インターネット版広報ながのけん3月号@ 2016年3月発行 特集:信州発の次世代産業の創出 ■1ページ目 「次世代交通」「健康・医療」「環境・エネルギー」の各分野は、長野県の強みが発揮でき、今後さらなる成長が期待されています。 イノベーションの創出や、次世代産業の集積などにより、経済変動に強い産業構造への転換を図っていきます。 「次世代交通」分野 航空宇宙産業  地方空港を結ぶ路線など小型ジェット機に対する世界的な需要が高まる中、小型・軽量化といった県内企業が得意とするものづくりの確かな技術力が評価され、航空宇宙産業への参入が進んでいます。  昨年11月、約50年ぶりとなる国産旅客機の初フライトを無事成功させたMRJ(三菱リージョナルジェット)にも、県内発の部品が数多く供給され、燃料効率の改善に貢献しています。 国際戦略総合特区  「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」で開発が加速  長野のほか、愛知・岐阜・三重・静岡の5県にまたがる、アジア最大・最強の航空宇宙産業の集積を目指し、県内では飯田・下伊那地域の企業35社が参画しています。 県では、これまで拠点工場の整備を支援してきましたが、今後はコーディネーターを配置するなど、航空機産業分野に取り組む企業が全県に広がるよう努めてまいります。 ■2ページ目 「健康・医療」分野 ヘルスケア産業  世界的な健康ブームからヘルスケア産業育成への期待が膨らむ中、健康長寿県信州のブランドを生かして、「健康×サービス」「健康×食」「健康×観光」「健康×ものづくり」といったさまざまな産業との融合が始まっています。  健康な歩行をデータで示すなど、歴史ある地域医療のニーズに対応した健康・医療機器開発は県内ものづくり産業の得意分野です。  信州ACE(エース)プロジェクトと連動した事業展開   健康×サービス  フィットネス等を活用した公的保険外サービスの開発と提供   健康 × 食    機能性を持つ健康食品の開発や健康メニュー・健康食の普及   健康 × 観光   温泉や森林セラピー基地等を活用したヘルスツーリズムの振興   健康×ものづくり 県内企業の技術を生かした医療・福祉機器の試行による健康増進  「健康×ものづくり」の事例   歩行健診用計測器 体幹2点歩行動揺計「THE WALKING」(ザ・ウォーキング)の開発   <概要>    佐久市内でモーションセンサーを扱うマイクロスートン(株)と地域医療を担う佐久総合病院とのコラボにより、「歩行の質」を手軽に計測できる機器「THE WALKING」は誕生しました。   健診等の場を活用し、体に装着して歩くことわずか10m。美しい歩行か、バランスの悪い歩行かを瞬時に測定しモニター上で表示してくれるという優れものです。今後は、「歩行健診」の   ビジネス化に取り組むことにより、佐久地域発の「THE WALKING」を普及させていく予定です。 ■3ページ目 「環境・エネルギー」分野 環境産業  経済成長に伴う大気や水質の悪化を防ぐ環境浄化技術の創出は世界的な課題です。  長野県の誇るナノテク技術を活用した水浄化システムなどの開発は、信州の自然豊かなクリーンなイメージと相まって世界への貢献が期待されています。 世界の豊かな生活環境と地球規模の持続可能性に貢献  アクア・イノベーション拠点  信州大学など研究機関が持つ革新的な炭素素材・繊維素材の研究成果と、長野県などの企業が持つものづくり技術を生かして産学官連携により取り組んでいるのが、 最長9年間にわたる国家プロジェクト「アクア・イノベーション拠点」です。  信州大学、日立製作所、東レ、長野県などが国に共同提案し、2013年10月に採択。その中核拠点が、長野市若里にある信州大学国際科学イノベーションセンター(AICS)です。 2030年に世界人口が80億人を超え、各地で水不足が予想される将来を見据え、「世界中の誰もが十分な水を手に入れられる社会」の実現を目指し、イノベーションを生み出す試みが オールジャパン体制で進められています。 提案機関  信州大学、日立製作所、東レ、昭和電工、物質・材料研究機構、長野県 参画機関(2016年3月現在)  理化学研究所、高度情報科学技術研究機構、北川工業、トクラス COI-S拠点  海洋研究開発機構、ソニーコンピュータサイエンス研究所、東京大学、中央大学、宇宙航空研究開発機構 ■4ページ目 連載:私の信州創生スタイル ♯3 「オンリーワンのものづくり」  (株)サイベックコーポレーション 平林 巧造さん  県では昨年10月、「信州創生」を目指して「人口定着・確かな暮らし実現総合戦略」を策定しました。  「信州創生」に向けた新しいライフスタイルを体現し、自分らしい働き方、自分らしい暮らし方にチャレンジしている皆さんを紹介していく連載企画「私の信州創生スタイル」。  第3回は、独自の金属加工技術を駆使して主に自動車関連部品の製造を行っている塩尻市の(株)サイベックコーポレーションの代表取締役社長 平林巧造さん。  最近は、次世代型自動車としての期待が高まる燃料電池車の部品の開発に意欲的に取り組むなど、オンリーワンのものづくりを進めています。 ○最高のものづくりは最高の設備環境から  これからの時代は、国内だけでなく海外市場にも目を向けていく必要がありますが、「確かな品質」にこだわりたいので、生産拠点を海外に移すのではなく、部品の輸出を強化することで、魅力ある海外市場の販路拡大に つなげていきたいと考えていました。  そこで、平成24年、地下11mの空間に「夢工場」の建設を決めました。この地下工場の導入により、振動を極力抑え、低コストで温度と湿度を一定に保てるようになり、金属プレス加工の精度が飛躍的に向上しました。 当時の年間売上額をはるかに上回る投資額でしたが、付加価値の高いものづくりのためには絶対に必要な施設だという信念が揺らぐことはありませんでした。 ○燃料電池車への挑戦  この「夢工場」から、多くのオリジナル部品を供給し続けていますが、燃料電池車に搭載する燃料電池の主要部品である金属板「セパレーター」もそのひとつです。燃料電池車は、 外部の水素ステーションなどから取り込む水素と空気中にある酸素を反応させて発電し、この電気でモーターを動かして車を走らせるしくみ。排出されるのは水だけということで、 究極のエコカーとして大きな期待が寄せられています。数年前から、試作段階の燃料電池に部品供給を行っていますが、燃料電池の高性能化・高効率化に向けた挑戦はまだまだ続き ます。私たちの技術が認められて量産化が始まるという夢を追いかけていきたいと思います。 ○ものづくりの原点はひとづくり  「社員は家族」社員を家族同然に大切にするという会社経営の理念は、先代の社長の頃から一貫して変わっていません。安定した会社、安定した家庭があってこそ、いい仕事ができると考えるからです。  技術の進歩にゴールはなく、常に進化を続けていきます。ものづくりに携わる社員一人ひとりのモチベーションを高いレベルで維持できるような環境をこれからも提供していきたいと思っています。 「信州創生」へキックオフ ♯3  NAGANOものづくりエクセレンス   県内で企業活動を続ける製造業者の優れた技術・製品を認定。国内外に広く周知するとともに、県事業を活用した支援を行い、さらなる事業展開を促進しています。