)

マツタケ増産のための技術体系化試験(PDF:6,294KB)

篠原弥寿夫・小出博志・片倉正行

アカマツ若齢林における環境改善施業とマツタケ発生の関係を明らかにするため、4か所の主要産地に試験地を設けて5年間調査を実施した。このことにより、
(1)環境改善施業として、上木の間伐・下木の全伐・地表有機物層の掻きとりに80~100人区/ha必要であること
(2)施業区内では冷夏の年でも発生量は大きく低下しないこと
(3)シロの増加現象については試験区毎に差が認められること
(4)環境改善施業により試験区内のきのこの種類・発生量が増加し優良食用菌も増えること
(5)施業により有機物堆積が激減し土壌中のアカマツ細根密度が高くなるが微生物量はほとんど変化しないこと
等が明らかになった。


2号(1987年)

薬用植物の林間栽培における技術条件の解明に関する試験(PDF:4,021KB)

篠原弥寿夫・唐沢清

薬用植物は栽培方法など技術的な面で解明しなければならない課題が極めて多い。このため、オウレン及びトチュウの2品目について栽培試験を実施し、栽培条件の検討を行った。
オウレンについては、林内への直播きよりも2~3年生苗を株植えしたほうが生育がすぐれていた。は種は春期がよく、好適ひ陰度を検討したところ、遮光率60%の資材で日除けしたものがすぐれていた。オウレンの栽培品種であるセリバオウレンとキクバオウレンの2品種について、本県での適応を調査したところ、セリバオウレンの優位性が認められた。
トチュウについては、発芽後遮光率の低い日除けを1か月程度行う管理が適用のようであった。また、施肥は10a当たり堆肥1,000kg、窒素18kg、リンを13kg、カリウムを12kg施用した試験区で山行苗木としては適当であった。

 

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