農業試験場

しあわせ信州

ここから本文です。

更新日:2015年8月3日

作物部

 米麦等の主穀作物の生産は、主食としての利用はもちろん、水稲を中心とする輪作体系等により、本県農耕地のおよそ50%を占める水田をフル活用した農業生産に寄与することなど、本県農業の重要な位置を占めています。

 当部では水稲、麦、大豆を対象に、高い生産性と品質を確保するための栽培方法の研究を行っています。また、省力で低コストの栽培技術の開発や先進的な農業機械を駆使した効率的な輪作体系の確立など水田の高度利用技術の開発を行っています。 

現在取り組んでいる主な研究課題

・大規模経営体に適合する低コスト、高収益の水田営農体系の確立

 省力・低コストで効率的な水田輪作体系を確立するため、プラウ耕起や汎用コンバイン収穫、麦、大豆、そばの新たな播種方法など先進的農業機械を駆使した作業技術、水稲直播等省力栽培の実証を行っています。

小型汎用コンバイン刈り取り 汎用コンバインの高刈り後のモアによる残稈処理 プラウによる省力耕起 高速稼働が可能な振動制御型ブームスプレーヤ
小型汎用コンバイン刈り取り 汎用コンバインの高刈り後のモアによる残稈処理 プラウによる省力耕起 高速移動が可能な振動制御型ブームスプレーヤ

  

・地球温暖化条件の水稲への影響評価とその対策

 近年の温暖化傾向により、出穂期以降の高温により玄米粒が白濁する白未熟粒が発生し、品質低下の要因となっています。このため、白未熟粒の発生に影響を及ぼす気象条件と水稲の栽培生理や食味の関係について解明し、対応した品種の導入、対策技術を確立します。

・大豆の多収阻害要因の解明と対策技術の確立

 近年、大豆主産地では多様な要因に起因すると思われる低収傾向が継続して認められています。そこで、県下の転作大豆の収量低下の要因を解明するため、栽植様式、作期、土壌物理性、施肥、病害虫、雑草など、多角的な要因解析に取り組み、減収回避のための栽培技術を確立します。

・雑草イネ等水田難防除雑草防除対策技術の確立

 玄米の種皮が赤く脱粒しやすい雑草イネが県内で発生し、一般米への混入による品質低下や減収などの被害が生じています。このため、雑草イネの撲滅のため、発生のモニタリング手法を確立し、効果の高い除草剤を利用した体系防除や耕種的対策を組み合わせた総合的な防除対策を提案します。また、県下高標高地で発生し問題化しているカヤツリグサ科の強雑草であるシズイ対策にも着手しました。

・難防除畑雑草の生態解明と防除対策の確立

 麦畑に発生するアブラナ科、キク科などの帰化雑草、大豆畑に発生する帰化アサガオ類は防除情報が乏しく放置すると甚大な被害が生じます。そこで、これら難防除雑草の生態を解明し、防除対策に取り組んでいます。

・麦類・大豆の良質安定生産栽培技術の確立

 パン用や麺用に用いる小麦は高いタンパク質含量と均一な品質が求められていますが、現状では、年によってタンパク含量が低かったり品質の不均一さが見られています。そこで、これらの小麦の高タンパクで高品質な生産のための栽培技術を確立します。また、大豆では梅雨時期と播種時期が重なるため、湿害の発生が問題となっていますが、排水性の向上を主眼とした安定生産技術を目指しています。

・水田畦畔管理技術の開発

 本県の水田の多くが傾斜地に存在し、全国的に見ても畦畔率が極めて高く、畦畔の草刈り作業は生産者の大きな負担となっています。そこで工業技術センターや大学、民間企業等の従来の枠組みを超え、多分野の研究領域の方たちと研究グループをつくり、新たな畦畔草刈り機の開発を目指しています。

・水稲・麦類の奨励品種決定調査

 標高差が大きく地域により気象条件が異なる本県において、それぞれの地域で栽培しやすく、生産者はもとより実需者や消費者から求められる水稲や麦類(大・小麦)の新系統・品種を奨励品種とするために、試験場内および現地水田(水稲10カ所、麦類4カ所)において栽培適応性や生産物の実需評価を行っています。

