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更新日:2021年4月1日

長野県立総合リハビリテーションセンター

身体障害認定基準の取扱い(身体障害認定要領)

診断書作成のための指針となる要領

 ○身体障害認定基準の取扱い(身体障害認定要領)について

(平成15年1月10日)

(障企発第0110001号)

(各都道府県・各指定都市・各中核市障害保健福祉主管部(局)長あて

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長通知)

身体障害認定基準については、本日、障発第0110001号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について」により通知されたところであるが、この「身体障害認定基準」の取扱いについて、別紙のとおり「身体障害認定要領」を定め、平成15年4月1日から適用することとしたので、留意の上、その取扱いに遺憾なきよう願いたい。

なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言(ガイドライン)として位置づけられるものである。

身体障害認定要領

第1 視覚障害

1 診断書の作成について

身体障害者診断書においては、眼の障害は視力障害と視野障害とに区分し、原因の如何を問わずそれらの障害の永続する状態について、その障害を認定するために必要な事項を記載する。併せて、障害程度の認定に関する意見を付す。

(1) 「総括表」について

ア 「障害名」について

障害の部位とその部分の機能障害の状態を記載する。(両眼視力障害、両眼視野障害等)

イ 「原因となった疾病・外傷名」について

視覚障害の原因となったいわゆる病名であり、障害の分野別に具体的な傷病名を記載する。(糖尿病網膜症、緑内障、加齢黄斑変性等)

傷病発生年月日の記載については、初診日でもよく、不明確な場合は推定年月を記載する。

ウ 「参考となる経過・現症」について

通常の診療録に記載される内容のうち、身体障害者としての障害認定の参考となる事項を摘記する。

現症については、別様式診断書「視覚障害の状況及び所見」の所見欄に記載された事項から必要に応じ摘記する。

エ 「総合所見」について

傷病の発生から現状に至る経過及び現症を通じて身体障害者としての障害認定に必要な症状の固定又は永続性の状態を記載する。

成長期の障害、進行性病変に基づく障害、手術等により障害程度に変化が予測される場合は、将来再認定の時期等を記載する。

(2) 「視覚障害の状況及び所見」について

ア 視力は、万国式試視力表又はこれと同一の原理に基づく試視力表により測定する。視標面照度は500~1,000ルクス、視力検査室の明るさは50ルクス以上で視標面照度を上回らないこととし、試視力表から5mの距離で視標を判読することによって行う。

イ 屈折異常のある者については、矯正視力を測定するが、この場合最良視力が得られる矯正レンズによって得られた視力を採用する。眼内レンズ挿入眼は裸眼と同等に扱い、屈折異常がある場合は適正に矯正した視力を採用する。

ただし、矯正不能のもの又は医学的にみて矯正に耐えざるものは裸眼視力による。

ウ 視野の測定には、ゴールドマン型視野計又は自動視野計を用いる。ゴールドマン型視野計で判定する場合は、Ⅰ/4、Ⅰ/2の視標を用いる。自動視野計で判定する場合は、視標サイズⅢを用い、両眼開放エスターマンテスト、ならびに10-2プログラムを用いる。ゴールドマン型視野計では中心30度内は適宜矯正レンズを使用し、30度外は矯正レンズを装用せずに測定する。自動視野計では10-2プログラムは適宜矯正レンズを使用し、両眼開放エスタ-マンテストは矯正眼鏡を装用せずに実施する。

エ ゴールドマン型視野計又は自動視野計の結果は、診断書に添付する。

オ 現症については、前眼部、中間透光体及び眼底についての病変の有無とその状態を記載する。

2 障害程度の認定について

(1) 視覚障害は視力障害と視野障害とに区分して認定し、それら両方が身体障害者障害程度等級表に掲げる障害に該当する場合は、身体障害認定基準の障害が重複する場合の取扱いにより、上位等級に認定することが可能である。

(2) 視力の判定は矯正視力によることとされているが、最良視力が得られる矯正レンズの装用が困難な場合や両眼視の困難な複視の場合は、障害認定上の十分な配慮が必要である。

(3) 視野の判定は、ゴールドマン型視野計又は自動視野計のどちらか一方で行うこととし、両者の測定結果を混在させて判定することはできない。

(4) 自動視野計を用いて測定した場合において、等級判定上信頼性のある測定が困難な場合は、ゴールドマン型視野計で評価する。

(5) 求心性視野狭窄において、視力の測定は可能であっても、指定された1./2の視標では視野が測定できない場合があるが、この場合は、視能率による損失率100%として取り扱う。

(6) 乳幼児の視覚障害の認定時期については、無眼球など器質的所見が明らかな事例は別として、医学的に判定が可能となる年齢は、一般的には概ね満3歳時以降と考えられるので、その時期に障害認定を行うことが適当である。ただし、視覚誘発電位(VEP)、縞視力(preferential looking法(PL法)とgratingacuity card法(TAC))で推定可能なものは、3歳以下で認定しても差し支えない。

なお、成長期の障害、進行性の障害、近い将来手術の予定される場合等については、将来再認定の要否等について明確に記載する必要がある。

第2 聴覚又は平衡機能の障害

1 診断書の作成について

(1) 「総括表」について

ア 「障害名」について

「聴覚障害」「平衡機能障害」の別を記載する。「聴覚障害」の場合には「内耳性難聴」「後迷路性難聴」「中枢性難聴」等の別がわかれば付加記載するのが望ましい。また語音明瞭度を用いた診断には「語音明瞭度著障」等と付加記載する。「平衡機能障害」については、「末梢性平衡失調」「中枢性平衡失調」「小脳性平衡失調」等、部位別に付加記載するのが望ましい。

「ろうあ」で聴覚障害及び言語障害で1級を診断する場合には「聴覚障害及びそれに伴う言語障害」と記載する。

イ 「原因となった疾病・外傷名」について

障害をきたすに至った病名、症状名をできるだけ記載するのが望ましい。例えば、「先天性風疹症候群」「先天性難聴」「遺伝性難聴」「ストレプトマイシンによる難聴」「老人性難聴」「慢性化膿性中耳炎」「音響外傷」「髄膜炎」「メニエール病」「小脳出血」等である。また原因が不明の場合には「原因不明」と記載する。

ウ 「疾病・外傷発生年月日」について

発生年月日が不明の場合には、その疾病で最初に医療機関を受診した年月日を記載する。月、日について不明の場合には、年の段階にとどめることとし、年が不明確な場合には、○○年頃と記載する。

エ 「参考となる経過・現症」について

後欄の状況、及び所見欄では表現できない障害の具体的状況、検査所見等を記載すべきである。例えば先天性難聴では「言語の獲得状況はどうか」等であり、後天性難聴では「日常会話の困難の程度」「補聴器装用の有無、及び時期はいつか」「手術等の治療の経過はどうか」等、障害を裏付ける具体的状況を記載する。また十分な聴力検査のできない乳幼児においては、聴性脳幹反応、蝸電図等の他覚的聴覚検査の結果も記載するのが望ましい。

平衡機能障害についても「介助なしでは立つことができない」「介助なしでは歩行が困難である」等、具体的状況を記載するのが望ましい。

オ 「総合所見」について

「参考となる経過・現症」又は個別の所見欄に書かれた現症の事項により、総合的な所見を記載する。将来障害が進行する可能性のあるもの、手術等により障害程度に変化が予測されるもの、また確定的な検査の望めない乳幼児の診断は将来再認定の必要性を有とし、その時期を記載する。

(2) 「1 「聴覚障害」の状態及び所見」について

幼児でレシーバによる左右別の聴力測定が不可能で、幼児聴力検査で両耳聴による聴力を測定した場合は、その旨を記載する。

鼓膜の状態の記載は、具体的に記載する。例えば混濁、石灰化、穿孔等あれば、その形状も含めて記載する。また耳漏の有無も記載するのが望ましい。

聴力図には気導域値のみではなく、骨導域値も記載する。

語音による検査の場合、両耳による普通話声の最良の語音明瞭度を測定するのであるから、必ず両側の語音明瞭度を測定し記載する。

(3) 「2 「平衡機能障害」の状態及び所見」について

該当する等級に沿った状況、所見を具体的に記載する。例えば「閉眼にて起立不能である」「開眼で直線を歩行中10m以内に転倒する」「閉眼で直線を歩行中10m以内に著しくよろめき歩行を中断する」等である。また四肢体幹に器質的異常のない旨、併記するのが望ましい。眼振等の他の平衡機能検査結果も本欄又は「参考となる経過・現症」欄に記載するのが望ましい。

