ホーム > 心の支援課 > 生徒指導 > 指導資料一覧 > 指導資料No.68 いじめ等対策委員会の活性化を図るために

ここから本文です。

更新日:2000年3月30日

指導資料No.68 いじめ等対策委員会の活性化を図るために

目次

  1. はじめに
  2. 平成9年度の「いじめ」の状況について
  3. いじめ等対策委員会の実践から
    地域の伝統行事を通し、地域ぐるみの取組を進めたA小学校
    「学校自由参観」などに取り組むB中学校
  4. 資料

平成11年3月30日 長野県教育委員会

  1.はじめに

 平成9年度中に、全国の小・中・高・特殊教育諸学校において発生した「いじめ」の件数は、前年度に比較して8,754件減少の42,790件となりました。本県におきましては、平成7年度の613件をピークに2年続けて減少し、9年度は429件となりました。国は、いじめの問題の解決については、学校・家庭・地域の連携が不可欠であるという認識に立ち、平成8年7月に発表した「いじめの問題に関する総合的な取組について」のなかで、地域全体が連携し、「いじめ根絶推進本部」などを設置して取り組むよう提言しています。
 本県では、平成8年度から、学校に「いじめ等対策委員会」市町村に「いじめ等対策連絡協議会」の設置を呼びかけ、平成10年12月時点では、学校の96%、市町村の63%に設置されています。本号では、これらの委員会の取組を紹介し、各学校、各市町村教育委員会における、いじめの問題に対する取組の一層の充実に供したいと考えています。

ページの先頭へ戻る

 2.平成9年度の「いじめ」の状況について

(1)発生学校数・発生件数(本県公立全学校・以下同様)

区分

発生学校数

発生件数

発生率

小学校(415校)

75校

136件校

18.1%

中学校(195校)

83校

228校 

42.6%

高等学校(91校)

23校

64校 

25.3%

特殊教育(18校)

1校

1校

5.6%

計(719校)

182校 

429校 

25.3%

※発生率(%)=発生学校数÷全学校数×100
 発生学校数、件数ともに中学校が最も多く、件数では、全体の約53%を占めています。その背景として、思春期の不安定さに加えて学業や進路の問題なども関係していることが考えられます。

(2) 発生件数の学年別内訳  〔件〕

区分

1年

2年

3年

4年

5年

6年

小学校

5

7

20

28

49

27

136

中学校

71

110

47

 

228

高等学校

40

20

4

 

64

特殊教育

0

0

1

[中等部]

1

合計

429

 全体では、中学校2年生での発生がピークとなっていますが、中学校1年、高等学校1年などでの発生も多いことから、新たな人間関係に絡んでの発生が多いこともうかがえます。

(3)いじめの態様(複数回答-上位3位)〔件〕

区分

1位

2位

3位

小学校

冷やかしからかい

仲間はずれ

言葉での脅し

中学校

冷やかしからかい

言葉での脅し

仲間はずれ

高等学校

暴力を振るう

言葉での脅しい

冷やかしからかい

 ※中学校には、特殊教育諸学校中等部を含む。
 小学校では、「冷やかし・からかい」「仲間はずれ」など、遊びや日常生活のなかで発生するいじめが多い傾向にありますが、中学校、高等学校と学年が上がるに従って暴力的ないじめが多くなる傾向にあります。

(4)学校におけるいじめへの対応(複数回答)

 全小・中・高・特殊教育諸学校の94%の学校で「職員会等を通じて共通理解を図った」、83%の学校で「児童・生徒会活動や学級活動において指導した」など、積極的な取組が図られている状況があります。

ページの先頭へ戻る

 3.いじめ等対策委員会の実践から

地域の伝統行事を通し、地域ぐるみの取組を進めたA小学校(小学校)

(1)A小学校いじめ等対策委員会の概要

 平成9年度に発足し、初年度は「いじめ」と「不登校」について、その対策を検討したが、10年度からは「いじめ」を中心に据え、その未然防止のため、子供同士の温かい人間関係づくりを目的とした行事を実施するなど、地域に根ざした活動を実施してきている。

(2)委員会の構成

  • 地区代表………町福祉委員会、地区育成会長、主任児童委員等
  • 保護者・PTA代表………PTA正副会長、学年PTA会長、校外指導委員長等
  • 学校関係者………校長、教頭、生徒指導主事、学年主任等  計28名

(3)活動の概要

第1回(6月)

  • 県教育委員会発行の指導資料「見逃してはいけない!いじめ」をもとに、いじめについての共通理解を図る。
  • 地域の児童の様子についで情報交換
  • いじめの事例と指導についての研究協議
  • いじめの実態把握のために実施するアンケート内容の検討

第2回(10月)

  • 校内外における児童の実態について報告
  • いじめの事例についての研究協議
  • アンケート結果に基づく指導方針の検討
  • 家庭向け「生徒指導だより」の作成

