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更新日:2018年1月26日

「ワークライフバランス推進セミナー」講演の概要(平成20年)

講演の概要

渥美さんには、ご自身が行った国内外500社にもおよぶワークライフバランスに取り組む先進企業のヒアリングと、3千社のデータベースの分析の結果を基に、企業におけるワークライフバランスの必要性についてお話をいただきました。

1.ワークライフバランスは質の高い仕事とゆとりある生活の相乗効果をもたらす。

2.労働力人口の減少時代を迎え、働きやすい職場か否かが人材を確保できるかどうかの鍵となる。

3.ワークライフバランスにより無駄な業務がなくなり、効率的な組織になる。

4.傍観者、無関心な人にどう気付かせ、取り組みを浸透させるかが重要である。

などをご自身の育児経験談も含め、具体例を交えてわかりやすく説明していただき、経営戦略としてのワークライフバランスの重要性がよくわかりました。参加者からは、「ワークライフバランスの制度を導入する以上に、社員の気付きが重要であることがわかった。」、「ワークライフバランスは個人のみならず、会社や社会等に対する大きな影響があることを知った。」等の感想をいただきました。

講演の要旨

-はじめに-
今まで様々な取組事例をみて確信しているのは、企業が経営戦略としてワークライフバランス(以下、「WLB」)に取り組むのは非常に効果があるということである。ただ、取り組んですぐに業績が上がるという特効薬ではなく、序々に効いてくる漢方薬のようなものである。WLBの制度を作ること、利用したい人が利用できるようにすることも大切だが、一番重要なのは、WLBに無関心な人や傍観者になっている人に、WLBに取り組む成果や効果をいかに気づかせていくかである。

-ワークライフバランスとは-
WLBは仕事と生活を天秤にかけるという二者択一ではない。ワーク(仕事)の土台にはライフ(生活)がある。質の高い生活が質の高い仕事になり、メリハリある仕事は生活のゆとりにつながるといった相乗効果をもたらす。これがWLBである。WLBに取り組む企業では「従業員の延長に顧客がいる」という考え方が浸透しており、「働きやすい職場になる→従業員のやる気と満足度が上がる→商品やサービスの質が上がる→顧客の満足度が上がる」という結果につながる。また、WLBは一企業の戦略として留まらず、地域戦略としても極めて有効である。自治体がWLBに取り組むと、その地域は「働きやすく暮らしやすい地域という認識が広まる→子育て世代や準備世代を惹きつける→納税者が増え、自治体の税収も潤う」というプラスのサイクルが生まれる。実際、イギリスのバーミンガムはWLBに力を入れており、30代から40代の子育て世代がロンドンから移住してきている。それに伴い、優秀な労働者の確保を狙う優良企業も多数移転してきており、経済活性化の効果をもたらしている。

-ワークライフバランスの必要性-
なぜWLBが必要になったのか?労働力人口は今後50年で3分の1が減っていく。そうなると人材の奪い合いとなり、働き手が企業を選別する時代となる。働きやすさを基準に働き手が集まることになり、企業にとっては、働きやすい職場であるか否かが人材を確保できるかどうかの明暗を分けることになる。片働きモデルが主流の時代は、「夫はワーク、妻はライフ」という役割分担だったが、共働きモデルでは夫婦ともにWLBをする必要がある。片働きモデルだと、ほぼ同一人種、モノカルチャーな職場であり、車に例えると入社から定年までアクセルを踏み続けることができる、オートマチィック車の運転と似ているが、労働力人口が減り共働きモデルが主流になると、職場には色々な人達が混在することになり、それぞれのライフステージごとにきめ細やかな対応が必要となってくる。いわば、マニュアル車の運転のように柔軟なシフトチェンジが求められ、ドライバーのマネジメント力が問われる時代になる。リスク回避策としてもWLBは効果がある。一般企業の職場の状況を見ると、過労うつで出社できない人が2%、通院している人が6%、自覚症状がある人が30%とメンタルヘルスに支障をきたしている人が急増している。従業員がうつになって訴訟が増えてくると、企業は社会的信用も失くし、著しい打撃を蒙ることになる。また、企業の不祥事を回避するための、コンプライアンス(法令遵守)を考える上でもWLBは有効である。データによると、不祥事を起こした企業には、1.長時間労働、2.女性の管理職が少ないという2つの特徴がみられた。コンプライアンスの観点からもWLBは重要な戦略となりうる。