(4) 「3 「音声・言語機能障害」の状態及び所見」について

「ろうあ」で1級を診断する場合、ここに「あ」の状況を記載する。ただ単に「言語機能の喪失」と記載するだけでなく、日常のコミュニケーションの状況、例えば「両親、兄弟とも、意思の伝達には筆談を必要とする」等と具体的に記載する。

2 障害程度の認定について

(1) 聴覚障害の認定は大部分は会話音域の平均聴力レベルをもとに行うので、聴力図、鼓膜所見等により、その聴力レベルが妥当性のあるものであるかを十分検討する必要がある。

聴力図に記載された聴力レベルと平均聴力レベルが合わないような場合、感音性難聴と記してあるにもかかわらず、聴力図では伝音性難聴となっているような場合等は、診断書を作成した指定医に照会し、再検討するような慎重な取扱いが必要である。

(2) 乳幼児の聴覚障害の認定には慎重であるべきである。乳幼児の聴力検査はかなりの熟練が必要であり、それに伴い検査の信頼度も異なってくるので、その診断書を作成した指定医ないしはその所属する施設の乳幼児聴力検査の経験を考慮し、かつ他覚的聴力検査法の結果等、他に参考となる所見を総合して判断し、必要があれば診断書を作成した指定医に照会するなどの処置が必要である。

(3) 伝音性難聴の加味された聴覚障害の認定に当たっては、中耳等に急性の炎症がないかどうかを鼓膜所見より判断する必要がある。特に耳漏等が認められる鼓膜所見では、その時点では認定をすべきではないので、その旨診断書を作成した指定医に通知するのが望ましい。

(4) 慢性化膿性中耳炎等、手術によって聴力改善が期待できるような聴覚障害の認定に当たっては、それまでの手術等の治療、経過、年齢等を考慮して、慎重に取扱い、場合によっては再認定の指導をするべきである。

(5) 「ろうあ」を重複する障害として1級に認定する場合、「あ」の状態を具体的にする必要があり、「あ」の状態の記載、例えば「音声言語をもって家族とも意思を通ずることは不可能であり、身振り、筆談をもってすることが必要である」等の記載がないときは、診断書を作成した指定医に照会する等の対処が必要である。

(6) 語音明瞭度による聴覚障害の認定に当たっては、年齢、経過、現症、他の検査成績等により、慎重に考慮し、場合によっては診断書を作成した指定医に照会する等の配慮が必要である。

(7) 聴覚距離測定による聴覚障害の認定は、なんらかの理由で純音聴力検査ができない場合に適応されるものであり、その理由が明確にされている必要がある。経過、現症欄等を参考として、慎重に対処する必要がある。

(8) 平衡機能障害の認定に当たっては、「平衡機能の極めて著しい障害」「平衡機能の著しい障害」のみでは不十分であり、その具体的状況の記載が必要である。また現疾患、発症時期等により状況がかなり違ってくるので、その取扱いには慎重を要し、場合によっては診断書を作成した指定医に照会する等の対処が必要である。

第3 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害

1 診断書の作成について

診断書の様式の項目ごとに記入要領及び記入上の留意事項を記す。

(1) 「総括表」について

ア 「障害名」について

機能障害の種類と( )の中に音声、言語機能障害の類型を記載する。

「音声機能障害」とは、主として喉頭レベルにおける声と発声にかかわる能力の障害をいう。音声機能障害(喉頭摘出、発声筋麻痺等)と記載する。

「言語機能障害」とは、喉頭レベル以上の構音器官(口唇、舌、下顎、口蓋等)における発音(構音)にかかわる能力と、音声言語(話しことば)の理解(意味把握)と表出(意味生成)にかかわる能力をいう。言語機能障害(失語症、運動障害性<麻痺性>構音障害等)と記載する。

参考:言語機能障害の類型…失語症、運動障害性構音障害、脳性麻痺構音障害、口蓋裂構音障害、その他の器質性構音障害、ろうあ、聴あ

イ 「原因となった疾病・外傷名」について

上記障害の直接原因である疾病名を記載する。

「喉頭腫瘍」「脳血管障害」「唇顎口蓋裂」「感音性難聴」等

ウ 「疾病・外傷発生年月日」について

発生年月日が不明の場合には、その疾病で最初に医療機関を受診した年月日を記載する。月、日について不明の場合には、年の段階でとどめることとし、年が不明確な場合には、○○年頃と記載する。

エ 「参考となる経過・現症」について

「経過」については、症状が固定するまでの経過を簡単に記載する。初診あるいは機能訓練開始日、途中経過の月日等の記載も望ましい。

「現症」は、コミュニケーション活動の能力の程度を裏付ける客観的所見ないしは検査所見を記載する。ただし、客観的所見の代わりに観察結果でも足りる場合がある。

「現症」記載の参考:コミュニケーション能力の程度を端的に裏付ける検査所見や観察結果のみを簡単に記載する。以下に、検査又は観察項目、検査法を例示するが、すべて行うことはなく、必要と考えられるものの記載にとどめる。

「音声機能障害」

1. 喉頭所見(必要なら咽頭部所見も含める。)

2. 声の状態…失声、嗄声の種類と程度等

3. 発声機能…発声持続能力(時間)等

4. 検査法…音声機能検査、エックス線検査等

「言語機能障害」

1. 構(発)音の状態…母音、子音等の正確性、発話全体としての会話明瞭度及び自然性(抑揚、アクセント、発話速度等)

2. 構音器官の所見…口唇、舌、下顎、口蓋、咽頭等の運動機能と形態

3. 言語理解力…音声言語に関して、単語や文の理解ができるか否か(聴覚的理解)。日常的な単語、簡単な文、やや複雑な文等の視点から理解力の程度をみる。

4. 言語表出力…単語や文が言えるか否か(音声言語の表出)。日常的な単語、簡単な文、やや複雑な文、文の形式(構文又は文法)、文による具体的情報伝達(実質語の有無)等の観点から表出力の程度をみる。

5. 検査法…構音・プロソディー検査、会話明瞭度検査、構音器官の検査、標準失語症検査(SLTA)、老研版失語症検査、国立リハ版失語症選別検査など。

留意事項:「現症」については、個別の所見欄に該当する項目(別様式「聴覚・平衡・音声・言語又はそしゃくの機能障害の状態及び所見」の「3 「音声・言語機能障害」の状態及び所見」)がある場合にはこの欄の記載を省略してよい。この場合、所見欄には現症について詳細に記載することが望ましい。

障害固定又は障害確定(推定)年月日は必ず記載すること。

オ 「総合所見」について

「参考となる経過・現症」又は個別の所見欄に書かれた現症の事項を総合して、その総合的能力が生活上のコミュニケーション活動をどのように制限しているかを記載する。現症欄に記載された事項では表現できない音声・言語機能障害の具体的状況の記載が必要である。すなわち、日常生活におけるコミュニケーション活動の実態を記載するが、それには家庭内(肉親間)あるいは、家庭周辺(家族以外)といった場で、どの程度のコミュニケーションができるか(レベル)の2つの観点から具体的に記載する(表1「障害等級と日常生活におけるコミュニケーション活動(場とレベル)の具体的状況例」参照)。

障害程度の認定には、この日常的コミュニケーション能力の程度の判定が核心となることを銘記されたい。

2 障害程度の認定について

(1) 身体障害認定基準についての補足説明

ア 「音声機能又は言語機能の喪失」の定義は、音声を全く発することができないか、発声しても意思の疎通ができないもの、と解釈すべきである。

イ 言語機能喪失をきたす障害類型に、ろうあ、聴あ、失語症が挙げられているが、運動障害性(麻痺性)構音障害、脳性麻痺構音障害も含まれると解釈すべきである。

ウ 「音声機能又は言語機能の著しい障害」の項で、「具体的な例は次のとおりである。」以下を次のように改めて解釈すべきである。

(ア) 音声機能の著しい障害…喉頭の障害又は形態異常によるもの

(イ) 言語機能の著しい障害

1) 構音器官の障害又は形態異常によるもの(構音器官の障害には唇顎口蓋裂の後遺症による口蓋裂構音障害、末梢神経及び筋疾患に起因する舌、軟口蓋等の運動障害による構音障害、舌切除等による構音器官の欠損によるものなどを含む。)

2) 中枢性疾患によるもの(失語症、運動障害性(麻痺性)構音障害、脳性麻痺構音障害等。)

(2) 等級判定の基準

障害程度をどのように等級判定に結びつけるかについては必ずしも理解が容易ではない。このことは診断書(意見書)を実際に作成するに当たって、現症と総合所見の記載内容にしばしば見られる混乱や、さらに等級判定が概ね総合所見に基づくことにも十分な認識が得られない結果になる。そこで表2に障害程度と等級判定の認定基準を対比させ理解の一助とした。