・新規除草剤、植物成長調節剤の実用性検討

 効率的な雑草防除技術や環境にやさしい農業の取り組みに生かせる、新しい有効成分の普通作物対象の除草剤や生育調節剤の実用性を検討し、利用技術を確立します。

近年実用化した主要な研究成果

〇気象変動に対応した水稲の高品質栽培に関する研究成果

 長野県の水稲は高い生産技術と恵まれた内陸性気候により、単位面積当たりの収穫量日本一位を維持しています。また、米の品質を示す1等米比率も全国トップレベルにあります。しかし、近年の夏場の高温傾向などの気象変動によって、高温障害である胴割米や白未熟粒の発生が問題となってきました。これらに対応し、気象と品質の関係について解析を進めるとともに、胴割米や白未熟粒の発生軽減対策技術の確立に取り組んできました。

・登熟積算気温による収穫適期判定(平成4年度、試験して得られた技術事項)

 出穂期の翌日からの日平均気温の積算値(登熟積算気温)による収穫適期判定基準を策定しました。これにより、地域ごと、品種ごとに収穫開始の時期が設定され、収穫適期の基本的な考え方が固まりました。帯緑色籾歩合と並び、現在でも収穫適期を決める基本となっています。

・水稲の帯緑色籾歩合と米の品質及び胴割との関係(平成13年度、試験して得られた技術事項)

 平成12年の胴割米増加を契機に、登熟積算気温による判定に加えて、帯緑色籾歩合による収穫適期判定を提案し、帯緑色籾歩合10%から収穫を開始し、1%で収穫を終了させるといった取り組みを関係機関一丸となって推進してきました。 

 

「コシヒカリ」の出穂期の前進 胴割米:出穂以降の高温と収穫遅れによって増加 正常玄米(左)と白未熟粒(右)
「コシヒカリ」の出穂期の前進 胴割米:出穂以降の高温と収穫遅れによって増加 正常玄米(左)と白未熟粒(右)

 

 

導入が進むプール育苗
図 導入が進むプール育苗

〇栽培法に関する研究成果

 低コスト栽培技術として各種の直播栽培や疎植栽培の開発を行ってきました。また、水田農業経営に有効な作付体系の提案やそれを組み立てる個別技術の開発を進めてきました。

 

(水稲関係)

・「ゆめしなの」、「あきたこまち」、「コシヒカリ」、「ひとごこち」の疎植栽培は慣行栽培並みの収量性、収益性が得られる(平成23年度、普及技術)

・水稲プール育苗法は慣行育苗法と同等の苗質が得られ省力的な育苗技術である(平成20年度、普及技術)

・カルパー粉粒剤16等倍量被覆籾の加温処理と保存技術(平成19年度、普及技術)

・飼料イネ利用のための「ふくおこし」の栽培特性と収穫開始期判定技術(平成19年度、普及技術)

・水稲湛水直播栽培は標高1050mまで導入可能である(平成15年度、普及技術)

・飼料イネの栽培法(平成15年度、普及技術)・水稲の不耕起乾田直播栽培技術(平成12年度、普及技術)

・水稲の条播湛水直播栽培技術(平成12年度、普及技術)

・水稲乾田直播栽培における入水時期は稲の出芽揃期まで早めることができる(平成11年度、普及技術)

・水稲の代かき同時土中点播栽培技術(平成10年度、普及技術)

 

耕耘同時畝立播種 慣行ロータリ播種

図 左:耕耘同時畦立播種、右:慣行ロータリ播種

耕耘同時畦立播種は砕土性が良好で、15cm程度の畦上に播種されるため、出芽時の排水性が改善される。

(畑作・転換畑・水田輪作関係)

・麦・大豆の耕うん同時畝立て播種技術、水稲湛水直播技術による2年3作体系の導入効果および作業体系マニュアル(平成23年度、普及技術)

・耕うん同時畝立て播種機を用いた水田転換畑の麦類・大豆・そば栽培技術(平成18年度、普及技術)・大豆の狭畦無培土栽培法(平成14年度、普及技術)

 

雑草に関する研究成果

(雑草イネに関する研究成果)

 雑草イネとは栽培イネと同じ植物種(Oriza.sativa.L)でありながら、玄米の種皮が赤いため、生産物に混入すると品質低下を招き、多発すると減収をもたらす水田の強害雑草です。雑草イネ対策の重要性をいち早く認識し、全国に先駆けて詳細な発生生態の解明や防除対策の開発に努めてきました。また、並行して関係機関からなる対策チームによる解決方策を積極的に推し進めています。これらの成果が認められ、総合的な防除対策技術が農水省による「最新農業技術・品種2014」に選定されました。