第3回(3月)

  • 本年度の反省と来年度の課題の検討

実践事例

「A小親子ふれあい祭り」の実践

 第1回委員会の、いじめの事例と指導についての研究協議のなかで、対策委員会としては、発生したいじめの問題について論じるよりも、いじめの未然防止のための取組をしていくことが必要であるという意見が出された。そこで、子供同士を温かい人間関係で結ぶ取組として、地域の伝統行事である「御柱祭」を取り入れたPTA行事を行うこととなった。

[ねらい]

  • 地域の伝統行事を父母や地域の方々と共に楽しむことにより、助け合いの精神や連帯感、成就感を味わうと共に、友達同士や親子、地域の人々全体の温かい人間関係の醸成を図る。
  • PTA主催としたことにより、子供同士の人間関係づくりに対する父母の積極的な係わりが期待できる。
  • 地域の協力を得ることにより、地域全体で子供を健全に育成することへの関心を高める。

[実施上の留意点]

  • 公道を使用することから、交通安全面での配慮を入念に行った。
  • 子供全員が、①柱をひく、②柱に乗る、③柱をひいたあとの清掃をする をローテーションで経験できるよう配慮した。

[成果等]

  • 1,300人参加の大行事のなか、児童、父母、学校職員、地域の人々が互いに楽しみながら触れ合う場面が多く見られ、心を合わせて一つのことをなし遂げることの良さが味わえた。また、人間関係の広がりもみられた。
  • 樹齢90年余りの杉の大木を伐採するところから行事化したことで、自然に対する畏敬の念や、「命」の大切さと感謝の心を学ぶ機会となった。
  • 12月には、校庭に建ててあった柱を倒し、6年生の卒業記念品として「ベンチ」に加工した。

 生活の中で役立つものに姿を変え、常にそばにおいて使用することで、子供の心にみんなで曳いた時の感動が長く残ることを期待している。

ページの先頭へ戻る

 「学校自由参観」などに取り組むB中学校(中学校)

(1)B中学校いじめ等対策委員会の概要

 平成8年度に発足し、学校の状況報告や地域での様子等について意見交換をしてきた。9年度からは講師を招き、生徒理解についての研修会を教職員、PTA、地域の人々合同で行ったり、生徒会役員といじめの問題についての交流会を行うなどしてきた。
 そういった活動のなかで、地域・父母・学校が課題を共有していじめ等の問題に取り組むための先進的な取組として、「学校自由参観」の取組も行われてきている。
 この取組により、とかく閉鎖的と思われがちな学校の垣根が取れたばかりか、地域の教育力も高まりつつあるように思われる。

(2)委員会の構成

  • 地区代表・・・・・・少年補導委員、青少年育成推進指導委員、子供会、民生児童委員、公民館長
  • 保護者・PTA代表・・・・・・PTA正副会長、校外指導委員長等
  • 学校関係者・・・・・・校長、教頭、生徒指導委員会             計23名

(3)活動の概要

第1回(6月)

  • 委員会発足 趣旨説明 役員選出
  • 学習会「子供の心をどうとらえるか」講師 中央児童相談所 藤田敏彦氏
    (PTA支部長、少年補導員ら50名参加)
第2回(7月)
  • 学校生活についての生徒・父母・教職員の意思交流会参加
第3回(7月)
  • 地区懇談会参加
第4回(11月)
  • 少年補導員、青少年育成委員、民生委員との事例研究及び意見交換
第5回(2月)
  • 生徒会役員との意見交換

実践事例

「学校自由参観」の取組

[ねらい]

  • 学校を父母や地域に開放し、指導の状況や生徒の様子などをつぶさに見ていただくことで、いじめをはじめとした生徒指導上の課題を、学校、家庭、地域全体で共有する。
  • 生徒の実態を通して、生徒指導上の課題解決について、学校、家庭、地域のそれぞれの役割を明確にした指導の充実を図る。

[実施上の留意点]

  • 生徒を監視する意味での自由参観ではなく、課題を共有するための取組であることの周知徹底を図った。
  • 最も大切なことは、開放する学校側の意識の統一であることから、取組に際しては、十分な討議を行い、職員の意識の統一を図った。
  • 参観で出された意見や気づきなどは、「学校参観だより」にまとめ、必ず全家庭に配付して共通の話題になるよう配慮している。

[成果等]

  • 以前に増して地域からの情報が得られるようになってきている。
  • 学級懇談会などで、共通認識のうえで話し合いができるようになり、討議の深まりが各学級で見られるようになってきている。
  • 生徒の校外での様子をとらえ、地域の人々に直接指導していただくなど、地域全体で生徒指導に取り組む姿が見られてきている。
  • 家庭で、親子が学校の様子をもとに話し合う場面が増えてきている。
  • 教室や授業を公開することで、職員も一層意欲的になり、学級経営や教科指導面でよい影響が見えてきている。
  • 親自身のなかに、家庭教育のあり方について見返し、考えようとする姿勢が、より認められるようになってきている。