等級判定の認定基準は、日常生活におけるコミュニケーション活動の場とレベルの2つからの判断が不可欠である。場は、家庭(肉親又は家族間)、家庭周辺(他人との関係―但し、不特定の一般社会ではない)の2つの局面に限定される。レベルは、残存する言語機能を表す言語活動の状態である。総合所見欄はその具体的な記載を求められるが、表1に幾つかの例を示したので参照されたい。

 障害等級と日常生活におけるコミュニケーション活動(場とレベル)の具体的状況例

(3級の欄の音声言語機能のレベルに該当すれば3級と判定する。
3級の欄の項目が可能でも,4級の欄のレベルであれば4級と判定する。)

障害等級

コミュニケーションのレベル

コミュニケーションの場

理解面

表出面

3級

本 人
上下矢印
家 族

本人や家族の名前がわからない。

住所がわからない。

日付,時間がわからない。

部屋の中の物品を言われてもわからない。

日常生活動作に関する指示がわからない(風呂に入って,STに行って,薬を2錠飲んで……)。

本人,家族の名前が言えないか,通じない。

住所が言えない(通じない)。

日付,時間,年齢が言えない(通じない)。

欲しい物品を要求できない(通じない)。

日常生活動作に関する訴えができないか通じない(窓を開けて……)。

身体的訴えができない(通じない)。

状況依存度が高い

本人の所属,時間

日常生活動作,物品に関する指示

本人の所属,時間

日常生活動作,物品に関する要求

4級

本 人
上下矢印
家 族
周 辺

問診の質問が理解できない。

治療上の指示が理解できない(PT,薬の飲み方……)。

訪問者の用件がわからない。

電話での話がわからない。

尋ねた道順がわからない。

おつかいができない(どこで,何を,いくつ,いくら,誰に,いつ)。

病歴,病状が説明できない(通じない)。

治療上のことについて,質問ができない(通じない)。家族に内容を伝えられない。

訪問者に用件を質問できないか通じない。用件を家族に伝えられない。

電話で応答できない。家族に内容を伝えられない(いつ,誰,何,どこ)。

知り合いに電話をかけて用件が伝えられない(通じない)。

行先が言えない(通じない)。道順を尋ねられない(通じない)。

買物をことばでできないか通じない(何をいくつ,いくら)。

状況依存度が低い

家族以外の者から,日常生活動作について,質問されたり,指示されたりしたときに,理解できない。

家族以外の者に,日常生活動作に関することを説明できない。

本表はオリジナルと若干表頭を変えてあります。

表2 等級判定の基準

(大原則:障害程度の判定基準は一次能力障害程度(稼得に関係のない日常生活活動能力の欠損度)に基づく)

障害の程度と等級

認定基準の原則

音声,言語機能障害の場合

障害程度の定義と具体例

等級判定の基準―コミュニケーション活動の場とレベルからみた意思疎通困難の程度―

重度(1,2級)

…………

…………

………………………………

…………………………………

中程度

3級

家庭内での日常生活活動が著しく障害される

喪失

音声言語による意思疎通ができないもの

「音声機能障害」―音声を全く発することができない(例:無喉頭,喉頭外傷による喪失,発声筋麻痺による音声喪失<反回神経麻痺など>)

「言語機能障害」―発声しても意思疎通ができない(例:重度失語症,聴あ,運動障害性構音障害,脳性麻痺構音障害,ろうあ)

家庭において,家族又は肉親との会話の用をなさない(日常会話は誰が聞いても理解できない)。

具体的状況(コミュニケーション活動の場とレベル)は表1に例示してある。

 

4級

家庭周辺での日常生活活動が著しく障害される

著しい障害

音声言語のみ用いて意思を疎通することが困難なもの

「音声機能障害」―喉頭の障害又は形態異常によるもの

「言語機能障害」―イ.構音器官の障害又は形態異常によるもの ロ.中枢性疾患によるもの

障害類型の例は(1)ウの具体例参照のこと

家族又は肉親との会話は可能であるが,家庭周辺において他人には殆ど用をなさない。

具体的状況(コミュニケーション活動の場とレベル)は表1に例示してある。

軽度

軽微

社会での日常生活が著しく障害される

障害非該当

………………………………

日常の会話が可能であるが不明瞭で不便がある。

そしゃく機能障害

1 診断書の作成について

診断書の様式の項目ごとに、記入要領及び記入上の留意事項を記す。

(1) 「総括表」について

ア 「障害名」について

「そしゃく機能障害(そしゃく・嚥下機能障害、咬合異常によるそしゃく機能障害)」と記載する。

イ 「原因となった疾病・外傷名」について

上記障害の直接の原因となる疾病名等を記載する。

記載例:「重症筋無力症」「唇顎口蓋裂」「舌腫瘍切除後の舌の欠損」等

ウ 「疾病・外傷発生年月日」…省略

エ 「参考となる経過・現症」について(エックス線検査、内視鏡検査等の所見を含む)

「経過」については、症状が固定するまでの経過を年月日を付して簡単に記載する。

「現症」については、主たるそしゃく・嚥下機能の障害の内容(「筋力低下によるそしゃく・嚥下機能の喪失」「咬合異常によるそしゃく機能の著しい障害」等)と、その程度を裏付ける客観的所見ないしは検査所見を記載する。

なお、これらの所見等の詳細については、別様式にある「聴覚・平衡・音声・言語又はそしゃくの機能障害の状態及び所見」欄に記載する。

オ 「総合所見」について

「参考となる経過・現症」又は個別の所見欄に書かれた現症の事項を総合して、生活上の食事摂取をどのように制限されているかを記載する。

(2) 「聴覚・平衡・音声・言語又はそしゃくの機能障害の状態及び所見」について

ア 各障害においては、該当する項目の□にレを入れ、必要事項を記述する。

イ 「4 「そしゃく機能障害」の状態及び所見」について(留意点)

(ア) 「(1)障害の程度及び検査所見」について

1) 「1. そしゃく・嚥下機能の障害」では、そしゃくあるいは嚥下機能の障害について判断することを目的としている。「b 参考となる検査所見」の「イ 嚥下状態の観察と検査」については、食塊ないしは流動物(bolus)の搬送の状態を観察する。また、その観察をエックス線検査あるいは内視鏡検査で行うことが理想的であるが、食事(水分)を摂取する場面を観察してもよい。

(観察点)

 各器官の一般的検査(視診、触診、反射)

 口唇・下顎:運動能力(可動範囲、力、速度等)、不随意運動の有無、反射異常ないしは病的反射

 舌:形状(萎縮、欠損、線維束性収縮等)、運動能力、反射異常

 軟口蓋:挙上運動(鼻咽腔閉鎖機能の状態、鼻漏出、鼻腔への逆流)、反射異常

 声帯:内外転運動、梨状窩の唾液貯溜

 嚥下状態の観察と検査

 口腔内保持の状態

 口腔から咽頭への送り込みの状態

 喉頭挙上と喉頭内腔の閉鎖の状態

 食道入口部の開大と流動物(bolus)の送り込み

2) 「2. 咬合異常によるそしゃく機能の障害」では、咬合異常によるそしゃく機能の障害について判断することを目的としている。

「b 参考となる検査所見(咬合異常の程度及びそしゃく機能の観察結果)」については、以下の点から観察する。

ア) 「ア 咬合異常の程度」

(観察点)そしゃく運動時又は安静位咬合の状態をみる。

上顎歯列と下顎歯列の特に前歯並びに臼歯の接触・咬合状態、開口の程度等の異常な咬合関係をみる。

イ) 「イ そしゃく機能」

(観察点)

 そしゃく機能を定量的に簡便かつ正確に測定する方法はないので、そしゃくの3作用である食物の粉砕、切断及び混合の状態を観察する。

 そしゃく機能障害の状態:口唇・口蓋裂においては、歯の欠如、上下顎の咬合関係、口蓋の形態異常(前後、左右、上下方向の狭小あるいは狭窄化及び残孔)等を観察する。

3) 歯科矯正治療等の適応の判断を要する症例は、別様式に定める「歯科医師による診断書・意見書」を添付する。

(イ) 「(3)障害程度の等級」について

ここでは、そしゃく・嚥下機能の障害、咬合異常によるそしゃく機能の障害における診断内容が、3級又は4級のいずれかの項目に該当するかについて、最終的な判定をすることを目的とする。

該当する等級の根拠となる項目について、1つだけ選択することとなる。

2 障害程度の認定について

診断書の「そしゃく機能障害」の状態及び所見より、「そしゃく機能の喪失」(3級)、「そしゃく機能の著しい障害」(4級)を判断する。

(1) 「そしゃく機能の喪失」

そしゃく・嚥下機能の低下を起因として、経口的に食物等を摂取することができないため、経管栄養(口腔、鼻腔、胃瘻より胃内に管(チューブ)を挿入して流動食を注入して栄養を補給する方法)以外に方法がない状態をいう。

