資料6 1ページ 長野県「障害のある人もない人も共に生きる社会を目指す研究会」に寄せられた差別事象について 【確認事項】 ※本募集は平成23 年8 月から10 月まで募集されたものであり、障害者差別解消法の公布・施行前であること。(施行2016.4) ※事例募集は、「嫌な思いをしたこと」、「してほしくないこと」、「暮らしにくさや不便さを感じた事」等の差別経験の事例募集であるため、726 件すべてが差別事例とは言い切れないこと。 ※事例は、被差別者からの申し出のみであり、相手方に調査を行っていないため、「障がい者差別」という判断は困難であること。 以上の観点を踏まえ、標記研究会報告書に掲載されている差別事例について考察した。 ≪不当な差別的取扱いと思われる事例≫ 【事例1】 知的障がいのある人が飲食店に入ろうとしたところ、「障がいを持った方はお客様のご迷惑になります」との理由で入店を断られた。 【寄せられた意見の原文】 「障害を持った方はお客様のご迷惑になります」との理由で飲食店の利用を断られた。 ?「不当な差別的取扱い」と考えられるのではないか。 【事例2】 プールを利用しようとしたが、発達障がいがあると意思疎通が難しいと言われ、実際の様子を見ることなく利用を断られた。 【寄せられた意見の原文】 上記本文のとおり ?「不当な差別的取扱い」と言えるのではないか。 ≪合理的配慮の不提供と思われる事例≫ 【事例3】 聴覚障がいのある人が病院で筆談を希望したら断られ、口頭での説明が分かる人を連れてくるように言われた。 【寄せられた意見の原文】 病院で筆談を希望したら断られた。説明の解る人と来て下さいとのことで、診察してもらえなかった ?「合理的配慮の不提供」と考えられるのではないか。 2ページ ≪「不当な差別的取扱い」又は「合理的配慮の不提供」の判断が難しい事例≫ 【事例4】 発達障がいがあることを理由にして、放課後の学童保育を受けることができなくなった。 【寄せられた意見の原文】 ○○地域における児童デイサービスについて 現在の、この地域において、行動援護を行っている事業者はありますが、児童デイサービスは 行われていません。そのため、地元の幼稚園・保育園・小学校等へ通っている障害のある子ども たちが、専門家による指導を十分に受けられない状況です。一般の園や学校では、必ずしも理解 や有効な支援・配慮がまだ難しいケースもあります。 また、親が通園をする中で学習する機会も奪われています。障害のある子が放課後をすごす場 として○○市教委は学童保育所の活用を挙げましたが、保育環境、教員数など必ずしも障害のあ る子に適した場といえません。せまい保育室に詰め込まれ、クールダウンのスペースもなく、お 友達とトラブルをくり返し、退所しても受け皿がないということが毎年のように発生しています。 ?学童保育所には正当な理由はなかったのか、過重な負担に当たっていないのかの 吟味をしないと、不当な差別として断定はできない。同時に本事例の場合は、「環境 の整備」に関する内容も含まれると考えられるのではないか。 【事例5】 脳性まひがある人が診察を受けようとしたら、「動かないでいられないなら診られ ない」と言われて、診察してもらえなかった。 【寄せられた意見の原文】 通院して診察を受けようとしたら「動かないでいられないんじゃ診れない」と診察してもらえ なかった。(脳性まひ) ?診察に当たってどんな内容の診察だったのか。CT やMRI のようなものであれば、 過重な負担と考えられるのではないか。またその脳性まひの方の「動き」がどの程 度のものだったのか。診察時の看護師の体制・人員などはどのようなものだったの か、精査が必要。 【事例6】 障がい特性により長時間待つことが困難な患者が、診察順の繰り上げ等の何らかの 配慮がなかったため、待ち時間の間にパニックが起き、診察を受けられずに帰宅せ ざるを得なかった。 【寄せられた意見の原文】 受診の際、待ち切れずそわそわ落ち着かない利用者さんが、外で待っていたらと言われた。 ?受付や看護師等に、本人の特性を伝え、別室での待機や、診察時間の指定等の配 慮を求めていたのか。相手に何も伝えず、配慮だけを求めることは正当でないと考 えられるのではないか。 3ページ 【事例7】 重度の視覚障がいのある児童が普通小学校に通う際に、安全のために保護者が学校 内の活動に付き添うこと、宿題などのプリントは保護者の責任で点訳することなど を求められた。 【寄せられた意見の原文】 [校長の裁量に委ねられている視覚障害児の普通小学校への入学] 重度の視覚障害のある児童は、就学指導委員会において、盲学校への入学と判定されること が多い。そのような判定を受けた児童が地域の普通小学校への入学を希望する場合は、児童の保 護者が教育委員会と交渉することになる。この教育委員会との交渉過程でも様々な条件が出され る。その後、地域の小学校の校長との交渉が必要となり、この段階でも様々な条件が出される。 その際に、児童の安全のために保護者が学校内の活動で付き添うこと、宿題等のプリントは保護 者の責任で点訳をすること等が求められる。 ?児童が入学する際に、自治体の教育委員会とどのような話し合いがなされたのか、 支援員の配置や教科書、学習の方法等を十分話し合って合意形成を得ていたのだろ うか。学校からの過重な負担についての説明がどの程度あったのか、精査が必要で あろう。 なお、本事例は、平成24 年7 月の中央教育審議会初等中等教育分科会で出された 「就学相談・就学決定の在り方について」にある「本人・保護者の意見を最大限に 尊重し・・合意形成を行う」以前の(不適切な)就学指導の対応であったと考えら れるのではないか。 【事例8】 アパートなどを借りようとする際に、視覚障がいがあることを理由に、なかなか契 約に至らなかった。 【寄せられた意見の原文】 アパート・借家への入居に際して、視覚障がいであることを理由に、なかなか契約に至らなかっ た。貸主は、障がいへの理解の不足なのか、安全など不安材料が多いようです。 ?最終的に契約に至ったのか。時間がかかったことに関しては、どのような検討が なされたのか、聞き取りをする必要があるのではないだろうか。 4ページ ≪その他≫ 【事例9】 地方公共団体の広報紙の問合せ先に電話番号しか記載されていないと、聴覚障がい のある人は連絡することができない。 【寄せられた意見の原文】 ○○市の広報誌をみると、問合せ先として電話番号しか記載されていないものが多い。以前に要 望を出したら、紙面の都合やレイアウトの関係で難しいと言われた。電話番号を優先に考えるか らレイアウトの都合として片付けられてしまうのだと思い、不愉快になった。 【事例10】 災害時の避難所に関する情報が点字版や録音版等で作成されていないと、視覚障が いのある人には分からない。 【寄せられた意見の原文】 [視覚障害者に伝わらない地区の避難所の情報] ○○市の災害時の避難所に関する情報は、視覚障害者のために点訳・音訳されていないため、 どこが地区の避難所として指定され、どのように避難をすればよいのか視覚障害者には分からな い。 以上