-ワークライフバランスの経営効果-
WLBには「第1の通説-子育てしていない従業員にはメリットがない」、「第2の通説-中小企業では導入しにくい」、「第3の通説-WLBはコストがかかって企業にメリットが少ない」という3つの通説があるがいずれも間違っていると言わざるを得ない。まず、第1の通説「子育てしていない従業員にはメリットがない」に関してであるが、高齢化社会を迎え、来る「介護ラッシュ」においては子育て中の従業員以外の従業員が休業を必要とする状況が起こりうる。育児休業が取りにくい会社では、介護休業も取ることができない。職場において、多様な属性の従業員が働きやすい環境が調えば、子育て中の従業員にとってもそうでない従業員にとってもメリットがあるといえ、WLBはそのために大きな役割を果たす。第2の通説「中小企業では導入しにくい」については、トップと従業員との距離が近く、機動性、柔軟性に富んでいるのが中小企業の特徴であり、強みである。このメリットを活かし、WLBを導入すれば、従業員の生活時間を守ることになり、ひいては商品サービスの付加価値を高め、無理な納期を求める顧客への交渉力もアップすることになる。WLBは、決して中小企業において導入しにくいものではないのである。第3の通説「WLBはコストがかかって企業にメリットが少ない」に関しては、1992年から10年間の売上高の業績をみると、一般企業で2割強売り上げが減少した一方で、WLB先進企業では3割近く売り上げが増えたというデータがある。コストよりも大きなメリットが期待できるのがWLBなのである。WLBには、1.いい人を惹きつける。2.がんばる気持ちになる。3.効率的な組織になる。の3つの効果がある。アンケートの回答で一番多かったのは、「仕事の進め方について職場内で見直す結果になった。」である。組織・業務態勢の見直しにより無駄な業務をなくし、下位の役職への権限委譲により個人とチームの生産性の向上をもたらすことになる。WLBは単なるコストではなく、中長期的に返ってくるハイリターン投資と言える。

-働きやすい職場環境作り-
WLBは決して制度を作ることだけではない。また、使いたい人が使いやすいようにするのはもちろんだが、一番重要なのは従業員の意識が変わることである。WLB施策は200種類以上あるが、その会社に合ったきめ細やかな施策展開が必須である。傍観者、無関心な人をどう巻き込むか、従業員の意識が変わる「きっかけ作り」が極めて重要である。WLBの浸透を阻む要因として、いわゆる「粘土層」がある。これは経営トップがWLBを推進しようとしても、部課長等の管理職が粘土層となって社員に浸透せず働きにくい環境としている状態である。こういった管理職の意識を変えるには、1.介護ホラー(親がいない人はいない、介護は必ずやってくる)、2.熟年離婚ホラー(家庭を顧みないと妻の愛情曲線はどんどん下がり離婚につながる)、3.マネジメントホラー(粘土層の部長「バリバリ社員の部長」は最後に挫折するパターンが多い)の3大ホラーが殺し文句となって効く。また、WLBは、ダラダラ残業を撲滅し、過労バリバリ社員の負荷を軽減し、ヌクヌク社員の生産性を向上させ、結果としてイキイキ社員(仕事も生活も重視する社員)を増大させるといった変化をもたらすことになる。

-まとめ-
WLBのワクチンの即効性は低く、中長期的に従業員体質や企業体質を強靱にする「漢方薬」であり、しつこく服用し続けることが重要である。目先の業績向上に目を奪われているとどうしても後回しになってしまう。しかし、そういう企業に明日はなく、どんどんじり貧になっていく。このことに気付けるかどうか、日本企業、日本社会はいま大きな分岐点に立っている。

お問い合わせ

産業労働部労働雇用課

電話番号:026-235-7118

ファックス:026-235-7327

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