インターネット版広報ながのけんN A G A N O 2017年1月号(2016年12月28日発行)Vol. 33 特集:世界のNAGANOブランドに ■1ページ目 産:(写真) 農:(写真)写真提供:長野県観光機構 観:(写真)写真提供:長野県観光機構 交:(写真)写真提供:信州まつもと空港利用促進協議会 経済成長が著しい中国、ASEANなどの国々が世界市場をけん引しています。国内市場が縮小している昨今、長野県が持続的な成長を維持し、質の高い行政サービスを提供していくためには、海外の活力を取り込むこと、そのための「国際戦略」が必要です。長野県の主要産業である製造業、観光業、農林業などの国際展開を進めていくとともに世界へ貢献し、世界の中での「NAGANO」ブランドの構築につなげ、長野県の魅力を最大限に発揮できるようにする。それが「グローバルNAGANO戦略プラン」です。 四つの戦略→グローバルNAGANO戦略プラン 世界に貢献するNAGANO:グローバル社会の一員として、製造業・農林業・環境・教育などの分野の長野県が持つノウハウを提供し、世界に貢献します。☆JICAとの連携、企業の海外貢献への支援、国際ボランティア活動の促進 など NAGANOブランドの構築:長野県の強みを世界へ戦略的に情報発信し、NAGANOの国際的な認知度を向上させ、NAGANOが産み出す物や地域の価値を高めます。☆冬季オリンピック・パラリンピックの開催経験、長寿世界一、歴史と文化にあふれた環境 など NAGANOの国際展開の加速:長野県の主要産業である製造業・観光業・農林業の国際展開、国際競争力の強化を図ります。☆ものづくり産業(製造業)の強化、加工食品、農林産物の輸出 など 国際展開の基盤整備:外国人旅行者の受入環境や外国人が暮らしやすい環境づくり、さらに、国際交流やグローバル人材の育成を行います。☆標識の多言語化、信州まつもと空港の国際化、グローバル人材の育成と活躍の場づくり など ■2ページ目 世界と競う:産 世界で輝くものづくり〜冷凍うどんを香港へ〜 (写真)信越明星(株) 営業部営業課 山中 清昭 氏 8月に開かれた香港での国際総合食品見本市に「冷凍そば」を出展したことがキッカケで、初めて「冷凍うどん」の輸出に挑戦する信越明星株式会社。同社の輸出への意気込みなどをお聞きしました。 1 香港への出展を誘われて 普段から商談会のバックアップなどしてもらっている長野県中小企業振興センターから、今後の大きな市場として期待される香港で開かれる香港最大級の国際総合食品見本市「Food Expo 2016」に県としても初めて出展するので、そばを出展しませんかとお誘いがありました。うどんは既に世界的に認知されていますが、自分たちが得意とする分野のそばはまだまだ認知されていません。しかも、長野県に工場がある会社なので「信州そば」というブランドで勝負ができると考え、出展を決めました。 2 冷凍そばを出展してみて 水を掛けるだけの流水解凍で食べられることや「そば」の珍しさもあり、おおむね好評でした。現地で聞いたのですが、香港の成人の7〜8割の方は観光で日本に来ているそうです。しかもリピーターがかなり多い。ですので、日本食はかなり認知されていて、なおかつ評価も高い。ただし、冷凍そばはまだなじみがないので、まずは冷凍うどんを軸にして、物流などを確立してからそばも併せて売っていく方策に切り替えました。それで今はうどんの販売準備を進めています。 3 世界に通用するためには 例えば香港では「北海道」と言ったら一つのブランドになっています。だから「北海道」 = イコール 「なんでも美味しい」というイメージがあるそうです。北海道のマークが付いているパッケージングで十分通用してしまいます。長野県としてもそのような発信のやり方、売り込み方が今後必要ではないかと思います。「NAGANO」というブランドをぜひ一緒に確立していきたいです。 