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更新日:2021年4月1日

長野県立総合リハビリテーションセンター

身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)

身体障害者障害程度等級表の障害別の認定基準を定めた通知です。

身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について

(平成15年1月10日)

(障発第0110001号)

(各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)

身体障害者福祉法施行規則(昭和25年厚生省令第15号)の別表第5号「身体障害者障害程度等級表」の解説については、「身体障害者障害程度等級表について」(昭和59年9月28日社更第127号厚生省社会局長通知)により取り扱ってきたところであるが、今般、新たに別紙のとおり「身体障害認定基準」を定め、平成15年4月1日から適用することとしたので、留意の上、その取扱いに遺憾なきよう願いたい。

また、今後は本通知の別紙を「身体障害認定基準」と位置づけ、その取扱いについては別に定める「身体障害認定要領」によることとする。

なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言(ガイドライン)として位置づけられるものである。

おって、平成15年3月31日をもって、「身体障害者障害程度等級表について」(昭和59年9月28日社更第127号厚生省社会局長通知)は、廃止する。

身体障害認定基準

第1 総括事項

1 身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号。以下「法」という。)は、身体障害者の更生援護を目的とするものであるが、この場合の「更生」とは必ずしも経済的、社会的独立を意味するものではなく、日常生活能力の回復をも含む広義のものであること。従って、加齢現象に伴う身体障害及び意識障害を伴う身体障害についても、日常生活能力の回復の可能性又は身体障害の程度に着目することによって障害認定を行うことは可能であること。なお、意識障害の場合の障害認定は、常時の医学的管理を要しなくなった時点において行うものであること。

2 法別表に規定する「永続する」障害とは、その障害が将来とも回復する可能性が極めて少ないものであれば足りるという趣旨であって、将来にわたって障害程度が不変のものに限られるものではないこと。

3 乳幼児に係る障害認定は、障害の種類に応じて、障害の程度を判定することが可能となる年齢(おおむね満3歳)以降に行うこと。

また、第2の個別事項の解説は主として18歳以上の者について作成されたものであるから、児童の障害程度の判定については、その年齢を考慮して妥当と思われる等級を認定すること。この場合、治療や訓練を行うことによって将来障害が軽減すると予想されるときは、残存すると予想される障害の限度でその障害を認定して身体障害者手帳を交付し、必要とあれば適当な時期に診査等によって再認定を行うこと。

4 身体障害の判定に当たっては、知的障害等の有無にかかわらず、法別表に掲げる障害を有すると認められる者は、法の対象として取り扱って差し支えないこと。なお、身体機能の障害が明らかに知的障害等に起因する場合は、身体障害として認定することは適当ではないので、この点については、発達障害の判定に十分な経験を有する医師(この場合の発達障害には精神及び運動感覚を含む。)の診断を求め、適切な取扱いを行うこと。

5 7級の障害は、1つのみでは法の対象とならないが、7級の障害が2つ以上重複する場合又は7級の障害が6級以上の障害と重複する場合は、法の対象となるものであること。

6 障害の程度が明らかに手帳に記載されているものと異なる場合には、法第17条の2第1項の規定による診査によって再認定を行うこと。正当な理由なくこの診査を拒み忌避したときは、法第16条第2項の規定による手帳返還命令等の手段により障害認定の適正化に努めること。

第2 個別事項

 視覚障害

1 総括的解説

(1) 屈折異常がある者については、最も適正なレンズを選び、矯正視力によって判定する。

(2) 視力表は万国式を基準とした視力表を用いるものとする。

(3) 視野はゴールドマン型視野計、あるいは自動視野計を用いて測定する。

 ゴールドマン型視野計を用いる場合は、「周辺視野角度(Ⅰ/4視標による)の総和が左右眼それぞれ80度以下のもの」、「両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの」をⅠ/4の視標を用い判定する。「両眼中心視野角度(Ⅰ/2視標による)」はⅠ/2の視標を用いて中心視野角度を測定した値により判定する。

 自動視野計を用いる場合は、両眼開放視認点数の算定には、両眼開放エスターマンテスト(図1)で120点を測定する。中心視野視認点数の算定には、10-2プログラム(図2)で中心10度内を2度間隔で68点測定する。

(図1)

siyaryougan

(図2)

siyachuusin

 

2 各項解説

(1) 視力障害

ア 視力は万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異常のある者については、矯正視力を用いる。両眼の視力を別々に測定し、視力の良い方の眼の視力と他方の眼の視力とで等級表から等級を求める。等級の換算表(表1)の横軸には視力の良い方の眼の視力、縦軸には他方の眼の視力が示してある。

(表1)

siya

イ 両眼を同時に使用できない複視の場合は、非優位眼の視力を0として取り扱う。例えば、両眼とも視力が0.6で眼筋麻痺により複視が起こっていて、日常生活で片眼を遮閉しなければならないような場合には、一眼の視力を0とみなし6級となる。なお、顕性の眼位ずれがあっても、両眼複視を自覚しない場合には、これには該当しない。

(2) 視野障害

ア ゴールドマン型視野計を用いる場合は、「周辺視野角度(Ⅰ/4視標による)の総和が左右眼それぞれ80度以下のもの」、「両眼中心視野角度(Ⅰ/2視標による)」を以下によって判定する。

(ア)Ⅰ/4の視標による8方向の周辺視野角度(上・内上・内・内下・下・外下・外・外上8方向の角度)の総和が左右眼それぞれ80度以下であるかどうかを判定する。8方向の周辺視野角度はⅠ/4視標が視認できない部分を除いて算出する。

Ⅰ/4の視標で、周辺にも視野が存在するが中心部の視野と連続しない場合は、中心部の視野のみで判定する。

Ⅰ/4の視標で、中心10度以内に視野が存在しない場合は、周辺視野角度の総和が80度以下として取り扱う。

(イ)Ⅰ/2の視標による8方向の中心視野角度の総和を左右眼それぞれ求める。8方向の中心視野角度はⅠ/2視標が視認できない部分を除いて算出する。さらに、次式により、両眼中心視野角度を計算する(小数点以下は四捨五入し、整数で表す)。

両眼中心視野角度=(3×中心視野角度の総和が大きい方の眼の中心視野角度の総和+中心視野角度の総和が小さい方の眼の中心視野角度の総和)/4

なお、Ⅰ/2の視標で中心10度以内に視野が存在しない場合は、中心視野角度の総和は0度として取り扱う。

 

イ 自動視野計を用いる場合は、両眼開放視認点数及び両眼中心視野視認点数を以下の方法で判定する。

(ア)視標サイズⅢによる両眼開放エスターマンテストで両眼開放視認点数が70点以下かどうかを判定する。

(イ)視標サイズⅢによる10-2プログラムで測定を行い、左右眼それぞれ感度が26dB以上の検査点数を数え中心視野視認点数を求める。dBの計算は、背景輝度31.5asbで、視標輝度10,000asbを0dBとしたスケールで算定する。さらに、次式により、両眼中心視野視認点数を計算する(小数点以下は四捨五入し、整数で表す)。

