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しあわせ信州

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更新日:2015年4月1日

マルハナバチの分布と植生および土地利用との関係の解明

総合地球環境学研究所プロジェクト:「日本列島における人間―自然相互関係の歴史的・文化的検討」

担当分野:マルハナバチの分布と植生および土地利用との関係の解明

研究期間:H18~22年度(2006~2010年度)

プロジェクト全体の趣旨

 日本列島の自然は、縄文時代から人間活動の影響を受けてきました。にもかかわらず世界的にみて生物の多様性が高い地域として知られています。しかし現在多くの生物が絶滅の危機に瀕しています。

 総合地球環境学研究所のプロジェクト「日本列島における人間―自然相互関係の歴史的・文化的検討」では、最終氷期以降の日本列島で人間活動の影響で自然がどのように変遷してきたのか、また人々がどのように自然とかかわってきたのかを歴史的な証拠にもとづいて復元・検討し、今後の人間と自然の関係がどのようにあるべきかを考える礎を示すとともに、近い将来の生物の大量絶滅をどのように予防するかについて具体的な方策を示すことを目標として、文理融合の学際的な共同研究がおこなわれています。

 プロジェクトは14の研究班から成り、当所ではマルハナバチの分布と草原利用など人間活動の歴史とのかかわりについての研究を分担しています。

マルハナバチの分布と草原環境

 マルハナバチは、世界的に草原的な環境を分布の中心とする昆虫で、ユーラシア大陸の草原地帯に特に多くの種が生息しています。日本列島には第三紀後期から第四紀のさまざまな時期に移入し、大陸の系統と分化したと考えられます。現在の日本では、北海道に11種、長野県など本州中部に10種と比較的多くの種がみられ、半自然草原(野草地)など人為の加わった草原的環境や高山・亜高山の自然草原などで、草本類や低木の花を多くの個体が訪れているのをしばしばみることができます。多くの場合それらの植物の受粉に重要な役割を果たしていると考えられています。

 このプロジェクトでは、特に本州以南を中心として、マルハナバチの分布と草原環境の歴史とのかかわりの解明をめざしています。本州以南は、北海道に比べて温暖で自然条件では草原が森林へと遷移しやすい一方、歴史時代の人間活動が稠密で、その影響も大きいと考えられます。つまり、草原を利用する人間活動とのかかわりの歴史がそれだけ深いと考えられるわけです。本州以南で特にマルハナバチの多い長野県を調査のコアエリアとし、岩手県・山梨県および中国地方と九州でも比較調査をおこなってきました。

 

ホンシュウハイイロマルハナバチ ホンシュウハイイロマルハナバチ(草原性の希少種)

草原利用の歴史とマルハナバチの分布

 これまでの調査の結果、長野県のマルハナバチ10種のうち、多くの場所でみられる種は森林および草原的な環境を幅広く利用する傾向があり、希少種は草原的な環境を好む傾向があることがわかりました。さらにくわしくみると、草原的な環境を好むものにも、高山・亜高山の自然草原に多い種と人手の加わった草原的環境に多い種とがあることがわかってきました。

 このうち最後のタイプは、火入れ・放牧・採草などの人間活動によって維持されてきた半自然草原との歴史的なかかわりが深く、近年は衰亡傾向にあると考えられます。現在、これらの種のたどってきた歴史を科学的に解明する手がかりを得るため、DNAレベルでの分析が共同研究者により進められています。

火入れによって保たれてきた野草地 火入れによって保たれてきた野草地(茅野市)

草原利用の歴史の解明にむけて

 明治時代後半に国土の1割以上を占めていたとされる日本の半自然草原は、20世紀に大きく減少し、近年では1%に満たないとされています。その結果、半自然草原をすみ場所とする野生生物の多くが絶滅のおそれのある状況に追い込まれる結果となりました。『万葉集』で秋の七草に数えあげられたキキョウとフジバカマも、そうした生物のなかにふくまれています。逆にこのような草原性の生物が近年まで日本で普通にみられた背景には、気候が温暖化した縄文時代以降、人々によってさかんに草原環境の利用がなされてきた歴史があると考えられます。

 このプロジェクトでは、そうした草原利用の歴史についても、植生史学・土壌学・考古学・歴史学などの分野と連携した共同研究を進めています。成果の一部は、2009年9月に諏訪市で開催した公開シンポジウムなどで公表されました。今後、書籍や論文、公開セミナーなどを通じても、さらに公表を進めていく予定です。

さらにくわしい情報については、こちらもご覧ください:

  • 須賀 丈(2008)ホンシュウハイイロマルハナバチ:草原環境に生き残る. 『変わりゆく信州の自然』(変わりゆく信州の自然編集委員会編)pp. 40-41. ほおずき書籍.
  • 須賀 丈(2008) 中部山岳域における半自然草原の変遷史と草原性生物の保全. 長野県環境保全研究所研究報告 4: 17-31.

プロジェクト全体については、総合地球環境学研究所のページ(外部サイト)をご覧ください。

(担当者 須賀 丈)

共同研究者:湯本貴和(総合地球環境学研究所、研究代表者)・田中洋之(京都大学霊長類研究所)・丑丸敦史(神戸大学発達科学部)

お問い合わせ

環境保全研究所 

電話番号:026-239-1031

ファックス:026-239-2929

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