4 海外展開を決めるには 海外で販路を広げたいと考えているなら、まずは自社製品の「売り」や「強み」が海外のどこの市場に通用するか、市場を実際に見ておくことが必要だと思います。そこはどういう状況なんだろう、自分たちが売り込みたい商品の状況はどうなのか、強みとなり得るかなど、リサーチがとても大事です。あとはキッカケとタイミング、そして自社製品への「自信」だと思います。 (写真)香港での国際総合食品見本市 世界と競う:農 世界に羽ばたく信州の農産物 シナノゴールドがYELLO(イェロ)としてEUで生産・販売されるなど、りんごやぶどうの県オリジナル品種等の海外での評価が高まっています。また、トルコギキョウ・シャクヤクなどの花きについても、オランダでの世界園芸博覧会への出展や「国際フラワーフォーラム2016」の開催を契機に世界から注目されるなど、信州の農産物が世界に羽ばたき始めました。(写真)トルコギキョウ ■3ページ目 世界と競う:観 世界から選ばれる観光地づくり〜日本の白馬から世界のHAKUBAへ〜 白馬東急ホテルのインバウンド担当としての経験を生かし、白馬村を「世界のHAKUBA」にするため、6月から観光局の事務局長に就任された福島さん。海外からの誘客についてお話を聞きました。 (写真)白馬村観光局 事務局長 福島 洋次郎 氏 1 オーストラリアからの誘客 最初、オーストラリアに行ったとき、白馬はニセコのどっち側かと聞かれました。オーストラリアは、冬季オリンピック選手がほとんどいないので、NAGANOオリンピックのイメージが全くありません。まず出鼻をくじかれました。どうやって白馬を知ってもらおうかと考え、現地のEXPOなどに出展して現地の方と直接コミュニケーションを取りました。来ていただきさえすれば、白馬はオリンピックも経験していますし、海外からのお客さんに対するバリア(壁)は無いので、お客さんも満足して帰っていただける自信がありました。結果、直接コミュニケーションを取った人たちが来てくれて、その人たちが地元で「口コミ」してくれました。ただ現地に行って来てくださいとパンフレットを配るだけでは、何の効果も生まれないと思います。 2 白馬を選んでくれる スキー場が良いとか、雪質が良いとかだけではなく、昔から暮らす地元の人たちとのコミュニケーションがあるとか、宿泊施設の快適性があるとか、食べるものの美味しさとか、そういうトータルバランスで見て白馬がベストだと思っていただいているのかなと感じます。白馬は民宿発祥の地と言われているので、お客さんを「もてなす」という地域に根ざした文化がしっかりあると思います。 3 今後の仕掛けは 北米やヨーロッパからの誘客。それに加えこれから平昌(ピョンチャン)、北京とアジアでのオリンピック開催が続く中で、東アジアの人たちもこれからスキー・スノボをやる人が増えてきます。その人たちがスキー・スノボの情報をどこから得るかというと、北米やヨーロッパのメディアから情報を得ています。ですから、そのメディアを目指して自分たちのブランディングをしていかなければなりません。他にも国内のスキー場と一緒にタッグを組んで「打倒カナダ」みたいなことをやってみたいと思っています。例えばFDAを使って札幌、ニセコにも行ける、そういった連携ができればかなり強くなります。外国人の観光は、宿泊日数が長い滞在型ですので、白馬を拠点として松本、木曽路、長野、善光寺、地獄谷の猿、志賀高原、野沢温泉などをぐるっと回れる形が作れればと思います。 4 世界から選ばれるために 結局、国内の観光地の多くは「オンリーワン」や「特異」なことに走ってしまう。例えば「B級グルメ」だったり、「ゆるキャラ」だったりと、そういうことではなくて「きちんとブランドを確立する」ということが一番重要だと思います。また、「山」「温泉」「スキー」だけでなく、地域の文化や伝統なども併せて前面に出して、トータルで選んでもらえるようにすることだと思います。 (写真)現地での展示会 世界と競う:交 海外と信州を結ぶ空の玄関口 国際化を目指した取り組みがスタートした信州まつもと空港。