長野県立総合リハビリテーションセンター

しあわせ信州

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更新日:2016年8月30日

高次脳機能障害のリハビリ

高次脳障害の症状は、環境や条件によって現れ方が異なるので余計周囲を困惑させます。

しかし、よくその状況を調べてみると、落ち着いた環境や適切な対応で問題が少なく行動できることがあると分かってきました。だから周囲がこの障害と対応の基本を知って適切な対応を心がけることが大切です。

対応の基本的な考え方

  • おいつめない

障害された機能の回復を目指して訓練するのがリハビリです。しかし、現在の医学では脳細胞を再生させることは困難で、訓練によってある程度の機能回復は望めても、生活面の支障は大きく残る事が多いのです。
また、訓練により機能回復を図っても、それが進まないと本人を追い込んでしまうことになる場合があるので注意が必要です。

  • 代替手段を身に付ける

むしろ、失った機能の代替手段を使えるように援助したほうが効果的と言えます。
代替手段とは、脳の機能を他の手段で置き換えること・・・例えば、記憶に問題があるのなら、メモの利用を利用することなどが考えられます。

  • 単純な環境づくり

環境を分かりやすくシンプルに整えることも大切です。例えば、入院中の本人の持ち物が多くても管理することができないのです。

  • 用件はひとつずつ

いちどに二つ以上の要求を伝えても、混乱して時にはパニックになってしまうので、用件はひとつずつ伝えることです。書いたメモを利用できれば、複数の用件を伝えても実行可能です。

  • ことばだけにたよらない

予定や作業の手順などは、ことばで伝えるだけではなく、文字に書いて示したり、絵や写真で手順を示すことで混乱が少なく分かりやすくなります。

記憶障害への対応

記憶能力自体を回復させることはなかなか難しいので、それにかわる手段を身につけることなどを目指します。

  • 記憶の外在化

記憶すべきことをメモなどに残し、利用することを習慣化する。その人にあったノート、メモなどでスケジュールや作業手順を記録して記憶障害を補う。また、生活の記録も習慣化する。

  • 行動のパターン化

習慣化できる日課は一定のパターンをつくり、その流れに沿って行動できるようにすることで、日常生活をスムーズにすることが大切です。

  • 身の回りをシンプルに

本人が管理するものを減らすことで管理しやすくします。

  • 置き場所を変えない

物の置き場所を一定にすることで容易に探せるようにする。

 

最近では、スケジュール機能のついた携帯電話や、PDAとよばれる電子手帳利用が進みつつあります。上手に利用できれば強力な道具になります。

物覚えの悪くなったことを本人の努力不足ととらえられてしまうと、余分なストレスを本人に与えてしまうことになるので避けたいことです。

メモやスケジュールの利用を勧めても、そういった習慣のない人が新たに習慣化するのは難しいので訓練が必要です。メモやスケジュールのこと自体を忘れてしまうのが記憶障害なのですから。

メモリーノート

記憶を助けるメモリーノート

注意障害への対応

集中力が低下している人に対しては、作業時間を短く、休憩を多くして容易に課題が達成できる段階から練習してもらうことが必要です。

はじめは、課題を限定して繰り返し練習してもらったり、完成に近いところから始めて達成感や完成イメージが持てるように支援します。

  • 指示はひとつ

同時に複数の指示をしないようにします。ひとつづつならできることでも、いっしょに指示されると混乱して優先順位をつけられないため結局はとりかかることができなくなります。

  • 注意を引くための工夫

ことばがけをして、注意を喚起したり、注意すべきポイントをわかりやすく示す工夫をします。

  • 物理的環境づくり

雑音や他の人の会話や動き、作業と関係ない道具などが見えるところにないような気が散らない環境づくりを行います。

  • 心理的環境づくり

ストレスを受けてイライラした状況や、緊張した状態では普段にも増して注意集中が困難になるので、情緒的安定を図り、落ち着つける環境作りを心がけます。


注意障害があると、仕事や日常生活上の支障だけではなく、自動車運転や機械の操作が危険な場合があるので、障害の程度を見極めていくことが非常に重要になります。

遂行機能障害への対応

行動の取りかかりが悪くなったり、段取りよく生活や仕事を進めることができなのですが、見過ごされやすい症状なのできちんと診断した上で対応を考える必要があります。

  • 周りからの促し

自主的に行うのをただ待つのではなく、きっかけを作る必要があります。

  • 行動を事前に言語化する

いきなり行わせるのではなく、どうするのか表明してもらうことが有用です。

  • 課題の単純化

一連の取り組みのプロセスを小さな単位に分けた課題として取り組んでもらうようにします。

  • 作業手順の明確化

何をしたら良いかを、視覚的な手がかりを中心に分かりやすく示すことが大切です。

 

社会生活上不適切な振る舞いが見られたら、その背景に遂行機能障害がある可能性も考えたほうが良いかもしれません。

社会的行動障害への対応

本人の社会生活を営むのに必要な対人スキル(能力)が阻害されていることをまず理解することが大切です。

  • 感情のコントロール

まず本人のストレスを減らすことが大切です。復学や復職を急がせたり、するべきこと(課題)を多く提示すると不安定になります。時にはカウンセリングや薬物療法を行う必要があります。

  • 沈静化とフィードバック

感情爆発時には場面を変え、刺激の少ない環境の中で沈静化を待ちます。その後、状況をフィードバックし、適切な行動を示します。

  • 欲求のコントロール

行動の枠(約束事)を書いて明示し、チェックしていきます。

  • 意欲・発動性の喚起

毎日の日課を決めて示します。実現可能な小目標を定め、成果が目に見えるようにすることが大切です。本人が興味を持てる活動や、体を使うことからはじめるのがよいでしょう。

  • 抑うつへの対応

うつ病による意欲の低下などにはうつ病の治療が最優先です。不適応感が強いので、本人の訴えに耳を傾け、受け止めることや、混乱状態を整理する役割の人も必要です。


本人に関わる家族などの関係者自身が、感情的になってしまい冷静な対応ができないと、関係をどんどんわるくしていくことになるので、現状を観察、評価して関係者が共通の理解を持つことが特に求められます。

生活能力回復への支援

訓練の成果が、日常生活の中で現れることが大切です。高次脳機能障害は、脳がまわりの状況を知る情報処理の機能が低下した状態です。実際の生活場面では、さまざまな情報をつぎつぎと脳が処理しなければならないならないので、訓練場面とは大きく異なります。

  • 生活能力回復プログラム

実際に交通機関を利用したり、買い物の練習を行います。単純な条件から、複雑な状況に慣らしていきますが、行動スケジュールや、メモなどの補助手段を有効に利用します。

  • 健康管理

本人が自分自身で健康管理(食事の時間、服薬、規則正しい生活など)ができるような支援も必要です。

  • 仲間づくり

同じ障害を持つ当事者同士が悩みを話し合ったり、余暇活動を行う取り組みも有意義です。

 

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