(2) 「そしゃく機能の著しい障害」

「そしゃく・嚥下機能の低下を起因として、経口摂取のみでは十分な栄養摂取ができないために、経管栄養(口腔、鼻腔、胃瘻より胃内に管(チューブ)を挿入して流動食を注入して栄養を補給する方法)の併用が必要あるいは摂取できる食物の内容、摂取方法に著しい制限がある(注1)状態」又は「口唇・口蓋裂等の先天異常の後遺症(注2)による著しい咬合異常があるため、歯科矯正治療等を必要とする状態」をいう。

(注1) 「摂取できる食物の内容、摂取方法に著しい制限がある」と判断する状態について

誤嚥の危険が大きく摂取が半固形物(ゼラチン、寒天、増粘剤添加物等)等以外は摂取できない状態又は開口不能のため流動食以外は摂取できない状態をいう。

(注2) 「先天異常の後遺症」とは、「疾患に対して手術、その他の処置を行った後もなお残存する後遺症」を意味する。

3 その他の留意事項

(1) 咬合異常によるそしゃく機能の障害について

判定の手順:障害程度の判定と歯科矯正治療等の適応の判定の2つの判定が含まれる。以下に実際の手順に従って説明する。

ア まず咬合異常によるそしゃく機能障害の程度を判定する。それには、身体障害認定の要件である1.永続する機能障害を有すること、つまり、障害として固定すること、2.日常生活活動に相当程度の制限があること、そしゃく困難で食事摂取(栄養、味覚)が極めて不利、不便になるもの、という2点を満たすか否かを判断する。

イ 次いで歯科矯正治療等の適応か否かを決める。すなわち、上記そしゃく機能障害が歯科矯正治療、口腔外科的手術によって改善が得られるか否かを判断する。この法律は、口唇・口蓋裂等の患者の治療を福祉によって支援することを狙いとしていることを理解されたい。

ウ 身体障害者該当の判定。上記「ア」の要件を満たし、さらに「イ」歯科矯正治療等の適応と判断された者を身体障害者に該当すると認める。

(注意事項)

1. 歯科矯正治療等の適応については、都道府県知事等の定める歯科医師の「歯科医師による診断書・意見書」(別様式)の提出を求めるものとする。

2. 歯科矯正治療等の適応と判断されても、そしゃく機能障害が軽微~軽度なら身体障害者に該当しない。

3. 軽度そしゃく機能障害(軽度咬合異常による。)は身体障害者に該当しない。

4. 身体障害者の認定は「歯科矯正治療等の適応あり」が基本条件であるから、認定する期間を指定し、再認定の時期を必ず記載する必要がある。この再認定は歯科矯正治療等の一応の成果が見られる「3か年」を目途にしており、再認定の徹底を期されたい。

(2) 障害を認定できる時期

「そしゃく機能の喪失」または「そしゃく機能の著しい障害」の状態が固定して改善の見込みがないか、更に進行して悪化の一途を辿ると判断されるとき。

(3) 音声機能障害、言語機能障害及びそしゃく機能障害が重複する場合については、各々の障害の合計指数をもって等級を決定することは適当ではない。

(4) 小腸機能障害を併せもつ場合については、必要とされる栄養摂取の方法等が、どちらの障害によるものであるか等について詳細に診断し、該当する障害について認定することが必要である。

第4 肢体不自由

1 診断書の作成について

身体障害者障害程度等級表においては、肢体不自由を上肢、下肢、体幹及び乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害に区分している。したがって、肢体不自由診断書の作成に当たっては、これを念頭に置き、それぞれの障害程度を認定するために必要な事項を記載する。併せて障害程度の認定に関する意見を付す。

(1) 「総括表」について

ア 「障害名」について

ここにいう障害名とは、あることにより生じた結果としての四肢体幹の障害を指すもので、機能欠損の状態、あるいは目的動作能力の障害について記載する。即ち、ディスファンクション又はインペアメントの状態をその障害部位とともに明記することで、例を挙げると、1.上肢機能障害(右手関節強直、左肩関節機能全廃)、2.下肢機能障害(左下肢短縮、右膝関節著障)、3.体幹運動機能障害(下半身麻痺)、4.脳原性運動機能障害(上下肢不随意運動)等の書き方が標準的である。

イ 「原因となった疾病・外傷名」について

病名がわかっているものについてはできるだけ明確に記載することが望ましい。即ち、前項の障害をきたした原因の病名(足部骨腫瘍、脊椎損傷、脳性麻痺、脳血管障害等)を記載することである。例えば、右手関節強直の原因として「慢性関節リウマチ」と記載し、体幹運動機能障害であれば「強直性脊髄炎」であるとか「脊椎側弯症」と記載する。さらに、疾病外傷の直接原因については、右端に列挙してある字句の中で該当するものを○印で囲み、該当するものがない場合にはその他の欄に直接記載する。例えば、脊髄性小児麻痺であれば疾病に○印を、脊髄腫瘍の場合にはさらにその他に○印をした上で、( )内には肺癌転移と記載する。なお、その他の事故の意味するものは、自殺企図、原因不明の頭部外傷、猟銃暴発等外傷の原因に該当する字句のない場合を指すものであり、( )内記載のものとは区別する。

ウ 「参考となる経過・現症」について

初発症状から症状固定に至るまでの治療の内容を簡略に記載し、機能回復訓練の終了日をもって症状の固定とする。ただし、切断のごとく欠損部位によって判定の下されるものについては、再手術が見込まれない段階に至った時点で診断してよい。現症については、別様式診断書「肢体不自由の状況及び所見」等の所見欄に記載された内容を摘記する。

エ 「総合所見」について

傷病の経過及び現症の結果としての障害の状態、特に目的動作能力の障害を記載する。

例:上肢運動能力、移動能力、座位、起立位等

なお、成長期の障害、進行性病変に基づく障害、手術等により障害程度に変化の予測される場合は、将来再認定の時期等を記載する。

オ 「その他参考となる合併症状」について

他に障害認定上参考となる症状のある場合に記載する。

(2) 「肢体不自由の状況及び所見」について

ア 乳幼児期以前に発現した脳原性運動機能障害については、専用の別様式診断書「脳原性運動機能障害用」を用いることとし、その他の上肢、下肢、体幹の障害については、別様式診断書「肢体不自由の状況及び所見」を用いる。ただし、痙性麻痺については、筋力テストを課すのは必要最少限にすること。

イ 障害認定に当たっては、目的動作能力に併せ関節可動域、筋力テストの所見を重視しているので、その双方についての診断に遺漏のないよう記載すること。

ウ 関節可動域の表示並びに測定方法は、日本整形外科学会身体障害委員会及び日本リハビリテーション医学会評価基準委員会において示された「関節可動域表示並びに測定法」により行うものとする。

エ 筋力テストは徒手による筋力検査によって行うものであるが、評価は次の内容で区分する。

自分の体部分の重さに抗し得ないが、それを排するような体位では自動可能な場合(著減)、又はいかなる体位でも関節の自動が不能な場合(消失)…×

検者の加える抵抗には抗し得ないが、自分の体部分の重さに抗して自動可能な場合(半減)…△

検者の手で加える十分な抵抗を排して自動可能な場合(正常)、又は検者の手を置いた程度の抵抗を排して自動可能な場合(やや減)…○

オ 脳原性運動機能障害用については上肢機能障害と移動機能障害の双方につき、一定の方法により検査を行うこととされているが、被検者は各動作について未経験のことがあるので、テストの方法を事前に教示し試行を経たうえで本検査を行うこととする。

2 障害程度の認定について

(1) 肢体不自由の障害程度は、上肢不自由、下肢不自由、体幹不自由及び脳原性運動機能障害(上肢機能・移動機能)の別に認定する。

この場合、上肢、下肢、体幹の各障害については、それらが重複するときは、身体障害認定基準の障害が重複する場合の取扱いにより上位等級に認定することが可能であるが、脳原性運動機能障害(上肢機能・移動機能)については、肢体不自由の中で独立した障害区分であるので、上肢又は下肢の同一側に対する他の肢体不自由の区分(上肢・下肢・体幹)との重複認定はあり得ないものである。

