長野県男女共同参画社会づくり条例 (平成14年12月26日公布) 改正 平成19年7月17日条例第35号 目次  前文  第1章 総則(第1条─第13条)  第2章 男女共同参画社会づくりの促進に関する施策の推進   第1節 男女共同参画計画等(第14条─第17条)   第2節 男女共同参画社会づくりの促進に関する施策等(第18条―第26条)   第3節 苦情の処理等(第27条・第28条)  第3章 長野県男女共同参画推進指導委員(第29条─第32条)  第4章 長野県男女共同参画審議会(第33条─第38条)  第5章 補則(第39条)  附則  我が国においては、日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ、女子差別撤廃条約の採択など国際社会における取組と連動しながら、男女平等の実現に向けた取組が進められてきた。  こうした国際社会や国内の動向を踏まえつつ、女性就業率が高く、女性が農業等の産業における重要な担い手になっている長野県においても、男女共同参画計画の策定を始めとした諸施策を実施してきた。  しかしながら、依然として性別で役割を固定的にとらえる意識が根強く残っており、そのことによる社会のさまざまな場面での男女間の不平等や暴力などの問題が存在し、真に男女平等な社会の実現には至っていない状況にある。  こうした中で、男女が互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現が、少子高齢化の進展等の社会経済情勢の急速な変化に対応していくためにも、緊急かつ重要な課題となっている。  このような認識に基づき、県民一人ひとりが、性別によって制約されることなく、よりのびやかに暮らせる長野県を、県と県民と事業者が協働して築くことを目指して、この条例を制定する。    第1章 総則  (目的) 第1条 この条例は、男女共同参画社会づくりに関し、基本理念を定め、並びに県、県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、男女共同参画社会づくりの促進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、男女共同参画社会づくりを総合的かつ計画的に推進することを目的とする。  (定義) 第2条 この条例において「男女共同参画社会づくり」とは、男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会を形成することをいう。 2 この条例において「積極的改善措置」とは、前項に規定する機会に係る男女間の格差を改善する上で適切な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいう。  (男女の人権の尊重) 第3条 男女共同参画社会づくりは、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、直接的であるか間接的であるかを問わず男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されること等男女の人権が尊重されることを旨として、行われなければならない。  (生涯にわたる性と生殖に関する健康と権利の尊重) 第4条 男女共同参画社会づくりは、生涯にわたる性並びに妊娠及び出産を含む生殖に関する事項に関し、男女が互いの意思を尊重し、共に健康な生活を営む権利が尊重されることを旨として、行われなければならない。  (社会における制度又は慣行についての配慮) 第5条 男女共同参画社会づくりに当たっては、社会における制度又は慣行が男女の社会における自由な活動の選択を阻害することのないよう配慮されなければならない。  (政策等の立案及び決定への共同参画) 第6条 男女共同参画社会づくりは、男女が、社会の対等な構成員として、県その他の団体における政策又は方針の立案及び決定に共同して参画する機会が確保されることを旨として、行われなければならない。  (家庭生活における活動と他の活動の両立) 第7条 男女共同参画社会づくりは、家族を構成する男女が、相互の協力と社会の支援の下に、子の養育、家族の介護その他の家庭生活における活動について家族の一員としての役割を円滑に果たし、かつ、職業生活における活動その他の活動を行うことができるようにすることを旨として、行われなければならない。  (国際社会の動向を踏まえた取組) 第8条 男女共同参画社会づくりの促進が国際社会における取組と密接な関係を有していることにかんがみ、男女共同参画社会づくりは、国際社会の動向を踏まえながら推進されなければならない。  (県の責務) 第9条 県は、第3条から前条までに定める男女共同参画社会づくりに関する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、男女共同参画社会づくりの促進に関する施策(積極的改善措置を含む。以下同じ。)を総合的に策定し、及び実施するものとする。 2 県は、前項の規定による施策の策定及び実施に当たっては、県民、事業者及び市町村等と協働するよう努めるものとする。  (県民の責務) 第10条 県民は、家庭、職域、学校、地域その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、男女共同参画社会づくりに寄与するよう努めるとともに、県が実施する男女共同参画社会づくりの促進に関する施策に協力するよう努めなければならない。  (事業者の責務) 第11条 事業者は、基本理念にのっとり、男女が共同してその事業活動に参画することができる体制及び職業生活における活動と家庭生活その他の活動とを両立して行うことができる職場環境を整備するよう努めるとともに、県が実施する男女共同参画社会づくりの促進に関する施策に協力するよう努めなければならない。  (性別による差別的取扱いの禁止等) 第12条 何人も、家庭、職場、学校、地域社会等において、直接的であるか間接的であるかを問わず、性別を理由として差別的な取扱いをしてはならない。 2 何人も、家庭、職場、学校、地域社会等において、男女間における身体的又は精神的な苦痛を与える暴力的行為をしてはならない。 3 何人も、家庭、職場、学校、地域社会等において、セクシュアルハラスメント(性的な言動により個人の生活環境を害する行為又は性的な言動を受けた個人の対応により当該個人に不利益を与える行為をいう。第25条第1項第3号において同じ。)を行ってはならない。  (公衆に表示する情報に関する留意) 第13条 何人も、公共の場所又は公共交通機関を利用する不特定多数の者に対して表示する情報において、次に掲げる表現を行わないよう努めなければならない。  (1) 性別による固定的な役割分担又は男女間の暴力等を助長し、又は連想させる表現  (2) みだりに女性の身体を強調する等の過度の性的な表現    第2章 男女共同参画社会づくりの促進に関する施策の推進     第1節 男女共同参画計画等  (男女共同参画計画) 第14条 知事は、男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)第14条第1項の規定により男女共同参画社会づくりの促進に関する基本的な計画(以下「男女共同参画計画」という。)を定めようとするときは、県民及び事業者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、長野県男女共同参画審議会の意見を聴かなくてはならない。 2 前項の規定は、男女共同参画計画の変更について準用する。  (施策の策定等に当たっての配慮) 第15条 県は、男女共同参画社会づくりに影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、男女共同参画社会づくりに配慮するものとする。  (財政上の措置) 第16条 県は、男女共同参画社会づくりを促進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 (施策の実施状況の公表等) 第17条 知事は、毎年、県が講じた男女共同参画社会づくりの促進に関する施策の実施状況及び男女共同参画社会づくりの推進状況について、その概要を公表しなければならない。 2 県は、男女共同参画社会づくりの推進状況を勘案し、県の施策等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。     第2節 男女共同参画社会づくりの促進に関する施策等 (広報活動の充実) 第18条 県は、基本理念に関する県民及び事業者の理解を深めるため、男女共同参画社会づくりに関する広報活動の充実その他の措置を講ずるものとする。  (教育活動等による意識の醸成) 第19条 県は、男女共同参画社会づくりについて教育の果たす役割の重要性にかんがみ、学校教育その他のあらゆる教育活動及び学習活動により、個人の尊重、男女平等及び男女相互の理解と協力についての意識をはぐくむよう努めるものとする。  (家庭生活における活動と他の活動との両立支援) 第20条 県は、男女が共に家庭生活における活動と職業生活における活動その他の活動とを両立することができるように必要な支援を行うよう努めるものとする。  (自営業における環境整備) 第21条 県は、自営の農林業、商工業等に従事する女性が、正当な評価のもとに、その主体性をいかし、その能力を十分に発揮して、対等な立場で方針の立案及び決定に参画する機会が確保されるための環境整備に努めるものとする。  (調査研究の推進) 第22条 県は、男女共同参画社会づくりの促進に関する施策の策定及び実施に必要な調査研究を推進するよう努めるものとする。 2 知事は、前項の調査研究において必要があると認める場合は、事業者の協力を得た上でその事業活動における男女共同参画の状況について報告を求めることができる。 (県民等に対する支援) 第23条 県は、県民及び事業者が行う男女共同参画社会づくりの促進に関する活動並びに市町村が実施する男女共同参画社会づくりの促進に関する施策を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。  (拠点施設の設置等) 第24条 県は、男女共同参画社会づくりの促進に関する施策を実施し、並びに県民及び事業者による男女共同参画社会づくりに関する活動を支援するための総合的な拠点施設を設置するとともに、全県にわたり男女共同参画社会づくりを推進する体制を整備して、これら施策の充実を図るものとする。  (県の職場における環境整備等) 第25条 県は、県の職員が勤務する職場において、次に掲げる取組を行うものとする。  (1) 性別による固定的な役割分担意識を払しょくするための取組  (2) 男女が職業生活における活動と家庭生活における活動その他の活動とを両立して行うための支援  (3) セクシュアルハラスメントその他の男女共同参画社会づくりを阻害する要因による人権侵害のない環境の整備 2 県は、県の職員について、女性の登用を促進し、及び職域を拡大するための総合的な取組を推進するものとする。 (附属機関の委員等の構成) 第26条 県は、附属機関の委員等について、できる限り男女の数が均衡した構成とするよう努めるものとする。     第3節 苦情の処理等  (苦情の申出等) 第27条 県民及び県内に事務所又は事業所を有する事業者は、県が実施する男女共同参画社会づくりの促進に関する施策若しくは男女共同参画社会づくりに影響を及ぼすと認められる施策について苦情がある場合又は男女共同参画社会づくりを阻害する要因によって人権を侵害された場合は、知事に対し、その旨を申し出ることができる。 2 知事は、前項の申出を受けた場合において必要があると認めるときは、関係する他の県の機関に対し、当該申出に対する対応を求めることができる。 