[その他]

  • 「学校自由参観」を通して生徒、父母、地域、教師の代表による「四者会議」が発足した。 学期に一回の会議を通し、内と外に開かれた「いじめのない、よりよい学校」づくりを進めている。

ページの先頭へ戻る

 4.資料 児童生徒の生徒問題行動等に関する協力者会議報告(平成8年7月)

※「いじめ問題に関する総合的な取組について」より

いじめの問題に対する地域を挙げた積極的な取組について

 いじめの問題の解決のためには、地域社会としても様々な取組を進めていくことが必要である。子供たちに様々な社会体験、生活体験、自然体験を得させることを目的とした、青少年団体やスポーツ団体などの地域の各種団体の活動の一層の活発化、民間活力を生かした各種のプログラムの展開など、各地域の実情に応じ、創意工夫を生かした運動が積極的に展開されることが期待されるところである。その際、地域を挙げたいじめの根絶運動として、例えば文部省が示している次のような取組事例も参考となるだろう。

取組事例

いじめ根絶推進本部の設置など

 市町村に、教育委員会、首長部局、学校、PTA、社会教育施設、青少年教育施設、法務局、家庭裁判所、児童相談所、児童委員、児童館、警察、少年補導センター、自治会、婦人会、青年団、子ども会、商工会議所、スポーツ少年団、ボーイスカウトなどの青少年団体の代表、地域の退職警察官やスポーツ指導者などの協力を得て、キャンペーンの実施主体となる組織として「いじめ根絶推進本部(仮称)」を設ける。
 このような組織が主体となって、例えばいじめの問題をテーマとする市民集会の開催や都市宣言の採択、「いじめ根絶強調月間」の実施、又は子どもの参加による「いじめ根絶1日市議会」の開催などとともに、ポスターの配布、垂れ幕、アドバルーン等による広報活動を積極的に行うことが考えられる。
 その際、地域の実情により、例えば、各中学校単位程度ごとに実施のための組織を設けることも考えられる。

スポーツ団体及び社会教育団体の協力

 いじめの問題の解決のための対策の一つとして、地域のスポーツ関係団体や指導者等の協力を呼びかけ、スポーツ活動等を通して、、仲間との連帯感や協調性、フェアプレーの精神などを子どもに身につけさせるなどの指導を行ってもらうことも考えられる。また、地域の社会教育団体や指導者等の協力により、青少年のボランティア活動や自然体験活動等、地域における社会教育活動を通して、思いやりの心や弱い者を助ける勇気などを身につけさせる指導を行ってもらうことも考えられる。

人材バンクの活用

 「いじめ根絶地域リーダー」(仮称)人材バンクを設置し、PTA関係者や地域の青少年活動のリーダー、退職教員、退職警察官などの協力を得て、ボランティアとして登録し、校外巡回や諸活動において子どもたちの指導を行ったり、相談相手になってもらったりする。また、この「いじめ根絶地域リーダー」を中心にして「あいさつ運動」や「声かけ運動」「よその子を叱る運動」などのほか、有害自販機の撤去など地域の環境浄化活動等を展開する。

地域マスタープランの策定

 いじめ問題解決のための地域の取組方針、地域において展開する様々な事業等を盛り込んだ「いじめ根絶マスタープラン」(仮称)を策定する。例えば、地域の社会教育団体、スポーツ団体、PTAなどの協力を求めながら、ファミリースポーツ・レクリエーション大会等を開催し、親子そろって一日を楽しむ機会を設けたり、ボランティア・各種体験活動などの地域行事に親子で参加できるよう、土曜日や日曜日に集中的に実施するなど相互に有機的に関連づけたものとする。

意識開発活動

 地域におけるいじめの問題に関する意識啓発を進めるための各種の運動を展開する。例えば、地元のテレビ・ラジオ、新聞や各種の広報などの地域メディアに働きかけ、いじめの問題の解決のための広報活動を展開する。また、教育センターや児童相談所、人権擁護機関、警察など関係機関の連携を深めるとともに、住民への啓発を図るため、関係機関の連絡会や一般参加の青少年教育相談シンポジウムを開催する。さらに、家庭の意識啓発を図るため、家庭向けパンフレット等各種資料を作成・配布したり、保護者、地域住民及び教師間の共通理解を深め意識を高めるため、PTAが主体となって連携推進会議を設けたりする。

ページの先頭へ戻る

お問い合わせ

所属課室:長野県教育委員会事務局心の支援課

長野県長野市大字南長野字幅下692-2

電話番号:026-235-7450

ファックス番号:026-235-7484

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?