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更新日:2026年5月26日
長野県地球温暖化対策条例の改正に当たっては、再生可能エネルギー設備設置義務の対象を、現行案の延床面積300平方メートル以上の新築建築物に限定するのではなく、少なくとも設計者による説明義務と同じ「10平方メートル超」の新築建築物へ拡大するよう求めます。
あわせて、安全性、構造、積雪、日照その他の合理的事情がある場合には適切な例外を設ける一方、原則として住宅を含む小規模建築物も対象とする制度へ見直すべきです。長野県公表資料でも、現行案の300平方メートル基準は「県内の一般的な住宅の約9割に義務を課さないよう設定」したものと説明されており、同時に説明義務は10平方メートル超の全ての建築物へ拡大する整理が示されています。したがって、300平方メートル基準を維持したままでは、住宅分野の本体部分を直接義務の外に置くことになり、説明義務のみで普及を図る制度に後退してしまいます。
理由
第一に、長野県自ら掲げる目標との整合性の観点から、300平方メートル基準は明らかに不十分です。
長野県はゼロカーボン戦略において、2030年度までに住宅屋根ソーラー22万件を掲げています(知事選挙公約も同じ)が、長野県環境審議会建築物における省エネの推進及び再エネの普及拡大に関する専門委員会報告では、現行増加率のままでは2030年度時点で住宅屋根は約12万件にとどまると整理されています。さらに県の2024年度時点の実績は約10.5万件とされており、目標達成には今後、住宅分野で極めて大幅な導入加速が必要です。
にもかかわらず、一般的住宅の約9割を外す300平方メートル基準を採るならば、県自身が認める不足分を埋める制度になりません。よって、条例の実効性を確保するには、住宅・小規模建築物を原則対象に含める方向、すなわち10平方メートル超を基準とする制度設計へ改める必要があります。
第二に、財産権・経済的自由権の制約であるから300平方メートル未満まで義務化を広げることは困難であるとの議論は、憲法論として一面的です。日本国憲法第29条は財産権を保障する一方で、その内容は「公共の福祉に適合するやうに、法律で、これを定める」と明記しており、憲法第22条も職業選択の自由を「公共の福祉に反しない限り」保障しています。また憲法第13条は個人の生命・自由・幸福追求に対する最大の尊重を、憲法第25条は健康で文化的な最低限度の生活と公衆衛生の向上を求めています。したがって、再エネ設備設置義務は、単に所有者の負担だけをみて判断されるべきではなく、気候危機から県民の生命、健康、居住環境、地域社会の持続可能性を守るという、より大きな公共の福祉との関係で評価されるべきです。建築物については、建築基準法令による安全・防火・衛生・形態規制に加え、国においても2025年4月以降、原則すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合義務が課されており、建築主の自由に対する一定の公法的制約は既に広く制度化されています。再エネ設備設置義務も、これと同様に、建築物が社会に与える外部不経済を抑え、将来世代を含む住民の利益を守るための規律として位置付けることができます。
第三に、仮に財産権・経済的自由権への配慮が必要であるとしても、それは300平方メートル未満を一律に広く除外する根拠にはなりません。重要なのは、義務化の有無を二者択一で論じることではなく、目的の正当性、対象の合理性、例外の相当性、負担軽減措置の有無を踏まえて制度を設計することです。現に長野県案自体も、法令上安全に設置できない場合や、多雪地域など知事が導入困難と認める場合を義務対象外とし、段階的拡大も検討するとしています。こうした例外規定と支援措置を整えたうえであれば、10平方メートル超を原則対象とすることが過剰な権利制約になるとはいえません。むしろ、専門委員会でも、300平方メートル以上に限定した制度については違憲判断の考え方から見ても十分合理的で、問題はないとの見解が示されており、問題は違憲性そのものというより、県がどこまで実効的な制度を採る意思を持つかにあります。したがって、財産権論を理由に住宅分野を広く外すのではなく、合理的例外を丁寧に設けたうえで、10平方メートル超の新築建築物を原則対象とする制度設計へ踏み出すべきです。