両眼中心視野視認点数=(3×中心視野視認点数が多い方の眼の中心視野視認点数+中心視野視認点数が少ない方の眼の中心視野視認点数)/4

ウ 「両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの」とは、両眼で一点を注視しつつ測定した視野が、生理的限界の面積の2 分の1以上欠損している場合の意味である。

(ア)視野の生理的限界は、左右眼それぞれに上・内上・内・内下60度、下70度、外下80度、外95度、外上75度である。

(イ)ゴールドマン型視野計を用いる場合は、左右眼それぞれに測定したⅠ/4の視標による視野表を重ね合わせることで、両眼による視野の面積を得る。その際、面積は厳格に計算しなくてよい。

(ウ)自動視野計を用いる場合は、両眼開放エスターマンテストで視認点数が100点以下である。

エなお、ゴールドマン型視野計又は自動視野計を用いた場合の等級判定について、表2のとおり示したので参照されたい。

(表2)

siyatoukyu

 

 

二 聴覚又は平衡機能の障害

1 聴覚障害

(1) 聴力測定には純音による方法と言語による方法とがあるが、聴力障害を表すにはオージオメータによる方法を主体とする。

(2) 聴力測定は、補聴器を装着しない状態で行う。

(3) 検査は防音室で行うことを原則とする。

(4) 純音オージオメータ検査

ア 純音オージオメータはJIS規格を用いる。

イ 聴力レベルは会話音域の平均聴力レベルとし、周波数500、1,000、2,000ヘルツの純音に対する聴力レベル(dB値)をそれぞれa、b、cとした場合、次の算式により算定した数値とする。

(a+2b+c)⁄4

周波数500、1,000、2,000ヘルツの純音のうち、いずれか1又は2において100dBの音が聴取できない場合は、当該部分のdBを105dBとし、上記算式を計上し、聴力レベルを算定する。

なお、前述の検査方法にて短期間中に数回聴力測定を行った場合は、最小の聴力レベル(dB値)をもって被検査者の聴力レベルとする。

(5) 言語による検査

ア 語音明瞭度の検査語は、次に定める語集による。検査に当たっては、通常の会話音の強さでマイク又は録音機により発声し、その音量を適度に調節し、被検査者に最も適した状態で行う。

検査語はその配列を適宜変更しながら2秒から3秒に1語の割合で発声し、それを被検査者に書きとらせ、その結果、正答した語数を検査語の総数で除して、求められた値を普通話声の最良の語音明瞭度とする。

語音明瞭度検査語集

イ 聴取距離測定の検査語は良聴単語を用いる。大声又は話声にて発声し、遠方より次第に接近し、正しく聴こえた距離をその被検査者の聴取距離とする。

ウ 両検査とも詐病には十分注意すべきである。

2 平衡機能障害

(1) 「平衡機能の極めて著しい障害」とは、四肢体幹に器質的異常がなく、他覚的に平衡機能障害を認め、閉眼にて起立不能、又は開眼で直線を歩行中10m以内に転倒若しくは著しくよろめいて歩行を中断せざるを得ないものをいう。

(2) 「平衡機能の著しい障害」とは、閉眼で直線を歩行中10m以内に転倒又は著しくよろめいて歩行を中断せざるを得ないものをいう。

具体的な例は次のとおりである。

a 末梢迷路性平衡失調

b 後迷路性及び小脳性平衡失調

c 外傷又は薬物による平衡失調

d 中枢性平衡失調

三 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害

(1) 「音声機能又は言語機能の喪失」(3級)とは、音声を全く発することができないか、発声しても言語機能を喪失したものをいう。

なお、この「喪失」には、先天性のものも含まれる。

具体的な例は次のとおりである。

a 音声機能喪失…無喉頭、喉頭部外傷による喪失、発声筋麻痺による音声機能喪失

b 言語機能喪失…ろ...、聴..、失語症

(2) 「音声機能又は言語機能の著しい障害」(4級)とは、音声又は言語機能の障害のため、音声、言語のみを用いて意思を疎通することが困難なものをいう。

具体的な例は次のとおりである。

a 喉頭の障害又は形態異常によるもの

b 構音器官の障害又は形態異常によるもの(唇顎口蓋裂の後遺症によるものを含む)

c 中枢性疾患によるもの

(3) 「そしゃく機能の喪失(注1)」(3級)とは、経管栄養以外に方法のないそしゃく・嚥下機能の障害をいう。

具体的な例は次のとおりである。

a 重症筋無力症等の神経・筋疾患によるもの

b 延髄機能障害(仮性球麻痺、血管障害を含む)及び末梢神経障害によるもの

c 外傷、腫瘍切除等による顎(顎関節を含む)、口腔(舌、口唇、口蓋、頬、そしゃく筋等)、咽頭、喉頭の欠損等によるもの

(4) 「そしゃく機能の著しい障害(注2)」(4級)とは、著しいそしゃく・嚥下機能または、咬合異常によるそしゃく機能の著しい障害をいう。

具体的な例は次のとおりである。

a 重症筋無力症等の神経・筋疾患によるもの

b 延髄機能障害(仮性球麻痺、血管障害を含む)及び末梢神経障害によるもの

c 外傷・腫瘍切除等による顎(顎関節を含む)、口腔(舌、口唇、口蓋、頬、そしゃく筋等)、咽頭、喉頭の欠損等によるもの

d 口唇・口蓋裂等の先天異常の後遺症による咬合異常によるもの

(注1) 「そしゃく機能の喪失」と判断する状態について

そしゃく・嚥下機能の低下に起因して、経口的に食物等を摂取することができないため、経管栄養(口腔、鼻腔、胃瘻より胃内に管(チューブ)を挿入して流動食を注入して栄養を補給する方法)以外に方法がない状態をいう。

(注2) 「そしゃく機能の著しい障害」と判断する状態について

「そしゃく・嚥下機能の低下に起因して、経口摂取のみでは十分な栄養摂取ができないために、経管栄養(口腔、鼻腔、胃瘻より胃内に管(チューブ)を挿入して流動食を注入して栄養を補給する方法)の併用が必要あるいは摂取できる食物の内容、摂取方法に著しい制限がある(注3)状態」又は「口唇・口蓋裂等の先天異常の後遺症による著しい咬合異常があるため、歯科矯正治療等を必要とする状態」をいう。

(注3) 「摂取できる食物の内容、摂取方法に著しい制限がある」と判断する状態について

開口不能のため流動食以外は摂取できない状態又は誤嚥の危険が大きいため、摂取が半固形物(ゼラチン・寒天・増粘剤添加物等)等、極度に限られる状態をいう。

肢体不自由

1 総括的解説

(1) 肢体不自由は機能の障害の程度をもって判定するものであるが、その判定は、強制されて行われた一時的能力でしてはならない。

例えば、肢体不自由者が無理をすれば1kmの距離は歩行できるが、そのために症状が悪化したり、又は疲労、疼痛等のために翌日は休業しなければならないようなものは1km歩行可能者とはいえない。

