障がいのある人もない人も共に生きる長野県づくり条例は、令和4年4月1日一部施行、10月1日から全面施行された長野県の条例です。 このパンフレットは、合理的配慮の考え方について事業者の皆様にご理解いただくために作成したものです。 条例の理念、そして合理的配慮の考え方と提供の方法を広めていくためにホームページへの掲載を行います。 この条例の略称は「長野県障がい者共生条例」といいます。 誰もが暮らしやすい社会にむけてつくられたものです。 すべての県民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、 相互に人格と個性を尊重し合いながら、支え合い、活かし合う社会の実現を目指し、令和4年3月に制定された長野県条例です。 障がいの有無にかかわらず、すべての人はかけがえのない存在であるという、当たり前の価値観を社会全体で共有し、障がいのある人とない人が、お互いに理解し合うことが、共生社会づくりにつながります。事業者の皆様のご理解とご協力をお願いします。 ここでいう事業者とは、商業その他の事業を行う者で、営利・非営利、個人・法人の別を問いません。 たとえば、地域の町内会なども事業者に含まれます。 条例のポイントは3つあります。 1、障がいのある人に対して、障がいを理由とした差別をすることを禁止します。 2、民間事業者の「合理的配慮の提供」が義務化されました。 3、あっせんを行う調整委員会の設置など、紛争解決のしくみを整備しました。 この3つのポイントについて、次から詳しく説明します。 条例のポイントの一つ目です。 障がいを理由とした差別的取扱いは禁止されています。 この条例及び障害者差別解消法によって、障がいのある人に対して正当な理由なく、障がいを理由とする差別をすることは禁止されています。 正当な理由であるかどうかは、個別の事案ごとに具体的な場面や状況に応じて総合的・客観的に判断します。   障がいの有無にかかわらず、私たちは置かれた環境によって、制約を受けますが、様々な配慮があればその制約は解消されます。 しかしながら、障がいのある人は、生活しにくい、生きづらいと感じる場面が多い状況にあります。その原因は、障がいのある人に配慮せず、障がいのない人に合わせて社会がつくられていることにあります。 例えば、車いすを利用している人の場合、自分で2階に行かれません。これが社会的バリアです。 しかしエレベータ-が設置されていれば、自分で行きたい階に行くことができます。 実は、車いすを利用してない人にも同じようなことが起こりえます。 ロフトには、はしごがなければ上がれません。 しかし、はしごがあればロフトに上がることができます。 障がいは心身の機能の障がいによる個人的な問題だけではなく、心身の機能障がいと障がいのない人に合わせてつくられた社会環境があいまって作りだされています。 社会の中にある生活のしづらさ、生きづらさの原因をバリア、または社会的障壁といいます。これらを取り除くことは、社会の責務であり、社会全体の問題ととらえる必要があります。 社会的障壁とはどのような事でしょう。 また、障壁を取り除くとはどのような事なのでしょう。 不当な差別とはどのようなことでしょうか。例を見てみましょう。 車いすを利用しているドライバーがスーパーの駐車場を訪れました。 駐車場の職員は「専用の駐車スペースはないし、移動は危険だから。万が一事故になったら大変!という考え方から、「うちは無理、他に行って」とか、「他のお客さんが多いから今はダメ」とか、「支援する人と来て」などと答え、一方的に拒絶されてしまったり、他の人にはないような制約をされてしまうことがあります。 これらの対応は、差別的取扱いとなります。 なぜならば、バリアとなっている駐車場お狭さや危険を減らす対応を具体的に検討していないからです。 条例では、事業者がやむを得ず、 第一に、障がいのある人が求めるサービス提供等を断るとき 第二に、求められたサービス提供等に当たって場所、時間等を制限するとき 第三に、障がいのない人に対しては付さない条件を付すとき には障がいのある人にその理由を説明し、理解を得るよう努めなければならないと規定しています。 条例のポイントの二つ目です。 合理的配慮の提供が義務化されました。 合理的配慮とは、障がいのある人から社会的障壁を取り除くための支援を求められたときに事業者の負担がおもすぎない範囲で対応することです。条例ではこれを事業者の義務としています。 また、合理的配慮の実施に伴う負担が過重なため、求められた支援が実施できないときは、その理由を説明した上で、別のやりかたを検討し提案するなど、障がいのある人から理解を得るよう努める必要があります。 社会の中にある様々な障壁のれいです。 事物・利用しにくい施設・設備 例えば、車いすを積み下ろしするスペースがない駐車場など 制度・利用しにくい制度 例えば、障がいを理由に制限される資格や免許など 慣行・障がいのある人の存在を意識していない慣習や文化 例えば、障がいのある人には分かりにくい契約書などの文言 観念・障がいや障がいのある人への偏見など 例えば、障がいのある人が一人で外出するのは危険という先入観 合理的配慮の提供の、具体例です。 