(2) 上肢不自由は、機能障害及び欠損障害の2つに大別され、それぞれの障害程度に応じ等級が定められている。

機能障害については、一上肢全体の障害、三大関節の障害及び手指の障害の身体障害認定基準が示されているので、診断書の内容を基準によく照らし、的確に認定する。

欠損障害については、欠損部位に対する等級の位置付けが身体障害者障害程度等級表に明示されているので、それに基づき認定する。

(3) 下肢不自由は、機能障害、欠損障害及び短縮障害に区分される。

機能障害については、一下肢全体の障害、三大関節の障害及び足指の障害の身体障害認定基準に照らし、診断書の記載内容を確認しつつ認定する。

欠損障害及び短縮障害については、診断書における計測値を身体障害者障害程度等級表上の項目に照らし認定する。

(4) 体幹不自由は、高度の体幹麻痺をきたす症状に起因する運動機能障害の区分として設けられているものであって、その原因疾患の主なものは脊髄性小児麻痺、強直性脊椎炎、脊髄損傷等である。

体幹不自由は四肢にも障害の及ぶものが多いので、特に下肢不自由との重複認定を行う際には、身体障害認定基準にも示されているとおり、制限事項に十分留意する必要がある。

(5) 脳原性運動機能障害は、脳原性障害の中でも特に生活経験の獲得という点で極めて不利な状態に置かれている乳幼児期以前に発現した障害について特に設けられた区分である。

その趣旨に即して、適切な障害認定を行う必要がある。

第5 心臓機能障害

1 診断書の作成について

身体障害者診断書においては、疾患等により永続的に心臓機能の著しい低下のある状態について、その障害程度を認定するために必要な事項を記載する。診断書は障害認定の正確を期するため、児童のための「18歳未満用」と成人のための「18歳以上用」とに区分して作成する。併せて障害程度の認定に関する意見を付す。

(1) 「総括表」について

ア 「障害名」について

「心臓機能障害」と記載する。

イ 「原因となった疾病・外傷名」について

原因疾患名はできる限り正確に書く。例えば、単に心臓弁膜症という記載にとどめず、種類のわかるものについては「僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症」等と記載する。また、動脈硬化症の場合は「冠動脈硬化症」といった記載とする。傷病発生年月日は初診日でもよく、それが不明の場合は推定年月を記載する。

ウ 「参考となる経過・現症」について

傷病の発生から現状に至る経過及び現症について障害認定のうえで参考となる事項を摘記する。障害固定又は確定(推定)の時期については、手術を含む治療の要否との関連をも考慮し記載する。

エ 「総合所見」について

経過及び現症からみて障害認定に必要な事項を摘記する。乳幼児期における診断又は手術等により障害程度に変化の予測される場合は、将来再認定の時期等を記載する。

(2) 「心臓の機能障害の状況及び所見」について

ア 「1 臨床所見」について

臨床所見については、それぞれの項目について、有無いずれかに○印を付けること。その他の項目についても必ず記載すること。

イ 「2 胸部エックス線所見」について

胸部エックス線所見の略図は、丁寧に明確に画き、異常所見を記載する必要がある。心胸比は必ず算出して記載すること。

ウ 「3 心電図所見」について

心電図所見については、それぞれの項目について、有無いずれかに○印を付けること。運動負荷を実施しない場合には、その旨を記載することが必要である。STの低下については、その程度を何mVと必ず記載すること。

エ 「2(3) 心エコー図、冠動脈造影所見」(18歳未満用)について

乳幼児期における心臓機能障害の認定に重要な指標となるが、これを明記すること。

オ 「4 活動能力の程度」(18歳以上用)について

心臓機能障害の場合には、活動能力の程度の判定が障害程度の認定に最も重要な意味をもつので、診断書の作成に当たってはこの点を十分留意し、いずれか1つの該当項目を慎重に選ぶことが必要である。

診断書の活動能力の程度と等級の関係は、次のとおりつくられているものである。

ア…非該当

イ・ウ…4級相当

エ…3級相当

オ…1級相当

カ 「3 養護の区分」(18歳未満用)について

18歳未満の場合は、養護の区分の判定が障害程度の認定に極めて重要な意味をもつので、この点に十分留意し、いずれか1つの該当項目を慎重に選ぶこと。

診断書の養護の区分と等級の関係は次のとおりである。

(1)…非該当

(2)・(3)…4級相当

(4)…3級相当

(5)…1級相当

2 障害程度の認定について

(1) 心臓機能障害の障害程度の認定は、原則として、活動能力の程度(18歳未満の場合は養護の区分)とこれを裏づける客観的所見とにより行うものである。

(2) 心臓機能障害の認定においては、活動能力の程度(18歳未満の場合は養護の区分)が重要な意味をもつので、活動能力の程度判定の妥当性を検討する必要がある。

活動能力の程度又は養護の区分は、診断書全体からその妥当性が裏づけられていることが必要であり、活動能力の判定の根拠が、現症その他から納得しがたい場合には、診断書を作成した指定医に照会する等により慎重に検討したうえで認定することが望ましい。

(3) 活動能力が「ア」(18歳未満の場合は養護の区分の(1))であっても、客観的な所見から、相当程度の心臓障害の存在が十分にうかがえるような場合には、機械的に非該当とせずに、念のために活動能力を確認するなどの取扱いが望まれる。また、客観的所見がなく、活動能力がイ~オ又は(2)~(5)とされている場合には、相互の関係を確認することが必要である。

(4) 乳幼児に係る障害認定は、障害の程度を判定できる年齢(概ね満3歳)以降に行うことを適当とするが、先天性心臓障害については、3歳未満であっても治療によっても残存すると予想される程度をもって認定し、一定の時期に再認定を行うことは可能である。

第6 じん臓機能障害

1 診断書の作成について

身体障害者診断書においては、疾患等により永続的にじん臓機能の著しい低下のある状態について、その障害程度を認定するために必要な事項を記載する。併せて障害程度の認定に関する意見を付す。

(1) 「総括表」について

ア 「障害名」について

「じん臓機能障害」と記載する。

イ 「原因となった疾病・外傷名」について

じん臓機能障害をきたした原因疾患名について、できる限り正確な名称を記載する。例えば単に「慢性腎炎」という記載にとどめることなく、「慢性糸球体腎炎」等のように種類の明らかなものは具体的に記載し、不明なときは疑わしい疾患名を記載する。

傷病発生年月日は初診日でもよく、それが不明確な場合は推定年月を記載する。

ウ 「参考となる経過・現症」について

傷病の発生から現状に至る経過及び現症について障害認定のうえで参考となる事項を詳細に記載する。

現症については、別様式診断書「じん臓の機能障害の状況及び所見」の所見欄の内容はすべて具体的に記載することが必要である。

エ 「総合所見」について

経過及び現症からみて障害認定に必要な事項、特にじん臓機能、臨床症状、日常生活の制限の状態について明記し、併せて将来再認定の要否、時期等を必ず記載する。

(2) 「じん臓の機能障害の状況及び所見」について

ア 「1 じん機能」について

障害程度の認定の指標には、内因性クレアチニンクリアランス値及び血清クレアチニン濃度が用いられるが、その他の項目についても必ず記載する。

なお、慢性透析療法を実施している者については、当該療法実施直前の検査値を記入する。

イ 「3 臨床症状」について

項目のすべてについて症状の有無を記し、有の場合にはそれを裏付ける所見を必ず記述する。

ウ 「4 現在までの治療内容」について

透析療法実施の要否、有無は、障害認定の重要な指標となるので、その経過、内容を明記する。また、じん移植術を行った者については、抗免疫療法の有無を記述する。

エ 「5 日常生活の制限による分類」について

日常生活の制限の程度(ア~エ)は、診断書を発行する対象者の症状であって、諸検査値や臨床症状とともに障害程度を判定する際の重要な参考となるものであるので、該当項目を慎重に選ぶ。

日常生活の制限の程度と等級の関係は概ね次のとおりである。

ア…非該当

イ…4級相当

ウ…3級相当

エ…1級相当

2 障害程度の認定について

(1) じん臓機能障害の認定は、じん機能を基本とし、日常生活の制限の程度、又はじん不全に基づく臨床症状、治療の状況によって行うものである。

(2) eGFR(推算糸球体濾過量)が記載されていれば、血清クレアチニン濃度の異常に替えて、eGFR(単位はml/分/1.73㎡)が10以上20未満のときは4級相当の異常、10未満のときは3級相当の異常と取り扱うことも可能とする。

(3) 慢性透析療法を実施している者の障害程度の認定は、透析療法実施直前の状態で行うものであるので、諸検査値等がそのような状態で得られたものかどうかを確認すること。

(4) じん移植術を行った者の障害程度の認定は抗免疫療法を実施しないと仮定した場合の状態で行うものであるので、諸検査値等がそのような状態で得られたものかどうかを確認すること。