(2) 肢体の疼痛又は筋力低下等の障害も、客観的に証明でき又は妥当と思われるものは機能障害として取り扱う。

具体的な例は次のとおりである。

a 疼痛による機能障害

筋力テスト、関節可動域の測定又はエックス線写真等により、疼痛による障害があることが医学的に証明されるもの

b 筋力低下による機能障害

筋萎縮、筋の緊張等筋力低下をきたす原因が医学的に認められ、かつ、徒手筋力テスト、関節可動域の測定等により、筋力低下による障害があることが医学的に証明されるもの

(3) 全廃とは、関節可動域(以下、他動的可動域を意味する。)が10度以内、筋力では徒手筋力テストで2以下に相当するものをいう(肩及び足の各関節を除く。)。

機能の著しい障害とは、以下に示す各々の部位で関節可動域が日常生活に支障をきたすと見なされる値(おおむね90度)のほぼ30%(おおむね30度以下)のものをいい、筋力では徒手筋力テストで3(5点法)に相当するものをいう(肩及び足の各関節を除く。)。

軽度の障害とは、日常生活に支障をきたすと見なされる値(おおむね90度で足関節の場合は30度を超えないもの。)又は、筋力では徒手筋カテストで各運動方向平均が4に相当するものをいう。

(注4) 関節可動域は連続した運動の範囲としてとらえ、筋力は徒手筋力テストの各運動方向の平均値をもって評価する。

(4) この解説においてあげた具体例の数値は、機能障害の一面を表わしたものであるので、その判定に当たっては、その機能障害全般を総合した上で定めなければならない。

(5) 7級はもとより身体障害者手帳交付の対象にならないが、等級表の備考に述べられているように、肢体不自由で、7級相当の障害が2つ以上ある時は6級になるので参考として記載したものである。

(6) 肢体の機能障害の程度の判定は義肢、装具等の補装具を装着しない状態で行うものであること。なお、人工骨頭又は人工関節については、人工骨頭又は人工関節の置換術後の経過が安定した時点の機能障害の程度により判定する。

(7) 乳幼児期以前に発現した非進行性の脳病変によってもたらされた脳原性運動機能障害については、その障害の特性を考慮し、上肢不自由、下肢不自由、体幹不自由の一般的認定方法によらず別途の方法によることとしたものである。