車いすを利用しているドライバーが、一般駐車スペースに車を入れました。 ところが車いすをおろすスペースがないため、「もっと広い区画のところはありませんか」と職員に申し出ました。 職員は、「2台ぶん並んで空いているところがありますよ。三角コーンを置いて2台ぶん使用したらどうでしょう?」 と申し出の要望が実施できないので、代替え案を示しました。車いすを利用しているドライバーは 「お願いします。」と答え、合意が得られましたので、合理的配慮が提供されました。 車いす専用駐車場はありませんでしたが、職員からの提案により無事駐車場を利用することができました。 これが合理的配慮の提供の一例です。 合理的配慮とは、障がいのある人から社会的障壁を取り除くための支援を求められたときに事業者の負担がおもすぎない範囲で対応することと説明しました。 負担がおもすぎない範囲とはどのように考えたらよいのでしょうか。 これについては、個別の事案ごとに4つの要素を考慮し、具体的な場面や状況に応じて総合的、客観的に判断します。   要素の1点目。事業への影響の程度。つまり、事業の目的等を損なうか。 例えば、レストランで食事の介助を頼まれた場合、食事を提供する事業の目的から外れます。 要素の2点目。実現可能性。これには、物理的・技術的・人的な制約が関わります。 例えば予約していた長距離バスの発車時間にパニック症状でまに合わないので、30分待ってほしいと求められた場合、などです。 要素の3点目。費用や負担の程度。 例えばエレベーターの設置を求められたが、建物の全面改修が必要な状況だった場合などです。 要素の4点目。事業者の事務・事業の規模、財務状況もかかわります。 合理的配慮は対話によって、その時その場で最善の方法を選ぶことができ、過重な負担にならない範囲でニーズに合う方法が見つけられるという利点があります。 合理的配慮の提供では、こんな場合もあります。 以前、この駐車場を利用したことのある車いす利用のドライバーが、今日も駐車場を利用しようとしています。 「車いすユーザーなので三角コーンをだしてください」と申し出ました。 職員は駐車場の空き状況を確認しましたが、混んでいたため、「すみません。今は2台続きで空いているところがありません。」と答え、すぐには申出を受けた合理的配慮を提供できませんでした。 なんとかできないかと考えた職員は「今は空きがありませんが。確保できたらお電話しましょうか?」と更なる提案をしました。 車いす利用のドライバーは「ありがとう。でも急いでるので別の駐車場を探してみます。やっぱりスペースの広い駐車ばしょがほしいですね」と答え、今回の利用は見送りました。 合理的配慮は共生社会づくりの初めの一歩! 合理的配慮の提供に関する対話は商品開発やサービスの向上と似ています。 お客さまの声を聴いて、ニーズを拾い出し、各事業者の実情に合った形で創意工夫をする。要望にこたえられないときには丁寧に説明をして、理解が得られるように努めます。 一方で施設のバリアフリー化や従業員の障がいに対する理解を深める研修等の取組は「事前的環境整備」といい、不特定多数の人々に向けてより生活しやすい環境を整える取組です。「事前」の環境整備が進めば、合理的配慮のスムーズな提供や、そのためのマンパワーを減らすことにもつながります。 しかし、環境整備だけでは、一人一人違う障がい特性や性別、年齢といった個人のニーズに対応することはできません。 合理的配慮は不可欠で、社会的障壁の除去を求められたときには、ニーズを把握するための対話が何より重要です。 商品開発やサービス向上がそうであるように、合理的配慮もゴールがあるわけではありません。 大切なのは、お互いの前向きな建設的対話と工夫です。 「事前」の環境整備と合理的配慮の積み重ねは事業所の魅力の一つにもなるのではないでしょうか。 合理的配慮と環境整備は相互に影響し合っています。その関係は、どのようなものでしょう。これまでご紹介してきた例をふりかえってみます。 例えば、このスーパーの駐車場には広いスペースの駐車場がありません。そのため広いスペースを必要とする人が利用する場合は、2台分のスペースを利用してもらっています。 スーパー側では会議で、「全面改修はできないけど、なんとかしたいね」と話し合い、今の駐車スペースの1.5倍のエリアを数台分用意する環境整備を行うことを決めました。 整備した広いスペースの駐車場がいっぱいで使用できないときは、利用者の申出に基づき、2台分のスペースを利用してもらうよう合理的配慮の提供を行います。 今もさらなる環境整備に向けての検討は続いています。 差別的対応の例には次のようなものが挙げられます。 全体。障がいや、前例がないからという理由で断る。 接客・販売。 車いすや白杖では店内移動が難しいだろうから利用を断る。銀行ATMなどタッチパネルの操作を依頼されたが、忙しさを理由に断る。 飲食・宿泊。 障がいがあることを理由に窓口での対応を後回しにする。補助けんの同伴を理由に入店を断る。 