3 知事及び前項の規定により対応を求められた関係機関は、第1項の申出に対し、男女共同参画社会づくりの推進に資するよう、迅速かつ適切に対応するものとする。 4 知事及び前項の関係機関は、第1項の申出が男女共同参画社会づくりを阻害する要因によって人権を侵害された場合についてのものであるときは、その関係者に対して、協力を得た上で資料の提出及び説明を求め、必要があると認めるときは、助言、是正の要望その他の行為を行うことができる。  (不服の申出) 第28条 前条第1項の申出を行った者で、同条第3項及び第4項の対応等に対して不服があるものは、長野県男女共同参画推進指導委員に対し、書面により、その旨を申し出ることができる。 2 長野県男女共同参画推進指導委員は、前項の申出を受けた場合においては、別に定めるものを除き、その内容を審査し、申出者に対しその結果及び理由を書面により通知しなければならない。 3 長野県男女共同参画推進指導委員は、第1項の申出が男女共同参画社会づくりを阻害する要因によって人権を侵害された場合についてのものであるときは、その関係者に対して、協力を得た上で資料の提出及び説明を求めることができる。 4 長野県男女共同参画推進指導委員は、第2項の審査の結果必要があると認めるときは、関係する県の機関に対し、是正若しくは改善の措置を講じ、又は前項の関係者に対する助言、是正の要望その他の行為を行うよう勧告することができる。 5 長野県男女共同参画推進指導委員は、前項の勧告をした場合において、必要があると認めるときは、別に定めるところにより、当該勧告の内容を公表することができる。 6 関係する県の機関は、第4項の勧告を受けたときは、これを尊重しなければならない。    第3章 長野県男女共同参画推進指導委員  (設置) 第29条 この条例の規定によりその権限に属させられた事項を処理するため、長野県男女共同参画推進指導委員(以下「指導委員」という。)を設置する。  (定数等) 第30条 指導委員の定数は、3人とする。 2 指導委員は、男女共同参画社会づくりに関し識見を有する者のうちから知事が委嘱する。  (任期) 第31条 指導委員の任期は、2年とする。  (合議による勧告等の決定) 第32条 第28条第4項の規定による勧告及び同条第5項の規定による公表の決定は、指導委員の合議によるものとする。    第4章 長野県男女共同参画審議会  (設置) 第33条 男女共同参画社会づくりに関する重要事項を調査審議するため、長野県男女共同参画審議会(以下「審議会」という。)を設置する。  (任務) 第34条 審議会は、次に掲げる事項について、知事の諮問に応じて調査審議するものとする。  (1) 男女共同参画計画の策定に関する事項  (2) 県が実施する男女共同参画社会づくりの促進に関する施策に関する事項 (3) 男女共同参画社会づくりの推進状況に関する事項  (4) その他男女共同参画社会づくりに関する重要事項 2 審議会は、前項第2号に規定する施策の実施状況について調査審議し、知事に意見を述べることができる。  (組織) 第35条 審議会は、委員15人以内で組織する。 2 委員のうち、男女のいずれか一方の委員の数は、委員総数の10分の4未満であってはならない。 3 委員は、男女共同参画社会づくりに関し識見を有する者のうちから知事が委嘱する。  (任期) 第36条 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。  (会長) 第37条 審議会に会長を置き、委員が互選する。 2 会長は、会務を総理する。 3 会長に事故があるときは、あらかじめ会長が指名した委員が、その職務を代理する。  (会議) 第38条 会議は、会長が招集し、会長が議長となる。 2 審議会は、委員の過半数が出席しなければ、会議を開くことができない。 3 審議会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。 4 会議は、原則として公開とする。    第5章 補則  (補則) 第39条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、知事が定める。    附 則   (施行期日) 1 この条例は、公布の日から施行する。ただし、第2章第3節、第3章、第4章、附則第3項及び附則第4項の規定は、平成15年4月1日から施行する。  (経過措置) 2 この条例の施行の際現に定められている男女共同参画計画については、第14条第1項に規定する手続を経て定められたものとみなす。 3 第4章の規定の施行の際現に長野県男女共同参画推進委員会設置要綱(平成12年3月31日付け11女第153号社会部長通知)の規定に基づき長野県男女共同参画推進委員として委嘱されている者は、その際第35条第3項の規定により審議会の委員として委嘱されたものとみなし、その任期は、第36条の規定にかかわらず、その者の長野県男女共同参画推進委員としての残任期間と同一の期間とする。  (特別職の職員等の給与に関する条例の一部改正) 4 特別職の職員等の給与に関する条例(昭和27年長野県条例第10号)の一部を次のように改正する。  別表第2の2中 「総合計画審議会の委員及び専門委員」 を 「総合計画審議会の委員及び専門委員  男女共同参画推進指導委員      男女共同参画審議会の委員    」 に改める。  (長野県男女共同参画センター条例の一部改正) 5 長野県男女共同参画センター条例(昭和59年長野県条例第6号)の一部を次のように改正する。   第2条中「男女共同参画社会の形成の促進を図るため」を「男女共同参画社会づくりの促進に関する施策を実施し、並びに県民及び事業者による男女共同参画社会づくりに関する活動を支援するための総合的な拠点施設として」に改める。   第6条第1号中「男女共同参画社会の形成」を「男女共同参画社会づくり」に改める。    附 則(平成19年7月17日条例第35号)  この条例は、公布の日から施行する。