2 各項解説

(1) 上肢不自由

ア 一上肢の機能障害

(ア) 「全廃」(2級)とは、肩関節、肘関節、手関節、手指の全ての機能を全廃したものをいう。

(イ) 「著しい障害」(3級)とは、握る、摘む、なでる(手、指先の機能)、物を持ち上げる、運ぶ、投げる、押す、ひっぱる(腕の機能)等の機能の著しい障害をいう。

具体的な例は次のとおりである。

a 機能障害のある上肢では5kg以内のものしか下げることができないもの。この際荷物は手指で握っても肘でつり下げてもよい

b 一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうちいずれか2関節の機能を全廃したもの

(ウ) 「軽度の障害」(7級)の具体的な例は次のとおりである。

a 精密な運動のできないもの

b 機能障害のある上肢では10kg以内のものしか下げることのできないもの

イ 肩関節の機能障害

(ア) 「全廃」(4級)の具体的な例は次のとおりである。

a 関節可動域30度以下のもの

b 徒手筋力テストで2以下のもの

(イ) 「著しい障害」(5級)の具体的な例は次のとおりである。

a 関節可動域60度以下のもの

b 徒手筋力テストで3に相当するもの

ウ 肘関節の機能障害

(ア) 「全廃」(4級)の具体的な例は次のとおりである。

a 関節可動域10度以下のもの

b 高度の動揺関節

c 徒手筋力テストで2以下のもの

(イ) 「著しい障害」(5級)の具体的な例は次のとおりである。

a 関節可動域30度以下のもの

b 中等度の動揺関節

c 徒手筋力テストで3に相当するもの

d 前腕の回内及び回外運動が可動域10度以下のもの

エ 手関節の機能障害

(ア) 「全廃」(4級)の具体的な例は次のとおりである。

a 関節可動域10度以下のもの

b 徒手筋力テストで2以下のもの

(イ) 「著しい障害」(5級)の具体的な例は次のとおりである。

a 関節可動域30度以下のもの

b 徒手筋力テストで3に相当するもの

オ 手指の機能障害

(ア) 手指の機能障害の判定には次の注意が必要である。

1. 機能障害のある指の数が増すにつれて幾何学的にその障害は重くなる。

2. おや指、次いでひとさし指の機能は特に重要である。

3. おや指の機能障害は摘む、握る等の機能を特に考慮して、その障害の重さを定めなければならない。

(イ) 一側の五指全体の機能障害

1. 「全廃」(3級)の具体的な例は次のとおりである。

字を書いたり、箸を持つことができないもの

2. 「著しい障害」(4級)の具体的な例は次のとおりである。

a 機能障害のある手で5kg以内のものしか下げることのできないもの

b 機能障害のある手の握力が5kg以内のもの

c 機能障害のある手で鍬又はかなづちの柄を握りそれぞれの作業のできないもの

3. 「軽度の障害」(7級)の具体的な例は次のとおりである。

a 精密なる運動のできないもの

b 機能障害のある手では10kg以内のものしか下げることのできないもの

c 機能障害のある手の握力が15kg以内のもの

(ウ) 各指の機能障害

1. 「全廃」の具体的な例は次のとおりである。

a 各々の関節の可動域10度以下のもの

b 徒手筋力テスト2以下のもの

2. 「著しい障害」の具体的な例は次のとおりである。

a 各々の関節の可動域30度以下のもの

b 徒手筋力テストで3に相当するもの

(2) 下肢不自由

ア 一下肢の機能障害

(ア) 「全廃」(3級)とは、下肢の運動性と支持性をほとんど失ったものをいう。

具体的な例は次のとおりである。

a 下肢全体の筋力の低下のため患肢で立位を保持できないもの

b 大腿骨又は脛骨の骨幹部偽関節のため患肢で立位を保持できないもの

(イ) 「著しい障害」(4級)とは、歩く、平衡をとる、登る、立っている、身体を廻す、うずくまる、膝をつく、座る等の下肢の機能の著しい障害をいう。

具体的な例は次のとおりである。

a 1km以上の歩行不能

b 30分以上起立位を保つことのできないもの

c 通常の駅の階段の昇降が手すりにすがらねばできないもの

d 通常の腰掛けでは腰掛けることのできないもの

e 正座、あぐら、横座りのいずれも不可能なもの

(ウ) 「軽度の障害」(7級)の具体的な例は次のとおりである。

a 2km以上の歩行不能

b 1時間以上の起立位を保つことのできないもの

c 横座りはできるが正座及びあぐらのできないもの

イ 股関節の機能障害

(ア) 「全廃」(4級)の具体的な例は次のとおりである。

a 各方向の可動域(伸展←→屈曲、外転←→内転等連続した可動域)が10度以下のもの

b 徒手筋力テストで2以下のもの

(イ) 「著しい障害」(5級)の具体的な例は次のとおりである。

a 可動域30度以下のもの

b 徒手筋力テストで3に相当するもの

(ウ) 「軽度の障害」(7級)の具体的な例は次のとおりである。

小児の股関節脱臼で軽度の跛行を呈するもの

ウ 膝関節の機能障害

(ア) 「全廃」(4級)の具体的な例は次のとおりである。

a 関節可動域10度以下のもの

b 徒手筋力テストで2以下のもの

c 高度の動揺関節、高度の変形

(イ) 「著しい障害」(5級)の具体的な例は次のとおりである。

a 関節可動域30度以下のもの

b 徒手筋力テストで3に相当するもの

c 中等度の動揺関節

(ウ) 「軽度の障害」(7級)の具体的な例は次のとおりである。

a 関節可動域90度以下のもの

b 徒手筋力テストで4に相当するもの又は筋力低下で2km以上の歩行ができないもの

エ 足関節の機能障害

(ア) 「全廃」(5級)の具体的な例は次のとおりである。

a 関節可動域5度以内のもの

b 徒手筋力テストで2以下のもの

c 高度の動揺関節、高度の変形

(イ) 「著しい障害」(6級)の具体的な例は次のとおりである。

a 関節可動域10度以内のもの

b 徒手筋力テストで3に相当するもの

c 中等度の動揺関節

オ 足指の機能障害

(ア) 「全廃」(7級)の具体的な例は次のとおりである。

下駄、草履をはくことのできないもの

(イ) 「著しい障害」(両側の場合は7級)とは特別の工夫をしなければ下駄、草履をはくことのできないものをいう。

カ 下肢の短縮

計測の原則として前腸骨棘より内くるぶし下端までの距離を測る。

キ 切断

大腿又は下腿の切断の部位及び長さは実用長をもって計測する。従って、肢断端に骨の突出、瘢痕、拘縮、神経断端腫その他の障害があるときは、その障害の程度を考慮して、上位の等級に判定することもあり得る。

(3) 体幹不自由

体幹とは、頸部、胸部、腹部及び腰部を含み、その機能にはそれら各部の運動以外に体位の保持も重要である。

体幹の不自由をきたすには、四肢体幹の麻痺、運動失調、変形等による運動機能障害である。

これらの多くのものはその障害が単に体幹のみならず四肢にも及ぶものが多い。このような症例における体幹の機能障害とは、四肢の機能障害を一応切り離して、体幹のみの障害の場合を想定して判定したものをいう。従って、このような症例の等級は体幹と四肢の想定した障害の程度を総合して判定するのであるが、この際2つの重複する障害として上位の等級に編入するのには十分注意を要する。例えば臀筋麻痺で起立困難の症例を体幹と下肢の両者の機能障害として2つの2級の重複として1級に編入することは妥当ではない。

ア 「座っていることのできないもの」(1級)とは、腰掛け、正座、横座り及びあぐらのいずれもできないものをいう。

イ 「座位または起立位を保つことの困難なもの」(2級)とは、10分間以上にわたり座位または起立位を保っていることのできないものをいう。

ウ 「起立することの困難なもの」(2級)とは、臥位又は座位より起立することが自力のみでは不可能で、他人又は柱、杖その他の器物の介護により初めて可能となるものをいう。

エ 「歩行の困難なもの」(3級)とは、100m以上の歩行不能のもの又は片脚による起立位保持が全く不可能なものをいう。

オ 「著しい障害」(5級)とは体幹の機能障害のために2km以上の歩行不能のものをいう。

(注5) なお、体幹不自由の項では、1級、2級、3級及び5級のみが記載され、その他の4級、6級が欠となっている。これは体幹の機能障害は四肢と異なり、具体的及び客観的に表現し難いので、このように大きく分けたのである。3級と5級に指定された症状の中間と思われるものがあった時も、これを4級とすべきではなく5級にとめるべきものである。

(注6) 下肢の異常によるものを含まないこと。

(4) 脳原性運動機能障害

この障害区分により程度等級を判定するのは、乳幼児期以前に発現した非進行性脳病変によってもたらされた姿勢及び運動の異常についてであり、具体的な例は脳性麻痺である。

以下に示す判定方法は、生活関連動作を主体としたものであるので、乳幼児期の判定に用いることの不適当な場合は前記(1)~(3)の方法によるものとする。

なお、乳幼児期に発現した障害によって脳原性運動機能障害と類似の症状を呈する者で、前記(1)~(3)の方法によることが著しく不利な場合は、この方法によることができるものとする。

ア 上肢機能障害

(ア) 両上肢の機能障害がある場合

両上肢の機能障害の程度は、紐むすびテストの結果によって次により判定するものとする。

紐結びテスト
区分 紐むすびテストの結果
等級表1級に該当する障害 紐むすびのできた数が19本以下のもの
等級表2級に該当する障害 紐むすびのできた数が33本以下のもの
等級表3級に該当する障害 紐むすびのできた数が47本以下のもの
等級表4級に該当する障害 紐むすびのできた数が56本以下のもの
等級表5級に該当する障害 紐むすびのできた数が65本以下のもの
等級表6級に該当する障害 紐むすびのできた数が75本以下のもの
等級表7級に該当する障害 紐むすびのできた数が76本以上のもの

(注7) 紐むすびテスト

5分間にとじ紐(長さおおむね43cm)を何本むすぶことができるかを検査するもの

(イ) 一上肢の機能に障害がある場合

一上肢の機能障害の程度は5動作の能力テストの結果によって、次により判定するものとする。

区分 5動作の能力テストの結果
等級表1級に該当する障害
等級表2級に該当する障害 5動作の全てができないもの
等級表3級に該当する障害 5動作のうち1動作しかできないもの
等級表4級に該当する障害 5動作のうち2動作しかできないもの
等級表5級に該当する障害 5動作のうち3動作しかできないもの
等級表6級に該当する障害 5動作のうち4動作しかできないもの
等級表7級に該当する障害 5動作の全てができるが、上肢に不随意運動・失調等を有するもの

