インターネット版広報ながのけんN A G A N O 2016年12月号(2016年11月28日発行)Vol. 32 特集:受け継がれる信州の民俗芸能 ■1ページ目 (写真)天龍村の霜月神楽 (写真)和合の念仏踊り 信州の各地には、歌舞伎やお祭り、火祭りなどが何百年と受け継がれてきた民俗芸能が数多くあります。こうして長い歴史を重ねてこれたのは、受け継いできた人々の想いがあってこそ。 各地の民俗芸能を観て、聞いて、身近に感じ、受け継ぐ人々の“想い”に触れながら、冬の信州を堪能してみませんか。 古くから伝わる民俗芸能とは 皆さんは「民俗芸能」という言葉を聞いて何を思い浮かべますか? 古くから伝わる芸術、技能であり、能や狂言、落語や歌舞伎などがあります。 信州には400余の民俗文化財があり、その中でも国指定等の無形民俗文化財(いわゆる民俗芸能)は45件(うち9件が重要無形民俗文化財)、県指定の無形民俗文化財は29件あります。 古くから脈々と受け継がれてきた民俗芸能ですが、若い人が減ってきている昨今では、伝承、後継者づくりが課題になっています。 文化財とは 人類の文化的活動によって生み出された有形・無形の文化的所産のこと。「有形文化財」「無形文化財」「民俗文化財」「記念物」「文化的景観」および「伝統的建造物群」と定義されています。長野県では「松本城(有形文化財・国宝)」「大鹿歌舞伎(無形民俗文化財)」などが有名です。 (写真)松本城(提供:松本城管理事務所)(写真) 大鹿歌舞伎 その他の指定等文化財の情報についてはこちらhttp://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/bunsho/bunka/rekishi/bunkazai.html ■2ページ目 (写真)民俗芸能を未来へ 上村遠山霜月祭保存会 特別顧問 宇佐美 秀臣 さん 800年の伝統、遠山霜月祭 飯田市上村・南信濃のいわゆる遠山郷一帯で800年の伝統を誇る祭りです。旧暦の霜月(12月)に九つの神社で行われ、新年を迎えるに当たり、一年の邪悪を払い新しい魂をもらうための湯立て神楽です。地域ごとに祭りの内容が異なりますが、上村上町では、面(おもて)と呼ぶ仮面の神々が登場し、湯を煮えたぎらせた釜の周りで湯立てやさまざまな舞を夜明けまで行います。 (写真)遠山霜月祭 「舞」の後継者をつくる 私が小さい頃、祭りは当たり前のように身近にあり、何も考えなくても受け継いでいくものでした。しかし、若い人が減ってきて後継者づくりが課題になったことから、昭和40年代前半に「保存会」をつくりました。私の上村上町支部のメンバーは現在約30人。将来の後継者を育てるため、学校に出向いて小学生や中学生に舞を教える活動を続けています。教え子たちが高校、大学、社会人となる中で、地域に戻り、祭りを受け継いでくれればと思います。 (写真)祭りの練習風景 伝統も変化が必要 保存会のメンバーは仕事を休んで保存会の活動に参加してくれています。県の「南信州民俗芸能パートナー企業制度(※)」もスタートしましたが、有給休暇のほかに「地域貢献休暇」のような休暇制度を作るなど、企業の皆さんには参加しやすい環境づくりに協力していただければと思います。また、企業の皆さんだけでなくわれわれも、女性や地元以外の参加者にも間口を広げるなど、時代とともに変化していかなければと考えています。 お祭りは「生」で見てこそ 寒い季節の祭りですが、熱気にあふれています。観客が多ければ多いほど祭りは盛り上がります。上村上町には、仮眠所もありますので、ぜひ「生」の祭りを見に来ていただき、舞手を「賑やかして」ください。 (イラスト) 南信州の民俗芸能を未来へ継承するために(※南信州民俗芸能パートナー企業制度) 企業・団体○社会的貢献○企業イメージ向上など⇒(支 援○従業員の参加推奨○休暇取得の便宜など)個別地区(保存会・地区・市町村等)継承活動 企業・団体⇔(協 定)南信州広域連合(協議会事務局) 個別地区(保存会・地区・市町村等)⇔(協 力)南信州民俗芸能継承推進協議会 南信州広域連合(協議会事務局)・南信州民俗芸能継承推進協議会⇔(連 携)長野県(下伊那地方事務所) 登録証の交付・登録企業の周知 民俗芸能保存・継承団体の取り組みに協力し、支援いただける企業・団体の皆さまを、県が「南信州民俗芸能パートナー企業」として登録をお願いしています。 制度の詳細はこちらhttp://www.pref.nagano.lg.jp/shimochi/shimochi-seisaku/partnerkigyou/28gaiyou.html ■お問い合わせ先 長野県下伊那地方事務所地域政策課企画振興係 電 話:0265-53-0401(直通) E-mail:shimochi-kikaku@pref.nagano.lg.jp ■3ページ目 信州各地の民俗芸能(国指定の重要無形民俗文化財) (長野県地図)@飯山市A野沢温泉村B千曲市C佐久市D飯田市E天龍村FGH阿南町 (写真)@小菅の柱松行事 飯山市 精霊を招くため柴や草で柱を建て、その上の榊(さかき)などに火をつける。