来年2月には大韓民国からのチャーター便が初めて就航します。今後もチャーター便の実績を積み重ね、東アジアとの国際定期便の就航につなげるとともに、空港から県内各地への交通手段を充実させるなど、海外からの玄関口として機能強化を図ります。 グローバルNAGANO戦略プランの紹介についてはこちら http://www.pref.nagano.lg.jp/kokusai/senryaku.html ■4ページ目 オール信州で取り組む地消地産 Vol.2 信州農畜産物の利活用拡大 長野県では、オール信州で「地消地産」に取り組んでいます。その地消地産を実践している人たちを紹介します。第2回は、地消地産の3本柱の一つ「農畜産物の利活用拡大」の中から、消費者からのニーズに応え、開発されたパンに適した信州産小麦などを取り扱う製粉工場が取り組む、「需要と供給による循環」と「地消地産」について伺いました。 (写真)柄木田製粉(株) 製造本部長(信州ワインブレッド研究会事務局)宮崎 充朗 氏 1 地粉を扱う県内唯一の製粉工場 昔は県内にも小麦の製粉工場が15ぐらいあったのですが、今はわが社しかありません。地粉とは、生産地と同じ都道府県内で製粉したものと定義されていることから、わが社で製粉しないと長野県産の地粉はなくなってしまう。そういう意味では使命感があります。大規模な製粉工場には製造コストではかないませんが、信州産の地粉を供給できることが、当社の強みです。地元産なので輸送距離が短く、原料の調達コストを抑えること、そして地粉という付加価値を付けて売っていくこと。それこそが生き残っていく道だと思います。(写真) 2 異業種連携で進める地消地産 信州は南北に長く標高差もあり、多様な小麦が栽培されていますが、パンに適した国産の小麦品種は県外産が主流でした。そんな中、消費者から「信州産の小麦を使ったパンが食べたい」というニーズに応えるために、長野県の試験場が新たな小麦品種(ゆめかおり・ハナマンテンなど)を開発しました。このオリジナル品種の小麦とNAGANO WINEを使って作る「信州ワインブレッド」で県産農産物をアピールするため、県内のベーカリーやホテル、ワイナリーなどの皆さんと研究会を立ち上げ、連携して取り組みを進めています。また今は、「信州ワインブレッド」に使われているレーズンを信州産リンゴやプルーンのドライフルーツに代えられないか研究しています。「無いモノは作ろう」という発想です。今後、信州産の小麦などに付加価値が付き、ブランド化がますます進むことを願っています。 (写真)「信州ワインブレッド」普及啓発ポスター 3 地粉の需要は高まっている 信州産の地粉の品質や味の良さが評判となり、地粉に対する需要が増えています。学校給食、コンビニの調理めん、「おやき」の生地、そして「信州ワインブレッド」などのパン等の需要増により小麦の作付けが追い付かない状況にあります。地粉はますます必要となっていますので、その需要に応えるようにしなければと思います。 4 粉食文化をさらに広げたい 長野県には古くから「そば」や「おやき」など家庭で作る「粉もの」の郷土食がありました。しかしそうした郷土食を作ることのできる年配の方も少なくなり、そうした文化が廃れつつあります。私はカルチャースクールの先生ではありませんが、こうした「粉もの」の食文化を継承していくため、公民館や学校などに出向き、「おやき」や「うどん」などの作り方を教えています。こうした取り組みを通じて粉食文化を継承し、また「粉もの」の素材を「県外産」から「信州産」へ置き換えることにより地粉の消費が増え、小麦の生産が増えるなど、県内の「経済循環」がさらに大きくなっていくことを期待しています。 県ホームページ地消地産についてはこちら http://www.pref.nagano.lg.jp/senryaku/sangyo/shokogyo/tisyoutisan/tisyoutisan.html