(注8) 5動作の能力テスト

次の5動作の可否を検査するもの

a 封筒をはさみで切る時に固定する

b さいふからコインを出す

c 傘をさす

d 健側の爪を切る

e 健側のそで口のボタンをとめる

イ 移動機能障害

移動機能障害の程度は、下肢、体幹機能の評価の結果によって次により判定する。

区分 下肢・体幹機能の評価の結果
等級表1級に該当する障害 つたい歩きができないもの
等級表2級に該当する障害 つたい歩きのみができるもの
等級表3級に該当する障害 支持なしで立位を保持し、その後10m歩行することはできるが、椅子から立ち上がる動作又は椅子に座る動作ができないもの
等級表4級に該当する障害 椅子から立ち上がり10m歩行し再び椅子に座る動作に15秒以上かかるもの
等級表5級に該当する障害 椅子から立ち上がり、10m歩行し再び椅子に座る動作は15秒未満でできるが、50cm幅の範囲を直線歩行できないもの
等級表6級に該当する障害 50cm幅の範囲を直線歩行できるが、足を開き、しゃがみこんで、再び立ち上がる動作ができないもの
等級表7級に該当する障害 6級以上には該当しないが、下肢に不随意運動・失調等を有するもの

五 内臓の機能障害

1 心臓機能障害

(1) 18歳以上の者の場合

ア 等級表1級に該当する障害は次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) 次のいずれか2つ以上の所見があり、かつ、安静時又は自己身辺の日常生活活動でも心不全症状、狭心症症状又は繰り返しアダムスストークス発作が起こるもの。

a 胸部エックス線所見で心胸比0.60以上のもの

b 心電図で陳旧性心筋梗塞所見があるもの

c 心電図で脚ブロック所見があるもの

d 心電図で完全房室ブロック所見があるもの

e 心電図で第2度以上の不完全房室ブロック所見があるもの

f 心電図で心房細動又は粗動所見があり、心拍数に対する脈拍数の欠損が10以上のもの

g 心電図でSTの低下が0.2mV以上の所見があるもの

h 心電図で第1.誘導、第2.誘導及び胸部誘導(ただしV1を除く。)のいずれかのTが逆転した所見があるもの

(イ) ペースメーカを植え込み、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの、先天性疾患によりペースメーカを植え込みしたもの又は人工弁移植、弁置換を行ったもの

イ 等級表3級に該当する障害は次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) アのaからhまでのうちいずれかの所見があり、かつ、家庭内での極めて温和な日常生活活動には支障がないが、それ以上の活動では心不全症状若しくは狭心症症状が起こるもの又は頻回に頻脈発作を起こし救急医療を繰り返し必要としているものをいう。

(イ) ペースメーカを植え込み、家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの

ウ 等級表4級に該当する障害は次のものをいう。

(ア) 次のうちいずれかの所見があり、かつ、家庭内での普通の日常生活活動又は社会での極めて温和な日常生活活動には支障がないが、それ以上の活動では心不全症状又は狭心症症状が起こるもの。

a 心電図で心房細動又は粗動所見があるもの

b 心電図で期外収縮の所見が存続するもの

c 心電図でSTの低下が0.2mV未満の所見があるもの

d 運動負荷心電図でSTの低下が0.1mV以上の所見があるもの

(イ) 臨床所見で部分的心臓浮腫があり、かつ、家庭内での普通の日常生活活動若しくは社会での極めて温和な日常生活活動には支障がないが、それ以上の活動は著しく制限されるもの又は頻回に頻脈発作を繰り返し、日常生活若しくは社会生活に妨げとなるもの。

(ウ) ペースメーカを植え込み、社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

(2) 18歳未満の者の場合

ア 等級表1級に該当する障害は原則として、重い心不全、低酸素血症、アダムスストークス発作又は狭心症発作で継続的医療を要するもので、次の所見(a~n)の項目のうち6項目以上が認められるものをいう。

a 著しい発育障害

b 心音・心雑音の異常

c 多呼吸又は呼吸困難

d 運動制限

e チアノーゼ

f 肝腫大

g 浮腫

h 胸部エックス線で心胸比0.56以上のもの

i 胸部エックス線で肺血流量増又は減があるもの

j 胸部エックス線で肺静脈うっ血像があるもの

k 心電図で心室負荷像があるもの

l 心電図で心房負荷像があるもの

m 心電図で病的不整脈があるもの

n 心電図で心筋障害像があるもの

イ 等級表3級に該当する障害は、原則として、継続的医療を要し、アの所見(a~n)の項目のうち5項目以上が認められるもの又は心エコー図、冠動脈造影で冠動脈の狭窄若しくは閉塞があるものをいう。

ウ 等級表4級に該当する障害は、原則として症状に応じて医療を要するか少なくとも、1~3か月毎の間隔の観察を要し、アの所見(a~n)の項目のうち4項目以上が認められるもの又は心エコー図、冠動脈造影で冠動脈瘤若しくは拡張があるものをいう。

2 じん臓機能障害

(1) 等級表1級に該当する障害は、じん臓機能検査において、内因性クレアチニンクリアランス値が10ml⁄分未満、又は血清クレアチニン濃度が8.0mg⁄dl以上であって、かつ、自己の身辺の日常生活活動が著しく制限されるか、又は血液浄化を目的とした治療を必要とするもの若しくは極めて近い将来に治療が必要となるものをいう。

(2) 等級表3級に該当する障害は、じん臓機能検査において、内因性クレアチニンクリアランス値が10ml⁄分以上、20ml⁄分未満、又は血清クレアチニン濃度が5.0mg⁄dl以上、8.0mg⁄dl未満であって、かつ、家庭内での極めて温和な日常生活活動には支障はないが、それ以上の活動は著しく制限されるか、又は次のいずれか2つ以上の所見があるものをいう。

a じん不全に基づく末梢神経症

b じん不全に基づく消化器症状

c 水分電解質異常

d じん不全に基づく精神異常

e エックス線写真所見における骨異栄養症

f じん性貧血

g 代謝性アシドーシス

h 重篤な高血圧症

i じん疾患に直接関連するその他の症状

(3) 等級表4級に該当する障害はじん機能検査において、内因性クレアチニンクリアランス値が20ml⁄分以上、30ml⁄分未満、又は血清クレアチニン濃度が3.0mg⁄dl以上、5.0mg⁄dl未満であって、かつ、家庭内での普通の日常生活活動若しくは社会での極めて温和な日常生活活動には支障はないが、それ以上の活動は著しく制限されるか、又は(2)のaからiまでのうちいずれか2つ以上の所見のあるものをいう。

(4) じん移植術を行った者については、抗免疫療法を要しなくなるまでは、障害の除去(軽減)状態が固定したわけではないので、抗免疫療法を必要とする期間中は、当該療法を実施しないと仮定した場合の状態で判定するものである。

(注9) eGFR(推算糸球体濾過量)が記載されていれば、血清クレアチニン濃度の異常に替えて、eGFR(単位はml/分/1.73㎡)が10以上20未満のときは4級相当の異常、10未満のときは3級相当の異常と取り扱うことも可能とする。

(注10) 慢性透析療法を実施している者の障害の判定は、当該療法の実施前の状態で判定するものである。

3 呼吸器機能障害

呼吸器の機能障害の程度についての判定は、予測肺活量1秒率(以下「指数」という。)、動脈血ガス及び医師の臨床所見によるものとする。指数とは1秒量(最大吸気位から最大努力下呼出の最初の1秒間の呼気量)の予測肺活量(性別、年齢、身長の組合せで正常ならば当然あると予測される肺活量の値)に対する百分率である。