医療・福祉。 障がいのある人を無視して介助者のみに話しかける。 金融・保険・不動産業。 障がいを理由にアパートの仲介の相談を断る。相手の理解を確認しないまま契約を進める。 生活関連・娯楽 障がいのある人のアトラクションの利用を断る。危ないだろうからといって、付添人を求めるなど、他の人と違った条件を付ける。 合理的配慮の例 全体 意思を伝えあうために、筆談や読み上げ、手話、タブレット端末などを使って話し合う。 接客・販売 店内を付き添って買い物を補助し、必要な商品を手渡す。店内の混雑時は付き添えないと説明して、買い物リストに沿って店員が品物をそろえる。 車いすで入れる試着室(スペース)を用意する。タッチパネルの入力を代行する。 飲食・宿泊 チェックイン等の混雑時に障がいによる様々な理由によって順番を待つことが難しい人に対して、他の人の了解を得て順番を先にする。 または番号札等を配って、他に待てる場所を用意する。 食事に利用するキッチンはさみやストローを用意する。 補助犬ユーザーの来店時に他の利用者の中にアレルギーの人がいないか確認した上で利用してもらう。個室を用意する。 教育・学習支援 受験者の障がい状況に応じた入学試験問題を用意する。見え方、聞こえ方により座席の位置などを変更する。 医療・福祉 情報をアナウンスや電光掲示板で表示する。制度や病気の説明は本人にやさしい言葉で伝える。 状況によって断らなければならない時は、丁寧に説明して理解を求める必要があります。 今お聞きいただきました業種以外の業種、もっと詳しく知りたいかたは、 関係府省庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針で検索をしてみてください。 最後に、条例のポイントの3つ目です。 障がいを理由とする差別を解消するための体制についてです。県では障がいのある人だけでなく、事業者からも、障がいを理由とする差別に関する相談を受け、必要に応じて関係者間の調整・説明・助言を行い、相談事案の解決を図る窓口を設置しています。 連絡先は、障がい者差別解消相談窓口、長野県健康福祉部障がい者支援課ない 電話 026-235-7101 FAX 026-234-2369 メールアドレスは全て小文字でs-kaisho@pref.nagano.lg.jpです。 相談ごとは、まず県の相談窓口にご相談ください。 相談窓口では、相談内容に応じて、助言、情報の提供、関係者間の調整等を行います。 これらの相談窓口の対応によっても、なお解決が困難なものについては、障がいのある人等から県へあっせんの申立てを行うことができます。 申立てが行われると、必要に応じて県が事実確認のための調査等を行いますので、調査等へご協力をお願いします。その後、長野県共生社会づくり調整委員会があっせん案を提示します。 この調整委員会によるあっせんを受け入れていただけない場合には、知事による勧告・公表が行われる場合があります。 また、県では共生社会づくりに向けて講師を派遣します。 障がいのある人への差別にはどんなものがあるの?合理的配慮ってどうすればいいの?などのテーマでお話しさせていただきますので、 職場の研修等において出前講座をぜひご活用ください。 対象はおおむね20名以上のグループを想定していますが、少人数でもご相談ください。 時間は1時間程度です。 会場設営等に係る費用は申込者の負担となりますが、講師料は無料です。 開催希望日の1か月前に県障がい者支援課へ申込書をご提出ください。申込み内容をもとに日程の調整などをさせていただきます。 そしてお知らせです。   県では優れた合理的配慮の提供に取り組んでいる事業所をともいきカンパニーとして認定し、その取組を県ホームページ等でピーアールしています。 認定区分は二種類あります。 障がい者にやさしいサービスを提供する事業所がともいきホスピタリティ、 障がい者が働きやすい職場環境づくりを行う事業所がともいきワークプレイスです。  両方の認定も可能です。  対象事業所は商業等の事業を行う企業・法人です。支店・課単位の申請も可能です。   認定要件は合理的配慮を理解し、提供する合理的配慮の内容を宣言すること。 従業員に対する研修等、共生社会づくりに関する取組を行うこととなっております。 「ともいきカンパニー」の認定を受けて、共生社会づくりの一翼を担ってみませんか。 ぜひ、申請についてご検討ください。 最後に連絡先です。 条例や出前講座に関するお問い合わせは 長野県健康福祉部障がい者支援課 障がい者差別解消相談窓口へ 電話026-235-7101、FAX 026-234-2369 メールアドレスは全て小文字で、s-kaisho@pref.nagano.lg.jpへ ともいきカンパニー認定に関するお問い合わせは 長野県健康福祉部障がい者支援課 在宅支援係へ 電話 026-235-7104、FAX 026-234-2369 メールアドレスは全て小文字で、tomo-iki@pref.nagano.lg.jp にお問い合わせください。 以上でパンフレットの説明を終わります。