長野県立総合リハビリテーションセンター

しあわせ信州

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更新日:2016年8月30日

高次脳機能障害の原因と症状

高次脳機能障害とはどういう状態なのかをお話します。

高次脳機能とは

高次脳機能は、物事に注意を向け、以前の記憶と照らし合わせて認識したり、新たに記憶・学習していく働きです。

また、これらの認識に基づき、判断を下し、どう行動したらよいかを計画することも高度な脳の働きになります。

人間はこの高次脳機能を発達させ、自分の経験だけではなく、他の人の経験も自分のものとできるように、
コミュニケーションの機能すなわち言葉を発明してきたのです。

高次脳機能障害とは、この高度な脳の機能が障害されて起こるものです。

原因は何か

脳の障害は、病気やケガ、酸素不足などが原因で起こります。

  • 脳血管障害によるもの

病気によるものの代表的なものは、脳血管障害と呼ばれるもので、代表的なのは脳梗塞や、脳出血、くも膜下出血です。

  • 事故によるもの

交通事故やその他の事故により外部から衝撃が加わり、脳の神経がダメージを受けても、血管が切れたりしないと、断層写真には写らないことがあります。
しかし、脳の広い部分が障害を受けているので、後遺障害となる可能性があります。

  • 脳炎などの感染症

細菌やウイルスの感染により脳に損傷をきたす場合があります。

  • 低酸素性脳症

水におぼれたり、窒息したり、心筋梗塞などにより一時的に脳に酸素が届かないことが原因で発症します。

症状

人によって現れ方は異なりますが、次のような症状が一般的です。

  • 記憶の障害

新しいことを覚えられなくなります。
約束を忘れる、日時をまちがえる、どこにいるのかわからなくなる・・・などの症状です。
同じ質問や話を何回もするので、まわりが困ってしまいます。

  • 注意の障害

集中できなくて、長続きしません。同時に二つのことをしようとすると混乱します。
不注意なことが目立ちます。指示を取り違えたり、ミスをすることが多いです。
ぼんやりした表情や変化の少ない表情をしがちです。

  • 遂行機能障害

仕事へのとりかかりや、段取りが悪くなります。仕事が遅かったり、作業の手順もわからなくなってしまいます。

  • 社会的行動障害

感情が不安定になったり、がまんができなかったり、こだわりが強くなったりするため、まわりの人とトラブルを起こしやすくなります。ゆううつな状態が続く人もいます。
慣れた環境では症状が目立たないこともあります。
家庭でリラックスしていて目立たない症状が、職場復帰して明らかになることもあります。

  • 失語

聞く、話す、読む、書くなどのことばの機能が障害を受けます。

  • 失行

手足の働きに問題がなくても、服を着る、箸やはさみを使うなどできていたことができなくなります。

  • 失認

視力に問題はないのに、色、物の形、物の用途や名称が分からない、絵を見て全体のまとまりが分からないなどの症状です。

  • 地誌的障害

よく知っている場所で道が分からなくなって迷ったり、自宅の見取り図や、近所の地図が書けないなどの状態です。

  • 半側空間無視

目ではちゃんと見えているはずなのに、自分の左(または右)に何があるのかがわからなくなる障害です。


症状として困るのは、本人が自分の障害を自覚しにくいことです。そのため、病院に行くことを拒否したり、前と同じことが同じようにできると思い、アドバイスを聞かずに復職したり、能力以上の職業的希望を抱いてしまうことです。

家庭や職場での問題

  • 家族のとまどい

家族は、本人が意識不明の重体からから回復しほっとしたのに、性格、行動面に変化が現れて戸惑ってしまいます。

  • 感情のぶつかり合い

感情が不安定で、物事に固執的になったりするため、家族と衝突することが増えます。

  • 家族の心配

集中力がなく、意欲が低下し、表情に乏しいため家族を心配させます。

  • 無計画な行動

手持ちのお金をすぐ使ってしまったり、無計画に借金をしてしまうことがあります。何かを始める時も見通しのないまま始めるのですぐに行き詰まります。

  • 職場のとまどい

以前と同じように働くことを期待されますが、仕事への取りかかりが悪かったり、手順良く仕事をこなしていくことができないため職場では戸惑ってしまいます。

  • 信頼を失う

指示されたことを忘れてしまい、指摘されても思い出せないため信頼を失ったりします。

  • 離職

以上のような職場でのトラブルが重なり、失職してしまうことがあります。


高次脳機能障害はわかりにくいため、家族にも理解されないことがある障害といえます。

診断基準

Ⅰ.主要症状等

  • 1.脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。
  • 2.現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。

Ⅱ.検査所見

  • MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。

Ⅲ.除外項目

  • 脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが上記主要症状(I-2)を欠く者は除外する。
  • 診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。
  • 先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する

Ⅳ.診断

  • Ⅰ~Ⅲをすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。
  • 高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後において行う。
  • 神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。

高次脳機能障害とICD-10(国際疾病分類第10版:ICD-10の精神および行動の障害(F00-F99))

  • F04,F06,F07に含まれる疾病を原因疾患にもつ者が高次脳機能障害診断基準の対象となる。
  • この3項目に含まれる疾病をもつ者すべてが支援対象となるわけではないが、他の項目に含まれる疾病は除外される。例:アルツハイマー病(F00)、パーキンソン病(F02)
  • 原因疾患が外傷性脳損傷、脳血管障害、低酸素脳症、脳炎、脳腫瘍などであり、記憶障害が主体となる病態を呈する症例はF04に分類され、対象となる。
  • 原因疾患が外傷性脳損傷、脳血管障害、低酸素脳症、脳炎、脳腫瘍などであり、健忘が主体でない病態を呈する症例はF06に分類され、対象となる。注意障害、遂行機能障害だけの症例はF06に分類される。
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)はF43に該当し、除外する。
  • 外傷性全生活史健忘に代表される機能性健忘はF40に該当し、除外する。

ICD10 国際疾病分類第10版(1992)

高次脳機能障害診断基準の対象となるもの

  • F04 器質性健忘症候群,アルコールその他の精神作用物質によらないもの
  • F06 脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患によるその他の精神障害
  • F07 脳の疾患,損傷及び機能不全による人格及び行動の障害

高次脳機能障害診断基準から除外されるもの

  • F40 恐怖症性不安障害
  • F43 重度ストレスへの反応及び適応障害

 

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