(1) 等級表1級に該当する障害は、呼吸困難が強いため歩行がほとんどできないもの、呼吸障害のため指数の測定ができないもの、指数が20以下のもの又は動脈血O2分圧が50Torr以下のものをいう。

(2) 等級表3級に該当する障害は、指数が20を超え30以下のもの若しくは動脈血O2分圧が50Torrを超え60Torr以下のもの又はこれに準ずるものをいう。

(3) 等級表4級に該当する障害は、指数が30を超え40以下のもの若しくは動脈血O2分圧が60Torrを超え70Torr以下のもの又はこれに準ずるものをいう。

4 ぼうこう又は直腸機能障害

(1) 等級表1級に該当する障害は、次のいずれかに該当し、かつ、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるものをいう。

a 腸管のストマに尿路変向(更)のストマを併せもち、かつ、いずれかのストマにおいて排便・排尿処理が著しく困難な状態(注11)があるもの

b 腸管のストマをもち、かつ、ストマにおける排便処理が著しく困難な状態(注11)及び高度の排尿機能障害(注12)があるもの

c 尿路変向(更)のストマに治癒困難な腸瘻(注13)を併せもち、かつ、ストマにおける排尿処理が著しく困難な状態(注11)又は腸瘻における腸内容の排泄処理が著しく困難な状態(注14)があるもの

d 尿路変向(更)のストマをもち、かつ、ストマにおける排尿処理が著しく困難な状態(注11)及び高度の排便機能障害(注15)があるもの

e 治癒困難な腸瘻(注13)があり、かつ、腸瘻における腸内容の排泄処理が著しく困難な状態(注14)及び高度の排尿機能障害(注12)があるもの

(2) 等級表3級に該当する障害は、次のいずれかに該当するものをいう。

a 腸管のストマに尿路変向(更)のストマを併せもつもの

b 腸管のストマをもち、かつ、ストマにおける排便処理が著しく困難な状態(注11)又は高度の排尿機能障害(注12)があるもの

c 尿路変向(更)のストマに治癒困難な腸瘻(注13)を併せもつもの

d 尿路変向(更)のストマをもち、かつ、ストマにおける排尿処理が著しく困難な状態(注11)又は高度の排便機能障害(注15)があるもの

e 治癒困難な腸瘻(注13)があり、かつ、腸瘻における腸内容の排泄処理が著しく困難な状態(注14)又は高度の排尿機能障害(注12)があるもの

f 高度の排尿機能障害(注12)があり、かつ、高度の排便機能障害(注15)があるもの

(3) 等級表4級に該当する障害は、次のいずれかに該当するものをいう。

a 腸管又は尿路変向(更)のストマをもつもの

b 治癒困難な腸瘻(注13)があるもの

c 高度の排尿機能障害(注12)又は高度の排便機能障害(注15)があるもの

(4) 障害認定の時期

ア 腸管のストマ、あるいは尿路変向(更)のストマをもつものについては、ストマ造設直後から、そのストマに該当する等級の認定を行う。

「ストマにおける排尿・排便処理が著しく困難な状態」(注11)の合併によって上位等級に該当する場合、申請日がストマ造設後6か月を経過した日以降の場合はその時点で該当する等級の認定を行い、ストマ造設後6か月を経過していない場合は、6か月を経過した日以降、再申請により再認定を行う。

イ 「治癒困難な腸瘻」(注13)については、治療が終了し、障害が認定できる状態になった時点で認定する。

ウ 「高度の排尿機能障害」(注12)、「高度の排便機能障害」(注15)については、先天性疾患(先天性鎖肛を除く)による場合を除き、直腸の手術や自然排尿型代用ぼうこう(新ぼうこう)による神経因性ぼうこうに起因する障害又は先天性鎖肛に対する肛門形成術又は小腸肛門吻合術に起因する障害発生後6か月を経過した日以降をもって認定し、その後は状態に応じて適宜再認定を行う。特に先天性鎖肛に対する肛門形成術後の場合は、12歳時と20歳時にそれぞれ再認定を行う。

(注11) 「ストマにおける排尿・排便(又はいずれか一方)処理が著しく困難な状態」とは、治療によって軽快の見込みのないストマ周辺の皮膚の著しいびらん、ストマの変形、又は不適切なストマの造設個所のため、長期にわたるストマ用装具の装着が困難な状態のものをいう。

(注12) 「高度の排尿機能障害」とは、先天性疾患による神経障害、又は直腸の手術や自然排尿型代用ぼうこう(新ぼうこう)による神経因性ぼうこうに起因し、カテーテル留置又は自己導尿の常時施行を必要とする状態のものをいう。

(注13) 「治癒困難な腸瘻」とは、腸管の放射線障害等による障害であって、ストマ造設以外の瘻孔(腸瘻)から腸内容の大部分の洩れがあり、手術等によっても閉鎖の見込みのない状態のものをいう。

(注14) 「腸瘻における腸内容の排泄処理が著しく困難な状態」とは、腸瘻においてストマ用装具等による腸内容の処理が不可能なため、軽快の見込みのない腸瘻周辺の皮膚の著しいびらんがある状態のものをいう。

(注15) 「高度の排便機能障害」とは、先天性疾患(先天性鎖肛を除く)に起因する神経障害、又は先天性鎖肛に対する肛門形成術又は小腸肛門吻合術(注16)に起因し、かつ、

ア 完全便失禁を伴い、治療によって軽快の見込みのない肛門周辺の皮膚の著しいびらんがある状態

イ 1週間に2回以上の定期的な用手摘便を要する高度な便秘を伴う状態

のいずれかに該当するものをいう。

(注16) 「小腸肛門吻合術」とは、小腸と肛門歯状線以下(肛門側)とを吻合する術式をいう。

(注17) 障害認定の対象となるストマは、排尿・排便のための機能をもち、永久的に造設されるものに限る。

5 小腸の機能障害

(1) 等級表1級に該当する障害は、次のいずれかに該当し、かつ、栄養維持が困難(注18)となるため、推定エネルギー必要量(表1)の60%以上を常時中心静脈栄養法で行う必要のあるものをいう。

a 疾患等(注19)により小腸が切除され、残存空・回腸が手術時、75cm未満(ただし乳幼児期は30cm未満)になったもの

b 小腸疾患(注20)により永続的に小腸機能の大部分を喪失しているもの

(2) 等級表3級に該当する障害は、次のいずれかに該当し、かつ、栄養維持が困難(注18)となるため、推定エネルギー必要量の30%以上を常時中心静脈栄養法で行う必要のあるものをいう。

a 疾患等(注19)により小腸が切除され、残存空・回腸が手術時、75cm以上150cm未満(ただし乳幼児期は30cm以上75cm未満)になったもの

b 小腸疾患(注20)により永続的に小腸機能の一部を喪失しているもの

(3) 等級表4級に該当する障害は、小腸切除または小腸疾患(注20)により永続的に小腸機能の著しい低下があり、かつ、通常の経口による栄養摂取では栄養維持が困難(注18)となるため、随時(注21)中心静脈栄養法又は経腸栄養法(注22)で行う必要があるものをいう。