その後、豊凶を占うようになった。3年に一度、7月15日以後の最初の日曜日に小菅神社で行われる。 (写真)A道祖神祭り 野沢温泉村 厄年払い、良縁祈願の火祭り(火をめぐる攻防戦)である。1月15日に行われる。 (写真)(千曲市教育委員会提供)B雨宮の神事芸能 千曲市 獅子踊りとも呼ばれ、500年を超える伝統がある。3年に一度、4月29日に雨宮坐日吉神社(あめのみやにますひよしじんじゃ)で行われる。 (写真)C跡部の踊り念仏 佐久市 鉦を鳴らし、念仏和讃を唱え、太鼓の周囲を回って跳ね踊る。4月第1日曜日に西方寺で行われる。 (写真)D遠山の霜月祭 飯田市 遠山地方で行われる湯立神楽。神々の面をかぶり、釜の周りで舞い踊る。12月に9社で行われる。 (写真)E霜月神楽 天龍村 「坂部の冬祭り」「向方のお潔め祭」「大河内の池大神社の例祭」の3つを総称して「霜月神楽」という。1月3日〜6日(地区ごとに日程は違います。)湯立てと舞が繰り返される。 (写真)F新野雪祭 阿南町 毎年1月13日〜15日に、伊豆神社で面をかぶった神々が一晩中、舞い踊る。 (写真)G新野の盆踊り 阿南町 新盆の家の庭先で、親類縁者や村人が精霊を慰めるために踊ったのが始まりと言われている。8月14日〜17日の朝まで夜通し踊る。 (写真)H和合の念仏踊り 阿南町 1742年に江戸表へ免訴願いに出た戻り道に習い覚え村人に伝えたのが始まり。8月13日〜16日、林松寺、宮下家、熊野社で行われる。 これから民俗芸能が行われるところ(国指定の重要無形民俗文化財とその他) 12月D遠山の霜月祭 1月A道祖神祭り・E霜月神楽・F新野雪祭 4月C跡部の踊り念仏 他にもたくさんあります。イベントや行事等についてはこちらhttp://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/bunsho/bunkazai/guide_top.html ■4ページ目 オール信州で取り組む地消地産 Vol.1 長野県では、オール信州で「地消地産」に取り組んでいます。その取り組みを実践している人たちを、今後紹介していきます。 第1回目は、「地消地産」とはどのようなことなのか説明します。 Q1:地消地産とは? A1:地消地産は、地域で消費するモノやサービスをできるだけ地域で生産しようという考え方です。これにより、地域内でお金やモノが循環する地域経済を創っていこうというものです。農林業やエネルギーなど、県内の資源や強みを活かせる分野では、地消地産が可能だと考えており、28年度から「信州農畜産物の利活用拡大」、「信州の木自給圏の構築」、「エネルギー自立地域の確立」の3本柱で地消地産の推進に取り組んでいます。(次号から3本柱を順次紹介します。) Q2:なぜ地消地産を推進するの? A2:これからは人口減少社会です。人口が減少すると、一定の人口規模が必要な商業・生活サービスの縮小や撤退があります。また、働き手の減少によるオフィスなどの働く場では、人材を確保することが難しくなります。その問題に対応するため、持続可能な地域経済を創る必要があります。そのためには地域の外からお金を稼ぎ、稼いだお金を地域の中で循環させて地域の人の所得としていくことが大切です。その手段が地消地産なのです。 Q3:地消地産による経済循環とは? A3:経済循環をパンで例えると、小麦を農家が栽培し、その小麦を地域の製粉会社で製粉する。その小麦粉で製造業者がパンを焼き販売する。それを地元の消費者が食べることで消費者→パン製造業者→製粉会社→農家へと地域でお金が循環します。さらに消費量が増えると、同じように製造や生産が増え、地域で経済の「好循環」が生まれます。 (イラスト) 地域外経済(稼ぐ力)⇒地域内経済 栽培(生産)⇔製粉⇔製造⇔消費 Q4:県民の皆さんによる「地消地産」の行動とは? A4:全て県産でというわけにはいきませんが、県産原料の割合や県産品の購入割合を増やすなど、県民の皆さんには次のようなことを意識して、できることから始めていただくことをお願いします。そうすることでだんだんと“経済循環”の輪が広がっていきます。 生産者:地域で消費(加工原料)されるものを新たに生産 加工者:地域資源を活用した商品を開発 流通・販売(飲食含む):地域で作られた商品を積極的に扱う 消費者:地域のモノやサービスを利用 「地消地産」についての詳しいことはこちらへhttp://www.pref.nagano.lg.jp/senryaku/sangyo/shokogyo/tisyoutisan/tisyoutisan.html