第四に、この点は人権保障の観点からも裏付けられます。日本弁護士連合会は、2024年10月4日の「人権保護として再生可能エネルギーを選択し、地球環境の保全と地域社会の持続的発展を目指す決議」において、気候危機による深刻な人権侵害を防ぐため、再生可能エネルギーの普及・拡大を進めるべきことを明確にし、さらに2026年2月19日の「国際司法裁判所の勧告的意見を受けて、改めて気候変動政策の強化を求める意見書」では、一定規模以上の新築・増築建築物に一定容量の太陽光パネル設置を義務付ける制度の導入等を求めています。すなわち、近時の法曹界の到達点は、再エネ義務化を単なる財産権制約としてみるのではなく、生命・健康・環境・将来世代の利益を守る人権保障措置として捉える方向にあります。長野県がこの到達点を踏まえるならば、300平方メートル基準にとどまるのではなく、2030年目標に見合う実効性を備えた制度として、10平方メートル超原則対象・合理的例外ありの仕組みへ改めることが求められます。
結論として、長野県は、財産権・経済的自由権への配慮を理由に住宅・小規模建築物を広く義務対象外とするのではなく、公共の福祉に適合する合理的な例外規定と支援措置を整えたうえで、再生可能エネルギー設備設置義務の対象を「10平方メートル超」の新築建築物へ拡大すべきです。そのことこそが、長野県自ら掲げた2030年度住宅屋根ソーラー22万件目標に整合し、県民の生命・健康・生活基盤を守る人権保障にもかなうものと考えます。
ご検討いただけますようお願いいたします。
長野県環境部長の小林真人と申します。
この度は、「県民ホットライン」において、太陽光発電設備設置義務化に関し、詳細かつ多角的なご意見をお寄せいただき、誠にありがとうございました。
ご意見の中で示されている、住宅分野を含む小規模建築物への太陽光発電設備設置義務の拡大が、気候危機への対応や2030年度の普及目標達成にとって重要であるというご指摘につきましては、県としても同様の問題意識を持っているところです。
こうした問題意識を踏まえ、「2050ゼロカーボンの実現」に向け、再生可能エネルギーの普及拡大やエネルギーの地消地産を進め、暮らしの質の向上と持続可能な脱炭素社会の実現につなげる手段として、本制度の導入を検討してまいりました。
一方で、条例改正について諮問した長野県環境審議会の下に設置された専門委員会の議論の中では、制度導入にあたって、財産権や経済的自由権に関するご指摘のほか、今日の物価高騰の中でイニシャルコストの増加など建築主の負担が重くなる懸念も示されたため、公聴人や関係団体からの意見聴取を踏まえた上で、一般住宅規模ではなく、費用負担への対応力が比較的高いと考えられる事業所等の延床面積300平方メートル以上の建築物を対象とする内容で、環境審議会から答申をいただいたところです。
今回の制度に加え、設計者による説明義務制度の活用や、来年度から開始する再生可能エネルギー設備導入に係るイニシャルコストが不要となる事業者向けのゼロ円ソーラー提供者登録制度など、複数の手段を組み合わせることで、再生可能エネルギー導入を後押しし、2030年度の普及目標達成に向けて取り組んでまいります。
また、気候変動が住民の生命や健康に影響を及ぼすとのご指摘は極めて重要であり、人権保障の立場から再生可能エネルギー導入の必要性をご指摘いただいた点につきましても、重く受け止めております。まずは、複数の政策手段を組み合わせながら、条例施行後の県内の普及状況や他自治体の事例等を勘案し、義務化の段階的な拡大について検討してまいりたいと考えております。
以上、ご意見への回答とさせていただきますが、ご不明な点がございましたら、ゼロカーボン推進課長:平林高広、担当:省エネルギー係まで、ご連絡くださいますようお願い申し上げます。
【問合せ先:環境部/ゼロカーボン推進課/省エネルギー係/電話026-235-7022/メールzerocarbon(あっとまーく)pref.nagano.lg.jp】
(分野別:その他)(月別:2026年3月)2025000670
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