(注18) 「栄養維持が困難」とは栄養療法開始前に以下の2項目のうちいずれかが認められる場合をいう。

なお、栄養療法実施中の者にあっては、中心静脈栄養法又は経腸栄養法によって推定エネルギー必要量を満たしうる場合がこれに相当するものである。

1) 成人においては、最近3か月間の体重減少率が10%以上であること(この場合の体重減少率とは、平常の体重からの減少の割合、又は(身長-100)×0.9の数値によって得られる標準的体重からの減少の割合をいう。)。

15歳以下の場合においては、身長及び体重増加がみられないこと。

2) 血清アルブミン濃度3.2g⁄dl以下であること。

(注19) 小腸大量切除を行う疾患、病態

1) 上腸間膜血管閉塞症

2) 小腸軸捻転症

3) 先天性小腸閉鎖症

4) 壊死性腸炎

5) 広汎腸管無神経節症

6) 外傷

7) その他

(注20) 小腸疾患で永続的に小腸機能の著しい低下を伴う場合のあるもの

1) クローン病

2) 腸管ベーチェット病

3) 非特異性小腸潰瘍

4) 特発性仮性腸閉塞症

5) 乳児期難治性下痢症

6) その他の良性の吸収不良症候群

(注21) 「随時」とは、6か月の観察期間中に4週間程度の頻度をいう。

(注22) 「経腸栄養法」とは、経管により成分栄養を与える方法をいう。

(注23) 手術時の残存腸管の長さは腸間膜付着部の距離をいう。

(注24) 小腸切除(等級表1級又は3級に該当する大量切除の場合を除く。)又は小腸疾患による小腸機能障害の障害程度については再認定を要する。

(注25) 障害認定の時期は、小腸大量切除の場合は手術時をもって行うものとし、それ以外の小腸機能障害の場合は6か月の観察期間を経て行うものとする。

日本人の推定エネルギー必要量
年齢(歳) エネルギー(Kcal⁄日)
0~5(月) 550 500
6~8(月) 650 600

9~11(月)

700 650
1~2 950

900

3~5

1,300

1,250
6~7 1,350 1,250
8~9 1,600 1,500
10~11 1,950 1,850
12~14 2,300 2,150
15~17 2,500 2,050
18~29 2,300 1,700
30~49 2,300 1,750
50~64 2,050 1,550
65~74 2,050 1,550
75以上 1,800 1,400

「食事による栄養摂取量の基準」(令和2年厚生労働省告示第10号)

 

6 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能障害

(1) 13歳以上の者の場合

ア 等級表1級に該当する障害はヒト免疫不全ウイルスに感染していて、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) CD4陽性Tリンパ球数が200⁄μl以下で、次の項目(a~l)のうち6項目以上が認められるもの。

a 白血球数について3,000⁄μl未満の状態が4週以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続く

b Hb量について男性12g⁄dl未満、女性11g⁄dl未満の状態が4週以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続く

c 血小板数について10万⁄μl未満の状態が4週以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続く

d ヒト免疫不全ウイルス―RNA量について5,000コピー⁄ml以上の状態が4週以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続く

e 1日1時間以上の安静臥床を必要とするほどの強い倦怠感及び易疲労が月に7日以上ある

f 健常時に比し10%以上の体重減少がある

g 月に7日以上の不定の発熱(38℃以上)が2か月以上続く

h 1日に3回以上の泥状ないし水様下痢が月に7日以上ある

i 1日に2回以上の嘔吐あるいは30分以上の嘔気が月に7日以上ある

j 口腔内カンジダ症(頻回に繰り返すもの)、赤痢アメーバ症、帯状疱疹、単純ヘルペスウイルス感染症(頻回に繰り返すもの)、糞線虫症及び伝染性軟属腫等の日和見感染症の既往がある

k 生鮮食料品の摂取禁止等の日常生活活動上の制限が必要である

l 軽作業を越える作業の回避が必要である

(イ) 回復不能なエイズ合併症のため介助なくしては日常生活がほとんど不可能な状態のもの。

イ 等級表2級に該当する障害はヒト免疫不全ウイルスに感染していて、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) CD4陽性Tリンパ球数が200⁄μl以下で、アの項目(a~l)のうち3項目以上が認められるもの。

(イ) エイズ発症の既往があり、アの項目(a~l)のうち3項目以上が認められるもの。

(ウ) CD4陽性Tリンパ球数に関係なく、アの項目(a~l)のうちaからdまでの1つを含む6項目以上が認められるもの。

ウ 等級表3級に該当する障害はヒト免疫不全ウイルスに感染していて、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) CD4陽性Tリンパ球数が500⁄μl以下で、アの項目(a~l)のうち3項目以上が認められるもの。

(イ) CD4陽性Tリンパ球数に関係なく、アの項目(a~l)のうちaからdまでの1つを含む4項目以上が認められるもの。

エ 等級表4級に該当する障害はヒト免疫不全ウイルスに感染していて、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) CD4陽性Tリンパ球数が500⁄μl以下で、アの項目(a~l)のうち1項目以上が認められるもの。

(イ) CD4陽性Tリンパ球数に関係なく、アの項目(a~l)のうちaからdまでの1つを含む2項目以上が認められるもの。

(2) 13歳未満の者の場合

ア 等級表1級に該当する障害はヒト免疫不全ウイルスに感染していて、「サーベイランスのためのHIV感染症⁄AIDS診断基準」(厚生省エイズ動向委員会、1999)が採択した指標疾患のうち1項目以上が認められるもの。

イ 等級表2級に該当する障害はヒト免疫不全ウイルスに感染していて、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) 次の項目(a~r)のうち1項目以上が認められるもの。

a 30日以上続く好中球減少症(<1,000⁄μl)

b 30日以上続く貧血(<Hb 8g⁄dl)

c 30日以上続く血小板減少症(<100,000⁄μl)

d 1か月以上続く発熱

e 反復性又は慢性の下痢

f 生後1か月以前に発症したサイトメガロウイルス感染

g 生後1か月以前に発症した単純ヘルペスウイルス気管支炎、肺炎又は食道炎

h 生後1か月以前に発症したトキソプラズマ症

i 6か月以上の小児に2か月以上続く口腔咽頭カンジダ症

j 反復性単純ヘルプスウイルス口内炎(1年以内に2回以上)

k 2回以上又は2つの皮膚節以上の帯状疱疹

l 細菌性の髄膜炎、肺炎又は敗血症(1回)

m ノカルジア症

n 播種性水痘

o 肝炎

p 心筋症

q 平滑筋肉腫

r HIV腎症

(イ) 次の年齢区分ごとのCD4陽性Tリンパ球数及び全リンパ球に対する割合に基づく免疫学的分類において「重度低下」に該当するもの。

免疫学的分類 児の年齢
1歳未満 1~6歳未満 6~13歳未満
正常 ≧1,500⁄μ ≧1,000⁄μl ≧500⁄μl
≧25% ≧25% ≧25%
中等度低下 750~1,499⁄μl 500~999⁄μl 200~499⁄μl
15~24% 15~24% 15~24%
重度低下 <750⁄μl <500⁄μl <200⁄μl
<15% <15% <15%