(5) じん機能検査、臨床症状と日常生活の制限の程度との間に極端な不均衡が認められる場合には、慎重な取扱いをして認定する必要がある。

第7 呼吸器機能障害

1 診断書の作成について

身体障害者診断書においては、疾患等により永続的に呼吸器機能の著しい低下のある状態について、その障害程度を認定するために必要な事項を記載する。併せて障害程度の認定に関する意見を付す。

(1) 「総括表」について

ア 「障害名」について

「呼吸器機能障害」と記載する。

イ 「原因となった疾病・外傷名」について

原因疾患の明らかなものは、「肺結核」「肺気腫」等できる限り正確に記載する。原因疾患の複数にわたるものは個別に列記し、また、肺機能、呼吸筋機能等の区別が明確になるよう記載する。

ウ 「参考となる経過・現症」について

傷病の発生から現状に至る経過及び現症について、障害認定のうえで参考となる事項を摘記する。

別様式診断書「呼吸器の機能障害の状況及び所見」の所見欄に記載された内容は適宜省略してよいが、現状の固定、永続性の認定の参考となる治療内容等についても具体的に記載すること。

エ 「総合所見」について

経過及び現症から障害認定に必要な事項、特に換気の機能、動脈血ガス値、活動能力の程度を明記し、併せて、障害程度の変化が予測される場合は、将来再認定の時期等を記載する。

(2) 「呼吸器の機能障害の状況及び所見」について

ア 「1 身体計測」について

身体計測(身長、体重)は、正確に記載すること。

イ 「2 活動能力の程度」について

活動能力は、呼吸困難の程度を5段階に分けて、どの段階に該当するかを見ようとするものであるから、最も適当と考えられるものを1つだけ選んで○印を付けること。

ウ 「3 胸部エックス線写真所見」について

胸部エックス線所見略図は、丁寧に明確に画き、それぞれの所見の項目について、該当するものに○印を付けること。

エ 「4 換気の機能」と「5 動脈血ガス」について

呼吸器機能障害の場合、予測肺活量1秒率(以下「指数」という。)と動脈血ガスO2分圧が障害程度の認定の基本となるので重要である。ただし、両者を全例に必ず実施する必要はなく、実状に応じいずれか一方法をまず実施し、その結果が妥当でないと思われる場合(例えば自覚症状に比し)に他方の検査を実施する。

オ 指数の算出

指数の算出は、2001年に日本呼吸器学会から「日本のスパイログラムと動脈血ガス分圧基準値」として発表された肺活量予測式による予測肺活量を用いて算出すること。

なお、呼吸困難が強いため肺活量の測定ができない場合、その旨を記載し、かつ呼吸困難の理由が明らかになるような説明を現症欄等に記載すること。

2 障害程度の認定について

(1) 呼吸器の機能障害の程度についての認定は、指数、動脈血ガス及び医師の臨床所見によるものとする。

(2) 呼吸器機能障害の検査指標を指数方式又は動脈血ガス方式としているのは、換気機能障害とガス交換機能障害の両面から判定するのが客観的な方法であり、単一の検査による見落としを避け公平を保つ必要があるためである。

(3) 基本的には指数又は動脈血ガスO2分圧のいずれか低位の数値をもって認定することとなるが、診断書に書かれた指数、動脈血ガスの数値と活動能力の程度、臨床所見等との間に極端な不均衡がある場合には、慎重な取扱いをして認定することが必要である。

(4) 呼吸器機能障害の認定における活動能力の程度の分類は、いわゆる修正MRC(Medical Research Council)の分類に準拠している。この分類では必ずしも呼吸器機能障害に由来する活動能力の低下を一義的に表現し得るものではない。そのような意味では、等級の決定と直接結びつくものではない。そのため、呼吸機能検査成績と活動能力の程度との間に“著しい食い違い”がある場合には、呼吸器機能障害以外の原因が活動能力の低下に関与していないか、慎重に検討する必要がある。もし活動能力の低下を説明する他の原因が認められない場合に、何らかの検査(例えば、6分間歩行試験時の酸素飽和度最低値の測定)で活動能力の低下を説明できれば、その結果を採用して等級認定をすることができる。活動能力の程度と障害等級との間にはおおむね次のような対応関係があるものとして、認定上の参考に用いる。なお、活動能力の程度と呼吸器機能障害の程度とは必ずしも一義的な関係にあるとは限らないので注意が必要である。

活動能力の程度(修正MRCグレード分類)障害等級

ア…非該当

イ・ウ…4級

エ…3級

オ…1級

(5) 「呼吸困難が強いため、指数の測定が不能」ということで1級に該当することもあるが、この場合には、経過、現症、総合所見等から指数の測定が不能であることを十分確認することが必要である。

第8 ぼうこう又は直腸機能障害

1 診断書の作成について

身体障害者診断書においては、ぼうこう機能障害の場合は、

1. 「尿路変向(更)のストマ」を造設しているか、

2. 「ストマにおける排尿処理が著しく困難な状態」があるか、

3. 「高度の排尿機能障害」があるか、

等の諸点について判定し、直腸機能障害の場合は、

1. 「腸管のストマ」を造設しているか、

2. 「ストマにおける排便処理が著しく困難な状態」があるか、

3. 「治癒困難な腸瘻」があるか、

4. 「腸瘻における腸内容の排泄処理が著しく困難な状態」があるか、

5. 「高度の排便機能障害」があるか、

等の諸点について判定することを主目的とする。

記載すべき事項は、障害名、その原因となった疾患、手術、日常生活における制限の状態、障害の認定に関する意見、具体的所見である。

(1) 「総括表」について

ア 「障害名」について

「ぼうこう機能障害」「直腸機能障害」と記載する。ただし、この障害名だけでは障害の状態が具体的ではないので、「ぼうこう機能障害(ぼうこう全摘、回腸導管)」「ぼうこう機能障害(尿管皮膚瘻)」「ぼうこう機能障害(高度の排尿機能障害)」「直腸機能障害(人工肛門)」「直腸機能障害(治癒困難な腸瘻)」「直腸機能障害(高度の排便機能障害)」等と記載する。

イ 「原因となった疾病・外傷名」について

「ぼうこう腫瘍」「クローン病」「潰瘍性大腸炎」「直腸腫瘍」「二分脊椎」「先天性鎖肛」等、原因となった疾病名等を記載する。

ウ 「参考となる経過・現症」について

経過については通常のカルテの記載と同様であるが、現症については身体障害者診断書の現症欄であるので、ぼうこう機能障害の状態(尿路変向(更)の状態あるいは高度の排尿機能障害の状態等)、直腸機能障害の状態(腸管のストマの状態あるいは高度の排便機能障害の状態等)と、そのために日常生活活動がどのように制限されているのかを記載する。

エ 「総合所見」について

認定に必要な事項、すなわち尿路変向(更)の種類、腸管のストマの種類、高度な排尿又は排便機能障害の有無、治癒困難な腸瘻の種類、その他軽快の見込みのないストマや腸瘻等の周辺の皮膚の著しいびらんの有無、又は日常生活活動の制限の状態等を記載する。

なお、症状の変動が予測される場合は、将来の再認定時期についてもその目処を記載する。

「ぼうこう又は直腸の機能障害の状態及び所見」について(留意点)

ア 「1.ぼうこう機能障害」について

「ぼうこう機能障害」については、尿路変向(更)のストマがあるか、あるいは神経因性ぼうこうによる高度の排尿機能障害があるか等について判定する。

尿路変向(更)のストマについては、種類と術式について記載するとともに、ストマにおける排尿処理が著しく困難な状態がある場合は、その詳細について診断書の項目にそって記載する。また、ストマの部位やびらんの大きさ等については、詳細に図示する。

高度の排尿機能障害については、神経障害の原因等について診断書の項目にそって記載するとともに、カテーテル留置や自己導尿の常時施行の有無等の状態・対応についても記載する。

イ 「2.直腸機能障害」について

「直腸機能障害」については、腸管のストマがあるか、あるいは治癒困難な腸瘻があるか、あるいは高度の排便機能障害があるかについて判定する。

腸管のストマについては、種類と術式について記載するとともに、ストマにおける排便処理が著しく困難な状態がある場合は、その詳細について診断書の項目にそって記載する。また、ストマの部位やびらんの大きさ等については、詳細に図示する。

治癒困難な腸瘻については、原疾患と瘻孔の数について記載するとともに、腸瘻における腸内容の排泄処理が著しく困難な状態がある場合は、その詳細について診断書の項目にそって記載する。また、腸瘻の部位や大きさ等については、詳細に図示する。

