長野県の希少野生動植物と生物多様性の保全に関する調査・研究
研究の目的

特別指定希少野生動植物
コマウスユキソウ
- 希少野生動植物のうち緊急に保護・保全の必要なものについて現地調査等により状況を把握します。
- 「長野県版レッドデータブック」刊行後の希少野生動植物の分布と生息・生育状況の変化を把握します。
- 長野県の生物多様性に関する基礎的な情報を県民・事業者・行政の担当部局などに提供します。
- これらを通じて保護・保全活動に資することを目的としておこないます。
研究の内容

指定希少野生動植物
ライチョウ
- <長野県の生物多様性概況報告書の作成
- 既存の科学的文献などと当所で収集したデータの分析によるレビュー
- 注目すべき種および生育・生息地の現況調査(平成21〜23年度)
- 植物:
- 条例指定種等の生態・遺伝的多様性の調査(タデスミレ、コマウスユキソウ等)
- 保護回復事業計画の策定と実施に係わる調査(ヤシャイノデ、タデスミレ、ホテイアツモリ、ササユリ)
- 長野県絶滅種の生育確認等(ホソバノシバナ、スギナモ、ジロボウエンゴサク、アイナエ)
- 希少種ナベクラザゼンソウを含むザゼンソウ属の分類学的位置づけと生態調査
- その他の植物:
- シャジクモ類(沈水植物:きれいな湖の指標植物)の調査、復元活動に協力
- 鳥類:
- 絶滅危惧種等の生息状況調査(ライチョウ・イヌワシ・クマタカ・サシバ・ハチクマ・アカモズ・霧ヶ峰の草原性鳥類)
- 希少猛禽類の生息情報の収集・管理・活用
- 県組織、国の機関に希少猛禽類(Red List種)の情報提供を依頼・収集
- 風力発電施設の希少猛禽類への影響について、マップ作成と県HPでの公表
- 保護回復事業計画の策定と実施に係わる調査(イヌワシ・ライチョウ)
- 両生類:
- 条例指定種の分布・生息状況調査への参画(ハクバサンショウウオ、アカイシサンショウウオ)
- 魚類:
- ウケクチウグイ(レッドリスト種)
- 2007年に県内で16年ぶりに捕獲。DNA・安定同位体分析から長野県個体群の存在を示唆
- イワナ(レッドリスト種)
- DNA分析による国内のイワナの系統の整理に参画。県内の遺伝型分布について調査・解析中
- メダカ・ホトケドジョウ(レッドリスト種)
- 生息環境の特徴、遺伝的変異の調査。県内のメダカについて国内別系統からの移入が判明
- ウケクチウグイ(レッドリスト種)
- 貝類:
- カワシンジュガイ(レッドリスト種)
- 地域集団の寄生特性、生態、遺伝特性の解明。日本全国の調査にも協力
- カワシンジュガイ(レッドリスト種)
- 昆虫類:
- 保護回復事業計画の策定と実施に係わる調査(オオルリシジミ・ミヤマシロチョウ)
- 条例指定種等の生息状況調査(オオルリシジミ、ミヤマシロチョウ、フサヒゲルリカミキリなど)
- 草原性レッドリスト種の分布要因の解明(チョウ類・マルハナバチ類)
- ギフチョウ(レッドリスト種)の生息地管理とモニタリング(白馬村五輪競技会場跡地)
- 植物:
- 地域的な課題の検討・抽出(平成21〜23年度)
- 野生動植物分布情報データベースの運用・管理
- 長野県の生物多様性ホットスポットの分析(多様性が高く絶滅リスクの大きい地域の抽出)
- 生物多様性の構成要素(遺伝子・種・群集・景観等)の分布要因の解明と変動予測
- 人間活動と関連づけた生物多様性の総合評価
- 生物多様性の保全に向けた地域的な課題の検討・抽出
長野県生物多様性概況報告書
NAGANO BIODIVERSITY OUTLOOK
生物多様性長野県戦略(仮称)の作成に資するため、県内の生物多様性の特色・現状と課題を整理した報告書を作成・公表しました。
- 生物多様性とは、自然界にみられる「個性」と「つながり」、それらがうみだす「はたらき」を、遺伝子・種・生態系などさまざまな側面からとらえたものです。衣食住から経済・文化まで、人間の生活は依然として生物多様性がうみだすさまざまな自然のめぐみにささえられています。しかし近年の人間活動によって、このめぐみの源である生物多様性は、世界的に危機的な状況にあります。
- 生物多様性条約、生物多様性国家戦略などの枠組みのもとで、国内外でこの危機への対応がおこなわれています。生物多様性基本法は、都道府県や市町村による生物多様性地域戦略の策定に向けた努力義務を規定しています。本報告は、長野県の生物多様性地域戦略に記載されるべき目標や施策を議論するための前提として、生物多様性の現状と課題を整理することを目的に、長野県環境保全研究所で作成したものです。
- 本報告では、まず長野県の生物多様性に特有の地域特性をもたらしている地形・地質や気候の特性、長野県の生物多様性の特徴と形成史を概観しています。次に生物多様性国家戦略による生物多様性の危機の整理(3つの危機と地球温暖化による危機)にもとづいて、長野県における生物多様性の現状と課題の整理をおこないました。また、今後の対応のための選択肢として、国内外で実行・提案されている事例やアイデアを例示しています。これらの例示は、議論のなかで参照されることを想定したものであり、必ずしも政策的・社会的に最適かつ不可欠なものとして提示するものではありません。

(研究リーダー 大塚孝一・須賀 丈)