ウ 等級表3級に該当する障害はヒト免疫不全ウイルスに感染していて、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) 次の項目(a~h)のうち2項目以上が認められるもの。

a リンパ節腫脹(2か所以上で0.5cm以上。対称性は1か所とみなす)

b 肝腫大

c 脾腫大

d 皮膚炎

e 耳下腺炎

f 反復性又は持続性の上気道感染

g 反復性又は持続性の副鼻腔炎

h 反復性又は持続性の中耳炎

(イ) イの年齢区分ごとのCD4陽性Tリンパ球数及び全リンパ球に対する割合に基づく免疫学的分類において「中等度低下」に該当するもの。

エ 等級表4級に該当する障害はヒト免疫不全ウイルスに感染していて、ウの項目(a~h)のうち1項目以上が認められるもの。

7 肝臓機能障害

ア 等級表1級に該当する障害は、次のいずれにも該当するものをいう。

(ア) Child―Pugh分類(注26)の合計点数が7点以上であって、肝性脳症、腹水、血清アルブミン値、プロトロンビン時間、血清総ビリルビン値の項目のうち肝性脳症又は腹水の項目を含む3項目以上が2点以上の状態が、90日以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続くもの。

(イ) 次の項目(a~j)のうち、5項目以上が認められるもの。

a 血清総ビリルビン値が5.0mg⁄dl以上

b 血中アンモニア濃度が150μg⁄dl以上

c 血小板数が50,000⁄mm3以下

d 原発性肝がん治療の既往

e 特発性細菌性腹膜炎治療の既往

f 胃食道静脈瘤治療の既往

g 現在のB型肝炎又はC型肝炎ウイルスの持続的感染

h 1日1時間以上の安静臥床を必要とするほどの強い倦怠感及び易疲労感が月7日以上ある

i 1日に2回以上の嘔吐あるいは30分以上の嘔気が月に7日以上ある

j 有痛性筋けいれんが1日に1回以上ある

イ 等級表2級に該当する障害は、次のいずれにも該当するものをいう。

(ア) Child―Pugh分類(注26)の合計点数が7点以上であって、肝性脳症、腹水、血清アルブミン値、プロトロンビン時間、血清総ビリルビン値の項目のうち肝性脳症又は腹水の項目を含む3項目以上が2点以上の状態が、90日以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続くもの。

(イ) ア(イ)の項目(a~j)のうち、aからgまでの1つを含む3項目以上が認められるもの。

ウ 等級表3級に該当する障害は、次のいずれにも該当するものをいう。

(ア) Child―Pugh分類(注26)の合計点数が7点以上の状態が、90日以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続くもの。

(イ) ア(イ)の項目(a~j)のうち、aからgまでの1つを含む3項目以上が認められるもの。

エ 等級表4級に該当する障害は、次のいずれにも該当するものをいう。

(ア) Child―Pugh分類(注26)の合計点数が7点以上の状態が、90日以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続くもの。

(イ) ア(イ)の項目(a~j)のうち、1項目以上が認められるもの。

オ 肝臓移植を行った者については、抗免疫療法を要しなくなるまでは、障害の除去(軽減)状態が固定したわけではないので、抗免疫療法を必要とする期間中は、当該療法を実施しないと仮定して、1級に該当するものとする。

(注26)Child―Pugh分類
 

1点

2点

3点

肝性脳症

なし

軽度(1.・2.)

昏睡(3.以上)

腹水

なし

軽度

中程度以上

血清アルブミン値

3.5g⁄dl超

2.8~3.5g⁄dl

2.8g⁄dl未満

プロトロンビン時間

70%超

40~70%

40%未満

血清総ビリルビン値

2.0mg⁄dl未満

2.0~3.0mg⁄dl

3.0mg⁄dl超

六 2つ以上の障害が重複する場合の取扱い

2つ以上の障害が重複する場合の障害等級は、次により認定する。

1 障害等級の認定方法

(1) 2つ以上の障害が重複する場合の障害等級は、重複する障害の合計指数に応じて、次により認定する。

合計指数

認定等級

18以上

1級

11~17

2〃

7~10

3〃

4~6

4〃

2~3

5〃

1

6〃

(2) 合計指数の算定方法

ア 合計指数は、次の等級別指数表により各々の障害の該当する等級の指数を合計したものとする。

障害等級

指数

1級

18

2〃

11

3〃

7

4〃

4

5〃

2

6〃

1

7〃

0.5

イ 合計指数算定の特例

同一の上肢又は下肢に重複して障害がある場合の当該一上肢又は一下肢に係る合計指数は、機能障害のある部位(機能障害が2か所以上あるときは上位の部位とする。)から上肢又は下肢を欠いた場合の障害等級に対応する指数の値を限度とする。

(例1)
右上肢のすべての指を欠くもの 3級 等級別指数 7
 〃 手関節の全廃 4級  〃  4
    合 計 11

上記の場合、指数の合計は11となるが次の障害の指数が限度となるため合計指数は7となる。

右上肢を手関節から欠くもの 3級 等級別指数 7

(例2)
左上肢の肩関節の全廃 4級 等級別指数 4
 〃 手関節の全廃 4級  〃  4
 〃 手関節の全廃 4級  〃  4
    合 計 12

上記の場合、指数の合計は12となるが次の障害の指数が限度となるため合計指数は11となる。

左上肢を肩関節から欠くもの 2級 等級別指数 11

2 認定上の留意事項

(1) 音声機能障害、言語機能障害及びそしゃく機能障害の重複については1の認定方法を適用しない。

(2) 体幹機能障害と下肢機能障害は原則として1の認定方法を適用してさしつかえないが、例えば、神経麻痺で起立困難なもの等については体幹及び下肢の機能障害として重複認定すべきではなく、体幹又は下肢の単独の障害として認定するものとする。

(3) 聴覚障害と音声・言語機能障害が重複する場合は、1の認定方法を適用してさしつかえない。

例えば、聴力レベル100dB以上の聴覚障害(2級指数11)と音声・言語機能の喪失(3級指数7)の障害が重複する場合は1級(合計指数18)とする。

(4) 7級の障害は、等級別指数を0.5とし、6級以上の障害と同様に取り扱って合計指数を算定する。

3 上記により認定される障害等級が著しく均衡を欠くと認められるものについては、地方社会福祉審議会の意見を聞いて別に定めるものとする。

 

 

 

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