・雑草イネ総合防除対策マニュアル(平成24年度、普及技術)

・雑草イネ・トウコン(脱粒性の赤米)の防除法(平成14年度、普及技術)  

玄米の種皮が赤い「雑草イネ」 圃場に見られた雑草イネ 雑草イネは脱粒しやすいため、多くが土中に残り、難防除化 雑草イネの除草剤による防除体系
玄米の種皮が赤い「雑草イネ」 圃場に見られた雑草イネ 雑草イネは脱粒しやすいため、多くが土中に残り難防除化 雑草イネの除草剤による防除体系

  

(難防除畑雑草に関する研究成果) 

 近年、大豆作や麦作における帰化雑草をはじめとした難防除雑草は現地で大きな問題となっており、当場では主要な研究課題として積極的に取り組んでいます。平成26年には、関係機関とともに「難防除雑草対策プロジェクトチーム」を立ち上げ、県広域での情報の共有化および対策技術の普及を図っています。

・大豆作におけるマルバルコウに対する大豆バサグラン液剤およびバスタ液剤による体系処理は除草効果が高い(平成26年度、普及技術)

・麦作におけるヤグルマギクの防除法(平成25年度、普及技術)

・1~2ケ月の夏期湛水管理は麦連作圃場におけるアブラナ科帰化雑草の耕種的防除として有効である(平成22年度、普及技術)

・水田雑草クログワイに対する防除体系(平成17年度、普及技術)

麦畑に咲く「ヤグルマギク」 湛水処理の様子と湛水により死滅したヤグルマギクの種子 アブラナ科の帰化雑草「ヒメアマナズナ」に覆われた小麦畑 カミツレに覆われた大麦畑 大豆を覆い尽くす「マルバルコウ」
麦畑に咲く「ヤグルマギク」 湛水処理の様子と湛水により死滅したヤグルマギクの種子 アブラナ科の帰化雑草「ヒメアマナズナ」に覆われた小麦畑 カミツレに覆われた大麦畑 大豆を覆い尽くす「マルバルコウ」

  

SU剤抵抗性コナギ

図 SU剤抵抗性コナギ

左:SU剤処理 右:無処理

全く効果が見られない

(難防除水田雑草に関する研究成果)

 本県の水田雑草はクログワイ、オモダカなど多年生の難防除雑草に加えて、平成10年頃以降はスルホニルウレア系除草剤(以下SU剤)抵抗性雑草(コナギ、ホタルイ、アゼナ)の対策が必要となりました。これまでに、これらの抵抗性草種に対応した成分を含む多くの除草剤を普及に移してきています。

・水田雑草クログワイに対する防除体系(平成17年度、普及技術)

・SU剤抵抗性コナギの防除対策(平成13年、普及技術)

  

 

〇新品種の栽培・普及に関する研究成果

風さやかポスター
水稲新品種「風さやか」

新品種の栽培・普及は、選抜した育種部や現地の普及センター(農業技術課)など、多くの部門との共同の成果です。

 水稲の新品種「風さやか」は、現在、県オリジナル品種として関係機関一丸となって普及に努めています。

・小麦「ゆめきらり」はコムギ縞萎縮病、コムギ萎縮病抵抗性を持った日本めん用小麦である(平成25年度、普及技術)

・水稲新品種「風さやか」は中生の晩の熟期で、高温登熟を回避でき、耐倒伏性が高く、いもち病に強く多収である(平成23年度、普及技術)

・「ふくおこし」は中生の早の熟期で、耐倒伏性に優れ、いもち病に強い多用途多収水稲品種として有望である(平成22年度、普及技術)

・小麦「ゆめかおり」(小麦「東山42号」)は製パン性に優れ、諸病害に強い硬質小麦である(平成21年度、普及技術)

・水稲「天竜乙女」は良質・良食味で安定多収が得られる晩生品種として有望である(平成20年度、普及技術)

・小麦「東山40号」(「ハナマンテン」)は中華麺加工適性の高い早生の硬質小麦で、標高700m以下の雪地帯で栽培できる(平成17年度、普及技術)

・小麦「東山38号」(「ユメアサヒ」)は製パン適性の高い中生の硬質小麦で、標高700m以下の少雪地帯で栽培できる(平成15年度、普及技術)

お問い合わせ

農業試験場 

電話番号:026-246-2411

ファックス:026-251-2357

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?