高度の排便機能障害については、原疾患等を診断書の項目にそって記載するとともに、完全便失禁や用手摘便等の施行の有無等の状態・対応についても記載する。

ウ 「3.障害程度の等級」について

ここでは、1ぼうこう機能障害、2直腸機能障害における診断内容が、1級から4級のいずれの項目に該当するかについて、最終的な判定をすることを目的とする。

該当する等級の根拠となる項目について、1つだけ選択することとなる。

2 障害程度の認定について

(1) ぼうこう機能障害のみの等級について

ぼうこう機能障害単独であっても、「尿路変向(更)のストマ」や「ストマにおける排尿処理が著しく困難な状態」あるいは「高度の排尿機能障害」の合併状況によって、障害程度は3級から4級に区分されるので、身体障害認定基準に照らして的確に確認すること。

なお、ぼうこうが残っていても、尿路変向(更)例は認定の対象とする。

(2) 直腸機能障害のみの等級について

直腸機能障害単独であっても、「腸管のストマ」や「治癒困難な腸瘻」あるいはこれらの「排便処理の著しく困難な状態」又は「腸内容の排泄処理が著しく困難な状態」、さらには「高度の排尿・排便機能障害」の合併によって、障害程度は1級、3級、4級に区分されるので、身体障害認定基準に照らして的確に認定すること。

(3) ぼうこう機能障害と直腸機能障害が合併する場合について

ぼうこう機能障害と直腸機能障害とが合併する場合は、それぞれの障害におけるストマや腸瘻の有無、さらにはこれらの「排尿・排便又は排泄処理が著しく困難な状態」等によっても等級が1級あるいは3級に区分されるため、身体障害認定基準に照らして的確に認定すること。

(4) 障害認定の時期は、ストマ造設の有無や、排尿・排便処理が著しく困難な状態の有無、あるいは先天性であるかどうかなどの状態によって認定の時期が異なるため、身体障害認定基準に基づいて的確に認定する。また、適宜再認定を行うことが必要となるものもあり、この点についても十分に留意すること。

(5) 合算して等級があがる例について

合併する肢体不自由等の項で障害認定を受けているものは、両者を合算して等級があがる場合があるので両者の関係で留意すること。

第9 小腸機能障害

1 診断書の作成について

身体障害者診断書においては、小腸切除又は小腸疾患により永続的な小腸機能の著しい低下のある状態について、その障害程度を認定するために必要な事項を記載する。併せて障害程度の認定に関する意見を付す。

(1) 「総括表」について

ア 「障害名」について

「小腸機能障害」と記載する。

イ 「原因となった疾病・外傷名」について

小腸切除を行う疾患や病態としての「小腸間膜血管閉塞症」「小腸軸捻転症」「外傷」等又は永続的に小腸機能の著しい低下を伴う「クローン病」「腸管べーチェット病」「乳児期難治性下痢症」等を記載する。

傷病発生年月日については、初診日でもよく不明確な場合は推定年月を記載する。

ウ 「参考となる経過・現症」について

通常のカルテに記載される内容のうち、特に身体障害者としての障害認定のために参考となる事項を摘記する。

現症について、別様式診断書「小腸の機能障害の状況及び所見」の所見欄に記載される内容は適宜省略してもよい。

エ 「総合所見」について

経過及び現症からみて、障害認定に必要な事項、特に栄養維持の状態、症状の予測等について記載する。

なお、小腸切除(大量切除の場合を除く。)又は小腸疾患による小腸機能障害の場合は将来再認定を原則としているので、再認定の時期等についても記載すること。

(2) 「小腸の機能障害の状況及び所見」について

ア 体重減少率については、最近3か月間の観察期間の推移を記載することとし、この場合の体重減少率とは、平常の体重からの減少の割合、又は(身長-100)×0.9の数値によって得られる標準的体重からの減少の割合をいうものである。

イ 小腸切除の場合は、切除小腸の部位及び長さ、残存小腸の部位及び長さに関する所見を、また、小腸疾患の場合は、疾患部位、範囲等の所見を明記する。

ウ 栄養維持の方法については、中心静脈栄養法、経腸栄養法、経口摂取の各々について、最近6か月間の経過観察により記載する。

エ 検査所見は、血清アルブミン濃度が最も重視されるが、その他の事項についても測定値を記載する。

2 障害程度の認定について

(1) 小腸機能障害は、小腸切除によるものと小腸疾患によるものとがあり、それぞれについて障害程度の身体障害認定基準が示されているが、両者の併存する場合は、それら症状を合わせた状態をもって、該当する等級区分の身体障害認定基準に照らし障害程度を認定する。

(2) 小腸機能障害の障害程度の認定は、切除や病変の部位の状態に併せ、栄養維持の方法の如何をもって行うものであるから、診断書に記載された両者の内容を十分に確認しつつ障害程度を認定する。

したがって、両者の記載内容に妥当性を欠くと思われるものがある場合は、診断書を作成した指定医に診断内容を照会する等の慎重な配慮が必要である。

(3) 小腸疾患による場合、現症が重要であっても、悪性腫瘍の末期の状態にある場合は障害認定の対象とはならないものであるので留意すること。

(4) 障害認定は、小腸大量切除の場合以外は6か月の観察期間を経て行うものであるが、その多くは症状の変化の予測されることから、将来再認定を要することとなるので、その要否や時期等については十分確認すること。

第10 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害

1 診断書の作成について

身体障害者診断書においては、HIV感染により永続的に免疫の機能の著しい低下のある状態について、その障害程度を認定するために必要な事項を記載する。診断書は障害認定の正確を期するため、「13歳以上用」と「13歳未満用」とに区分して作成する。併せて障害程度の認定に関する意見を付す。

(1) 「総括表」について

ア 「障害名」について

「免疫機能障害」と記載する。

イ 「原因となった疾病・外傷名」について

原因疾患名は「HIV感染」と書く。

障害発生年月日は、ヒト免疫不全ウイルスヘの感染が確認された日時を原則とする。不詳の場合は、「参考となる経過・現症」欄にその理由を記載する。

ウ 「参考となる経過・現症」について

障害認定の上で参考となる事項があれば摘記する。個人の秘密に関わる事項を記載する場合には、障害認定に不可欠な内容に限定すること。

障害固定又は障害確定(推定)年月日は、HIV感染が確認され、検査結果や所見等が身体障害認定基準を満たすに至った日とする。この場合、「身体障害認定基準を満たした日」とは、検査結果が判明した日ではなく、検査実施の日と考えてよい。

エ 「総合所見」について

経過及び現症からみて障害認定に必要な事項を摘記する。治療の経過により障害程度に変化の予測される場合は、将来再認定の時期等を記載する。

(2) 「ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能障害の状態及び所見」について

HIV感染の確認方法は、認定対象者が13歳以上と13歳未満で異なるため、診断書は「13歳以上用」と「13歳未満用」とに区分して作成する。

ア 13歳以上の場合

(ア) ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の確認方法

「サーベイランスのためのHIV感染症/AIDS診断基準」(厚生省エイズ動向委員会、1999)を準用する。具体的には、HIVの抗体スクリーニング検査法(酵素抗体法(ELISA)、粒子凝集法(PA)、免疫クロマトグラフィー法(IC)等)の結果が陽性であって、以下のいずれかが陽性の場合にHIV感染症と診断する。

 抗体確認検査(Western Blot法、蛍光抗体法(IFA)等)

 HIV抗原検査、ウイルス分離及び核酸診断法(PCR等)等の病原体に関する検査

(イ) CD4陽性Tリンパ球数の測定

4週以上の間隔をおいた連続する2回の検査値の平均値のこれまでの最低値とする。

(ウ) 白血球数、Hb量、血小板数、ヒト免疫不全ウイルス―RNA量の測定における、4週以上の間隔をおいた連続する2回の検査の時期は、互いに一致している必要はなく、これまでの最低値とする。

(エ) エイズ発症の診断基準

エイズ発症の診断は、「サーベイランスのためのHIV感染症/AIDS診断基準」(厚生省エイズ動向委員会、1999)による。

(オ) エイズ合併症

「サーベイランスのためのHIV感染症/AIDS診断基準」(厚生省エイズ動向委員会、1999)が採択した指標疾患としてあげられている合併症を意味する。

(カ) 期間・回数・症状等の確認

7日等の期間、1日3回等の回数、10%等の数値、下痢・嘔気・嘔吐・発熱の症状の確認は、カルテにもとづく医師の判断によるものとする。

(キ) 日・週・月の取扱い

特別の断りがない限り以下によるものとする。

1日:0時から翌日の0時前まで(以下同じ)を意味する。

1週:連続する7日を意味する。

1月:連続する30日を意味する。暦月ではない。

(ク) 回復不能なエイズ合併症

エイズ合併症が回復不能に陥った場合をいい、回復不能の判定は医師の判断による。

(ケ) 日中

就寝時以外を意味する。

(コ) 月に7日以上

連続する30日の間に7日以上(連続していなくてもかまわない)を意味する。

(サ) 日常生活上の制限

生鮮食料品の摂取制限以外に、生水の摂取禁止、脂質の摂取制限、長期にわたる密な治療、厳密な服薬管理、人混みの回避が含まれる。

(シ) 軽作業

デスクワーク程度の作業を意味する。

イ 13歳未満の場合

(ア) 小児のヒト免疫不全ウイルス感染の確認方法

13歳未満の小児のHIV感染の証明は、原則として13歳以上の場合に準じる。ただし、周産期に母親がHIVに感染していたと考えられる生後18か月未満の小児については、HIVの抗体スクリーニング検査が陽性であり、さらに次のいずれかに該当する場合においてヒト免疫不全ウイルス感染とする。

 抗原検査、ウイルス分離、PCR法等の病原検査法のいずれかにおいて、ウイルスまたは抗原が証明される場合

 血清免疫グロブリン値、全リンパ球数、CD4陽性Tリンパ球数、CD4陽性Tリンパ球の全リンパ球に対する割合、CD8陽性Tリンパ球数、CD4/CD8比等の免疫学的検査所見を総合的に判断し免疫機能が著しく低下しており、かつHIV感染以外にその原因が認められない場合

(イ) 年齢区分毎の免疫学的分類

当該小児の免疫機能を評価するには、CD4陽性Tリンパ球数又はCD4陽性Tリンパ球の全リンパ球に対する割合を用いるものとし、双方の評価が分類を異にする場合には重篤な分類により評価すること。

(ウ) 小児のHIV感染の臨床症状

身体障害認定基準(2)のイの(ア)の臨床症状については、その所見や疾患の有無、反復性について判定すること。

2 障害程度の認定について

(1) 免疫の機能の障害の認定は、ヒト免疫不全ウイルス感染に由来するものであり、認定の考え方に関して他の内部障害と異なる場合があるので留意すること。

(2) 急性期の病状で障害の程度を評価するのでなく、急性期を脱し、症状が落ちついた時点での免疫機能を評価することが、より正確に免疫の機能の障害を評価できるものと考えられる。

(3) 患者の訴えが重視される所見項目があるので、診察に際しては、感染者の主訴や症候等の診療録への記載に努めること。

(4) ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害においては、認定に際し、感染の事由により、認定の対象から除外されることはないので、認定に際し了知すること。

(5) 身体障害認定基準を満たす検査結果を得るため、必要な治療の時期を遅らせる等のことは、本認定制度の趣旨に合致しないことであり、厳に慎まれたい。

第11 肝臓機能障害

1 診断書の作成について

身体障害者診断書においては、疾患等により永続的に肝臓機能の著しい低下のある状態について、その障害程度を認定するために必要な事項を記載する。併せて障害程度の認定に関する意見を付す。

(1) 「総括表」について

ア 「障害名」について

「肝臓機能障害」と記載する。

イ 「原因となった疾病・外傷名」について

肝臓機能障害をきたした原因疾患名について、できる限り正確な名称を記載する。例えば単に「肝硬変」という記載にとどめることなく、「C型肝炎ウイルスに起因する肝硬変」「ウィルソン病による肝硬変」等のように種類の明らかなものは具体的に記載し、不明なときは疑わしい疾患名を記載する。

傷病発生年月日は初診日でもよく、それが不明確な場合は推定年月を記載する。

ウ 「参考となる経過・現症」について

傷病の発生から現状に至る経過及び現症について、障害認定のうえで参考となる事項を詳細に記載する。

現症については、別様式診断書「肝臓の機能障害の状態及び所見」の所見欄の内容はすべて具体的に記載することが必要である。

エ 「総合所見」について

経過及び現症からみて障害認定に必要な事項、特に肝臓機能、臨床症状、日常生活の制限の状態について明記し、併せて将来再認定の要否、時期等を必ず記載する。

(2) 「肝臓の機能障害の状態及び所見」について

ア 「肝臓機能障害の重症度」について

肝性脳症、腹水、血清アルブミン値、プロトロンビン時間、血清総ビリルビン値の各診断・検査結果について、Child―Pugh分類により点数を付し、その合計点数と肝性脳症又は腹水の項目を含む3項目以上における2点以上の有無を記載する。この場合において、肝性脳症の昏睡度分類については犬山シンポジウム(1981年)による。また、腹水については、原則として超音波検査、体重の増減、穿刺による排出量を勘案して見込まれる量が概ね1l以上を軽度、3l以上を中程度以上とするが、小児等の体重が概ね40kg以下の者については、薬剤によるコントロールが可能なものを軽度、薬剤によってコントロールできないものを中程度以上とする。

(参考)犬山シンポジウム(1981年)

昏睡度

精神症状

参考事項

1.

睡眠―覚醒リズムの逆転

多幸気分、ときに抑うつ状態

だらしなく、気にもとめない態度

retrospectiveにしか判定できない場合が多い

2.

指南力(時・場所)障害、物を取り違える(confusion)

異常行動(例:お金をまく、化粧品をゴミ箱に捨てるなど)

ときに傾眠状態(普通の呼びかけで開眼し、会話ができる)

無礼な言動があったりするが、医師の指示に従う態度をみせる

興奮状態がない

尿、便失禁がない

羽ばたき振戦あり

3.

しばしば興奮状態または譫妄状態を伴い、反抗的態度をみせる

嗜眠状態(ほとんど眠っている)

外的刺激で開眼しうるが、医師の指示に従わない、または従えない(簡単な命令には応じうる)

羽ばたき振戦あり(患者の協力が得られる場合)

指南力は高度に障害

4.

昏睡(完全な意識の消失)

痛み刺激に反応する

刺激に対して、払いのける動作、顔をしかめる等がみられる

5.

深昏睡

痛み刺激にもまったく反応しない

 

肝臓機能障害の重症度は、90日以上(180日以内)の間隔をおいた連続する2回の検査により評価するものであり、それぞれの結果を記載する。

なお、既に実施した90日以前(最長180日まで)の検査の結果を第1回の結果とすることとして差し支えない。

イ 「障害の変動に関する因子」について

肝臓機能障害を悪化させる因子であるアルコールを、それぞれの検査日より前に180日以上摂取していないことについて、医師による確認を行う。また、それぞれの検査時において改善の可能性のある積極的治療を継続して実施しており、肝臓移植以外に改善が期待できないことについて、医師による確認を行う。

ウ 「肝臓移植」について

肝臓移植と抗免疫療法の実施の有無について記載する。複数回肝臓移植を行っている場合の実施年月日は、最初に実施した日付を記載する。

エ 「補完的な肝機能診断、症状に影響する病歴、日常生活活動の制限」について

(ア) 原発性肝がん、特発性細菌性腹膜炎、胃食道静脈瘤の治療の既往

医師による確定診断に基づく治療の既往とする。

(イ) 現在のB型肝炎又はC型肝炎ウイルスの持続的感染の確認

HBs抗原検査あるいはHCV―RNA検査によって確認する。

なお、持続的な感染については、180日以上の感染を意味する。

(ウ) 期間・回数・症状等の確認

7日等の期間、1日1時間、2回等の頻度、倦怠感・易疲労感・嘔吐・嘔気・有痛性筋けいれんの症状の確認は、カルテに基づく医師の判断によるものとする。

(エ) 日・月の取扱い

1日:0時から翌日の0時までを意味する。

1月:連続する30日を意味する。暦月ではない。

(オ) 月に7日以上

連続する30日の間に7日以上(連続していなくてもかまわない)を意味する。

2 障害程度の認定について

(1) 肝臓機能障害の認定は、肝臓機能を基本とし、肝臓機能不全に基づく臨床症状、治療の状況、日常生活活動の制限の程度によって行うものである。

(2) 肝臓機能検査、臨床症状、治療の状況と日常生活活動の制限の程度との間に極端な不均衡が認められる場合には、慎重な取扱いをして認定する必要がある。

(3) 患者の訴えが重視される所見項目があるので、診察に際しては、患者の主訴や症候等の診療録への記載に努めること。

(4) 肝臓移植術を行った者の障害程度の認定は、現在の肝臓機能検査の結果にかかわらず、抗免疫療法を実施しないと仮定した場合の状態で行うものである。

(5) 身体障害認定基準を満たす検査結果を得るため、必要な治療の時期を遅らせる等のことは、本認定制度の趣旨に合致しないことであり、厳に慎まれたい。

(6) 初めて肝臓機能障害の認定を行う者であって、Child-Pugh分類の合計点数が7点から9点の状態である場合は、1年以上5年以内の期間内に再認定を実施すること。

 

 

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